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2019年9月13日 (金)

世界史的転換期に戦略的外交を

9ed24879859602439108a7066b7182731  今回は文化人類学者で静岡大学教授の楊海英氏によるコラム「世界史的転換期に戦略的外交を」(正論 9/10)を取り上げます。 

 「弱国に外交なし」。これは国家間で死活の戦いが繰り広げられていた春秋戦国時代のシナの謀略家たちの認識だった。日本外交も今、ある種の岐路に直面しているように見える。大国ゆえの、独特の悩みであり、千載一遇のチャンスでもある。大国であっても、戦略的な判断を間違えば、没落を招く危険性も常に付きまとっている。それは、対中外交である。

 ≪歴史に学び逆行するな≫

 現在、中国の特別行政区と位置づけられている香港で大規模抗議デモが続いている。既に3カ月過ぎたが、まだ終息の見通しが立っていない。本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反発したことが発端となり、たまりにたまった香港人の不満が爆発した。8月18日にも170万人に上る人々が抵抗の烽火をあげ(主催側発表)、北京当局に善処を求めた。しかし、共産党政権とその香港の御用官吏たちは対話に応じようとせずに、頑(かたく)なな姿勢を崩していない。

 こうした強権的な政治手法は1989年初夏の天安門事件を彷彿(ほうふつ)とさせる。私は事件直前の3月末まで北京に滞在していたが、民主化を希求する市民や学生たちと、共産党当局との間に横たわる巨大な溝が両者の対話を不可能にしていた。民主化は共産党政権の正統性を揺るがしかねないから、絶望感が漂っていた。結局、当局は人民解放軍を出動させて市民と学生を虐殺した。公開された在北京イギリス大使館の外交文書は犠牲者数は数千人から1万人に達すると伝えている。香港の上空を覆い被さっている暴力の暗雲は北京から漂ってきたものである。

 このような世界史的大転換期に差し掛かった時期において、日本の対中外交には世界の潮流と逆行しているような姿勢が再び現れ始めている。香港人が奮戦している真っ最中に、河野太郎外相は北京で中国の王毅外相と会談し、来春における習近平国家主席の国賓としての来日を成功させようと確認し合ったという。これと前後して、公明党の山口那津男代表も中国を訪れて宥和(ゆうわ)的行動を取っていた。

 河野氏も山口氏も香港情勢に懸念を示したとされるが、ガスマスクをかぶり容赦なく襲い掛かる警察と本土寄りの黒社会(暴力団)に抵抗する若者たちの傷に塩をぬる行為のように見えて仕方ない。このような折に世界最大の独裁国家の独裁的指導者を民主主義国家の日本に国賓として招待する大義名分はどこにあるのだろうか。

Images-13  ≪感謝どころか反日運動招く≫

 外交的対応を間違えた前例は既に日本にある。天安門事件後に西側諸国はそろって中国に制裁を科していたが、いち早く風穴を開けたのは日本である。日本は天皇陛下(現上皇陛下)のご訪中を実現し経済的協力も惜しまなかった。

 共産党政権を追い込むよりも、建設的関与が続けば、豊かな中産階級が成長し、いずれ民主化は実現する、と天真爛漫(らんまん)な夢を見ていた。力を付けた中国は日本に感謝するどころか、逆に反日運動を展開し、日本製品不買運動を発動した。覇権主義的な海洋進出も活発化し、公船を頻繁に沖縄県尖閣諸島沖に侵入させているし、南シナ海に軍事要塞を構築して、東南アジア諸国を恐喝している。もっとも、中国に強大化の機会を与えてしまったのは日本だけではない。アメリカも当時のブッシュ政権は時の実力者、トウ小平と裏で握手し、巨大な市場での商いの利権を優先していたのである。

 対内的には暴虐的政治手法を放棄せず、対外的には帝国主義的拡張を続ける中国をアメリカとその同盟国は今や本格的に封じ込め、場合によっては体制転換まで繋(つな)げようとしている。安倍晋三首相が唱えている「インド太平洋構想」(当初は「インド太平洋戦略」)も中国の膨張を抑えるのが目的である。アメリカ主導の対中戦略の構築と、「国賓」としての習氏招待の外交活動に齟齬(そご)が生じている以上、日本の外務担当者には国民に対して説明する義務がある。

 暴力を最大の政治的特徴とする中国は社会主義政権である。イギリスの歴史家で前世紀の動乱に注目したエリック・ホブズボームがその名著『20世紀の歴史』(ちくま学芸文庫)を執筆している最中に、天安門事件は勃発した。「天安門事件は西側の世界を凍りつかせた」とし、その思想的根源は社会主義革命に由来する。

 ≪注視されている日本外交≫

 ロシアの「十月革命の悲劇は、まさに、無慈悲で、残忍で、指令で動く類の社会主義しか生み出せなかった」とホブズボームは断じる。ロシア革命から始まり、中国と北朝鮮などの社会主義国家は、どれも反人道的な罪を無数に犯し続けてきたし、香港やウイグル等少数民族に対する弾圧も例外ではない。21世紀に入っても前世紀の暴力と決別しようとしない専制主義の中国に対し民主主義の日本は先進国らしい、戦略的外交を進めなければならないのではないか。

 来春満開する桜に、香港の若い学生たちの血が滲(し)み出ないことを祈りつつ、大国日本の外交に注視しなければならない。

 戦後日本の外交は「謝罪外交」と言われるように、卑屈で自虐に満ちた外交でした。対戦国に迷惑をかけたという理由ですが、戦争に迷惑も何もありません。日米戦争は日本が仕掛けた侵略戦争、という説がまかり通っていますが、最近の研究では実際はアメリカのルーズベルトの陰謀だったという説が急浮上してきています。そうであれば日本は逆に米英に迷惑を被ったと言えるのではないでしょうか。

 そして戦勝国が勝手に定義した「人道に対する罪」だの「平和に対する罪」を一方的に負わされた、世紀の極悪裁判「極東国際軍事裁判(東京裁判)」が「謝罪外交」の大きな理由の一つです。

 加えて敗戦国の日本は、米国を中心としたGHQの占領政策の下、軍を壊滅され、自虐史観を徹底的に叩き込まれ、プレスコードによる言論封殺をされ、公職追放により蘇った共産主義思想の持ち主により、反軍反日思想が蔓延する、いわゆるお花畑国家になってしまったのです。軍事力の背景なき外交は弱腰、腰砕け外交を助長します。

 今こそ日本の国益を考えた外交を展開しなければなりません。日本の西に位置する覇権国家群と対等に外交展開するためにも、軍の再整備をして行く必要があると思われます。そのためにもそれを阻害してやまない、お花畑9条教信者を何とかしなくてはならないでしょう。

 楊 海英(よう かいえい、ヤン・ハイイン)は、中華人民共和国内モンゴル自治区(南モンゴル)出身の文化人類学者。モンゴル名はオーノス・チョクト、日本に帰化した後の日本名は大野旭で、「楊海英」は中国のペンネームである。

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