アメリカも警告、沖縄に蔓延する中国による「思想侵略」
今回は中国との関係を取り上げます。まず経済関係。中国に進出している日本企業は約1万3千社。拠点数は3万拠点以上。中国と貿易をしている企業は延べ2万社を数え、中国でビジネスを展開する日本企業は、総計で 3 万社超にも達しています。アメリカ進出企業でも9千拠点程度ですから、中国にはアメリカの3倍以上の日本企業の拠点があることになります。進出国全体の中でも、中国が約4.3割を占めています。
貿易額でも、輸出入とも中国がトップ、特に輸入では2位のアメリカの2倍以上の輸入額となっています。つまり今や中国なしの日本経済は全く成り立たないことになります。
国内回帰やチャイナプラスワンなど、脱中国化を図ろうにも、これだけズブズブに依存関係にあれば、二階幹事長ならずとも、おいそれと中国と縁を切るわけにはいかないことが分かります。経団連が中国との関係重視を続ける理由もここにあるでしょう。もはや日本にとって切っても切れない仲、それが中国なのです。
ここまでズブズブの関係になってしまったのは、やはりその市場性、それに隣国と言う地理的な意味合いもあるでしょう。それに加え、日本が数十年前に海外からよく言われていた「エコノミックアニマル」、つまり儲かるところに一斉に攻勢をかける経済至上主義の面も、大いにあるのではないでしょうか。
しかしかねてより、共産党独裁政権による「チャイナリスク」は存在していました。反日デモなどの洗礼を受けた企業も、理不尽な法的制裁を受けた企業も、かなりの数に上っています。そしてここへ来ての、習近平政権の力を背景とした「中国の夢」実現のための覇権への流れと、それに対抗するアメリカの対中制裁とがぶつかる米中の抗争劇。当然日本も中国との関係の見直しを強いられる時期に、差し掛かっているとみていいでしょう。
中国による北海道の土地の買い占めは、古くて新しい問題です。しかしより深刻な問題が沖縄にあります。尖閣諸島を「革新的利益」の領土項目に指定し、虎視眈々と奪取を狙う中国。その先には沖縄があります。その詳細について、日本沖縄政策研究フォーラム理事長でジャーナリストの仲村覚氏が、iRONNAに寄稿したコラムを以下に引用します。タイトルは『アメリカも警告、沖縄に蔓延する中国「思想侵略」にはこう戦え』(8/21)です。
米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が7月末に発表した「日本における中国の影響力」と題する報告書が注目されている。
自民党の二階俊博幹事長と今井尚哉(たかや)首相補佐官が、安倍晋三首相の対中政策に大きな影響を与えている「親中派」のキーマンとして名指しされている。ただ、このことはメディアで大きく報じられたが、「中国の沖縄工作」に触れた部分はあまり知られていない。
約50ページに及ぶ報告書は、2018年から2年をかけ、約40人の専門家にインタビューするなどしてまとめられた。その中では、「中国の沖縄工作」についても多くの文字数が割かれている。
日本の安全保障上の重要懸念の一つとして、沖縄の人々が日本政府や米国に対する不満を理由に「独立を宣言」する可能性を指摘している。中国の最重要ターゲットも、米軍基地の多い沖縄であり、外交や偽情報、投資を通じて、沖縄独立を後押ししているという。
さらに、日本の公安調査庁が2015年と17年の年次報告『内外情勢の回顧と展望』で、「中国の影響力により沖縄の世論を分断する可能性の問題を取り上げた」とし、その内容を紹介している。まずは『内外情勢の回顧と展望』を改めて確認してみよう。
2017年版では「在日米軍施設が集中する沖縄においては、『琉球からの全基地撤去』を掲げる『琉球独立勢力』に接近したり、『琉球帰属未定論』を提起したりするなど、中国に有利な世論形成を図るような動きも見せた」と記されている。さらに「『琉球帰属未定論』を提起し、沖縄での世論形成を図る中国」というコラムでは、次のように解説している。
人民日報系紙「環球時報」(8月12日付け)は、「琉球の帰属は未定、琉球を沖縄と呼んではならない」と題する論文を掲載し、「米国は、琉球の施政権を日本に引き渡しただけで、琉球の帰属は未定である。我々は長期間、琉球を沖縄と呼んできたが、この呼称は、我々が琉球の主権が日本にあることを暗に認めているのに等しく、使用すべきでない」などと主張した。既に、中国国内では、「琉球帰属未定論」に関心を持つ大学やシンクタンクが中心となって、「琉球独立」を標ぼうする我が国の団体関係者などとの学術交流を進め、関係を深めている。こうした交流の背後には、沖縄で、中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられ、今後の沖縄に対する中国の動向には注意を要する。(「内外情勢の回顧と展望(平成29年1月)」(平成28年の国外情勢)公安調査庁)
CSISの報告書は、慶応大教授の言葉を借りて、「中国は日本に影響を与えるために間接的な方法を使用している。資金調達を通じて沖縄の動きに影響を与え、沖縄の新聞に影響を与えて沖縄の独立を推進し、そこに米軍を排除するなどの隠れたルートがある」と指摘した。その上で、「中国は日本に、文化外交、二国間交流、国営メディア誘導などの温和な影響活動と、強制、情報キャンペーン、汚職、秘密の戦術などのより鋭くより悪質な活動の両方を展開している」と結論付けている。
筆者もこの報告にあるように、沖縄の琉球独立工作があらゆる面で進められていると認識している。特に、10年9月に起きた尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖での中国漁船衝突事件直後から急加速してきた。
これまで、自らを日本人と異なる琉球人という自己認識を持つ沖縄県民はほぼ皆無だった。自らを「ウチナーンチュ」(沖縄の人)という自己認識があっても、日本人という認識を持たない人もほとんどいなかった。
しかし、ここ10年間で沖縄は大きく変わってしまった。自らを日本人ではなく琉球人との「アイデンティティー」と、「沖縄は日本に植民地支配されている」という「歴史」を背景に、政治活動をする若者が多数出てきているのである。誰かに洗脳されたとしか筆者には思えないが、政治家になる若者がターゲットとして狙われたのだろう。
もし、琉球独立を公然と主張するこのような若者が、国会議員に当選すれば、沖縄の未来は危うくなる。「スパイ防止法」のない日本で長年続けられてきた「思想侵略」は、危険領域に達していると言わざるを得ない。
では、中国の標榜(ひょうぼう)する「琉球帰属未定論」は、今後どのように展開されていくのだろうか。カギとなるのが、13年5月12日の中国共産党機関紙、人民日報のウェブサイト「人民網」に掲載された論文にある。
それは「琉球問題を掘り起こし、政府の立場変更の伏線を敷く」というタイトルにも表れている。その論文には、中国は三つのステップで「琉球再議」を始動できるとし、次のように提言している。
第1ステップ、琉球の歴史問題を追及し、琉球国の復活を支持する民間組織の設立を許可することを含め、琉球問題に関する民間の研究・議論を開放し、日本が琉球を不法占拠した歴史を世界に周知させる。政府はこの活動に参加せず、反対もしない。
第2ステップ、日本の対中姿勢を見た上で、中国政府として正式に立場を変更して琉球問題を国際的場で提起するか否かを決定する。一国の政府が重大な地政学的問題において立場を調整するのは、国際的に珍しいことではない。その必要が確かにあるのであれば、中国政府はこのカードを切るべきだ。
第3ステップ、日本が中国の台頭を破壊する急先鋒となった場合、中国は実際の力を投じて沖縄地区に「琉球国復活」勢力を育成すべきだ。20〜30年後に中国の実力が十分強大になりさえすれば、これは決して幻想ではない。日本が米国と結束して中国の将来を脅かすのなら、中国は琉球を日本から離脱させ、その現実的脅威となるべきだ。これは非常にフェアなことだ。
さて、現在の日中関係はどのステップに位置するのだろうか。筆者はまもなく第3段階に突入すると見ている。
まず、国際社会は米国を中心に、対中包囲網を構築しつつある。日本は心もとない面もあるが、結果的に米国側に付いて、対中姿勢を強めていくことになる。
また、現在は尖閣諸島をめぐって、日中がかつてない緊張した関係にある。この二つの要素から、「琉球再議」第3段階の「日本が中国の台頭を破壊する急先鋒」に該当するため、中国が沖縄に「琉球国復活」勢力育成を実行する段階に突入することになるだろう。中国にとっては、沖縄の独立工作が思うようにいかず、準備不足の部分も多いと思うが、それでも最終段階にさしかかっていると見ている。
現在、日本の対中安全保障の課題としては、尖閣諸島周辺海域に、中国海警局の武装公船などが連日のように侵入していることが挙げられる。また、8月16日の休漁期間終了後、尖閣諸島領海に多数の中国漁船を送り込んでくる可能性も指摘されている。
海上保安庁と沖縄県警、自衛隊は、尖閣諸島で起きるさまざまな事態を想定して、対処方法を検討し、訓練を続けているとみられる。だが、これだけでは、中国による尖閣・沖縄侵略に対峙(たいじ)する「図上演習」は不十分といえる。
軍事的な側面について、自衛隊はもれなく想定できるだろうが、琉球独立工作を含む中国の外交的反応は、現時点で既に日本人の想定を超えており、推測不可能だからだ。
例えば、中国が日本政府を飛び越して、沖縄県に直接「尖閣諸島と東シナ海の共同開発」を提案し、玉城デニー知事が提案を受け入れた場合、どうなるだろうか。しかも、沖縄の新聞が世論を誘導し、沖縄経済界も共同開発を望んだら、どうなるだろうか。
常識的には、外交権は日本政府に属するため、外交権のない沖縄県には不可能だ。しかし、国連では2008年以降、自由権規約委員会と人種差別撤廃委員会から日本政府に「琉球・沖縄の人々を先住民族と認め、その権利を保護すべきだ」という勧告が5回も出されていることを忘れてはならない。
琉球独立派が、国連人権理事会などに「琉球の自己決定権がないがしろにされた」「中国と沖縄の外交を認めよ」と訴えかねない。訴えを受けた国連も「琉球・沖縄の権利を保護せよ」と日本政府に勧告を出す危険性がある。
万が一日本政府が妥協して、沖縄が中国と独自外交を展開することになった場合、その先に何が待ち受けるのかは、語るまでもないだろう。中国の思惑通り、沖縄を日本の「一国二制度」行政区にし、中国によるコントロールを強化していくに違いない。
CSISも報告書で危惧するように、中国は尖閣関連の混乱に乗じて、あらゆる手を使って沖縄を日米から引き剥がしに動いてくるはずだ。ぜひとも、尖閣有事の図上演習には、自衛隊のみならず、外務省や公安調査庁も参加してほしい。
その際には、琉球独立につながる沖縄の政界や経済界、マスコミ、国連の各組織の動向も「要素・要因」として組み込む必要がある。それらの要因をしっかり米軍と共有して対処することこそ「中国の野望」を打ち払う最善の策ではないだろうか。
「アメリカも警告」、ここにこの問題の根深さがあります。つまり日本の政府・政治家やマスコミ自身が、「中国の沖縄工作」をどれだけ認識しているか、と言う点です。マスコミでも朝日や毎日両新聞、沖縄タイムスや琉球新報はむしろ歓迎しているかもしれませんが。
それはさておき、日本では「来年のことを言えば鬼が笑う」と言う諺があるように、物事を短絡的に考え、処理する傾向があります。ですから少子化も安全保障も何もかも、長期的視野で考えません。予算も相変わらず単年度主義ですし、今が安全だから将来も安全だろうと、国防やインテリジェンスの強化など、長期的に見た不測の事態に備える視点がありません。今回のコロナのような厄災にも言えるのかもしれません。
ところがこのコラムの中で、「20〜30年後に中国の実力が十分強大になりさえすれば」と言う文言があるように、中国は数十年後を見据えて物事を考えている、つまり長期的な戦略立案に長けているのです。改革開放戦略などまさにそれでしょう。
日本も20〜30年後を見据えて、国家戦略を考えることができる政府や政治家であれば、人口問題などは待ったなしの課題でしょう。しかし4半期のGDPが戦後最大の落ち込みと言っただけで、「アベノミクスの失敗だ」と大騒ぎする政治家たちに、それを期待するのは無理かもしれません。
ぼやぼやしていればこのアメリカからの警告の通り、20〜30年後には、いやもっと早い時期に沖縄は独立し、中国の傀儡政権が出来ているかもしれません。絶対そうならないように日本も対応する必要があります。そのためには毎回述べていますが、国会議員の質の向上が欠かせません。しかしそのための法や制度を造ろうとしても、立法府である国会議員に託すしかないのです。本当にため息が出てきます。
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