「戦争のセンス」なき日本、尖閣は風前の灯火
尖閣諸島周辺の接続水域を、中国の公船(海警局の船)が再三航行して、日本を威嚇し始めて久しくなります。時には一時的に領海侵犯をしたりしています。それに対し日本は海上保安庁の巡視船が、注意を喚起したり、その場を離れるよう警告を発したりしています。外務省も時折「遺憾の意」を示したりしていますが、中国は全く止める気配はありません。
そもそもこの尖閣諸島はその昔、中国は殆ど見向きもしなかったのに、1968年の国連のレポート「尖閣諸島を含む東シナ海の海底から、石油や天然ガスが多く採掘できるかも知れない」が公表されたのを期に、1971年突然領有権を主張し始めました。
そして1972年の「日中国交正常化交渉」の時の田中角栄―周恩来会談で、中国側から打診された「尖閣は現状で固定しよう」と言う提案が、1978年「日中平和友好条約」の締結の時の、園田直―鄧小平会談で鄧小平から再提案され、日本側は受け入れをしてしまったわけです。
しかしこの平和条約締結時、日本は「尖閣諸島は日本の固有の領土である」と主張していません。その理由が「既に実効支配をしている。敢えて日本のものだと言えば中国も体面上領有権を主張せざるを得ない」と言うものです。鄧小平の提案に反論しなかったのは、もう実質的に棚上げを認めていたようなものです。外交力の弱さをさらけ出しています。
そして1991年ソ連の崩壊に伴い、安全保障上もっとも警戒していた、中国にとって目の上のたんこぶだったソ連がなくなったのを機に、1992年中国は一方的に「領海および接続水域法」を作って、尖閣諸島を中国の領土だと内外に宣言しました。しかしこのときも日本政府は何の懲罰アクションは取りませんでした。竹島の不法占拠の時と同様です。
兵頭二十八氏著の「日本の武器で滅びる中華人民共和国」では次のように記述されています。
このような場合、近代国家は、トレランス(我慢して様子を見る)を差し挟まず、相手国家の約束違反に対して懲戒的な対抗措置をただちに(ただしスタート時点では軽微に、以後逐次に加重するようにして段階的に)執らなくてはいけません。
こういうのも「戦争のセンス」のうち、なのですけれども、わが外交官たちにこれが欠けているのは、日本国民にとって毎度、不幸なことです
1992年のその時点で、すぐに日本政府は、尖閣諸島を「国有化」したり、諸種の監視センサーを置いたり、港やトリップワイヤーとなる陣地を築いたりする等の対抗措置を講ずるべきだったのです。
相手が不遜にもさらにイヤガラセや約束違反をエスカレートさせたなら、その都度、こちらもまた保全措置を漸進的に強めていく。そして、いったん強化した保全措置は二度と緩和しないで永続させる。
そうしておけば、彼らは日本政府の反応を甘く見ることが誤りであることを、いつも思い出すことができるので、たとえば2013年に尖閣上空に中共空軍の防空識別圏が設定される、なんてこともなかったはずなのです。
政府間の約束を一方的に破られているのに、それに対して日本政府が加罰的な対抗措置を何も執らないものですから、儒教圏人は「自分たちの立場が強くなった。日本は下位者である」と考えて、ますます図に乗り、約束を守らなくなるのです。竹島問題でも、まったく同じです。
兵頭氏の言うとおりの対応が、日本政府や外務省に出来るとは全く思いません。それどころかその後も石原慎太郎元東京都知事が提案していた、船だまりの設置もしようとしていませんし、海上保安庁職員や自衛官を常駐しようという発想はありません。
兵頭氏はもしこれらの構築物を設け日本の公務員が常駐すれば、仮に中国の艦艇が近寄っても、攻撃できない。なぜなら攻撃された側に自衛権が発生し、国際法公認の自衛戦争となり、日米同盟の元、米国の参戦が可能となるはずです。中国は自国が先制攻撃即ち侵略国とされ、かつ米国と戦争することは絶対避けたいでしょうから、むやみに尖閣に近寄らなくなる、と言います。
ですが仮にそうだとしても、日本政府や外務省は、そんな英断を出来ないでしょう。なぜなら兵頭氏の言う「戦争のセンス」を全く持ち合わせていないからです。
もちろん戦争は絶対回避すべきだとは思います。しかし戦力は持たず国の交戦権は認めない、そして紛争解決の手段としての戦争は永久に放棄する、という憲法9条の呪縛は、たとえ自衛戦争には適用しないという解釈をしても、外交力には決定的に影響を及ぼすでしょう。そしてそれが外交官を萎縮させ、自衛のための処置さえ打ち出しにくくなっています。これでは独立国とは言えないでしょう。
そうこうしているうちに2013年、中国は尖閣諸島を「核心的利益」と明言したのです。その後の展開は冒頭述べたように毎日のように海警局の公船による威嚇です。これからも「遺憾の意」だけを言い続けるのでしょうか。何とも情けないことです。
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