菅総理の『自助論』に賛同する理由 国会で「エダノミクス」派と論戦を
今回は菅政権に閣僚として呼ばれるのではないか、と一時取りざたされた橋下徹氏のコラムを取り上げます。彼は2万%ないと言っていましたが、私は2億%ないと思っていました。
それはともかくとして、今回取り上げたのは保守層の中には橋下嫌いの人も多いと思いますが、以前取り上げた田原総一朗氏と同様、これは!と思われる意見もあるからです。特に新型コロナ対策で彼の掲げた、特措法の欠陥、つまり「強制と補償」の欠落を言い当てた時、私の考えと完全に一致しました。それ以来彼独自の一方的な物言いに対し、意見が合わないときもありますが、彼の言動には少なからず注目をしています。
そして今回取り上げるのは菅新総理に関する彼の見解です。PRESIDENT Onlineに寄稿した『橋下徹「僕が菅総理の『自助論』に賛同する理由」 国会で「エダノミクス」派と論戦を』(9/23)で以下に引用掲載します。
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いよいよスタートした菅義偉政権。実務家・改革派をそろえた組閣人事で期待感が高まるが、「自助・共助・公助」に言及した菅氏のスピーチに違和感を示す人もいる。大阪府知事・大阪市長として大改革を進めた橋下徹氏はどう評価するか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月22日配信)から抜粋記事をお届けします。
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菅内閣が進めるのは「安倍政治の完成」である
はっきり言うけど、菅総理にビジョンがないと言っているメディアはかなり危ないね。万年政権与党の自民党と万年野党の社会党で構成されていた1955年体制の政治から意識が抜け出せていないんだろう。
自民党が万年政権与党だったときには、自民党内の総裁(=総理大臣)争いによって、ある種の政権交代(疑似政権交代)が起きていた。だから自民党内で総裁が変わるごとに、新総裁のビジョンというものが問われるのが当然だった。
しかし、今は、形の上では与野党が政権交代する二大政党制を前提としている。
ということは、自民党は党組織としてのビジョンを掲げて、誰が総裁になったとしてもそのビジョンを実現していくという組織マネジメントが必要になる。
総裁の属人的なビジョンから、党の組織的なビジョンへ。
(略)
菅さんは、7年8カ月の間、政府ナンバー2の官房長官として安倍政権を支えてきた。当然安倍政権の掲げたビジョンというものに、菅さんは関与もしているし責任も負っている。つまり安倍政権のビジョンは、菅さんのビジョンでもある。
(略)
菅さんは、安倍政権を基本的には継承すると明言しているのだから、国家像もビジョンも安倍政権のものと同じということで明確だ。
特にアベノミクスの3本の矢について、安倍さんは金融緩和と財政出動は実現した。他方、成長戦略と言われた規制改革のところが不十分だったと、これまでさんざんメディアや学者は批判していたじゃないか!!
だから菅さんは、このアベノミクスで不十分だった規制改革に力を入れると宣言した。
まさに菅さんは、安倍政治を完成に向けようとしているんだ。
一人の政治家がなんでもかんでもすべて完璧に実現できるわけではない。改革のテーマが大きくなればなるほど、何人ものリーダーが連なって実現するしかない。
(略)
政治において最も重要な目標は国民が「飯を食っていけること」
政治の目標や目的は考えれば考えるほど無限に出てくる。
それでもその中から何か一つを選べと言われれば、やはり国民がきちんと「飯を食っていけること」になるだろう。
ここでメディアを通じて政治評論をおこなう、いわゆるインテリたちの感覚とズレが生じる。
というのは、政治評論をするインテリたちのほとんどは、飯を食うことに困っていない。だから政治に求める目標や目的が、どうしても「高尚」なものになってしまうんだ。
(略)
しかし大多数の国民にとって一番重要なことは、ちゃんと飯を食っていけることなんだ。
(略)
この「国民が飯を食っていけること」という政治の目標・目的から考えると、やはり「失業率の低下」が重要な指標だ。
(略)
正規雇用者と非正規雇用者がどれだけ増えたか。この点でも安倍政権に対して、非正規雇用が増えただけ!! と批判する者が多い。
しかし政治に100%の完璧を求めること自体、適切な評価とは言えない。安倍政権ではコロナ禍前までは約500万人の新規就業者が増えて、そのうち150万人が正規雇用の増、350万人が非正規雇用の増である。
150万人も正規雇用が増えれば、60点の及第点には達するのではないだろうか?
(略)
自助を基本に成長を目指す菅政権か、成長を目指さない「エダノミクス」か?
ここからは加点事由の話になるが、改革を推し進め、日本の国の潜在的成長率を高めれば、どんどん100点満点に近づいていく。
雇用も増え、賃金も上昇する。
菅政権にはこの方向性を目指してほしいというのが僕の論だが、これに対して、枝野幸男さん率いる新・立憲民主党は成長をことさら目指さないということらしい。
(略)
さらに枝野さんは、菅さんが掲げる「自助」という言葉にも嫌悪感を示す。
僕は菅さんと同じく、「まずは自分のことは自分でする」という自助がとりあえず基本だと思う。それは個人に責任を押し付けるという意味ではない。自助がなければ成長は生まれないし、さらに自分のことは自分でできる人を増やすことで、限られた税金を、支えが本当に必要な人にできる限り多く配分できるようになるからだ。
支えが必要な人が多くなれば、支えるための税金がそれだけ必要になる。逆に自助の人が増えて支えが必要な人が少なくなれば、本当に支えが必要な人に多くの配分ができる。
支える人をしっかりと支えるためにも、自分のことは自分でできる人を増やすべきだ、というのが僕の自助論だ。菅さんも同じだと思う。
日本の国は成長を目指すのか、自助が基本なのか。
この点は菅政権と新・立憲民主党で考え方が異なるようなので、まさにこの点を徹底的に国会論戦、党首討論して欲しい。最後は国民が選挙によってどちらの方向性でいくのかを選ぶことになる。
「おかしいよね」を指摘し実際に正すのが改革だ
僕は成長を目指す派だし、自助が基本。菅さんもそのために徹底して改革をやるのだと思う。
新規参入を阻んでいる規制が強すぎると、切磋琢磨が生じず成長しない。
この点、菅さんには国家観がなく、思い付きだけの脈絡のない改革屋だという批判がある。
アホか!!
こういう批判をする輩は、改革の「か」の字もやったことのない連中だろう。
そもそも規制改革とは脈絡のないもの。世の中にごまんとある既得権益を守る壁を、一つずつ見つけては打ち壊していく作業。一つ見つけては一つ正す。ほんと途方もない地道な作業の連続なんだ。
改革をするのに必要なのは、本で得た知識ではない。「これおかしいよね」と感じる感性と、それを口に出せる勇気。おかしいことを口に出せたら、あとはそれを変えるのみ。
しかしほとんどの政治家は、そのおかしいことを口に出せない。これまでのやり方をよしとしている人たちから批判を受けるのが嫌だからね。
悪しき前例主義を改める!! おかしいことは変えなきゃならない!! までは誰でも言えること。
じゃあ、どこがおかしいのか。どこを変えなければならないのか。ここを具体的に指摘できる政治家はほとんどいない。
ここで新大臣に就任した河野太郎行革担当大臣が、深夜に及ぶ新閣僚の就任記者会見について「さっさとやめたらいい」と言い出した。
素晴らしい!!
これまでの多くの政治家たち、記者たち、官僚たちは、この深夜の記者会見を改めることがなかった。こんな深夜の記者会見くらいのことでも、おかしいとは誰も言い出さない。これが改革の難しさの象徴だね。
人は皆、これまでやってきたことをそのまま続けてしまうのが普通だろう。これはおかしい! とは、なかなか指摘できない。
そこを「これはおかしいよね」ということを口に出して、実際それを正そうと挑戦し続けてきたのが菅さんだ。
(略)
◇
何事に対しても、まずは自分で問題を把握し解決するように努力する。すなわち「自助」が先です。災害時がその典型で先ずは「自助」、そして近くの人同士の「共助」、最後にどうしようもなければ「公助」に頼る。これが普通の姿ではないかと思います。
つまり一人では動けない高齢者や障がい者、生活困窮者や健康を害した人、幼児などの周りからの助けが必要な弱者は別にして、普通の健康な人であれば「自助」からスタートするのは当然だと思います。自ら努力しようとしない結果として収入が少ないのも、行政が悪い、政府が悪いと他人のせいにする、それではいくら行政サービスに税金を使っても足りません。国家や地方財政を食いつぶしてしまいます。
以前も取り上げたことがありますが、よく選挙公約で福祉を充実させます、中小企業対策に力を入れます、教育の無償化を実現します等々、行政サービスのみを訴えていますが、サービスを充実させるためには十分な税収やその他の歳入が必要です。そのためには企業においても個人においても、しっかりとした歳入のもとになる付加価値を生み出さねばなりません。
そのことが今一番日本に必要なことですし、「自助」「自立」を促すためにも、アンフェア―を生み出している、既得権を打破するための規制改革が必要だと考えます。
更には「これ何かおかしいね」ということの改革も必要です。食料自給率が低いのに耕作放棄地が多い、折角国民に割り振ったマイナンバーが活用されない、偏向報道が言われて久しいのに放送改革が進まない、国会の酷さが目立つがその改革が一向に進まない、等々。菅新総理に頑張っていただきたいことが山積しています。
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