中国人体験コラム:新型コロナウイルス「数字」を操作した中国政府への怒り
今回はあの「室井佑月氏」や「姜尚中氏」、「古賀茂明氏」、「浜矩子氏」など、錚々(そうそう)たる反日左翼コラムニストを抱える、AERA dot.に寄稿された中国人「阿坡(A.PO)氏」のコラムを取り上げます。
阿坡氏のこのコラムは反日コラムではありません。中国武漢での体験をもとにした、中国批判のコラムです。タイトルは『新型コロナウイルス「数字」を操作した中国政府への怒り』(9/28)です。このコラムは『連載「私はウイルス——武漢ロックダウン日記」』の一つとして寄稿されました。以下に引用掲載します。
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新型コロナウイルスによる肺炎が流行した武漢で、作家の方方氏が発表し続けた日記が世界の注目を集めた。温和で、中国共産党の権威に挑むものではまったくなかったが、流行を食い止められなかったことについて責任を追及する考えを示しただけで、中国国内で2カ月にわたり数千万のネットユーザーの袋叩きに遭い、脅迫を受けた。この「私はウイルス――武漢ロックダウン日記」は、方方氏と同じく武漢で暮らす一般市民の男性「阿坡(A.PO)」が、中国共産党を批判する反省の書として記したものだ。「一人の健全な精神を持つ中国人」として、世界に向けてお詫びの気持ちを示したいという。阿坡は、中国という国が、新型コロナウイルスによる肺炎の治療薬の登場さえも、情報操作に利用したと憤る。
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■2020年2月13日 地元トップの更迭人事とレムデシビル(9)
「武漢市2020年2月12日0時~24時の新増病例は1万3436、累計病例は3万2994」。ロックダウン22日間後、新たな病例がこのように爆増した。新型コロナウイルスの流行は完全に制御を失ったという結論を導かせる数字に、当然ながら友人たちは私の安否をひどく心配したのだった。
武漢にあってここ数日、ウイルスの流行をずっと観察・分析してきた私は、この新増数を見ても奇怪だとは思わなかった。
私は友人たちに次のような解釈を示した。この新増数はこれまで政府がごまかし隠してきた患者数だ。もし実際の数を急いで発表しなければ、滞った実数はどんどん大きくなる。政府が最終的には武漢のウイルス感染者の総数をごまかせないとすれば、今後は毎日驚くべき新増数になるだろう。
そうなってほしくはないが、武漢市の感染者数は10万に達すると推測される。それが真の数字なら、現在の3万余の基礎の上にこれから1週間、毎日新たに数千から万に上る新増が見込まれる。
■慚愧の念を抱く
私が言いたいのは、封鎖22日目にして武漢はほとんど死の都市になっているということだ。ほとんど誰一人動き回ることも集うこともない。新たな感染が生じる可能性はすでに最低レベルに達している。このいわゆる新増の数字は、都市封鎖以前の感染が累積して出てきたものだ。
頭にくるのは、封鎖前の54日間同様封鎖後も、政府はこのような厳しい災難に直面してなお人民を甘く見て、数字を操作し、つゆも態度を変えないことだ。しかもこの私個人も、被害者でありながら依然として習い性のように自己解読をするばかりで声を上げることはない。
怒りが収まったあと、さらに慚愧の念を抱かせたのは、午後に届いたあるニュース――湖北省の省委員会書記と省長、武漢市委員会書記の3人がともに免職となり、首をすげかえられたという発表だった。私は、この日の新感染者爆増と結び付け、やはり流行は確かに一つの転換点を迎えたと判断した。
なぜなら新任の幹部は必ず短時間のうちに局面を好転させ、このウイルスとの戦いに勝利しなければならないからだ。この時点で人事異動を発令するからには、彼らには転換点が見えているのだ。さもなければ悪化が懸念される、制御を失いかねない事態に習近平の側近を投入する必要はまったくない。
■臨床投薬の報道がない
2月6日から武漢でレムデシビルの臨床投与開始。大きな注目を集めるこの薬は、武漢の人々の命を救う可能性のある、ひとすじのわらのような大事な手がかりと言っていい。
ところが、今に至っても臨床投薬の進展についての報道がない。2月8日から10日にかけて、レムデシビルが重症患者に対して非常に有効だという情報を医療関係者のパイプを通じていくつも得たにもかかわらず、政府およびニュース媒体はなぜ公開しないのだろうか? たとえ薬効が十分でなくても、全市民が知りたがっているのだから事実に基づく発表をするべきだ。
この疑問と今日発表された人事が結び付いて、私はさらに確信を強めた。数日と待たずレムデシビルの治療効果が発表され、ひょっとすると大量生産の開始までも告げられるのではないか、と。その後は新増数がしだいに下降、治癒した患者数は増え続け、治癒者の数はゆっくりと新増数を上回るようになるだろう。そうやって新型ウイルス流行との戦いは新しい幹部の指導のもとで勝利に終わる……。
ここまで書いて、私はまた自分の内なる邪悪さ感じた。私はなぜ彼らの考え方や段取りを熟知しているのか。そうだ、これこそ私がこの文章を書こうとするエネルギーの源だ。私も一つのウイルスなのだ。
一つの慰めは、どのように推理して見つけたかはともかく、今日になってとうとう新型ウイルス流行の転換点が現れたということだ。かりに私が推測するように、レムデシビルがよく効き、すぐに大量生産ができれば、新型ウイルス流行はそれほど心配いらなくなる。ロックダウンはなお継続されるだろうが、レムデシビルの情報はさらにしばらくの間、封鎖を続ける上での力になるだろう。この特効薬の情報は多くの人々に一晩警戒心を緩めさせるだろうから。
■「私はウイルス」の証明
すでに多くの市民は3週間以上も家に籠って過ごしており、メンタルがやられる人も出よう。厳しい管理を無視して出歩く人が現れたら、過去76日間に及ぶ災難がもう一度繰り返されかねない。お分かりのように、これが「私はウイルス」の証明である。
私は大衆を信じてはいない。私も私たちも、私たちが黙認している政府もみな大衆を信じてはいない。大衆は自分で判断する力も自分を管理する力もないと考えている。長い時間かかって大衆はそうした力を自ら放棄し、徐々に政府を頼るようになった。逆に政府は徐々に大衆を軽んじるようになった。一種の悪循環だ。
よろしい、さらに続く蟄居の時間、心静かに理性的であるようにしよう。システム的に反省するようにしよう。
○阿坡(A.PO)/一武漢市民。77日間の武漢都市封鎖(ロックダウン)を経験し、この手記を執筆。「阿坡」は本名ではない。全世界に多大な迷惑と災難をもたらした新型コロナウイルスについて、一人の健全な精神を持つ中国人としてお詫びの気持ちを表すために、英語の「apologize(お詫びする)」から取った。全世界の国々が中国からのお詫びを待ったとしても、それが述べられることはない。だか、この名前を用いて手記でお詫びの気持ちを表したいと考えている。
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門田隆将氏の著書「疫病2020」も、楊逸氏の著書「わが敵習近平」も武漢肺炎は詳しく記述されていますが、伝聞であり体験ではありません。そういう意味ではこの阿坡氏のコラムは実体験であり重いものです。そして中国人としては禁句である「共産党批判」を滲ませており、かつ中国が絶対にしない「謝罪」の念も込めています。
そうです、中国人は恐らくほとんどの人が、好んで共産党の統治を受け入れているのではないでしょう。ただ長年にわたる環視政策の中で、阿坡氏も述べているように、「大衆は自分で判断する力も自分を管理する力もないと考えている。長い時間かかって大衆はそうした力を自ら放棄し、徐々に政府を頼るようになった。」のでしょう。
全く残念なことです。世界一人口の多いこの国の人たちがそうなってしまった。逆に言えば中国共産党がそうした。そしてそれは中国共産党の継続と安定のために。言ってみれば世界最大の拘置所のような気がしてなりません。衣食住は満たされていても精神的な自由はない、恐ろしい話です。
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