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2020年8月 6日 (木)

え!あの人が「正論」? 危機に対する「安全改革」に反対する政治家を糾弾

2020032800002_1  今回は少し視点を変えて、「誰でも正論は発信できる」と言う格好の例を見つけましたので紹介します。

 田原総一朗氏と言えばどちらかと言えば、権力に対して批判的で左側の人間だ、と言う評価があります。口さがない人たちは、「老害だ、もう引退したほうがいい」、「論点があいまいで揺れ動く、訳が分からない」、「人の発言を途中で止めて自己主張する、傲慢だ」等々、最近はあまりいい評価はないようです。まあ石原慎太郎氏の対極にある「暴走老人」かもしれません。

 ところでこの田原総一朗氏が、私見ですが「正論」と思われる文章を寄稿しています。それもサヨク雑誌を代表する「週刊朝日」にです。ネット公開はこれも朝日新聞系列のAERA dot.で、タイトルは『コロナ危機の“安全改革”になぜ政治家は反対するのか』(8/03)です。

 感染拡大が止まらない新型コロナウイルス。ジャーナリストの田原総一朗氏は、政治家のコロナ危機への対応と安全保障への姿勢は通じるものがあると気づいたという。

*  *  *

O0480034013675997731  私は先週のこのコラムで、専守防衛という言葉のインチキさについて記した。繰り返し記すが、「専守防衛」を防衛の公式見解として強調したのは、当時防衛庁長官だった中曽根康弘氏である。

 この言葉が、私にはさっぱり理解できなかった。

「専守防衛」とは言ってみれば本土決戦で、こんなことをやれば1千万人以上の日本人が犠牲になる。そこで、中曽根氏が首相になってから、直接このことを問うた。すると、中曽根氏は「専守防衛とは、戦わない、ということだ」と答え、日本の安全保障について、「日本のために戦うのは米軍だ。あのような憲法を押し付けたのだから。だから、日本は米国と仲良くする。つまり米国との同盟関係を強めればよい。それが安全保障ということだ」と続けた。

 この中曽根理論を自民党の歴代首相は受け継いできた。だが、米国がパックス・アメリカーナを半ば捨てていることで、中曽根理論は破綻している。

 このことを先週記したのだが、与党も野党も含めて、政治家からの反応はほとんどなかった。

 何と、与党も野党も「専守防衛」で日本の安全保障は心配ない、と捉えているようなのだ。

 私は、与野党の大幹部数人に、「今、日本は大変な事態にあるのではないか」と確かめた。誰もが、私の言うことに大きくうなずいた。「だが、この国では安全保障に取り組むのは大変危険なのですよ。各政党からもマスコミからも危険人物というレッテルを貼られる」と、特に与党幹部が小声で答えた。

 実は、こうした安全保障への姿勢と、新型コロナウイルス危機に対する姿勢には通じるものがある。

 現在、自民党内でコロナ危機に対応するために、体制の抜本改革の動きが起きている。だが、この抜本改革には、厚生労働省を始め、少なからぬ既得権益勢力が強く反対していて、自民党内にも反対勢力が多いのだという。

 4月に官邸で安倍首相に会ったとき、「なぜ緊急事態宣言を出すのがこれほど遅れたのか」と問うた。すると安倍首相は、「緊急事態宣言にほとんどの閣僚が反対したのだ」と答えた。

 その数カ月前に、どのマスコミも、日本の財政事情は先進国最悪で、10年近くで破綻すると報じていた。安倍首相は、緊急事態宣言をすれば少なくとも100兆円以上の出費が必要で、財政破綻が早まるだけだと危惧したのである。だが、欧州の国々がいわゆる緊急事態措置を取っていることを知り、有事に財政事情をうんぬんしていられないことがわかって、遅ればせながら宣言をしたのだという。

 明治以来、感染症対策は都道府県、保健所、地方衛生研究所などの地方が中心になってやることになっていて、しかも感染症データの管理・開示がバラバラで、きわめて不統一なのである。

 自民党内の一部では、感染症の危機対応、そして管理を国の責務として位置づけようとしているのだが、これに対しても反対が強いのだという。

 また、各国と比べても少ないと指摘されるPCR検査についても、保健所の権限が強すぎるなどの縛りがあって、法改正をしないと拡大できないのだという。

 なぜ、国民の安全に関わる改革には反対が多いのだろうか。

 そうです。なぜ、国民の安全に関わる改革には反対が多いのでしょうか。それを議論しなければならない環境が、いま日本の内外に山積しているのに、です。    

O0640048014799818135  コロナ危機に対しては6月に出版された、門田隆将氏の著書「疫病2020」に、厚生労働省の人命を重視しようとしない体質と、それによる不作為の実態が辛辣に記述されていますが、官僚自体がまず危機意識がない好例でしょう。それに引きずられて、厚労相を始めとする各閣僚が危機意識を持たない、それが実態です。

 疫病だけではない。安全保障についても全く同様なことが言えます。それは田原氏が引き合いに出している中曽根元総理の発言に凝縮されているでしょう。つまりアメリカが押し付けた憲法だから、アメリカに防衛の片棒担ぎをやってもらうのは当たり前、そういう認識です。

 そこには主権国家と言う独立国が当然持つべき理念がありません。押し付けられた憲法なら、独立国家として主権を回復すべく、改正すればいいだけなのに、それをせずに対米従属の安全保障を、国のトップが恥ずかしげもなく言うのは、全く危機意識がないと言わざるを得ません。

 勿論集団安全保障は大事ですし、その最大の同盟関係である日米同盟は重要です。しかし国内に多くの米軍基地を置かせ、自衛隊の憲法上の位置づけも曖昧なまま、専守防衛を柱にするなど、全く独立国家の体をなしていない、と思います。

 今日までこの体制で、一度も戦争に巻き込まれていない、これが最もいい仕組みではないか、と言う議論があるでしょう。しかし世界を俯瞰して見た場合、こんな国はありません。左側の人たちは逆に、他の国にないこの憲法とこの体制が、世界に誇れる平和を維持するいい仕組みだというのでしょう(明らかに中国や朝鮮にとってはいい仕組みかもしれませんが)。

 だったら国連を通じて、9条を推奨しつつ他の強国に基地を提供して守ってもらうように、各国に働きかけたらいかがでしょうか。恐らく一国たりともそうしたいという国は現れないでしょう。何故か、主権が持てなくなるからです。

 以前のブログで述べたように日本は戦後「デュープス」感染症が拡大し、危機意識を持たない「お花畑」思考の人たちで溢れるようになりました。そして田原氏の記事の中にあるように、政治家の中で安全保障論議に取り組もうとすると、「各政党からもマスコミからも危険人物というレッテルを貼られる」状況が生じ、叩かれるのを覚悟しなければならない、異常な国なのです。

 つまり憲法改正論議に見られるように、議論自体が俎上に乗らない、入り口から門を閉じられるのです。自衛隊のポジティブリスト制度の変更も、攻撃型ミサイルの導入も、すべて入り口で反対勢力の攻撃にさらされ議論に入れない状況です。ましてや米軍基地廃止に至っては完全にタブーで、アメリカからも反対されるでしょう。

 コロナや安全保障以外にも、危機状況はいくつかあります。少子高齢化がその筆頭でしょうし、それに伴う税収減と財政支出の増大、経済の縮小、過疎化や限界集落の拡大、空き家や空き地の増大とそれに伴う犯罪や野生動物による被害の増大等々。

 国会議員にその対応のための立法化が急務なのに、議論さえ進みません。明らかに放っておけば国は衰退の一途です。しかし中国はそれを望んでいるでしょう。ですから朝日新聞やTBSなどのメディアを通じて更なる「デュープス」を生み出す努力を続けるでしょう。そして弱体化した日本を属国化。彼らの長期戦略はそこに行きつくと思います。

 本当に10年後、20年後を見据えた政治家が出て来てほしいと思います。日本を救うために。

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