新型コロナウイルスの治療薬の開発・承認を急げ
昨日は東京で63人、千葉で62人、そして全国で202人の新型コロナウィルス新規感染者が出ました。いずれも最多更新の数字です。いよいよ感染爆発の予兆が感じられるようになってきました。感染拡大を防ぐためのワクチンの開発には、一年から一年半かかると多くの医療専門家が述べています。それまで待って世界中で外出禁止を続けていれば先に経済が死んでしまいます。そこで同時に期待されるのが治療薬の開発です。昨日安倍首相が「アビガン」に言及しました。朝日新聞デジタルの記事から引用します。
安倍晋三首相は28日、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルスに感染した患者に対し、臨床研究(観察研究)として使い始めている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)について、薬事承認を目指す考えを示した。「正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する考えだ」と述べた。
アビガンは新型インフルエンザ治療薬として備蓄されているが、中国で新型コロナウイルスの治療効果が確認されたとの報告が出ている。安倍首相は「世界の多くの国から関心が寄せられている」として、薬の量産を開始するとした。
ただ、アビガンについては妊婦が服用すると胎児に副作用が出るおそれが指摘され、新型インフルエンザ薬としても従来の治療薬では効果がないか不十分なときに限って使用が認められている。
また、膵炎(すいえん)の治療薬「フサン」(一般名ナファモスタットメシル酸塩)についても、観察研究として、新型コロナウイルスに感染した患者に対し、事前に同意を得たうえで使い始める考えも表明した。
「アビガン」については富士フイルム富山化学が開発した新型インフルエンザ用の治療薬です。ただしこの薬は「催奇形性 (妊娠中の女性が薬物を服用したときに胎児に奇形が起こる危険性のこと )」の副作用が発生する恐れがあるので、上記の通り使用には注意が必要なようです。このあたりの詳細を日経ビジネスの記事から引用します。
そもそもアビガンは14年に抗インフルエンザ薬として日本で承認されているが、通常の医療用医薬品とは扱いが大きく異なる。「他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分な新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される」とされ、厚生労働大臣の要請がない限り販売はできない。
というのも承認を取得した際、動物実験の結果などから催奇形性(さいきけいせい)を持つ可能性が指摘されたためだ。承認申請は11年に提出されたが、審査期間は約3年と長期に及び、既存の抗インフルエンザ薬とは異なるメカニズムであることから、新型インフルエンザに対する備蓄用の位置づけで何とか承認された。ただし、催奇形性が心配されるため、妊娠中や妊娠の可能性がある女性が使うことはできない。服用した薬は精液や母乳の中にも出てくるので、男性が服用した場合も避妊が必要だし、授乳も中止しなければならない。このように、慎重に使用する必要がある薬であり、臨床研究などを除いてこれまでほとんど使われてこなかった。
この薬を安倍首相が名指しで取り上げたのには理由があります。それは中国が先に、この薬が新型コロナウィルスに有効だと発表したからです。その詳細を日経ビジネスは以下のように伝えています。
中国の科学技術省の張新民主任は3月17日に北京で開いた記者会見で、富士フイルムホールディングス(HD)の100%子会社である富士フイルム富山化学(東京・中央)が創出した抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」が、新型コロナウイルスの治療に有効だと発表した。有効成分であるファビピラビルの臨床試験で良好な結果を得たとし、「今後、中国内の医療機関に対し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の診療ガイドラインへの掲載を推奨する」などと語った。
つまり中国当局のお墨付きを得た薬のようです。ただ中国の医薬メーカーとのライセンス契約は終了していて、中国で使用されてもライセンス料は富士フィルム富山化学には入ってこないとのことです。又もや中国にしてやられたような気がしますが、それはさておき、中国側の発表のように有効性が確認されれば朗報です。
特に「催奇形性」という副作用は高齢者には関係が薄く、重症患者が高齢者に多いことから期待できます。できるだけ早い承認が待たれるところです。
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