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2020年7月 8日 (水)

治水対策だけでは防げない最近の異常な豪雨には、自助、共助が決定的に重要

20200704s00042000498000p_view  今年も梅雨時期の豪雨被害が相次いでいます。今朝は地上波各局で、長野、岐阜両県に大雨特別警報が発令され、最大級の警戒を呼び掛けている映像が長時間流れていました。昨夜は福岡、大分でも大雨洪水の被害が出ています。

そして何といっても50人以上の犠牲者を出した熊本県、球磨川流域の大洪水。今回10か所以上の決壊氾濫を起こしたこの「暴れ川」に関して、産経WESTは以下のように記述しています。タイトルは『「ダムによらない治水」進まなかった球磨川』(7/07)です。

 熊本県南部などを襲った豪雨。氾濫した球磨(くま)川は、「日本三大急流」として知られ、過去にも水害に見舞われたことから「暴れ川」の異名も持つ。流域の治水対策をめぐっては、昭和40年まで3年連続で起きた水害を機に治水ダム計画が進んだが、地元の反対を受けて中止された。その後、国や流域自治体、地元住民で治水対策を協議し続けてきたが、抜本策が打ち出せないまま今回、想定を上回る甚大な豪雨被害が起きた。

 球磨川は熊本県水上村の源流から人吉盆地、八代平野を経て八代海に注ぐ全長115キロの1級河川。流域の年間平均雨量は全国平均の約1・6倍の2800ミリで、本流と支流の合流点にあたる人吉市中心部や球磨村渡地区は、洪水の危険性が以前から指摘されていた。

 熊本大の大本照憲教授(河川工学)は、今回は本流と支流双方が同時に増水し、異常出水につながったと分析。「人吉市街地では急速に水が流れ込み、避難できないほどの流速だった可能性がある」とする。

 だが、流域での治水対策は進んではこなかった。国土交通省によると、球磨川流域では40年7月に大規模な水害が発生。翌41年、国は球磨川支流の川辺川に治水を目的としたダムの計画を発表した。

 しかし、地元の反対などで事業は進まず平成20年、蒲島郁夫知事が計画反対を表明。翌年、民主党政権が計画を中止した。その後、国や県、流域自治体が堤防かさ上げや川底の掘削などの治水策を協議してきたが、議論はまとまらず、ダム計画も廃止されていない。

 「ダムによらない治水を目指してきたが、費用が多額でできなかった。非常に悔やまれる」。蒲島知事は5日、報道陣の質問にこう述べた。国交省九州地方整備局は球磨川の国管理流域だけでも11カ所で氾濫、人吉市中神町で堤防1カ所が決壊しているのを確認している。

 大本教授は「ダム以外にも田畑など『安全弁』となる氾濫地帯をつくるなど、人的被害を最小化するため流域全体での治水対策を早急にとる必要があった」と指摘している。

 確かに球磨川の氾濫にはダムによって人吉市が位置する中流域の水嵩を1、2メートル下げる効果があると、識者が語っていて、もし川辺川にダムが建設されていれば、これほどの被害にはなっていなかったかもしれません。

 ただ最近になってたびたび発生する、異常な線状降水帯がもたらす豪雨は、簡単に一時間100ミリを超えてしまいます。このような異常な豪雨には、ダムや堤防などの治水では、もはや手に負えないレベルになっているのではないでしょうか。昨年発生した台風19、21号による豪雨が発生した後、週刊ポスト紙上に大前研一氏のコラムが掲載されていました。タイトルは『繰り返される大水害 今こそ「洪水プレイン」の整備を』(11/23)で以下に引用掲載します。

 21世紀は災害の世紀という言い方をする人もいるほど、台風や豪雨、地震や津波などの巨大災害、複合災害が続いている。想定外の事態が次々と発生したため被害が大きくなったというが、経営コンサルタントの大前研一氏は、歴史の教訓に学び、大水害に備えた「洪水プレイン」が必要だと訴える。この「洪水プレイン」とは一体何か。大前氏が解説する。

 * * *

 台風19号と21号に伴う豪雨で多数の川が決壊・氾濫し、甚大な被害が出た。国土交通省によると、台風19号では宮城、福島、長野、茨城など7県の71河川・140か所が決壊した。台風21号では千葉や福島など5県で27河川が氾濫したと報じられた。

 今回は百年に一度の集中豪雨だったから想定外の事態が多々起きて被害が拡大したという。だが、歴史の教訓に学んでいればかなりの被害は防げたはずであり、それができなかったのは“行政の怠慢”だと思う。

 具体的な対策としては、豪雨や高潮による浸水想定区域をシミュレーションした「ハザードマップ」に基づき、水害リスクが高い地域では安全な場所に住民を移住させるべきである。私は2011年に「3.11」(東日本大震災)が起きた時、8日後の3月19日に【1】津波で被災した地域を「津波プレイン(平原)」に指定して土地を買い上げ、人は住まわせない【2】住宅地は安全な高台に移す―という復興ビジョンを提案した。それと同じように、台風などによる水害リスクが高い地域は「洪水プレイン」に指定し、どうしてもそこに住みたいという人には自己責任で住んでもらうのだ。

 これはオーストラリアなどでは当たり前のコンセプトで、水害リスクが高いとわかっているエリアの土地は行政が売買を制限する。たとえば百年に一度、津波や洪水で大きな浸水被害が出ている土地の場合、そのことを売り手が売買契約書に明記し、買い手もそれを了承してサインしなければ契約は成立しないのだ。

 そんな危ない物件が売れるのかと思うかもしれないが、そういう土地は普通の土地より格段に安いから買い手がつくのである。そして「洪水プレイン」に土地を買った人は、たいがい高さ2mほどのマウンド(盛り土)を作り、その上に家を建てている。

 日本の場合、物件によっては「重要事項説明書」に水害の履歴などが小さく簡単に記載されているが、今後は行政が「洪水プレイン」の考え方を取り入れるとともに、不動産を売買する時はすべてのリスクを明確・詳細に開示することを義務付けるべきである。

 日本はゼネコンも歴史の教訓に学んでいない。今回の豪雨では川崎市・武蔵小杉のタワーマンションで地下の電気設備が浸水してエレベーターが動かなくなり、断水も発生した。しかし、1995年の「阪神・淡路大震災」で神戸のポートアイランドや六甲アイランドの高層マンションは液状化現象で地下の電気設備が全滅し、全く同じことが起きている。その教訓に学べば、電気設備や非常用電源は屋上などの高所に設置しておくのが当然ではないか。

 天災は自然が人間にもたらす試練である。だが、そこから学ぶことで被害を減らしてきたのが人間の歴史でもある。好例はオランダだ。国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下のため、全長32kmの大堤防や浚渫した砂で海岸線を海面上昇と浸食から守る防波堤などを建設し、今ではその技術を世界中に輸出している。

 日本も台風19号の「10.12」と21号の「10.25」を歴史の教訓とし、それを克服する仕組みや新しい技術を生み出すとともに、不動産売買などで土地の履歴を明示して価格や建築基準に反映すべきである。それを怠れば、再び甚大な被害を出すことになるだろう。

 確かに大前氏の言うように、防災には行政の一層の役割の必要性は大きいかもしれません。しかし行政が様々な対策や提案をしても、業者や住民がそれに従わなければ意味がありません。特に長期に亘って住居を構えている、その土地に愛着を持っている人たちは、容易に他の場所への移動を拒むでしょう。

 もともと山の斜面の麓や川の近くに住んでいる人には、土砂災害や洪水被害のリスクは極めて高い。そんなところに住むなと言っても、そう簡単には引っ越しはできないでしょう。経済的にも大きな負担がかかります。そこで大事なことは大前氏も言うところの「自己責任」です。

 まずそういう地域では、地域住民の総意で一定の範囲に一か所は、大勢を収容できる頑丈な3階建て以上の高層の建物を作って、避難所にするべきでしょう。学校の体育館では低層で役に立たないところでは、高層にする必要があります。災害復旧の巨額の支出を思えば、あらかじめこういう建物を建てておくのは最低限必要ではないかと思います。そこへ警報が出た場合は避難する、それが一つの手段です。

 それが自治体予算の範囲でできないならば、それこそ自己責任でどう避難したらいいか、あらかじめ考えておいてそれを実行するしかありません。

 一般的に災害時においては、自助、共助、公助の順で防災に当たる、というのが原則です。高齢者施設の人たちや子供は別として、なんでも行政に頼るという考えは捨て去り、まず自分で自分を守る、又近所の人たちで共同で守るという精神が必要でしょう。

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