バグダディの襲撃、トランプ氏「泣き叫び犬のように死んだ」
今回は星槎大学大学院教授佐々木伸氏による投稿記事『「泣き叫び犬のように死んだ」トランプ氏、IS指導者の自爆を発表』(WEDGEInfinity 11/1)を取り上げます。直接日本とは関係のない作戦のようですが、無関心では済まされない出来事であることには違いありません。
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トランプ米大統領は10月27日朝緊急会見し、生死が謎に包まれていた過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者アブバクル・バグダディが前日、シリア北西部で米特殊作戦部隊の急襲を受け、自爆して死亡したと発表した。ISはバグダディの死亡でその象徴を完全に失うことになった。トランプ氏にとってはシリアからの米軍撤退の追い風になった。
追い詰められ3人の子供を道連れ
大統領の発表によると、バグダディの隠れ家を特定する作戦は2週間前から始まった。当日は米軍部隊が8機のヘリコプターに分乗し、急襲の現場まで行った。大統領やペンス副大統領、エスパー国防長官らがこのもようをホワイトハウス地下の戦況分析室で見守った。国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの殺害作戦が行われた時も、オバマ前大統領らが同じように作戦を監視していた。
大統領は明らかにしなかったが、他の情報によると、バグダディの潜伏先はトルコ国境まで約5キロのシリア北西部イドリブ県のバリシャ村だった。ヘリはシリアに介入しているロシアの管轄空域を飛行するため、ロシアから攻撃を受けないよう、作戦に先立って「大切な任務」と伝え、了承を得た。急襲の米部隊は「デルタフォース」が中心だった。
バグダディの潜伏先にヘリが到着した際、地上から銃撃を受けたが、米側に損害はなかった。この際、IS戦闘員ら約10人が殺害された。潜伏先の建物の正面入り口には、わな爆弾が仕掛けられている可能性があったため、米部隊は建物の側壁を爆破し、そこから突入した。
バグダディは、軍用犬に追われて、建物から通じたトンネルに逃げ込んだが、トンネルは行き止まりになっていた。追い詰められたバグダディは3人の我が子を道連れに、身に着けていた自爆ベストを爆破し、吹っ飛んだ。遺体の一部のDNA鑑定でバグダディであることが特定されたという。
大統領はバグダディが終始「泣き叫んでいた」とし、「犬のように死んだ」「臆病者のように死んだ」と述べた。さらに「異常で、邪悪なヤツだったが、今や消え去った。米国にとっては素晴らしい日になった」と成果を誇示した。大統領はバグダディが死亡したことを、シリアからの米軍撤退の“大義名分”にしたい考えで、撤退の動きが加速すると見られている。
米紙などによると、作戦の発端はイラク情報当局がISの捕虜の尋問から、バグダディの隠れ家数か所を突き止めたことだという。米部隊が急襲したのはそのうちの1つだった。バグダディは米部隊の急襲作戦の48時間前にその隠れ家に到着したばかりだった。
アルカイダとの統合を協議か
意外だったのは、潜伏先がシリア北西部のイドリブ県だったことだ。壊滅される前のISの支配地はシリア北東部からイラク北部にまたがっており、バグダディが潜伏しているとすれば、シリアとイラクの国境地帯の可能性が高いと見られていたからだ。しかもイドリブ県は、ISとはけんか状態にあった国際テロ組織アルカイダ系の「シリア解放委員会」(旧ヌスラ戦線)の根城である。
イドリブ県は、シリア反政府勢力の最後の拠点だ。「シリア解放委員会」は「自由シリア軍」などの反政府勢力と混在する形で、約3万人の武装勢力を保持していると見られている。バグダディはそうしたアルカイダの支配地に潜伏していたわけで、アナリストは「壊滅状態のISとアルカイダの統合の話を協議するためだったのではないか」と指摘している。
ISの首都ラッカが陥落した後、逃亡したIS戦闘員の一部が「シリア解放委員会」に合流しており、バグダディが組織的な統合を図ろうとした可能性は十分あり得る。特に、シリアのアルカイダ系組織の中で、最も危険だとされる「フラス・アルディン」という謎の組織の存在が浮上している点も懸念の的だ。
同組織は、元々はアルカイダの指導者アイマン・ザワヒリが西側への攻撃を画策するためシリアに送り込んだものとされる。米国が小規模ながら最も危険なテロ組織として警戒していた「ホラサン・グループ」の後継で、2018年初めに「フラス・アルディン」に変わった、という。この組織がISと接触しているとすれば、「極めて深刻な事態」(アナリスト)と言わざるを得ない。
バグダディ亡き後、ISは誰が指導していくのか。ほとんどの幹部は米軍などに殺害されて残っていない。唯一名前が知られているのは、ISの公式スポークスマンとされるアブ・ハッサン・ムハジールという人物だが、その実態は全く不明だ。トランプ大統領は「バグダディの死亡で世界はより安全になった」と宣言したが、バグダディが示した「カリフの府」の過激な思想は中東から、アフリカやアジアにまで急速に拡散を続けている。
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トランプ大統領は成果を誇張していますが、この記事の終わりに述べられていることが事実だとすれば、ぬか喜びに終わっているのかもしれません。いずれにしてもイスラム過激派によるテロは今後とも続くのは間違いなく、日本にその火の粉が飛んでこないことを祈るばかりです。
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- バグダディの襲撃、トランプ氏「泣き叫び犬のように死んだ」(2019.11.01)