文在寅はGSOMIA破棄で自爆、安倍政権に吹いた「神風」とは
このブログで何回も取り上げてきた、韓国による日韓GSOMIA破棄の問題。今回は国際関係アナリスト北野幸伯氏のコラム「韓国・文在寅はGSOMIA破棄で自爆、安倍政権に吹いた「神風」とは」(DIAMONDonline 8/30)を取り上げます。かなり長文ですがこれまでの記事とは別の視点で述べています。
韓国への半導体材料の輸出規制強化からはじまった「日韓戦争」。日本のメディアはあまり報じていないが、情報戦で日本は劣勢だった。しかし、文政権が米国の要求を無視して「GSOMIA破棄」を決めたことで、形勢は逆転した。
実は情報戦で劣勢だった日本
事の発端は7月4日、日本政府が韓国に対する半導体材料の輸出管理強化措置を発動したことだ。8月2日には、韓国を「ホワイト国」から外すことが決められ、同月28日、実際に除外された。安倍内閣によるこれらの措置は、韓国による「慰安婦問題蒸し返し」「徴用工問題」「レーダー照射事件」などで激怒していた多くの日本国民から支持されている。
「ついにやってくれた」という熱狂の中で忘れられがちなのは、「海外で日韓戦争はどう見られているのか?」という視点である。実をいうと、欧米では、「日韓対立の原因は『歴史問題』であり、日本が韓国をいじめている」という報道が多いのだ。
在米ジャーナリストの飯塚真紀子氏は8月9日、ヤフーニュースで、米各紙の論調を紹介している。一部抜粋してみよう。(太線筆者、以下同じ)
<「両国の争いは、日本の韓国に対する歴史的態度をめぐって、両国が長年一致しない考えを持っていることに端を発する。化学製品の輸出制限は、安全保障上正当であると言われているが、一般的には、判決(韓国大法院〈最高裁〉が元徴用工らへの賠償を日本企業に命じた判決)に対する報復であると考えられている」(8月1日付ワシントンポスト電子版から引用)>
実際、半導体材料の輸出管理強化が「徴用工問題への報復」であることは、全日本国民が知っている。政府高官もそう語り、全マスコミがそう報じていた。
しかし、国際的にみると、「韓国の司法が変な判決を下したから」とか「韓国が日韓基本条約を守らない」ということを理由に「輸出管理を強化する」というのは、まったく筋が通らない。この2つは、「全然関係ない問題」なのだから。
しばらくして日本政府も、「ロジックがおかしい」ことに気がついた。それで現在は、「これらの措置は、いわゆる徴用工問題とは関係ない。安全保障上の問題だ」などと言うようになった。しかし、「時すでに遅し」である。
世界の論調は「日本の韓国いじめ」
<国際情勢にフォーカスした専門誌ナショナル・インタレストもまた日韓の経済戦争は歴史問題に起因していると指摘。「(日韓の)最近の非難合戦は特に辛辣だが、歴史的な不満が何十年にもわたって日韓を苦しめて来た」とし、「歴史に根ざす大きな不満は、すぐ、簡単には解決しないだろう。しかし、迅速に高まっている危険を考えると、今は負のスパイラルに歯止めをかける時である」 と警鐘を鳴らしている。 >(同上)
さまざまな米メディアの論調を調べて飯塚氏は、以下のように結論している。
<安倍政権は、韓国をホワイト国から除外したのは純粋に輸出管理強化上の理由からであると主張しているが、いくらそう主張したところで、世界はそうは思っていないのだ。結局は、慰安婦問題や徴用工問題などの歴史問題に起因すると考えているのである。 >(同上)
産経新聞の古森義久氏は、ニューヨーク・タイムズの報道に憤慨している。
<日韓対立で米紙酷い偏向報道
Japan In-depth 8/9(金) 11:03配信 古森義久(産経新聞)
アメリカの大手紙ニューヨーク・タイムズが8月5日付に現在の日韓対立についての長文の記事を掲載した。その内容は日韓両国のいまの対立が日本の朝鮮半島統治時代の虐待やまだその謝罪をすませていないことが原因だと述べ、韓国側の日韓条約無視の賠償請求という文在寅政権の無法な行動にはほとんど触れていなかった。>
これだけでもかなりひどいが、ニューヨーク・タイムズの安倍政権に対する評価は、驚愕ものである。
<同記事は安倍首相についても「保守的なナショナリストとして攻勢的な軍事政策を推進している」とか「安倍首相の率いる自民党は慰安婦が強制連行されなかったというような主張を広げ、日本側の民族主義的な感情をあおった」などと書き、いかにも安倍首相にいまの日韓対立の責任があるかのように論じていた。>
日本政府のやり方には2つの大きな問題があった
ニューヨーク・タイムズについて、「やはりトランプが言うように『フェイクニュース』のオンパレードだな」と怒ることは簡単だ。しかし、同紙の影響力を考えると、深刻な問題である。
そして、「韓国の主張が米国で浸透している」「日本政府の主張が、まったく伝わっていない」という現実を直視する方が建設的だろう。
川口マーン惠美氏は、現代ビジネス8月16日号で、「ドイツで日韓対立はどう報じられているか?」について書いている。
<断っておくが、ドイツは韓国を元々ホワイト国には入れていない。しかし、一般のドイツ人は、そんな話とは無縁だし、これらの記事でももちろん触れられていない。つまり、ことの次第がちゃんと説明されているとは言い難い。また、日本の主張には全然触れないまま、「日本は、この決定は安全保障上の懸念によるものだと言っている」で済まされている。これでは、どう見ても、強い日本が弱い韓国に対して理不尽なことをしているようにしか取れない。>
「欧米メディアが韓国の主張をそのまま流し、日本が悪者にされている」例をあげれば、キリがないが、この辺にしておこう。そして、この状況は、「欧米メディアが反日親韓なのだ」という話ではないだろう。
日本政府のやり方に、2つの問題があったのだ。
1つは、既述のように、「徴用工問題」の報復として「輸出管理強化」をした。この2つは全然関係ない話なので、国際社会では理解されない。政府も後で気づいたが、初期の段階で、「徴用工問題」と関連づけたことがまずかった。
2つ目は、日本政府の説明があまりにも簡略的で親切でないため、韓国の主張が取り上げられてしまう。たとえば川口氏は、韓国が日韓基本条約を破ったことについて、以下のように書いている。
経済戦では圧勝だが情報戦では惨敗
<しかしながら、1965年、日韓の間で「日韓基本条約」が締結されたことについては一切触れられていない。これにより、日本の韓国に対する無償3億ドル、有償2億ドル、さらに民間借款3億ドルという破格の経済協力が決まり、また、両国の請求権に関する問題も完全かつ最終的に解決され、国交正常化が実現したことについて、解説がまったく無いのである。その代わり、「日本側は、それは1965年に解決済みだと言っている」と一言あるだけだ。>(同上)
川口氏はドイツメディアに憤っているが、これも日本政府の「説明不足」を責めるべきだろう。ドイツメディアは、日本政府が「1965年に解決済みだ」とだけ言うので、そう書いた。しかし、世界の人々は、「日韓基本条約」のことを全く知らないので、本来なら日本政府は毎回、丁寧に解説しなければならない。それをしないので、韓国の主張だけが書かれることになるのだ。
ここまでで何が言いたいかというと、「欧米における情報戦で、日本は劣勢に立たされていた」ということだ。
「日韓戦争」には2つの側面がある。
1つは「経済戦」。日本のGDPは世界3位、韓国は12位。日本の経済規模は、韓国の3倍以上あり、普通に戦えば日本は圧勝できる。もう1つは「情報戦」。こちらは、韓国側の主張がスタンダードになりつつあり、日本は劣勢だった。
GSOMIA破棄最大のポイントは「米国の反対を無視した」こと
しかし、情報戦で劣勢の日本に、「神風」が吹いた。文政権が8月23日、日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を決めたのだ。
ポイントは、「米国が破棄しないよう要求していたのを、韓国が無視した」という事実だ。
<米国務省は本紙に送った論評で、「米国は文在寅政権に対し、この決定が米国と我が国の同盟国の安全保障利益に否定的な影響を与えるということを繰り返し明らかにしてきた。(この決定は)北東アジアで我々が直面している深刻な安保的挑戦に関して、文在寅政権の深刻な誤解を反映している」と述べた。>(朝鮮日報オンライン 8月24日)
この記事から、米国務省は、「GSOMIAを破棄しないよう、繰り返し要請してきた」ことがわかる。国防総省のエスパー長官も文政権を説得しており、韓国でも「破棄しないのではないか」という観測が一時強くなっていた。
<エスパー長官が9日、「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)維持が韓米日協力に重要」という趣旨の言及も行っていたことが判明したのに伴い、外交関係者の間からは「韓国政府は今後、GSOMIA破棄に慎重な立場を示すだろう」という見方が浮上した。>(朝鮮日報 8月10日)
しかし、文大統領は、GSOMIA破棄を断行した。
米国はこれまで、2つの同盟国の対立で中立の立場を貫いてきた。だが、その米国の要求を完全無視した文政権は、米国を敵に回してしまった。トランプも相当憤っていたらしく、フランスG7の席で、文在寅を批判している。
<「文大統領 信用できない」 トランプ大統領 G7の席でFNN 8/26(月) 20:30配信
G7サミットで、アメリカのトランプ大統領が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を「信用できない」などと、2日にわたって痛烈に批判していたことが、FNNの取材でわかった。>
<トランプ氏は、2日目の夜に行われた夕食会でも、文大統領について、「なんで、あんな人が大統領になったんだろうか」と疑問を投げかけ、同席した首脳らが、驚いた表情をする場面もあったという。>(同上)
GSOMIA破棄は、まさに文在寅の「自爆」であった。逆に、日本にとっては「神風」だった。
というわけで、文の愚かな行動のおかげで、日本は情報戦の劣勢を挽回することができた。しかし、「大局的視点」も持っておく必要があるだろう。
それは、東アジアの安全は、「中国、ロシア、北朝鮮陣営vs日本、アメリカ、韓国陣営」のバランスで成り立っているという事実だ。日本と米国は同盟国であり、米国と韓国も同盟国である。そして、米国の同盟国である日本と韓国の争いを一番喜ぶのは、いうまでもなく習近平である。
イギリス在住のジャーナリスト木村正人氏は、ヤフーニュース8月23日で、「GSOMIA破棄」に関するビピン・ナラング准教授(マサチューセツ工科大学准教授)の意見を紹介している。
<「東アジア2019」
(1)韓国は日本より北朝鮮と良好な関係を持っている
(2)トランプ氏は韓国の文大統領より北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長氏から話を聞くのを好んでいる
(3)中国の習近平国家主席は笑いが止まらない
(4)金正恩氏は自分のツキが信じられない。なぜなら、まだ軍縮に取り組んでいないからだ>
特に(3)と(4)を忘れてはならない。日本と米国は、習近平を喜ばせすぎないよう、「文が大統領を辞めた後の韓国に親日、親米政権が立つよう」努力すべきだろう。
この記事の要点は、一つは国際社会では日本より韓国の主張が取り上げられている点です。以前から述べてきましたが、つくづく日本の発信力の弱さが目立ちます。日本の外交筋にはどうも「黙っていても正しければ理解される」という思い込みがあるようです。日本のことわざにも「口は禍の元」と言うのがあるように、日本は強く主張することを敬遠する風潮があります。
しかし国際社会においては言いたいことははっきりと、かつ強く主張しなければ、それがいくら正しかろうが、逆の強い主張をする国の敗者になります。特に韓国、慰安婦や徴用工問題、竹島の問題すべて言い負けているのです。
もう一つの要点はアメリカの憤慨です。これはもちろん日米韓の結束が、北中露に対抗する要となっているものを、GSOMIAの破棄により踏みにじまれたからでしょう。しかもアメリカの要求を無視して。
今後アメリカがどう出るか、それに対し文政権がどう反応するか、予測は尽きませんが、親北反日共産主義志向の文大統領のことですから、中国の喜ぶ方向にひた走るかもしれません。一つの脅威ではありますが、親北中露に向かっても文大統領自身は結果的に厄介払いされるかもしれません。「信用できない」人のようですから。
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