なぜ韓国は「ライダイハン」に無関心でいられるのか
今回も前回に引き続き「ライダイハン」の話題を取り上げます。元在韓ジャーナリストの竹嶋渉氏の『なぜ韓国は「ライダイハン」に無関心でいられるのか』(iRONNAから引用)がそれです。無関心と言えば聞こえがいいですが、蛮行に対する単なる逃げとしか言いようがありません。
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「他人がやれば不倫、自分がやればロマンス」。韓国で「自分に甘く、他人に厳しい」、つまり「身内びいき」や「ダブルスタンダード」を指して語られる言葉である。
「ライダイハン」とは、「韓国系のベトナム人」を意味する言葉である。もともとはベトナム語で「Lai Đại Hàn(𤳆大韓)」と表記するが、韓国でも一般に広く用いられている。
なぜ、韓国の隣国でもないベトナムに「韓国系ベトナム人」が存在するのだろうか。これは、韓国のベトナム戦争参戦が原因である。韓国は1964年からベトナムに派兵し、本格的にベトナム戦争に参戦した。ベトナムに赴いたのは韓国軍の軍人だけではない。軍人とともに数多くの労務者や韓国企業の労働者が特需を求めてベトナムに殺到した。大韓航空を傘下に収める「韓進」は軍需品の輸送で、「ヒュンダイ」の名で知られる「現代」は土木・建設分野で、今はなき「大宇」は繊維製品をはじめとする軍需品の生産で大きく飛躍した企業である。最盛期には、5万人の韓国軍がベトナムに駐留し、それに伴って韓国人労働者の数も2万人まで増加した。その過程で韓国人男性とベトナム人女性の間に数多くの「韓国系ベトナム人=ライダイハン」が誕生することになった。
1973年のパリ平和協定に伴って韓国軍がベトナムから撤退し、75年の南ベトナム(ベトナム共和国)の崩壊とともに韓国企業や韓国人労働者もベトナムから撤収することになった。統一されたベトナムで「ライダイハン」は「敵軍との間に生まれた子ども」としてさまざまな圧迫や差別に直面することになった。ちなみに「ライダイハン(𤳆大韓)」の「𤳆」は「ハーフ」をあらわす接頭辞であるが、そこには多分に軽蔑の意味が込められている。
現在、「ライダイハン」の正確な数は把握されていない。1500人から3万人までさまざまな数字が提示されているが、公式的な統計は現在も存在しない。その内幕については公にされていないが、強姦や売買春の他に、韓国人の「現地妻」が生んだ「ライダイハン」も相当数存在すると思われる。「ライダイハン」の居住地は韓国軍が駐屯していたホーチミン(サイゴン)、クィニョンなどであり、首都・ハノイにはほとんど居住していないという。
92年に韓国とベトナムは国交を回復したが、修好に際し韓国の盧泰愚大統領(当時)は「ライダイハン」に対して、謝罪どころか何の言及もしなかった。ただ、修好が契機となり、韓国国内で「ライダイハン」に対する関心が一時的に高まったことも事実である。修好直後には「『ライダイハン』が生みの父と再会した」などというニュースが「美談」として報じられもした。
94年2月には韓国南部の馬山の短大に留学していた「ライダイハン」が23年ぶりに韓国人の父親と再会し、韓国のマスコミは「韓国人の父親の国で技術を学びに来て、23年ぶりに生みの父に会う喜びをかみしめた『ライダイハン』」などと浪花節調に報じていた。ただし、そうした関心も一時的なもので、韓国政府が「ライダイハン」に対して積極的な対応策を取ることはなかった。韓国の民間団体やキリスト教宣教団体がベトナム現地で「ライダイハン」に対する支援事業を行うことはあったが、現在に至るまで、韓国政府が公式的に「ライダイハン」について何らかの支援処置を講じたことはない。また、大多数の韓国人も「ライダイハン」については無関心のままであった。
これは、ベトナムにおける韓国軍の蛮行が韓国国内ではまったく報じられてこなかったためでもある。韓国軍がベトナム戦争において民間人虐殺や婦女子強姦などの悪行を働いてきたことは周知の事実であるが、韓国では、90年代中盤になるまで完全に隠蔽(いんぺい)され、公の場で語られることはなかった。90年代の中盤から韓国の進歩系メディアによって、ベトナム戦争における韓国軍の蛮行が明らかにされ始めたが、そうした報道がなされる度に、ベトナム参戦兵の団体からの妨害や襲撃が繰り返されてきた。
「ライダイハン」に対して語ることは、韓国軍の強姦や買春、韓国人労働者の無責任な養育放棄に触れることにほかならず、「自由陣営の一員として民主主義を守るためにベトナムで戦った」韓国の国家的な威信を傷つけることにつながるからである。そうした韓国で「ライダイハン」に注意を払う韓国人が皆無だったとしても不思議ではない。
韓国のキリスト教系放送局であるCBSは、昨年11月14日、韓国軍の強姦によって生まれた「ライダイハン」が、ベトナムで「敵軍である韓国軍の子」として迫害を受け、就学や就職、就業などでさまざまな差別を受けている実態を放送している。この放送では、韓国の国防部(国防省)が「現在でも、韓国軍の強姦問題については事実関係が明らかではないため、当分の間、別途の調査計画がない」という立場を取っていることも報じられた。日本に対しては慰安婦問題などで「反省」や「謝罪」を要求してくる韓国人であるが、いざ自分のこととなると、「反省」や「謝罪」どころか、調査すらしないのである。
ベトナムで差別され、韓国からも見放された孤立無援の「ライダイハン」の中には、韓国で訴訟を起こし、自らの父親が韓国人であることを立証して、韓国国籍を取得することができた者もいる。2000年代に入るとこうした父親との血縁関係確認訴訟が相次ぐようになった。
2002年7月26日、ソウル地方裁判所は産業研修生として韓国に入国した「ライダイハン」R氏が父親を相手に起こした訴訟で、「血縁関係が認められる」という判決を下している。注目されるのは、その「血縁関係」の内幕である。判決は、「父親の李○○氏はベトナムのホーチミン(旧サイゴン)で自動車修理工として勤務していた去る69年にベトナム人女性に出会い、原告が生まれた後、74年にベトナムの国内法に従って結婚したという事実が認められる」として、原告勝訴の判決を下している。要するに現地で結婚しておきながら、妻子を捨てて韓国に帰国していたわけである。李氏は控訴せず、R氏は李氏の戸籍に「子」として記載されることになり、遺産相続や韓国国籍取得も可能になった。ただし、これは父親が韓国人であるということが立証できた場合に限られている。
また、韓国国籍の取得と韓国国内での就職を目指すR氏のようなケースは、「ライダイハン」の中で少数派である。韓国とベトナムの経済関係が発展するにつれ、「ライダイハン」の境遇もある程度改善されたからである。2世、3世の「ライダイハン」の中には、その出自を生かしてベトナムに進出した韓国企業に就職し、一般のベトナム人よりはるかに高い給与と恩恵を享受している例も散見される。必ずしも「ライダイハン」のすべてが偏見と差別に苦しんでいるわけではないのである。
「ライダイハン」の境遇は改善されつつあるようだが、ここに来て新たに「新ライダイハン」の問題が台頭している。「新ライダイハン」とは、92年の修交後、ベトナムに進出した韓国人男性とベトナム人女性の間に生まれた子供のことである。なぜか、韓国人は事業で海外などに進出した場合、「現地妻」を囲う傾向があるようで、1999年7月14日付聯合ニュースは、ベトナムに事業目的で居住する韓国人の30%程度が「ベトナム人現地妻」を囲っていると報道している。問題は、こうした韓国人男性が「現地妻」と、「現地妻」に産ませた子供を放棄して帰国してしまう事例が後を絶たないということである。韓国では、いまだ「新ライダイハン」についてあまり公に語られていないが、遠からず問題となることは明らかである。なぜなら、フィリピンに事業目的で進出した韓国人とフィリピン人「現地妻」の間に生まれた子供による認知が、すでに大きな問題になっているからである。
韓国人とフィリピン人「現地妻」との間に生まれた子供を「コピーノ」と呼ぶ。「ライダイハン」同様、「コピーノ」の数は正確に把握されていないが、ECPAT(アジア観光における児童買春根絶国際キャンペーン)関連団体の集計によると3万人にも達するという。2014年には、「コピーノ」の兄弟が事業家である韓国人男性を相手取って起こした訴訟において、ソウル家庭裁判所が「嫡出子であることを認知する」という原告勝訴判決を言い渡している。
被告の韓国人男性は90年代末にフィリピンで現地女性と同居し、二人の息子をもうけたが、2004年に韓国に帰国し連絡を絶ったという。この当時、同様の訴訟が9件も進行中で、被告はいずれも事業や留学を目的としてフィリピンに赴いた韓国人男性だった。過去、日本人男性もフィリピンで現地女性との間に子供(「ジャピーノ」と呼ばれる)をもうけた後、養育を放棄する事例があり、大きな社会問題になったことがあるが、それと同様の問題が韓国でも起きているのである。ただし、日本は法改正を行い「ジャピーノ」の国籍取得の簡略化に努めている反面、韓国政府はまったく無関心である。そのため、子供の認知訴訟のために韓国に入国しようとしたフィリピン人女性が、経済事情を理由にビザの発給を受けられないという事態まで起こっている。
現在、「新ライダイハン」の数は1万人に達しているとされるが、「コピーノ」同様、韓国政府は何らの対策もとっていない。キリスト教系放送局であるCBS「ノーカットニュース」は2008年12月25日、「新ライダイハン」出生の事例と、現在の境遇について報じている。報じられた事例は、ホーチミンに住むベトナム人女性Aさん(32)とBさん(26)のケース。Aさんはベトナムに進出した韓国企業で出会った韓国人男性との間に息子1人をもうけたが、男性は2005年5月に帰国後、連絡を絶った。Aさんはシングルマザーとして息子を育てている。Bさんの夫である韓国人男性(56)は「病院治療に行く」という名目で韓国に帰国、消息不明となった。後にBさんの夫は営んでいた水産事業に失敗し、韓国に逃亡したことが判明。Bさんもシングルマザーとして6歳の息子を育てている。今後、「コピーノ」同様、こうした「新ライダイハン」による認知訴訟が起こされ、韓国の新たな社会問題になることは容易に想像がつく。
昨年、韓国では、ベトナム修好25周年を記念する映画『パパの川』の制作が発表された。この映画は韓国・ベトナムの共同制作で、「韓国人の父親とベトナム人の母親との間に生まれた主人公が韓国でオーディション番組に参加してスターとなり、父親に会うという内容」だという。昨年の8月30日には撮影地である南東部の都市、蔚山で制作発表会も開かれた。実は、韓国ではこれまでも「ライダイハン」を題材とした映画やドラマが製作されてきた。こうした作品の中には「ライダイハン」が置かれている境遇を真摯(しんし)に扱った作品もあるのだが、報道を見る限り『パパの川』がそうした内容だとは到底思えない。「ライダイハン」が生まれた経緯や実態把握には大した関心がないくせに、こうした興行活動にはやたらとご熱心な韓国人の姿勢には、正直、強い違和感を抱かざるを得ない。日本に対しては、事あるごとに「正しい歴史認識」と、「過去に対する謝罪」を求めている韓国人だから、なおさらなのである。
やはり、「他人がやれば不倫、自分がやればロマンス」ということか。
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「他人がやれば不倫、自分がやればロマンス」。まさにその通り。日本がやれば強制連行・性奴隷、韓国がやれば合意の下でのロマンス。そんな詭弁が通るわけがありません。前回に続いてこの韓国の蛮行のコラム。ぜひとも実態を国際社会に拡散し、韓国の非道を知ってもらいたいと思います。
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