米朝会談での、韓国政府の詐欺的行為を暴露したボルトン回顧録
米国のボルトン前大統領補佐官の回顧録が話題を呼んでいます。米国での反応も様々ですが、回顧録の主要部分を占める北朝鮮との交渉過程について、韓国の文政権が異常に反応しています。
JBpressに寄稿された韓国のジャーナリスト李正宣氏によるコラム『核心突かれ狼狽?ボルトン回顧録に猛反発の文在寅政権 思わぬ形で露見した「米朝首脳会談」舞台裏の秘話で、韓国に激震』(6/24)を以下に引用掲載します。
ジョン・ボルトン前ホワイトハウス国家安保補佐官の回顧録『それが起きた部屋:ホワイトハウス回顧録(The Room Where It Happened:A White House Memoir)』(米国時間6月23日発売)が韓国を揺るがしている。
21日夜から、韓国メディアは一斉に「ボルトンの回顧録を入手した」とし、数多くのスクープを出し始めた。米朝首脳会談と米韓首脳会談など、国家首脳間の敏感な会談内容を赤裸々に暴露したこの本は、トランプ米大統領にはかすり傷を、文在寅(ムン・ジェイン)韓国政権に致命傷を与えた、と言われている。
韓国の複数メディアが報道した回顧録の内容のうち、韓国で問題となった部分は、文在寅政権が米朝間の仲裁者を自任しながら、米国のトランプ大統領に北朝鮮の意図を誤解させる原因を提供してしまったという指摘だ。韓国メディアに掲載された内容を総合すると、次のようである。
1、2018年6月のシンガポールでの第1回米朝首脳会談に対する記述
「(2018年)3月にホワイトハウスの大統領執務室で、(韓国の)鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長がトランプ大統領に会いたいという金正恩(キム・ジョンウン)委員長の招待状を手渡し、トランプ大統領は瞬間的な衝動でこれを受け入れた」
「のちに鄭室長は、(トランプ大統領の)招待については自らが先に金正恩氏に提案したことをほぼ認めた」
「すべての外交的ファンダンゴ(スペインの男女ペアで踊るダンス)は韓国の創作物で、これは金正恩氏やわれわれ(米国)の真摯な戦略よりも、韓国の統一議題により関連したものだった」
「文在寅大統領は2018年4月28日の米韓首脳間の電話会談で、『金正恩氏が豊渓里核実験場の閉鎖を含めて完全な非核化を約束した』『金正恩氏に1年以内に非核化することを要請したが、金正恩氏が同意した』と話した」
「2018年5月4日、鄭室長は3度目のワシントン訪問で、(4月27日の南北首脳間の)板門店会談に関する具体的な内容を提供した。韓国は金正恩氏にCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)に同意するよう強要し、金正恩氏はこれに従っているように見えたと述べた」
2、朝鮮半島の終戦宣言に関する記述
「われわれの論議において、もう一つの重要なテーマは韓国戦争の終戦宣言だった」
「最初の終戦宣言が北朝鮮のアイデアだと思っていたが、その後、これが自分の統一アジェンダを裏付けるための文大統領のアイデアだと疑い始めた」
「北朝鮮はそれを文大統領が望むものと見て、『自分たちは気にしていない』と述べた」
「私は文大統領がこのような悪いアイデアをトランプ大統領に勧めることについて懸念したが、結局それを止めることができなかった」
3、2019年2月のハノイ米朝首脳会談後に関する記述
「ハノイの首脳会談の数日後、米韓安保室長の対話で、鄭室長は、『金正恩氏が代案なしに一つの戦略だけ持ってきたことに驚いた。米国側が行動対行動方式を拒否したのは正しい』といいながらも、『寧辺廃棄は意味ある最初の措置であり、これは(このような提案を出したのは)北朝鮮がすでに取り返しのつかない非核化の段階に入ったことを意味する』という、文在寅大統領の統合失調症的なアイデア(Moon Jae-in’s schizophrenic idea)を伝えた」
「われわれ(米国)はハノイ以降、南北間の接触がないことを知った。太陽政策が可視的な成果をもたらすと主張してきた文大統領は、非核化および南北関係関連の北朝鮮の冷淡さが政治的に良くないと憂慮した。文在寅政府は生贄を探していた」
「そこで文大統領は、板門店または海軍軍艦での会談を提案し、『劇的な結果を導くことができる時刻、場所、形式に対する劇的なアプローチが、劇的な結果をもたらすだろう』と述べた」
4、2019年6月30日、板門店南北米3者会談に関する記述
「金正恩氏とトランプ大統領との会談に干渉しようとする文大統領の試みも相手にしなければならなかった」
「トランプ大統領は文大統領が近くにいないことを望んだが、文大統領は(トランプ大統領と金正恩氏との会談に)強く出席しようとし、できれば3者会談にしようとした」
「(自分は米朝首脳会談に乗り気でなかったので)文大統領との紛争がすべてを台無しにしかねないという一縷の希望を抱いた。なぜなら、金正恩氏も文大統領が近くに来ることを望まないことは明らかだからだ」
米韓関係に甚大な影響
衝撃的な暴露に大統領府は直ちに反発した。鄭義溶・国家安保室長名義の立場文を通じて、ボルトンの回顧録は「相当部分が事実を大きく歪曲している」「韓国と米国、そして北朝鮮の首脳間の協議内容に関する事項を自分の観点から見たことを明らかにしている」と反論した。また、「政府間の相互信頼に基づいて協議した内容を一方的に公開することは、外交の基本原則に反するもの」とし、「米国政府がこのような危険な事例を防止するための適切な措置を取ることを期待する」と述べた。
当時、大統領府の国政企画状況室長として実務を担当した尹建永(ユン・ゴンヨン)議員は、フェイスブックを通じ、「自分が知っていることがすべてだと信じる錯覚と傲慢から脱することを望む」「すべての事実を一つひとつ公開し反論したいが、ボルトン前補佐官のような人になるわけにはいかないので我慢する。言うことがないから、黙っているわけではない」と非難した。
民主党議員らも、ボルトンに向けて「自分(ボルトン)が統合失調症ではないか」「一発殴りたいほどだ」「見苦しいタカ派」「武器商人の本気」「戦争狂」「三流政治家」など、激揚した反応を見せている。
韓国メディアは、金与正(キム・ヨジョン)第1副部長と北朝鮮の敵対的攻勢で緊張感が高まっている朝鮮半島情勢が、ボルトンの回顧録によってさらに悪化するだろうと非難した。
ハンギョレ新聞は社説「韓半島危機の中、一方的に暴露したボルトンの破廉恥」で、「ボルトンの暴露は危機の韓半島状況をさらに悪化させ、今後の北朝鮮核問題解決に向けた交渉を困難にさせる恐れがあるという点で、問題の深刻性が大きい。ボルトンは適切な責任を負うべきだろう」と憤った。
聯合ニュースは「恨みを抱いたタカ派のボルトンが危険な賭けが米朝に影響・・・韓米にも冷や水」という記事で、「最初から最後までタカ派の屈折した見方で対北朝鮮外交全体を完全な失敗に追い込んだ」と非難し、この回顧録が韓米関係に否定的な影響をもたらす恐れがあると警告した。
金与正氏の「言葉爆弾」に続き、ボルトンの「回顧録爆弾」が文在寅政権に新たな脅威となっている。
韓国政府やメディアは、一斉にボルトン回顧録の内容を批判していますし、ボルトン氏自身にも非難を浴びせています。政府関係者の批判や非難は立場上理解できても、メディアが一斉に批判するのは、この国特有の政府との癒着構造を露呈しているのではないかと、疑ってしまいます。少なくとも日本であれば、いくつかのメディアはこの暴露本によって、政府の姿勢を追及するでしょう。
いずれにしてもボルトン氏の見方が極めて異常なのか、それともその通りなのか、真相は分かりませんが、少なくともボルトン氏が指摘している、韓国政府の欺瞞は、今までの韓国政府の言動の実態から、いかにもありそうだと感じます。人は自身の非を隠すため、相手を執拗に攻撃する。韓国政府、与党議員やメディアが一斉に上記のような反応を示しているのは、その表れではないでしょうか。
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