新型コロナ感染拡大防止のための自粛要請の限界
東京都の新型コロナウィルスの感染者が3日連続で40人を超えました。小池都知事は週末の外出を控えるよう自粛要請しました。3日前の夜間外出自粛要請の後、東京都内は花見の時期もあって、若者を中心にかなりの外出風景がテレビの映像で流れていました。
日本人は要請によく従うのか?
テレビでこの外出をしている人たちにインタビューをしている映像が流れます。「知らなかった」に始まり「週末デートだから、洋服を買うため」、「花が散る前にぜひ見ておきたい」、「自粛って強制でないのでしょう?強制だったら出ない」、「私の周りが感染していないから大丈夫だと思う」などなど。
意味不明な返答も含めて、外出している人へのインタビューですから、予想された反応ですけれど、都民の1%でも自粛を無視すれば11万人が街に出るわけです。街と言っても繁華街や桜の名所でしょうから人が集中します。つまり自粛要請しても日本人の100%が従うわけではありません。
それに今では個人の自由は高らかに謳われても、公民という概念は非常に薄くなっています。「人に迷惑をかけるな」と散々親から言われて育った私などにすれば、こんな時出歩いて感染したら、家族や周りの人に大迷惑をかける、と真っ先に思いますが、上述のインタビューの返答は完全に個人の自由優先、つまり自己中なのです。もはや日本人だから、という考えは薄らいで来ていますね。
日本人は我慢強いのか?
自粛期間はおおむね2~3週間です。その間「巣籠り」しなければなりません。尤も平日は仕事がある人は、自宅でできない場合は通勤しなければなりません。
それはそれで大変ですが、夜は自宅で過ごすということが自粛に沿うことでしょう。本当の意味での「巣籠り」は週末です。その2日間我慢できない、また平日の夜の外出も我慢できない人が、結構いるのです。
東日本大震災の時の被災地のように、物理的に自宅や避難所で過ごさなければならないような場合、我慢が強いられます。その時は我慢強さが称賛されました。(実際は避難所で不平や文句を言ったり、救援物資を独り占めしようとする人もいたそうですが)
今回の疫病の場合はその物理的な障害はありません。目に見えない敵との戦いですから、見ようとしなければ我慢したくない人は我慢しません。つまりここ2~3日の夜間外出をしている人たちは、我慢していないことになります。
自粛要請では感染拡大は防げない?
感染源の中国武漢市、そして感染爆発した中東や欧米の最近の状況は、殆どが緊急事態宣言下の外出禁止です。街から人が完全に消えています。イタリア、フランス、イギリスなどは外出した人に罰金を科し、それも次第に高くしていっています。武漢では警官が厳しく取り締まっていましたし、今のインドでは警官が外出している人を手や棒で叩いたり、腕立て伏せやスクワットを強制しています。どこでも命令に従わない人はいるのですが、それを強制力を持って従わせているのです。
翻って日本では自粛要請にとどまっています。ブラジル大統領が東京の街の人出の状況をとらえて、外出禁止をした一部の州を非難し、「日本を見習え」と言ったそうですが、経済第一主義の大統領の思いが、外出禁止による経済への影響を懸念してこうした言動に走ったようです。
確かに外出制限は経済にはダメージを与えます。しかしやはり経済優先主義のトランプ大統領のおひざ元アメリカの多くの州では、緊急事態宣言が発令されています。感染爆発したニューヨークでは人通りが消えています。ブラジルも日本もまだ爆発していないからでしょうが、今のままでいいのでしょうか。
先日日本でも改正特措法が成立し、更に政府の対策本部設置が閣議決定され、緊急事態宣言の準備はできました。これで都道府県にも対策本部の設置が義務付けられます。しかし緊急事態宣言を発令するには「新型コロナウイルスの全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるとき」ということで、全国的に急速に蔓延という状況にあるかどうか、が判断の分かれ目になるという点があり、東京都だけのためにできるか、というハードルがあります。
また地方自治体の長に権限が付与されると言っても、あくまで協力要請であり、諸外国のように指示命令や罰則を伴わない、甘い法律のようです。これは野党の私権制限につながるという過度の指摘のため、今まで同様「ざる法」化してきたためでしょう。つまり外出も禁止ではなく自粛要請なのです。その他医療やイベント会場、学校などの公的施設については協力要請であっても従うと思いますが、個人や個人営業の店舗や飲食店では罰則がなければ完全には無理でしょう。
それでも緊急事態宣言という言葉の発する重みはあり、今のような単なる要請よりいいでしょうが、何しろ「新型コロナウイルス感染症がまん延した結果として、医療提供の限界を超えて、国民生活・経済への甚大な影響が懸念されるとき」すなわち第3フェーズに入ってという前提があります。それに「医療提供体制が危機に陥る恐れがある場合に限った伝家の宝刀」という位置づけもあり、特に左派系の日本人に特有の政府による締め付けを極度に嫌う体質から、なかなか発令は難しいものと思われます。また安倍首相もまだその段階ではないと発言しているので、しばらくは無理かもしれません。
要は一人一人の自覚に俟つしかない
連日のようにこの疫病の持つ特徴がメディアで報じられています。どうしても一部の跳ね返り者は居るものです。そうした人間は放っておいて何とか個人レベルでは感染しないよう、自己防衛していくしかありません。仕事を持つ人は特に自宅業務にするか、できない人は通勤時に感染しないよう、心がけるしかありません。そしてあえて不要不急の外出を控えましょう。それしかありません。それと自粛要請に従う食料品や医薬品を除く個人経営の店舗や飲食店、そこへの経済的支援は行政の責任としてきちんと対応をいただきたいと思います。
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