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2020年8月16日 (日)

「日本を降伏させるな」米機密文書が暴いたスターリンの陰謀

Lif1908150031p2  昨日の75回目の終戦の日、コロナ禍の中で全国戦没者追悼式が行われ、天皇陛下のお言葉や安倍首相の式辞が述べられました。一方閣僚4人を含む多くの議員と一般の国民多数が、靖国神社に参拝しました。終戦の日はまさに戦没者の慰霊の日でした。

 私は2年前の8月、このブログを始めた時に、『「戦争を語り継ぐ」を考える』として、『戦争の惨禍を中心に「語り継ぐ」、そしてそんな戦争に走った日本の当時の行動を深く反省し「語り継ぐ」。だがなぜ戦争に走ってしまったのか、その本質は「語り継がれない」。』と、そのことを取り上げました。1年前の8月にも同じタイトルで同様の内容を取り上げています。

 ただその中で取り上げなかったことが一つあります。それは、全国都市部に絨毯爆撃をされ、さらに原爆を落とされるまで、「何故戦争をやめなかったのか」、と言うことです。もちろんガダルカナルやニューギニア、インパールでの無謀で無残な戦いもあるでしょうが、「戦争の惨禍」の多くの部分は、終戦間近の市民を巻き込んだこの大量殺戮にあります。「本土決戦」と息巻いていた日本軍部の責任もあるでしょうが、本質は別のところにあるようです。

 その詳細を、評論家の江崎道朗氏が2018年の終戦の日にiRONNAに寄稿したコラム『「日本を降伏させるな」米機密文書が暴いたスターリンの陰謀』から引用掲載します。

 「ヴェノナ(VENONA)文書」という存在をご存じだろうか。その文書の公開によって現在、世界各国では、第二次世界大戦と日米開戦の歴史が大きく見直されつつある。

 「国民の知る権利」を重んじる民主主義国家では、一定の期間が経過すると、国家の機密文書も原則として公開される。実は「民主主義国家」を自称するアメリカも情報公開を進めており、1995年に「ヴェノナ文書」を公開した。

 これは、1940年から44年にかけて、アメリカにいるソ連のスパイとソ連本国との暗号電文をアメリカ陸軍が密かに傍受し、43年から80年までの長期にわたってアメリカ国家安全保障局(NSA)がイギリス情報部と連携して解読した「ヴェノナ作戦」に関わる文書のことだ。

 第二次世界大戦当初、フィンランドを侵略したソ連は、「侵略国家」として国際連盟から除名された。ところが、ドイツがソ連を攻撃した41年以降、「敵の敵は味方」ということでアメリカのルーズベルト民主党政権やイギリスのチャーチル政権は、スターリン率いるソ連と組むようになった。こうした流れの中でソ連に警戒心を抱いたのが、アメリカ陸軍情報部特別局のカーター・クラーク大佐だ。

 クラーク大佐は43年2月、特別局の下にあった通信諜報部(後のNSA)に、アメリカとソ連本国との暗号電文を傍受・解読する作戦を指示する。ヴェノナ作戦と名付けられたこの暗号傍受作戦は44年、ホワイトハウスから中止を命じられたが、彼らはその後も密かに作戦を続行し、驚くべき事実を突き止める。ルーズベルト大統領の側近たちに、ソ連の工作員と思しき人たちがいたのだ。

 だが、ソ連はアメリカの同盟国であり、ルーズベルト大統領の名誉を傷つけるわけにはいかない。アメリカのインテリジェンス(諜報)能力をソ連に知られるのも得策ではない。こうした政治的思惑から、この情報は長らく国家機密として非公開にされてきた。

 そして95年、第二次世界大戦が終わって50年が経ち、当時の関係者の大半が鬼籍に入った。ソ連という国も崩壊した。そこでようやく、このヴェノナ文書が公開されたのだ。この情報公開に際してアメリカ連邦議会下院の中に設置された「政府の機密守秘に関するモイニハン委員会」は97年、「最終報告書」でこう指摘している。

 顕著な共産主義者の共同謀議がワシントン、ニューヨーク、ハリウッドで実施されていた。(中略)ヴェノナのメッセージは、確実に事実の偉大な貯蔵物を提供し、歴史の隙間を埋める事態を至らしめるであろう。

 要するにアメリカ連邦議会として、戦前から戦時中に「顕著な共産主義者の共同謀議がワシントン、ニューヨーク、ハリウッドで実施されていた」ことを認めたわけだ。歴史物が大好きな『NHKスペシャル』がなぜこのヴェノナ文書に飛びつかないのか、本当に不思議だ。

 しかも、ルーズベルト民主党政権下のアメリカでソ連の工作員たちが暗躍し、アメリカの対外政策に大きな影響を与えていたこと、特に日米開戦とソ連の対日参戦、そして日本の終戦に深く関係していることが、このヴェノナ文書の公開とその研究の進展によって判明しつつあるのだ。

 例えば、アメリカを代表する保守派の言論人であるM・スタントン・エヴァンズが、「ヴェノナ文書」研究の第一人者であるハーバート・ロマースタインと共著で『Stalin's Secret Agents: The Subversion of Roosevelt's Government(スターリンの秘密工作員:ルーズベルト政権の破壊活動)』(Threshold Editions 2012 未邦訳)を発刊しているが、ここで実に重要なことを指摘している。

 日本もアメリカの軍幹部も早期終戦を望んでいたにもかかわらず、終戦が遅れたのは、対日参戦を望むソ連が、在米の工作員たちを使って早期終戦を妨害したからだ、というのだ。

 45年2月、ヤルタ会談において、ルーズベルト大統領は、ソ連の対日参戦の見返りとしてソ連による極東の支配をスターリンに約束する。しかし、ヤルタ会談での密約は所詮、紙切れに過ぎない。スターリンからすれば密約を確実に実現するためには、なんとしても対日参戦に踏み切り、軍隊を侵攻させ、満洲や千島列島などを軍事占領する必要があった。

 ヤルタ会談当時のソ連はヒトラー率いるドイツと血みどろの戦いを繰り広げており、ドイツ占領下の東欧に軍事侵攻して東欧をソ連の支配下に置くことを優先させていた。戦力に限りがあったソ連としては独ソ戦を片付け、東欧諸国を軍事占領したあとでなければ、極東地域に軍隊を送り、満洲や日本に侵攻することはできなかった。よって日本が早期に降伏してしまったら、ソ連は対日参戦ができなくなり、アジアを支配下に置くチャンスを失ってしまう。

 『スターリンの秘密工作員』の著者、エヴァンズはこう指摘している。

 スターリンの立場からすれば、ソ連が太平洋戦線に参戦し、軍隊を東に移動し、戦後のアジアに関する要求を確実にできるような軍備拡張をする時間を稼ぐため、日本の降伏を遅らせることが不可欠だった。この点において、完全な亡国に至らずに済むような何らかのアメリカとの和平案をスターリンが日本の同盟国として仲介してくれるのではないかと信じた─あるいは望んだ─日本は、スターリンの術中に陥っていたのである。(中略)また、アメリカの特定集団がアジアで「過酷な」和平を要求し続けたことも、日本の降伏を遅らせるのに役立った。(詳細は拙著『日本は誰と戦ったのか』KKベストセラーズ参照)

 この「特定集団」とは、トルーマン政権に近い民間シンクタンク「太平洋問題調査会」のことだが、ヴェノナ文書によって、この研究員の多くがソ連の工作員であったことが判明している。

 「ソ連の対日参戦を実現するまで日本を降伏させるな」。ソ連のスターリンのこうした意向を受けた終戦引き延ばし工作が、日本に対してだけでなく、アメリカのルーズベルト、そしてトルーマン政権に対して行われていた。その工作の結果、ソ連の対日参戦が実現し、中国や北朝鮮という共産主義国家が誕生してしまった。

 こうした視点がヴェノナ文書の公開以降、アメリカにおいて浮上していることを知っておいていいはずだ。新たに公開された機密文書を踏まえず、アメリカでの歴史見直しの動向も無視したまま、戦前の日本「だけ」が悪かったと言い募るような、視野狭窄(きょうさく)はもうやめようではないか。

 戦争を終わらせようと、ソ連に働きかけを依頼しようとした日本は、まさにその裏をかかれたわけですが、アメリカのトルーマン大統領も開発中の原爆の威力を試したいがために、終戦を受け付けなかったことが、明らかになっています。

 日本はこのことから、最低レベルにあったインテリジェンスを、それこそ今に「語り継ぐ」必要があります。

 江崎氏はこの「ヴェノナ文書」からは、ソ連が参戦による戦争利得を得たいがために、日本の終戦引き延ばしを画策した部分を中心に取り上げていますが、実は以前にもこのブログで述べたように、ソ連のスパイが日米開戦を画策した部分も多く記述されています。

 次回以降、その詳細を紹介したいと思います。如何に当時のソ連共産党の諜報活動が凄かったか、思い知らされますし、そしてそれは今に置き直せば、中国に通じるのではないかと私は思っています。CIAのようなインテリジェンス専門の機関もなく、スパイ防止法もない日本。9条の旗を掲げて討ち死に、と言うことにならないよう、対応議論だけでも始めなければ、と強く思います。

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