核心突いた?丸山発言「遺憾砲で竹島は返るか」
今回は竹島に関する記事です。拓殖大教授下條正男氏の『核心突いた?丸山発言「遺憾砲で竹島は返るか」』(産経WEST)を取り上げます。
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現在、日韓の「歴史戦」は膠着(こうちゃく)状態にある。日韓双方ともに何をどう戦ったらよいのか、戦術や戦略がないまま感情的な対立に終始しているからだ。その日韓関係を象徴しているのが、丸山穂高衆院議員の言動である。韓国の保守系議員が竹島に上陸したことと関連して、丸山氏は「戦争で取り返すしかないんじゃないですか」とツイートした。一方、韓国の議員の一人は「丸山氏には歴史認識不在と法的知識の無知を指摘した」「現在の日本政治の水準は住民自治会の水準よりも劣っている」などと評して、悦にいっている。
この丸山氏に対して、ある人が「丸山穂高議員みたいな人が竹島に行って住んだりすると、日本国として認められやすい」「口先だけでなく、竹島に自ら行ってほしいです。渡航費なら出します」とツイートすると、丸山氏は「とりあえず調査費で、今年度臨時でまず3億円ほど」と応じていた。
だが残念なことに、竹島は現在、韓国によって不法に占拠されている。その竹島に上陸するには、日本の旅券を提示して乗船することになっている。一般の国民が面白半分で竹島に上陸するのとは違って、日本の国会議員が旅券を示して竹島に上陸すれば、その時点で竹島を韓国領と認めたことになってしまう。
韓国の文学評論家は、この丸山氏に対して「無識であれば仕方がないが、無識になればなるほど自制ができない」と揶揄(やゆ)したが、丸山氏にも核心を突いた発言がある。それは「政府もまたまた遺憾砲で竹島も本当に交渉で返ってくるんですかね?」とした部分である。
竹島の領有権をめぐって日韓が争うのは1952年、公海上に「李承晩ライン」を設定し、その中に竹島を含めた時から始まる。問題はそれから70年近くの歳月が流れても、日本政府は解決の糸口すら見いだせずにいるからだ。近年になって、竹島問題が浮上したのは、2005年3月に島根県議会が「竹島の日」条例を制定したからで、日本政府が交渉したからではない。
竹島問題解決への“司令塔”がいない
だが周知のように、当時の自民党政権は「竹島の日」条例を封印しようとして島根県に圧力をかけ、続く民主党政権の小沢一郎氏や鳩山由紀夫首相らには、竹島を韓国領と認識していた痕跡がある。残念なことだが、日本には竹島問題で韓国と戦う態勢が整っていないのである。丸山氏が国会議員であるなら、まずその現実をこそ国民の前に明らかにすべきであった。
領土問題に関して、日本政府の主張を発信する「領土・主権対策企画調整室」を発足させたのは2013年だった。だがそこは日本政府の主張を発信するだけで、韓国側と戦う機能は備わっていない。それも近年、担当大臣の任期が終わる頃になると、島根県と隠岐諸島への訪問が慣例のようになっている。
竹島問題に対する「司令塔」がいないため、何をどうしたらよいのか分かっていないからであろう。これは国会議員の先生方も大同小異で、丸山氏の「調査費で3億円云々(うんぬん)」の発言も、出自がお役人ということもあってか、予算を組んで調査をすればそれが問題の解決につながるといった錯覚があるのではないか。
竹島問題に関して言えば、島根県ではすでに韓国側の主張を論破し、竹島が歴史的に韓国領であった事実がないことを実証している。今さら何を調査するのだろうか。問題は、韓国政府が竹島を不法占拠している事実があっても、それを外交の場で争うことのできる「政治」が、日本にはないことである。「遺憾砲」はその証しである。
問題を複雑にするパフォーマンス
領土問題を含めて、「歴史戦」は戦費を調達したからといって戦えるものではない。兵隊も必要なら、武器もいる。この場合、兵隊が韓国側の主張を論破できる人士だとすれば、武器は歴史的事実である。
さらに広報戦をするには、客観的な歴史事実を駆使して、応戦する態勢を整えておくことである。
近年、日本の国会議員の先生方の中には、ご自身のパフォーマンスで外交の懸案を解決しようとする傾向がある。だが「慰安婦問題」がそうであったように、慰安婦像が設置された米国の現地に、日本の国会議員たちが飛んでみせるパフォーマンスは、問題を複雑にするだけである。
慰安婦像の設置は、現地の韓国系米国人らによって周到に準備されているからだ。そこに日本の国会議員が抗議などに赴けば、飛んで火に入る夏の虫である。現地で抗議活動をすれば、慰安婦像を設置した自治体の反感を買うだけである。
今日、日韓が争う「歴史戦」は、1952年から始まる竹島問題にその淵源(えんげん)がある。その竹島問題で醸成された韓国側の歴史認識が「歴史教科書問題」や「慰安婦問題」「日本海呼称問題」「徴用工問題」などにつながって今日に至っている。
慰安婦問題も1990年に自民党の金丸信元副総理と社会党の田辺誠副委員長らが訪朝した際に、北朝鮮側に「戦後補償」を提案したことが契機となっている。
戦う態勢ないまま「歴史戦」に臨む日本
韓国側による慰安婦問題に対する論理は、日韓の国交正常化交渉の際には問題になっていなかった。北朝鮮に「戦後補償」をするなら、慰安婦問題もその対象とすべきだとする中から派生したものである。慰安婦像が建てられたからといって、これに抗議して解決する類の問題ではない。
日韓の「歴史問題」は、不法占拠する竹島を死守するため、韓国側で醸成された「歴史認識」に起因しているからだ。従って、韓国側の「歴史認識」の自己増殖を阻止するには、病原である竹島問題の解決以外に方法がないのである。
だがこれまで日本政府がしてきたことは、「領土・主権展示館」の開設と竹島や尖閣諸島に対する調査研究であった。もちろん、それでは韓国との「歴史戦」は戦えない。
韓国側では国策提言機関である「東北アジア歴史財団」が、2011年に小・中高生を対象とした「独島(竹島の韓国側呼称)教育」の教材を開発し、現在も年間10時間ほどの独島教育が実施されている。日本でも竹島問題に対する教育が始まるというが、完成度の高い韓国側の独島教育には到底、太刀打ちができない。
さらに「東北アジア歴史財団」は近年、「慰安婦問題」と「徴用工問題」に関連した研究書や資料集を刊行し、「歴史戦」に備えている。
この状況で韓国に対する輸出管理を強化し、韓国を「ホワイト国」から除外すれば韓国側がどのような反応を示し、日韓関係がどのような状態に陥るかは明らかであった。日本は「歴史戦」を戦う態勢がないまま、韓国との「歴史戦」に臨んでいるのである。
竹島問題から派生した日本海呼称問題
その象徴的事例が「日本海呼称問題」である。韓国側が日本海を問題にするのは、竹島問題があるからである。「独島が日本海の中にあると、日本の領海の中にあるようで不適切だ」とする論理である。
そこで韓国側では1992年、「東海は2千年前から使ってきた」として国連地名標準化会議で問題にしたのである。その後、1997年には国際水路機関で日本海と東海の併記を主張して、現在に至っている。
だが韓国側が主張する「東海」は、歴史的には中国の東海(黄海・東シナ海)か朝鮮半島の沿海部分の呼称のことで、日本海とは重ならない。それを日本政府は、「日本海は世界が認めた唯一の呼称」と主張するだけで、韓国側の「歴史認識」の誤りを指摘してこなかった。
この「日本海呼称問題」は、来年度の東京オリンピックにも少なからず影響を与えている。すでに韓国政府は、IOCに対して、日本海と竹島の表記をしないよう外交的圧力を加えている。
そこで韓国政府の理不尽な要求を封印するため、今年の3月と6月、まず島根県の「ウェブ竹島問題研究所」のサイト(「実事求是」)に韓国側の主張の誤謬(ごびゅう)を明らかにした記事を掲載し、8月には外務省の外郭団体のサイトでもそれを閲覧できるようにした。ウェブ竹島問題研究所の「実事求是」のコーナーはボランティアで執筆しているが、今回、外務省の外郭団体からは原稿料3万円をいただいた。
お役人的な発想では「調査費3億円ほど」が必要だが、その1万分の1の金額でも韓国側の主張は論破できるのである。この事実は、戦略や戦術がないまま「歴史戦」を戦えば無駄な支出をするだけで、戦果を挙げることはできない、ということである。
だが韓国側の主張をいくら論破しても、その武器を使いこなせなければ、絵に描いた餅で終わってしまう。日本の国会議員の皆さん、ご自分のパフォーマンスではなく、少しは日本の「国益」を考えてお仕事をしてください。
下條正男(しもじょう・まさお) 竹島問題研究の第一人者。拓殖大国際学部教授。平成17(2005)年に島根県が設立した「竹島問題研究会」の座長。著書に「竹島は日韓どちらのものか」(文春新書)など。
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下條正男氏の記述の通り、韓国は戦略的にも戦術的にも竹島の領有に対する主張は日本より長けています。と言うより「遺憾砲」だけに頼る日本外交の腰砕けた対応は、目を覆うばかりです。これでは竹島奪還は夢のまた夢でしょう。
「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国固有の領土です。」と外務省ホームページに記載していても、韓国は微塵にもその見解を気にすることはないでしょう。今迄の日本の外交対応を見透かしているからです。
政府はまず国民に「竹島奪還」について、その歴史的経緯や具体的方法について説明すべきです。「外交的努力」では1ミリも前に進みません。その間に韓国は着々と既成事実を積み重ね、日本の「遺憾砲」には一顧だにせず、やがて真の領土化を狙うでしょう。「どうする日本」、その具体的回答をもらいたいものです。
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