自粛延長やむなし新型コロナ対策、政府にも企業や市民にも
一昨日の19日、新型コロナウィルス感染症対策専門家会議が実施され、以下に示す提言(抜粋)がなされました。
専門家会議としては、現時点では、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止の効果を最大限にするという、これまでの方針を続けていく必要があると考えています。そのため、「①クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応」、「②患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「③市民の行動変容」という3本柱の基本戦略は、さらに維持、必要に応じて強化し、速やかに行わなければならないと考えています。
さらに、これまで報告の少なかった欧州や米国などの諸外国で新規感染者数が急増しており、中東、東南アジア、アフリカなどでも大規模感染が拡がっていることが推定されることなどから、感染者ゼロを目指す国内での封じ込めは困難な状況です。このため、こうした国々から、我が国に持ち込まれる新型コロナウイルスへの対応や、国内においても、後述する、クラスター(患者集団)の感染源(リンク)が追えない事例が散発的に発生していることなどへの対策は依然として必須であり、クラスターの早期把握とともに、地域ごとの状況に応じた「市民の行動変容」や「強い行動自粛の呼びかけ」をお願いすることなどにより、いかにして小規模な感染の連鎖に留め、それぞれの地域において適切な制御を行った上で収束を図っていけるかが重要になってきています。
以上の状況から、日本国内の感染の状況については、3 月 9 日付の専門家会議の見解でも示したように、引き続き、持ちこたえていますが、一部の地域で感染拡大がみられます。諸外国の例をみていても、今後、地域において、感染源(リンク)が分からない患者数が継続的に増加し、こうした地域が全国に拡大すれば、どこかの地域を発端として、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないと考えています。
現在の実施体制では、クラスターの早期発見・早期対応という戦略を更に継続するのは厳しく、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行を回避できなくなる可能性があります。
このため、専門家会議としては、抜本的なクラスター対策の拡充を迅速に実施すべきであると考え、その一刻も早い実現を政府に強く要望します。具体的には、①地域でクラスター(患者集団)対策を指揮する専門家を支援する人材の確保、②地方公共団体間の強力な広域連携の推進を図った上で、③地方公共団体間で保持する感染者情報をそれぞれの地域のリスクアセスメントに活用できるシステムを作ること、④保健所が大規模なクラスター対策に専念できる人員と予算の投入等が挙げられます。
これに対し各新聞がその論評を社説等で発信しています。読売新聞は「新型コロナ対策 警戒緩めず長期戦に備えたい」として、専門家会議の提言に基づいて対応を実施していくよう述べています。おおむね自治体や医療機関など、現場での対応をさらにしっかり整えようという論旨です。
一方朝日新聞では「新型コロナ対策 不安に応える発信を」として以下のように政府に対応を求めています。
方向性に異論はないが、主催者側とすれば、地域とはどの範囲か、感染状況を誰に、どう確認すればいいのか、そのイベントに適したリスク低減策として何が考えられるかなど、相談できる先がほしいだろう。
専門家会議の機能や人員を拡充し、科学的分析力とあわせ、情報の収集力・発信力を強化することが求められる。
政府全体で顔をしっかり見せて、最新の知見や対策をきめ細かく提示し続けることが、人々の理解を得るうえで不可欠だ。説明を嫌い、厳しい質問から逃げてきた安倍政権だが、健康に関わり、社会・経済生活を大きく揺るがしているこの問題に、これまでの姿勢は通じない。
その意味で、きのうの政府対策本部での首相の対応には疑問がある。専門家会議の見解を受け、学校については再開に向けて指示を出したものの、同じく自らの唐突な要請で始まったイベントの自粛に関しては明確な言葉で語らなかった。責任をどう自覚しているのだろうか。
何につけても政権批判につなげたい意図が見え見えだと思います。同じ左派系でも毎日新聞は、以下のように政府だけに対応を求めてはいません。
新型コロナの特徴を考えると、世界的流行は今後、長期間続くだろう。終息までの間、社会的・経済的影響を抑えつつ、医療を支えるには、対応策も持続可能でなくてはならない。そのための知恵が、政府にも企業や市民にも、求められている。
さらに読売新聞紙上では何も対策を取らない場合の都道府県別の感染者のピーク推計(厚労省)を掲載しています。東京都を例にとると4万5千人強。最低の鳥取県でさえ2千4百人弱の数字です。朝日新聞の述べるように、何でも政府や専門家に事細かに指示や提示を求める姿勢では、あまりにも自主性に欠き、待ちの姿勢でしかありません。そんなことではこの疫病はとても食い止められないでしょう。
自分が感染しないためには、また、自分が感染させないためには、どうすればよいか、メディアでは何度も何度も伝えてきています。それでも感染が抑えられていないのは、不運にも濃厚接触者になった人を除けば、それを甘く見たり怠る人がいるからであって、政府の所為にしても全く前に進みません。もし政府にその責任を完全に負わせようとしたら、感染が急増した欧米のように、緊急事態宣言を発して往来禁止や外出禁止を指示するしかないでしょう。そうすればそうしたで、また政府を批判するに違いありません。
私は今までの政府の施策がすべてよしというつもりはありません。後手後手という批判はある程度当たっているように思います。しかし感染のオーバーシュートを抑えようとすれば、政府だけではなく企業や市民にも、自主性をもってその対応は求められていると思います。もちろんメディアにも。
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