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2020年9月 7日 (月)

朝日新聞はなぜ世論から隔絶してしまったか?

Img_6c749bfd84ed5bb9254767b512bffac76043  様々なメディアで、政権の支持率などの世論調査が行われています。いつも疑問に思うのは、その調査相手はどういう人で何人規模なのか。つまり結論として出て来ているその調査結果が、本当に国民の各層の平均的民意を反映したものなのか、と言うことです。

 そして質問の内容や質問の仕方など、どういう方法で行っているのかよくわからない場合があります。この世論調査の疑問点を、政策コンサルタントの原英史氏が、JBpressにコラムを寄稿しているので引用します。タイトルは『朝日新聞はなぜ世論から隔絶してしまったか? 社論と異なる世論調査結果、メディアは真剣に受け止めているか』(9/06)です。

 世論調査のかなりの部分は、本気で民意を測っているわけではない。例えばここ数年の朝日新聞では、世論調査を受けて、こんな見出しの記事が出ることが多かった。

・検察庁法改正「反対」64% 朝日調査(2020年5月)

・桜を見る会の首相説明「十分ではない」74% 世論調査(2019年12月)

・森友問題「決着ついていない」79% 朝日世論調査(2018年6月)

・加計問題「疑惑は晴れていない」83% 朝日世論調査(2018年5月)

「83%」などと極めて高い数値が示され、インパクトは強い。だが、これは裏を返せば、「たいていの人はそう答える」と分かりきった、わざわざ聞くまでもない質問をしたことを意味する。結論先にありきの調査だったわけだ(さらに、質問文で「たいていの人はそう答える」ように細工が施されていることもある。具体例は『正論』9月号掲載の拙稿『民意測れない世論調査』で説明したので、ご関心あればご覧いただきたい)。

紙面では政権批判してきたのに、世論は安倍政権を「評価」

 ポイントは、「たいていの人の答え」と「新聞の論調」が合致していたことだ。モリカケ・桜が典型例だが、記事・論説で政権を厳しく批判し、“トドメ”として「国民のほぼ総意だ!」と世論調査を使うスタイルが、パターンの一つとして確立していた。

 異変が起きたのが、2020年9月の世論調査だ。

 9月4日、『安倍政権を「評価」71% 本社世論調査』との見出しが掲げられた。

 これは朝日新聞の論調とは正反対。社説(8月29日付「最長政権突然の幕へ『安倍政治』の弊害 清算の時」など)では、

・「安定基盤を生かせず」成果は乏しかった、

・「長期政権のおごりや緩みから、政治的にも、政策的にも行き詰まり、民心が離れつつあった」、

 などと厳しく批判し、失政を検証する記事を次々に掲載する最中だった。

 おそらく朝日新聞は、逆の結果を想定していたと思う。「安倍政権を評価しない=7割」、「安倍政権で政治への信頼感低下=8割」などと見出しにしようと考えていたら、「評価する=71%」、「政治への信頼感は変わらない=59%」などと思わぬ結果が出てしまったのでないか。

 ちなみに、質問文でちょっとした小細工を施しておけば(例えば「安倍首相が任期途中で突然辞任を表明しましたが・・・」と、政権放り出しを想起させるフレーズを加えるなど)、結果はかなり違ったはずだ。だが、そんな小細工は無用と思うほどに「国民の大半は評価していないに決まっている」と確信していたのだろう。

 調査結果では、想定に反し、多くの国民は安倍政権を高く評価していたこと、特に外交・安保や経済政策で評価していたことが示された。

局地的な世論誘導に傾注、民意計ることが疎かに

 なぜ朝日新聞は民意を捉えそこなったのか? 答えは、冒頭に戻って、本気で民意を測ろうとしてこなかったからだ。

 最近の世論調査で質問項目に並べられていたのは、モリカケ・桜をはじめ、朝日新聞が「重要」と考えるテーマだった。その一方で、国民が何を「重要」と考えているかは、ほとんど調べてこなかった。かつての朝日新聞の世論調査はそんなことはなかった。80年代の調査では、景気、社会福祉、教育、政治浄化、行政改革、外交、防衛などのテーマを並べ、何に関心・不満があるか、内閣に何を期待しているかを問うのが定番だったが、こうした質問は近年は稀になった。

「国民が何に関心を持つべきか」は自分たちが示し、国民を教え導く。そんな“上から目線”を強めてきた結果、局地的な誘導には成功したかもしれないが、徐々に民意から大きく乖離してしまったのだと思う。新聞発行部数の減少はその表れの一つだ。

 今回の世論調査は、朝日新聞にとって良い機会だと思う。これまでの紙面が国民の多くの関心・期待に応えてきたのか、この際しっかり検証したらよい。民意を正しく測るため、世論調査の改良にも取り組んだらよい。

 民意からの乖離は、朝日新聞に限らない。マスコミ全体の課題でもある。さらに、マスコミのとりあげるテーマを偏重してきた国会論戦も同じ問題を抱える。マスコミ報道と国会論戦がいかにおかしくなっているかは、高橋洋一氏との共著『国家の怠慢』で詳しく論じた。どんな政権になろうと、民主主義の適正な機能のために、マスコミと国会の改革は不可欠だ。

 実は私も『安倍政権を「評価」71% 本社世論調査』と言う見出しを見て、え!これ朝日新聞の調査なのか、と目を疑ったことを覚えています。もちろん産経や読売新聞の調査では驚かなかったでしょうが。

 ただ冒頭述べたように、例えば新聞の世論調査は購読者に対して行っているのか、無作為に選んだ電話番号で実施しているのか分かりません。購読者対象でもこの結果だとすれば、朝日新聞の購読者はあまりその論調に洗脳されていないことになり、朗報ですが。

 NHKなどの調査では、よく電話による方法で、数千人を対象に回答率6割、と言うような調査が行われていますが、まず対象数が少ないのはいいとしても、回答率が低いと回答しない人たちの意見が拾えず、偏った調査結果が出る可能性もあります。それにこれほど頻繁に行われれば、注目度も下がってしまいます。

 前回行われたアメリカの大統領選での、支持率と実際の選挙結果が異なった現象などを見ていると、この世論調査の意味合いが、単なるメディアの注目度アップのような気もしてきます。ですから政権は、各々のメディアの調査結果に一喜一憂することなく、地道に政策を実施していけばいいでしょう。そして最終的には選挙でその民意が明確になります。

 原英史氏も述べているように、マスコミ報道だけでなく国会論戦の質の低下も目を疑いたくなるほど酷い(以前からかもしれません)、この国会も制度や運営を含め、抜本的に変えていかないと、いくらいいリーダーや閣僚を迎えても、日本政治の低生産性は改善されないと思います。コラム最後のマスコミと国会の改革は不可欠だ」、大いに賛同します。

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