高齢者の暴走事故、更新時の適性検査は十分か?
87歳高齢者による池袋の暴走事故。続けて神戸市三ノ宮駅前の市営バスの暴走事故、熊本でのトラックによる幼稚園の送迎バス等に次々と衝突する事故と、この数日間に立て続けに多くの死傷者を出す事故が発生しました。
特に87歳男性の起こした事故は、知人の次のような証言の通り、車の運転はやめるべきであったことが窺えます。NHKのニュースから引用します。
車を運転していた87歳の男性の知人は「男性は奥さんと2人暮らしで、足を悪くしていて杖をついて歩いているのをよく見かけました。ふだんから車に乗っているのを見かけましたが、車を駐車させる時、何度も車体を切り返すなどおぼつかない運転で、いつか事故を起こすのではないかと心配していました。一時は“運転をやめる”と言っていたように思いますが、身近な人が事故を起こしてびっくりしています」と話しています。
こうした高齢ドライバーの事故は全国で相次いでいて、同NHKのニュースは次のように述べています。
ことし1月には、東京のJR新宿駅近くの歩道に79歳の男性が運転する乗用車が突っ込んで歩行者などを次々にはね、男女7人がけがをしました。
また、去年2月には、東京 港区で男性がはねられて死亡し、79歳の弁護士が過失運転致死などの罪で在宅起訴されました。
さらに去年5月には、神奈川県茅ヶ崎市の国道で90歳の女性が運転する乗用車が歩行者などを次々にはね、1人が死亡し3人がけがをする事故が起きています。
いずれにしても、高齢化による認知機能や動体視力、反射神経それに身体能力が減少していくことが大きな原因でしょうが、それとは逆に「運転に自信がある」とするドライバーが極めて多いようです。「カーナリズム」が示す調査データを以下に引用します。
■運転に対して「自信がある」
20~29歳:49.3%
30~59歳:40.0%
60~64歳:38.0%
65~69歳:51.3%
70~74歳:60.7%
75~79歳:67.3%
80歳以上:72.0%
調査結果を見ると、20代から60代前半にかけては徐々に減少しています。
その一方で、65歳から運転に自信を持つドライバーの割合は急カーブを描いて上昇。
80歳以上では72.0%が「運転に自信あり」という結果になっています。
このように、身体能力の衰えに対しては自信過剰とも言える意識が強く、家族等の制止を聞かず運転を続けたり、免許の返上を拒む理由になっているようです。
更には免許更新の際の70歳以上の高齢者講習に於いて、モニターでのバーチャルドライブテスト(今は止めたようです)で、操作ミスをして警告音を頻繁に鳴らしている人や、実車講習でかなりもたついている人も、ここでは口頭での説明や注意のみで、落ちると言うことはありません。
75歳以上は認知機能検査も加わって、「記憶力判断力が低くなっている」という判定結果が出れば、専門医の診断が義務づけられます。実車テストもあるようですが、この事故の加害者は合格とされ、更新できているようです。しかし現実には上に述べた知人の話のように、かなり危うい状態だったことから、更新時の適性検査は今のままでいいとは思えません。
ペーパードライバーで、もはや路上での運転には殆ど適正のない人や、高齢で判断や動作が遅くなっていて運転に疑問を感じる人でも、ここでの免許取り消しにはならないわけです。つまりせっかく高齢者講習を受けさせても、現実的な適正の判定場所ではないようです。
このように、かなり甘い形で更新をしてしまうので、もう路上で運転をやめた方がいい人も、そのまま免許を持ち続けることになります。私も毎日のように運転をしていますが、そのようなドライバーには良く遭遇します。
免許の更新時の適性検査(視力等だけではなく実車テストを含め)は、もっと路上での現実の状況に、合わせていく必要があると思います。もちろんこのことは高齢者だけではなく、すべての年齢に於いて言えることだと思います。
いずれにしろ今回のケースに見られるように死傷者を出し、傷を負った本人および死者の家族に地獄の苦しみを与えるようなことは、決して起こしてはなりません。走る凶器と言われないためにも、一定の資格能力のある運転者に限り、運転許可を与えるべきだと思います。
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