中国三峡ダムの水位ますます上昇、洪水被害額もうなぎのぼり
新型コロナウイルスの発生源の中国、それも湖北省一帯を中心に大規模な豪雨被害が発生しています。このブログでも3回目になりますが、その被害の大きさはかつて経験したことのないレベルに達しているようです。
第1回の記事では、水位は6月20日の段階で147メートルに接近していた、と述べていましたが、今月20日の時点ではそれが164.4メートル、平時の145メートルをほぼ20メートル上回っています。損害金額も前回の記事で、7月3日時点で416億元(約6400億円)だったのが、今では861.6億元(約1.3兆円)にも上っていると試算されています。
その詳細をFNNプライムオンラインでFNN上海支局の城戸隆宏氏が伝えます。タイトルは『三峡ダム水位上昇、中国第三の大河も危機に~被害1.3兆円洪水が中国に与える大打撃』(7/20)で以下に引用掲載します。
街が濁流に呑まれ車が船のように漂う街も
中国の長江流域を中心に続く豪雨による洪水は収まる気配がなく、深刻な被害が出ている。危機感は地方だけでなく主要都市でも強まっている。
湖北省恩施市では7月17日、オフィスや店が並ぶ中心部などの広範囲が濁流に呑まれた。
「車が船のように水面を漂っている・・」
SNSに投稿された映像は、街の大通りが泥水に浸かり、サイレンが鳴り響き、多数の車が水に浮かんでいる様子を捉えている。別の撮影者は車で移動中に洪水に巻き込まれたのか、かろうじて屋根だけが水面に出ている車の上で途方に暮れ「車が流れ始めている」と恐怖を生々しく伝えた。
大通りに停まっていたとみられる複数のバスが水没し、屋根だけが見えている画像もある。水は一気に流れ込んだとみられ、逃げ遅れた人も少なくないと想像するが、死傷者などの詳しい被害状況は伝えられていない。
湖北省武漢市をはじめとする主要都市にも危機が迫る。中部の大都市・重慶市では市内を流れる長江の水位が警戒水位に近づいていて、ネット上では市民が「この数日水位上昇が凄く早い。溢れそうだ」と大河の様子を伝える。中国メディアは、市内の万州区で濁流が街を襲い、商店などに流れ込む様子や築100年の古い橋が崩壊寸前となっている様子を報じる。
江蘇省南京市では18日、長江の水位が1954年の記録を超えて過去最高となり、最高レベルの警戒態勢をとった。川沿いの公園など冠水エリアが拡大し、危険が迫る地区の住民が避難を始めている。
すでに危険な状態にある各地の状況が改善する兆しは見られない。中国最大級の三峡ダムも、流れ込む水の量は増える一方だ。中国メディアによるとダムの水位は、17日14時に157.11mで限界水位をすでに12m超え、翌18日14時が161.05m、20日2時が164.44mと上昇を続けている。ダムの最高水位は175mだとされ、「あと10数mだ・・」と恐れる声がある。
19日2時時点で流れ込む水量は毎秒6万1000立方メートルに対し、排出する量は3万6200立方メートル。ダムの水位が上昇を続けているが、放出するとただでさえ水位が上がり冠水している地域もある下流域に影響がある。
専門家は、メディアの取材に対し「増水しているがまだダムの容量には余裕があるから安全に全く影響はない」と不安の払拭に務めているが、ネット上には心配の声も後を絶たない。
洪水の危機は長江だけではない。北側を流れる中国第三の大河・淮河でも17日、水位が警戒レベルに達し、政府は今年第1号の洪水が発生したと発表。専門家は「大雨は数日間続く見込みで、流域の中小河川が大洪水に見舞われる可能性がある」と警告した。
経済損失1.3兆円~対応誤れば中国政府に大打撃も
「私の店が一瞬で全てなくなってしまった。損失は2000万元(約3億円)よ・・・」
「商品があった5つの倉庫が全て流れてしまった。本当にどうしたら良いか分からない・・」
濁流に呑まれた安徽省のある街で何人もの女性店主が泣き崩れる様子が報じられている。
中国政府は今回の水害の経済損失は 861.6億元(約1.3兆円)と試算している。中国政府にとっては新型コロナウイルスによる大打撃からの復興を目指す中での新たな打撃だ。物流など経済活動への影響は必至で、回復し始めた経済の勢いをそぐことは避けられない。
習近平国家主席は17日、会議を行い「人民の生命や財産の安全を第一に」とあらためて対応強化を指示した。対応が遅れれば国民の政府批判につながる恐れもあり、危機感が垣間見える。
中国メディアは連日、時間を割いて各地の洪水への対応を伝え、警戒を呼びかけている。目立つのは軍や消防が住民を救出する場面だ。江西省の巨大湖では、水位上昇で崩れた中州を両側から重機で埋め立てて真ん中で結合することに成功した!と大々的に報じられた。中国共産党の旗を掲げ、政府の「全力対応アピール」だ。
新型コロナウイルスを完全に抑え込めない中、約3900万人が被災する未曾有の大洪水という新たな試練が中国政府に重くのしかかっている。
面積も人口も日本の比ではない中国、経済力や軍事力で米国に次ぐ第二の大国となったこの国の、意外ともろいアキレス腱がこの水害だとすれば、前回の記事の筆者も述べていたように、「米中戦争になったら、アメリカは真っ先に三峡ダムを狙い撃ちする」と言っていたのも頷けますね。
もちろん他国の事より日本の豪雨被害に備えるのが肝要。与党ではもう一度、ダムなどの治水作業の見直しを検討し始めたのには、大いに賛同します。何しろ最近の豪雨は温暖化の影響か、予想を超えることが頻繁に起きていることを考えると、喫緊の課題であることは間違いありません。その前にコロナの抑え込みが大きな課題ではありますが。
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