中国の少数民族弾圧、チベット、ウイグルに続き内モンゴルまで
中国共産党による少数民族の弾圧、迫害は広く世界に知れ渡っています。しかし日本での実態はというと、メジャーなメディアではわずかにしか報道されていません。そしてその人権蹂躙の酷さは目を覆うべきものなのに、日本で「人権派」と呼ばれる識者や弁護士は、なぜか声を上げません。
日本の中での政権への「忖度」を、口やかましく非難する人たちが、中国共産党への「忖度」を最大限行っている構図が透けて見えます。
中国共産党はチベット、ウイグルに続いて内モンゴルまでその魔の手を伸ばしています。アントニオ・グラセッフォ氏がNewsweek日本版に寄稿したコラム『内モンゴルの小中学校から母語教育を奪う中国共産党の非道』(9/10)を以下に引用掲載します。
<ウイグルやチベットに対する中国の人権侵害は国際社会に広く知られているが、内モンゴル自治区の実情はなかなか表に出てこない>
「モンゴル語はモンゴル人の一部。言語を失えば、民族のアイデンティティーを失う」。横断幕にはそう書かれていた。
中国北部の内モンゴル自治区政府は、この9月に始まる新年度から小中学校でのモンゴル語による授業を大幅に減らすと発表。これによって、語文(国語)、政治(道徳)、歴史の3教科が、標準中国語で教えられることになった。
この措置にモンゴル人の保護者が反発。新学期以降、子供を学校に送らなかった。モンゴル人の児童・生徒が約1000人いるナイマン旗地区では、新学期初日に登校した子供が10人にとどまった。
ネット上に公開された動画には、子供を学校から連れ帰ろうとするモンゴル人保護者と、これを阻止しようとする警官がにらみ合う場面を捉えたものもある。BBCによれば、抗議行動に対応するため数百人規模の警官が投入されたある地区では、数時間に及ぶにらみ合いの末に、保護者が警察のバリケードを突破して子供たちを連れ戻した。
モンゴル人の子供たちが「私たちの母語はモンゴル語!」「私たちは死ぬまでモンゴル人!」と叫んでいる動画もある。伝統衣装を着たモンゴル人男性がハラ・スルデと呼ばれる黒い旗を掲げている動画もあった。ハラ・スルデには、敵を倒すためにモンゴル人の精神と力を結集するという意味合いがある。
中国の憲法は、国内の「全ての民族は平等であり、国家は少数民族の合法的権利と利益を守る」と定めている。しかし中国当局は建国以来、少数民族の権利をゆっくりと奪ってきた。
今回の措置も少数民族の同化策の一環だ。モンゴルやウイグルなど少数民族の女性と結婚する漢民族の男性に、多額の手当を支給する地域もある。
内モンゴルの住民には信教の自由もない。中国で許されている仏教信仰は、共産党の中央統一戦線工作部の下にある中国仏教協会だけ。しかしモンゴル人の間に広まっているのは、ダライ・ラマを最高指導者とするチベット仏教だ。中国政府によるチベット仏教やダライ・ラマとの交流への制限は、チベット人だけでなくモンゴル人にも影響を及ぼしている。
国際社会では、新疆ウイグル自治区やチベット自治区に対する中国の人権侵害はよく知られている。それに比べると、内モンゴル自治区の実情はなかなか表に出てこない。
内モンゴル自治区に対する今回の中国の措置は、国境を接する民主主義国家のモンゴルでも大きな注目を集めている。モンゴルの人口は約330万人。内モンゴル自治区では人口約2600万人のうちモンゴル人が400万人を超えており、隣国のモンゴル人口を上回る。モンゴル人同士の情報共有や組織化を阻むため、中国国内で唯一のモンゴル語SNS「バイヌ」は既に当局に閉鎖された。
モンゴルの人々は、内モンゴル自治区の窮状を懸念している。だがモンゴルは中国に対して経済面で大きく依存しているため、強い姿勢には出られない。
モンゴルの輸出の8割以上が中国向けであることを利用し、中国が同国に経済的な制裁を加えたこともある。2016年にモンゴルがダライ・ラマ14世の訪問を受け入れると、中国はモンゴルからの輸入品に高関税を課した。
いま中国が国内に残るわずかなモンゴル文化を抑圧しても、モンゴルの人々は悔しさをのみ込みつつネットを通じて見つめるのが精いっぱいだ。
チベット、ウイグルに続いて第3の少数民族地域にも、共産主義の浸透と漢民族の入植を図るため、独自の言語や宗教、文化を破壊し続ける中国共産党。これは数世紀前の、欧米の白人による南北アメリカやアフリカ、アジアの植民地と全く同じ構図です。
ウイグルについては様々な報道がありますが、ここで改めて取り上げてみます。同じNewsweek日本版の記事から引用します。寄稿者はライハン・アサット(弁護士、米テゥルク系民族弁護士協会会長) 、ヨナー・ダイアモンド(ラウル・ワレンバーグ人権センター・法律顧問)、タイトルは『ウイグル人根絶やし計画を進める中国と我ら共犯者』(7/16)です。
<男性を収容し、女性に不妊手術を施し、子供を親から引き離すおぞましい民族抹殺計画。ウイグル人の強制労働で作られたブランド製品やその消費者にとっても他人事ではない>
最近伝えられた2つのおぞましいニュースで、中国政府が新疆ウイグル自治区で行なっているウイグル人弾圧の残虐極まりない実態と恐るべきスケールに世界はようやく気づいた。
1つは、米シンクタンクの調査で、ウイグル人女性に組織的に不妊手術が行われている実態が明らかになったこと。そしてもう1つは、米税関と国境警備局が新疆ウイグル自治区から発送されたかつらや付け毛など毛髪製品13トンを押収したというニュースだ。これらは収容所に入れられたウイグル人の髪を強制的に切って作られたと見られる。
この2つの出来事は世界の別の地域で過去に行われた残虐行為とぞっとするほど重なり合う。一部の国々が、少数民族や障害者、先住民に断種手術を強制してきたこと。そしてアウシュビッツ収容所の展示室のガラスの向こうに山積みにされた毛髪の山......。
ジェノサイド条約(中国も締約国だ)では、集団の構成員に以下のような行為を加えることをジェノサイド(集団虐殺)と定義している。(a)殺す、(b)重大な肉体的または精神的危害を加える、(c)集団の物理的な破壊をもたらす生活条件を故意に強いる、(d)集団内の出生を妨げることを目的とした措置を課す、(e)集団内の子供を強制的に他の集団に移す。このうちの1つでも当てはまればジェノサイドと見なされる。夥しい数の証拠が示す中国政府の組織的なウイグル人弾圧は、これら全ての項目に当てはまる。
でっち上げの罪で投獄
ウイグル人は、テュルク系の少数民族で、多くは世俗的なイスラム教徒だ。中国政府は100万人超のウイグル人を強制収容所や刑務所に入れてきた。被収容者は軍隊式の規律を強いられ、思想改造や自己批判を強要される。虐待、拷問、レイプは日常的に行われ、殺されることすらある。生存者の証言から浮かび上がるのは、殴る蹴るの暴行、電気ショック、水責め、心理的ないじめ、中身の分からない注射を打つといった蛮行がまかり通っていること。身体的・心理的に耐えがたい危害を加え続けて、ウイグル人の精神を破壊することが、強制収容所の目的なのだ。
中国政府は繰り返し、「彼らの血筋を断て、彼らのルーツを壊せ、彼らの人脈を断ち切り、起源を破壊せよ」と命じてきた。「逮捕すべき者は1人残さず逮捕せよ」とも。
ウイグル人の出生率を組織的に下げる計画が実施されてきたことも明らかになった。そこから見えてくるのは、ウイグル民族そのものを抹殺しようとする中国政府の意図だ。
ウイグル人弾圧を象徴的に示すのが、この記事の執筆者の1人、レイハン・アサットの兄エクパル・アサットがたどった運命だ。中国共産党は以前、彼を模範的な中国人と認め、ウイグル人住民と新疆ウイグル自治区当局の「橋渡し役」を務め、「建設的な力」になっていると褒めたたえていた。しかし彼は2016年に突然消息を絶ち、伝えられるところによると、「民族の憎悪をあおった」というでっち上げの罪に問われ、15年の刑を言い渡されて服役しているという。私たちは当局に裁判記録の開示を請求したが、なしのつぶてだ。
新疆ウイグル自治区は2017年、「産児制限違反の取締り強化」を打ち出し、それに関連して市町村当局に一連の措置を命じた。目標は「産児制限違反ゼロ」。2019年までに出産適齢期の女性の80%超に子宮内避妊具(IUD)を装着させるか不妊手術を受けさせる計画が実施されることになった。
当局の文書では、2019年と2020年に公費で何十万件もの不妊手術が実施されたことが報告されている。人口1人当たりでは、中国で「一人っ子政策」が実施されていた時期に、全土で強制的に実施された件数をはるかに上回る不妊手術が行われたことになる。
当局は、目標達成のために情報網を張り巡らし、出産可能な年齢の女性を次々に呼び出した。呼び出されれば、強制的な不妊手術を受けるか、収容所送りになるしかない。収容所に入れられれば、注射や人工妊娠中絶を強いられたり、中身の不明な薬を飲まされたりする。
統計を見ると、当局は順調に目標を達成しつつある。
2015年から2018年の間に、ウイグル人地域では、人口増加率が84%も減っている。それと反比例するように、公式データでは、新疆ウイグル自治区における不妊手術の実施率が急増し(中国の他の地域では急減)、それに関連した公的支出も増加している。
徹底した監視システム
自治区のある地域では、2017年と比べ、2018年には、不妊になった女性は124%、夫と死別した女性は117%増加している。また、新疆ウイグル自治区の人口は中国全体の1.8%を占めるにすぎないが、2018年には中国のIUD装着の80%が新疆ウイグル自治区で実施されている。
強制的に装着されたIUDは、当局の許可なしには抜去できない。無断ではずせば、刑務所送りだ。自治区の都市カシュガルでは、出産適齢期の既婚女性のうち、2019年に出産した人は約3%にすぎなかった。自治区内の一部地域の最新版の年次報告書には、組織的な断種キャンペーンを隠蔽するためか、出生率のデータが記載されていない。自治区当局は人口動態データが物議をかもしたため、公式ホームページを閉鎖した。名目上は産児制限違反の取締りと言いつつ、その対象と規模を見れば、ウイグル人の出生を妨げる意図は明らかだ。
男性を収容し、女性を不妊にすることで、中国政府はウイグル民族の血統を完全に絶やそうとしている。分かっているだけでも50万人のウイグル人の子供が親元から引き離され、「児童シェルター」と称する施設に入れられている。
このジェノサイドは極めて特殊な危険性をはらんでいる。高度な技術を駆使して効率的に民族浄化が行われ、なおかつ国際社会の目を巧妙に逸らしているからだ。
最も高度な技術を誇る警察国家が、宗教、家族、文化から人間関係に至るまで、ウイグル人の生活の隅々まで監視の目を光らせ、統制している。監視を効率化するため、新疆ウイグル自治区は網の目状の管理システムを導入。人口約500人単位で市町村を分割し、1区間ごとに警察署を置いて、住民のIDカード、顔、DNAサンプル、指紋、携帯電話を頻繁にチェックしている。
こうした監視を支援するのが、「一体化統合作戦プラットフォーム」(IJOP)だ。監視カメラの映像、スマートフォンなどから個人情報を収集・解析し、収容所送りの「危険分子」のリストを作成する。漢族の監視要員100万人超が、ウイグル人の動きを見張るアプリをダウンロードし、家族間のやりとりなどもチェックし、疑わしい内容があれば逐一当局に知らせている。
中国は世界で最も強引に個人情報に介入する大衆監視システムを運営しているが、国際社会がその実態を知ろうとしても、秘密のベールに閉ざされたままだ。今すぐ調査を実施し、ジェノサイドの性質、深度、スピードを明らかにしなければ、手遅れになる。
ウイグル人弾圧をジェノサイドと認定するかどうかは生死を分ける問題だ。1994年、米政府が延々と議論を続けた挙句に、ようやくルワンダの状況をジェノサイドと認めた時には、100万人近いツチ族が殺されていた。虐殺の嵐が吹き荒れていた1994年5月1日付けの米国務省の文書には、「ジェノサイドと分かれば、(米政府が)何らかの対応を取ることになる」と書かれている。
当時のビル・クリントン米大統領は、その4年後に生き残ったルワンダの人々を前に、米政府の歴史的な過ちを認め、「証拠を目前にしながら、ためらうようなことは二度と繰り返さない」と誓った。
今年5月に米上院で「ウイグル人権政策法案」が可決されたことは、アメリカが踏み出した建設的な一歩だ。これにより、またもや人道的な悲劇が繰り返されることを回避できるだろう。米政府が中国当局にマグニッキー法(「人権侵害や汚職に関与している」とみなす外国人に対して適用する法律)に基づく制裁を科すこと、さらにはジェノサイドなどの残虐行為に対して、正式に非難声明を出すことを盛り込んだこの法案は、上院で圧倒的多数の支持を得た。
誰もが共犯者に
米政府はこれまでに人権を侵害する監視システムの運営とウイグル人の収容所の拡大にかかわったとして、中国の高官4人と1つの機関を制裁対象に指定した。加えて、ウイグル人弾圧をジェノサイドに該当する行為として、正式に糾弾する必要がある。これはそう難しいことではないはずだ。その証拠に、米国務省のモーガン・オータガス報道官は「ウイグルの人々の身に起きていることは......ホロコースト(ナチスのユダヤ人虐殺)以降、私たちが目にした最悪の犯罪だろう」と述べている。
米政府がウイグル人弾圧をジェノサイドとして非難することはただの象徴的な行為ではない。ほかの国々も抗議に加わり、消費者もウイグル人の強制労働などで製造されている80の国際ブランドの製品の不買運動に協力するだろう。中国の工場でウイグル人に現代版の奴隷労働を強い、不当な利益をむさぼっているグローバル企業も、抗議の声が高まれば、サプライチェーンの見直しを迫られる。企業にはジェノサイドに加担して利益を上げるような行為を慎み、倫理的な調達を行うよう強力な圧力がかかるはずだ。
世界各地の人々が経済的にも社会的にも密接に結び付いている今の世界では、ジェノサイドが行われていることを知りつつ知らん顔をしていれば、ただの傍観者ではすまされない。黙っていれば、共犯者になる。
「身の毛もよだつ」という表現が完全に当てはまる、このウィグル人への弾圧。中国軍による「通州事件」やソ連兵による「シベリア抑留」、朝鮮人による「引上げ者への蛮行」を連想します。日本の戦前の軍や併合国家での汚点についてはかなり誇大視し、捏造も加えて報道するNHKは、これらの事件を始め、ライダイハンやこのチベット、ウイグル、モンゴルの残虐な迫害事件の特集を組んだという記憶はありません。
同じ公共放送である英国BBCは頻繁に取り上げているのに、NHKは何をそんなに中国に「忖度」しなければならないのでしょう。日本の国際的な人権への取り組みや報道の在り方の抜本的改革も、菅新政権の課題の一つではないでしょうか。
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