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2020年5月 6日 (水)

こんなにある、PCR検査を巡るフェイクニュース

 新型コロナウィルスのPCR検査に関して、日本ではその数が少ない、もっと検査基準を容易にして数を増やすべきだ、という議論が以前からあり、私自身もそう思ってきました。ここに株式会社政策工房代表取締役社長で政策コンサルタントである原英史が、OnlineサイトJBpressに『こんなにある、PCR検査を巡るフェイクニュース』(5/6)というタイトルのコラムを掲載していますので紹介します。なおサブタイトルは『「PCR検査を増やすと医療崩壊を招く」はなぜウソなのか』です。

PCR検査を巡る混乱が収まらない。

・検査を受けようとしてもなかなか受けられない。

・海外と比較して、日本は検査を極端に抑えていて、検査数が少ない。

・だから、隠れた感染が広がっている可能性も高いのでないか。

 こうした疑念と不安は、フェイクニュースの温床になる。一例が、「東京の陽性率は40%近い」だ。「感染爆発のニューヨークですら陽性率は20%程度。検査数が少ないために、東京は異常な数値に達している。これから感染爆発の恐れもある」といったストーリーで、マスコミやSNSで広まっているが、「40%近い」はフェイクニュースだ。

分母と分子、数字の取り方に大きな違い

 フェイクニュースと呼ぶのは、広めている人たちにやや気の毒かもしれない。この数値は、厚生労働省ホームページで公開されているからだ。だが、ホームページをよく見れば、分母の検査人数は「保険適用分を含まない」との注記がある。

 分子は感染者全体だから、過大な数値が算出されているのは明らかだ。もちろん、注記を見落とした人たち以上に、こんなフェイクデータを公開している厚労省の責任が大きい。さらに遡れば、データを十分公開していない東京都も悪いのだが、ともかく、不安を助長するフェイクニュースは広がりやすい。

 関連して、「陽性率7%以上になると死亡者数が激増」との説も、テレビの情報番組などで盛んに紹介されている。これも、フェイクニュースの可能性がある。この説の元ネタは、各国データを解析した学術論文だが、査読前の段階の論文だ。公開されているpreprints.org 上では「致命的な欠陥」の指摘もあり、まだ広く一般に紹介すべき学説とは考えられない。

 論文の学術的評価は専門家に委ねるが、私がみて論理的に理解できないのは、「PCR検査数と死亡者数には関係がない」、「陽性率と死亡者数には相関関係がある」としつつ、よって「PCR検査の拡充が急務」との結論が導かれる点だ。陽性率は感染者数/PCR検査数だから、「感染者数と死亡者数に相関関係がある」だけならば自明のことでないかと思う。

感染者数が多ければ検査数が多くなるのは当然の帰結

「日本のPCR検査数は突出して少ない」、「人口あたり検査数は欧米の10分の1」といった話は、もはや常識レベルになっている。だが、これもちょっと気をつけておくほうがよい。問題はデータをどう読み取るかだ。

Img_d5a38d2d73da201031dd65920c0910ab1445 【図1】OECD諸国における新型コロナウイルスの診断テスト

 少し考えれば当たり前のことだが、検査すべき人の数は、感染が広がっている国ほど多くなる。欧米諸国の多くは、人口あたりの感染者数や死亡者数が日本とは桁違いに多いので、検査数も多くなるのは実は当然の帰結だ。「欧米は検査数が十倍」と賞賛すべきことかは疑わしく、そこから「日本の検査ポリシーが異常」との結論が導かれるわけでもない。

 下の表では、検査数と感染拡大の度合いを整理した。もちろん感染者数は、検査をどの程度行うかで見かけの数値が変わるので、感染実態を正しくつかむのは難しい。その前提で、「陽性率」に加え「検査数/死亡者数」も見比べると、検査数の多い国々のうち、イタリア、アメリカ、イギリス、フランスは、日本と比べむしろ検査不足ともみえる。

 一方、オーストラリア、韓国は、明らかに日本より徹底した検査を行い、一定の成功を収めている。台湾は、検査数が欧米諸国よりはるかに少ないが、だからといってコロナ対策の「劣等生」でないことは言うまでもない。

 また、日本の場合、PCR検査は少ないがCTスキャンが普及しており、「重症者の見落としは相当程度防げている」との指摘もある。他国の取組に学ぶことは重要だが、単純に検査数だけ国際比較しても意味は乏しい。

Img_9783216cb365c375650621f9de75382d2132 【図2】PCR検査数の国際比較(4月26日時点)

 誤解を受けないように言っておくと、検査拡大は必要だ。現在は、本来なされるべき検査ができていない。

安倍首相の発言も結果的に“フェイク”に

 政府の説明によれば、1)医師が必要と判断した場合、2)感染者の濃厚接触者には、検査が行われることになっている。安倍首相は2月29日会見でこう表明した。

「お医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」

 ところが、2カ月経っても、これが実現していない。医師が必要と判断しても保健所に断られる、断られないまでも何日も待たされる、といったケースが起き続けている。医療機関のホームページをみれば、「医師の判断だけで検査はできません」とわざわざ明記しているところもある。

 一国の首相がフェイクニュースを発している状態で、ありえない失態だ。政府の専門家会議は5月4日になって、なぜ必要な検査がなされていないのか原因分析と提言を示した。こんな分析は本来、2月の首相会見の前にやっておくべきことだ。ともかく、こんな状態は一日も早く解消しないといけない。

大量のPCR検査をしても医療崩壊しなかったオーストラリアと韓国

「PCR検査をたくさんやると医療崩壊を招く」といった異論が出ることもあるが、これもフェイクだ。たしかにイタリアなどで大量の検査が医療崩壊につながったとの指摘がある。しかし、前掲の表をみても、オーストラリアも韓国も医療崩壊は起きていない。診療・入院体制などを整えないまま無闇に検査を増やせば医療崩壊を招く、というだけのことだ。

 日本でも、2月の感染初期に無闇に検査を増やせば大問題が生じたかもしれないが、今の段階で必要な検査を抑えるべき理由にはならない。

 検査拡大は必要だ。だが、「検査拡大」の意味には注意を要する。a)「医師が必要と判断する検査をすぐできるようにする」のか、b)現在の検査ポリシーの範囲を超えて「希望する人は誰でも検査を受けられるように拡大する」ないし「ともかく検査の数を増やす」のかは、区別して議論しないといけない。

 ところが、メディアなどではしばしば曖昧なままに議論されがちだ。さらに、これを混乱させるのが、本稿前半で紹介した「検査数が異常に少ない」と強調するフェイクニュース。区別が曖昧なまま、いつの間にか後者への誘導がなされやすい。これは危ういことだ。結果として、保健所や医療機関に対し「ともかく検査を受けたい」との問合せや強い要求が数多くなされ、ただでさえ限界状態の現場の機能を低下させかねない。

 フェイクニュースは除去し、事実に基づく議論をしないといけない。これが、より良い政策実行の基盤になる。

 ◇

 原英史の指摘は論理的で的を得ているように思います。要点を整理すると次のようになると思います。

 まず第一に日本でのPCR検査は異常に少ない、とは言い切れない。だがもちろん十分だとは言えない。感染が疑われて検査を受けたくても受けられない状況は改善し、必要と思われる人の検査を拡大すべきだ。

 第2に、PCR検査を多くやれば医療崩壊につながる、というのは医療体制が整っていなければの話で、当然のことながら検査も重要だが治療ができるかどうかのほうが重要だ。

 それに私見を加えれば、検査に関する疑問に対する政府厚労省の説明や数字の公表に、極めてあいまいさが多いことでしょう。何故検査が十分できないのかその理由が検査機器の問題なのか、検査要員の問題なのか、保健所の問題なのか、医療機関の問題なのか、どこがどのようにボトルネックになっているのか、説明が大幅に欠落しているように思います。(実はよくわかっていないのかもしれませんが)

 そのため、マスコミ関係者が憶測で勝手なことを言いやすい環境になっているようです。ぜひその点の改善を望みたいと思います。検査に関することだけではなく。

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