日本では、先月25日に新型コロナウイルス感染症への緊急事態宣言が解除されましたが、昨日東京で34人の感染者を出し「東京アラート」が発動され、北九州では6人でこの11日間に119人と第2波の様相を示しています。まだまだ終息への道のりは長いようです。
一方、以前にこのブログで、アジアでの新型コロナウイルスの感染者や死者が、欧米に比べて少ないと述べましたが、未だに死者ゼロの国があります。それがベトナムです。人口は9600万人以上ですから、ほぼ1億人とみていいでしょう。ほぼ収束したと言われる日本でも約900人ですから、如何に封じ込めに成功しているかが分かります。
ベトナムに関する記事が少ない中、JBpressに、東京大学大学院情報学環准教授伊東乾氏のコラムが掲載されていましたので、以下に引用転載します。タイトルは『世界が注目する「死者ゼロの国ベトナム」 まともな解析に「日本の奇跡」など登場しない』(6/02)です。
政府は7月以降、日本の「鎖国」解除、正確には入国制限緩和を「ベトナム・タイ・オーストラリア・ニュージーランド」から始める方針を発表(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200531-OYT1T50078/)しました。
なぜか?
それに答える前に、20世紀末年に流行った「モーニング娘。」のヒット曲に「LOVEマシーン」というミリオンセラーを考えてみます。
「日本の未来は(Wow, wow, Wow, wow) 世界がうらやむ(Yeah, yeah, yeah, yeah)」
という歌詞がウケました。が当時も経済は相当微妙でしたし、21世紀に入ってから日本経済の「未来」がどんなことになったかは、読者もよくご存じの通りです。
言ってみれば、不況時の心理に、ないものねだり的に受けた「世界がうらやむ日本の未来」。
あれから20年が経過した今も「日本の奇跡」といった言葉が一過性の留飲を下げているのを雑誌の表紙などで見かけますが、同じ病気を引きずっている様子です。
少なくとも新型コロナウイルス関連対策に関連して「日本の奇跡」などという通念は、学術的にいってグローバルには存在しません。
世界で「奇跡」的に優秀なコロナウイルス対策国家として認められているのは、「ベトナム」「タイ」「オーストラリア」「ニュージーランド」の4か国なのです。
逆に、日本が「緩和」といってもこれら4か国が日本からの帰還者の再入国を認める方針を取ってくれるかは、全く定かでありません。
雑誌広告などで「日本の奇跡」といった文字列を見ますが、たかだかジャーナリスティックな概念で、実質は井戸の中だけに向けた特殊なPRと理解しておくのが無難です。
論より証拠でデータをお目にかけましょう。まず東アジア各国の5月末時点での新型コロナウイルス感染症による死亡者数から。
ちなみに日本の、しばしば上方修正される数値は5月末時点で874人、1桁大きく同じグラフに表示すると他のデータがつぶれてしまうので除いています。お話にならない不良成績であるということです。
「そんなの、人口や感染者数で全然違うでしょ?」というご意見があると思いますので、人口と新型コロナ感染者数、上記の各国と、日本の当局が発表している数字とを並べて示しておきます。(筆者注:数字は納得できないので省略します)
驚愕すべきはベトナムです。1億人近い人口があり、感染者数も300人強・・・。
思い出してください。日本にコロナが蔓延する初期の契機となった「ダイアモンド・プリンセス号」の寄港地は横浜を出航した後、鹿児島、香港、ベトナム、台湾、沖縄・・・というルートでした。
同じクルーズ船の寄港地で、台湾は440人ほど、ベトナムも330人ほど。死者数も台湾は7人、ベトナムに至っては5月末まで死者0人です。
これに対して、日本は5桁の感染者も出している。もし「奇跡」という言葉を使うのなら、「ベトナムの奇跡」こそ驚くべきものでしょう。
グローバルAI倫理コンソーシアムは、こうした著しく高い防疫成績を挙げている各国の、対コロナ対策に注目してビッグデータ・AI解析を開始しています。
日本のそれに関しては、注目していません。
それは、残念ながら複数の統計の数字の挙動が不審で、人為的な操作が懸念されるため、真剣な検討に値するか疑問が持たれていることによります。
ちなみに、グラフは東アジアで作りましたが、オーストラリアは人口2500万人で7195人の罹患、103人の死者、ニュージーランドは480万の人口で1504人の罹患、死者はたった22人です。
人口比で日本と比べるため、豪州は5倍、ニュージーランドを25倍してみましょう。日本の死者数約900と比較してどうですか?
日本の奇跡、などということは、真剣な分析には全く登場しません。
等身大で知る「日本のコロナ成績」
では、実際のところ日本のコロナ対策はどの程度奏功しているのでしょうか?
5月末時点の客観データで確認しておきましょう。端的に、人口100万人あたりの死亡者数で、各国データと比較してみます。
英国が572人、米国が318人、欧州の中で「集団免疫」政策で<死亡者数が突出して多い>などと言われるスウェーデンが442人、ドイツやオーストリアは100人、75人といった数字になります。
ここでオーストリアを挙げたのは、約1万6600人の罹患、668人の死者というコロナ被害の規模が、5月末時点での日本の発表している数字、約1万6700人の感染、874人の死者という規模とほぼ同一であることからです。
チームが進めている実際の解析はより多くの国を検討しています。
音楽の都ウイーンを擁するオーストリアと日本とは、感染者数と死亡者数がほぼ同一である。
しかし違うのは人口です。日本は1.2億人以上人口がありますがオーストリアは900万人弱しか人間がいません。
社会に与える被害の規模からいえば1桁違うわけで、欧州など一部のデータを選んで比較してみせれば「日本の奇跡」を演出することができるかもしれません。
「うちのクラスでは一番だったんだからね」とお母さんに微妙な成績のテストを見せて力説する子供のようなものと思えばよろしい。
しかし「全国模試」で確認すれば、本当の実力は隠すことができません。
東アジアで検討すれば、日本の人口と犠牲者数の割合は、大まかにいって韓国、フィリピンと同程度、シンガポールと比較すれば2倍近く、また全く強調されていませんが、中国よりはるかに高い値になっています。
それはまあ当然で、あちらはべらぼうな人口がありますから日本は分が悪くなる。でもタイや台湾と比較しても1桁成績は悪く、ベトナムに至っては0人ですから、比の値を取ることができません。
世界最悪の死亡率を出し、チャールズ皇太子やボリス・ジョンソン首相まで感染した英国のファイナンシャル・タイムス(FT)紙は「日本のコロナ対策はそこそこよくやっている(Japan’s relative success in fighting Covid-19)」(https://www.ft.com/content/c78baffc-79b8-4da4-97f1-8c7caaad25cf)と記します。
しかし、決してそれ以上の評価は下していません。
「世界がうらやむ」日本の未来みたいな、日本国内向けだけに通用するストーリーは、相手を選ばぬコロナウイルスのグローバルな感染で、真面目な関心の対象とはなり得ません。
注目されるイスラム圏
では、どのような要素が注目されているのでしょうか?
世界各国の指導的大学が集まって構成されるグローバルAI倫理コンソーシアムのコロナ対策で注目される一つは「イスラム圏」です。
なぜか突出して感染者の多いシーア派のイラン、紛争中のイラク、また飲酒も可能でソフトムスリムなどと呼ばれることのあるトルコを例外に、多くのスンニ派イスラム諸国は軒並み感染率が低いことが確認されている。
そうしたスンニ派諸国、つまりサウジアラビアやオマーン、カタールなどと同じレベルに日本が現在公開している数字があります。
日本のそれは、イスラム諸国と同様、「relative success」そこそこよくやっているだけで、奇跡とかそんなものはどこにもなく、別段特記するような数字はありません。
むしろ、先進国で各種医療も整っているはずの日本と、様々な意味で近代化が遅れている面もあるイスラム原理主義に近い体制の諸国が同じ程度であることが注目されています。
周知のようにイスラムは1日5回「礼拝」します。
礼拝にあたっては身を清めることが義務づけられます。手洗い、歯磨きなどのほか、近年日本では普及著しい「ウォシュレット」用便後の洗浄を1400年前から励行していた。
「ハラールフード」も、まじない的な意味などは皆無で、端的にいえば生態学的、衛生学的な観点から必要とされる手順を戒律で定めています。
ユダヤ教やムスリムが豚食を禁じるのはなぜでしょうか。
今日では一つには肝臓ジストマなど人間に感染する寄生虫の存在、また砂漠地帯では生態系の中で人間と食性が重なるため、共同体の存続にリスクとなる可能性があったから殺して食べることを禁じたのではないかと考えられています。
イスラムの生活習慣の中にコロナ封じ込めにプラスの要素があるとしたら、それは何か。また例外として、こともあろうにシーア派のイランで大量のコロナ犠牲者が発生しているのはどうしたことか?
また、単位人口当たりの犠牲者数で見れば似たようなものであるスンニ派ムスリム諸国と日本ですが、実際の死者の数を見ると大きな隔たりがあります。
新型コロナウイルスで亡くなった人の実数で確認すると、比率で言えば同様に見えるスンニ・イスラムとは比較にならないほど、日本では多くの人がコロナで亡くなっている。
一体何がこうした差異を生み出したのか?
地道で真摯な検討が進められており、正体不明の「ファクターX」などは登場しません。
海外報道などを引いて「日本方式の成功」うんぬんという議論があるようですが、SNSなどで目にした「絶賛している」らしいリンクの一つは、先ほど紹介したもの(https://www.ft.com/content/c78baffc-79b8-4da4-97f1-8c7caaad25cf)です。
「日本では首相が(<日本方式>でコロナに打ち勝った、と)パフォーマンスしているが、比較的よくやっているコロナ対策とは裏腹に、政権支持率はアサヒ新聞の調査によると29%まで落ち込んでいる」
(Despite Japan’s relative success in fighting Covid-19, Mr Abe’s performance has been unpopular with the public. His approval ratings fell to a record low of 29 per cent in a new poll by the Asahi newspaper.)
といった具合で、いたって冷やかです。
いま現在流行している恐ろしい伝染病である新型コロナウイルス感染症対策に、そうした楽観や「コロナ大したことない説」「神風吹く国ニッポン」的な誤解はおよそ役立つことがありません。
特段特殊なことはなく、医療現場最前線が疲弊の限界を超えながら、な何とか持ちこたえさせている。過不足ない日本の、等身大の現状を国民全体が自覚し、慎重に行動する必要があります。
5月末時点で、北九州ではすでに小学校1つ、中学校2つでクラスターが確認され、休校と報じられています。
6月第1週、全国でいったい何校の小中学校、あるいは高等学校で児童生徒の罹患が確認されるか、それをまず、冷静に観察する必要があります。
感染した児童生徒がたった一人見つかるだけで、その学校は少なくともしばらくの間は、また再封鎖となってしまいます。
安易な楽観は明らかにリスクを招くものであることを、冷静に指摘しておかねばなりません。
日本の感染症対策にかなり辛口なコラムでしたし、またベトナムやその他のアジア諸国がどうして封じ込めに成功したのかを述べていません。伊東乾氏はひとえに日本がコロナ収束模範国であり、「日本モデル」と自画自賛しているけれど、世界を見渡せばそんなことはない、むしろ安易に楽観すれば大きなリスクを招く、と警鐘を鳴らしているようです。
以前このブログで述べたように、ベトナムをはじめ台湾やタイなどは徹底的な水際での遮断と、強制力を含む外出規制で封じ込めたようです。自粛便りの日本では、自粛を守らぬ跳ねっ返り者が必ずいて、東京や北九州の「ボヤが燃え上がる」現象は、この先全国どこで起きてもおかしくないものと思われます。
それに夏場に向かっての第2波より、この冬に向かっての波の対策が最も重要なのでは、と思われます。その時は強制力を持っての自粛要請と休業補償はセットに、そして行動追跡可能なソフト・アプリの導入は必然だと思われます。
こういった強制的な休業・自粛要請や行動追跡を、「私権の制限」という理由で反対する人に申し上げたい。私を含め多くの弱者(経済的という意味ではなく犯罪や迷惑行為から身を守る力が少ないという意味)は、犯罪者や迷惑行為者の陰を何時もおびえて暮らしているのです。
そういった犯罪者や迷惑行為者を摘発するツールとして、行動追跡や要請に従わない輩の私権の制限をするのは、当たり前だと思うのです。われわれは緊急時、私権の制限をされても全く構わない。それよりこうした時期に、3密を堂々と破ったり、要請を無視して外出や営業を続けたり、そんなことで感染拡大をされては溜まったものではない、と言いたいのです。
多くの人権派弁護士や知識人、それを支持する野党議員やマスコミ関係者は、恐らく「強者」なのでしょう。だからこうした犯罪者や迷惑行為者が「私権」を制限されず、どうどうとそうした行為をできるのが気にならないのでしょう。
この人たちに言いたい。いい加減「強者」は国家権力で、「弱者」は国民という固定観念をなくして欲しいと思いますね。我々「弱者」は国家権力に「犯罪者や迷惑行為者」から守って欲しい、そう願っているのです。
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