なぜ防げない、児童・幼児虐待死
またも幼児虐待死事件が発生しました。札幌市で2歳の女児が母親とその交際相手の男性に暴行を受けて、今月5日搬送先の病院で死亡した事件です。この事件では児童相談所の対応にかなり不備があったことが分っています。以下に時事ドットコムの記事から引用します。
2歳の長女に暴行したとして、札幌市の飲食店従業員池田莉菜容疑者(21)らが傷害容疑で逮捕された事件で、市と北海道警は6日、事件前に虐待を疑う近隣住民らから計3件の通報を受けていたことを明らかにした。長女は5日、搬送先の病院で死亡が確認され、札幌市児童相談所の高橋誠所長は「認識が甘かった」と釈明した。
札幌市によると、昨年9月28日に住民から「育児放棄が疑われる」との通報が児童相談所に寄せられた。児相の職員が同日に家庭訪問し、長女の詩梨ちゃんと面会したが、「体にあざや傷はなかった」として、虐待は確認できなかった。
今年4月5日にも別の住民が「昼夜を問わず、子供の泣き叫ぶ声が聞こえ心配だ」と通報。児相は池田容疑者に電話したが会えず、4日後に折り返し連絡があった。同容疑者は電話口で面会を了承したが、その後連絡が途絶えたという。
東京都目黒区で5歳女児が虐待死した事件を受け、国は昨年7月、児相が通告を受けてから48時間以内に子供の安全が確認できない場合、立ち入り調査を行うよう求めた。札幌市の児相は4月に通報を受けた際、このルールを守っておらず、高橋所長は「(昨年の)9月に会っているという甘さがあったかもしれない」と話した。
一方、道警によると、「子供の泣き声がする」と5月12日夜に110番があった。同15日に警察官が容疑者宅を訪ね、詩梨ちゃんの体を確認したが池田容疑者の説明に不自然な点はないと判断。緊急性は認められないと児相に報告したという。
この記事によると児相は「認識が甘かった」と言っていますが、認識が甘いのではなく積極的に対応しようとしていないと疑われても仕方ありません。12日夜の近隣住民の通報を受けて、道警が13日夜児相に同行を求めましたが、夜間であったため人繰りが厳しいと返答し、同行しなかったそうですが、逆に夜間であれば誰でもいけたのではないでしょうか。
そして警察は「池田容疑者の説明に不自然な点はない」と判断したと、児相に報告したそうですが、警察の目では虐待の詳細な点は分らず、また幼児をきちんと確認した上での判断かどうか分りません。ですから報告を受けた後でも再確認をすべきだった。そうすれば死に至ることはなかったのではないかと悔やまれます。
2回目の通報を受けての対応も杜撰です。48時間以内の立ち入り調査のルールも活かされておらず、この時点でもきちんと対応していれば、致死事件の発生は防げた可能性も大きいと思います。
今年1月発生した野田市の小学4年の女児の虐待死事件でも、教育委員会が女児による「父親によるいじめを受けている」というアンケートを父に見せてしまったり、児相が女児の「お父さんに叩かれたというのは嘘です」「早く家族4人で暮らしたいと思っていました」という文書を「父による強制」だと疑わずに信じてしまったり、きちんと対応していれば防げた虐待死を、未然に防ぐことは出来ませんでした。
昨年3月発生の東京目黒の5歳女児虐待死事件もやはり児相の対応不備があったようです。「AERAdot.」の記事から引用します。
虐待をしている親は、児童相談所から逃れるために他府県に引っ越すことが多いそうですが、昨年末、結愛ちゃんの親も東京に引っ越しました。香川児童相談所では「指導措置を解除したが、支援の必要はあり、緊急性の高い事案として継続した対応を求めた」としています。しかし品川児童相談所では「緊急性が高いと言う説明はなかった」と反論したと報じられています。
どちらが嘘をついているか、より無責任なのかは今の時点では判りませんが、引っ越し早々、叫んでいるような泣き方だという通報が、近所からもなされたようです。
2月9日に品川児童相談所は結愛ちゃん宅を訪問しています。母親が「関わってほしくない」と言ったということは、重度の虐待のサインですが、すごすごと引き下がっていますが、この時点でも厳正に対処すれば、警察と連携して命を救えたはずです。
そして2月20日に地元小学校の入学説明会にも結愛ちゃんが来なかった段階で、過去の彼らの履歴と引っ越しと、9日の面会拒絶と数々の教訓を考えれば、結愛ちゃんに何が起きているか、素人でも判断がつくことです。
このように児童相談所はその仕事の役割と責任をまっとうできていません。その結果と言っていいかどうか、毎年のようにこの虐待死傷事件は発生していますし、減少していません。私はこの児相の問題には二つ理由があり、一つは人員の欠如の問題、そしてもう一つは強制調査権限が弱いというのがあると思います。
札幌の児相の相談員が、虐待を疑われる家族との信頼関係が必要、と言うようなことを話したと聞きましたが、もし相談員の多くがそう考えているとしたら、強制的な調査は困難でしょう。すべてではないと思いますが、今回の母親やその交際相手の男性は、性善説を持って対応しても、埒はあかないと思います。寧ろ彼らは児相を敵対視しているはずです。
この問題の根源には戦後の教育や社会風潮があります。公民と言う概念や道徳の重要性をしっかり教え込まなかった教育と、善悪入り交じった情報の氾濫した社会風土が、健全な心の発達を阻害し、ごく一部でしょうがこの事件のような鬼畜のような親を産んでいると考えます。
したがってこう言う虐待やいじめをする恐れのある親に対しては、性悪説を持って対応する必要があります。「疑わしきは罰せよ」、ではないですが、あらゆる面からその兆候を嗅ぎ取り、未然に防がなければならないと思います。
ですから児相の中にもと警察官の人を入れたり、警察とより強固に連携したりして、強制調査のやりやすい環境をつくることを望みます。子供はこれからの少子化の中で、まさに金の卵です。もちろん児相だけでなく、社会全体で守っていく必要を強く感じます。
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