想像を絶する中国当局のウイグル族への人権弾圧問題、日本のメディアも報道せよ
中国での少数民族の同化作戦はチベット、ウイグル、そしてモンゴルと留まるところを知りません。更には英国から返還された香港の、一国二制度の破壊につながる国家安全法の香港適用も、同化の流れの一つでしょう。やがてその手は台湾に向かうのは明らかです。
実は旧満州に当たる、東北部の3省も、満州族と言うある意味少数民族ですが、他の民族とは違いそれほど目立ってはいません。恐らく「清」の4代皇帝康熙帝以降の漢族との同化政策がそうさせているのだろうと、ハルビン生まれで日本に帰化した、芥川賞作家の楊逸氏が述べています。
その楊逸氏、自身の著書「わが敵習近平」の中で、ウイグルの悲惨な民族同化について述べています。俗に言われる「強制収容所」ですが、その中では想像を絶する民族弾圧とその浄化の実態が浮き彫りにされています。その著書の中から以下に抜粋、引用して掲載します。
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中国当局は当初、「イスラムの過激思想を持つ者が対象」とし、「イスラムのテロと戦い、過激主義を防ぐ措置を取ることは、新盟地区全体の安定に役立つ」と説明していました。
しかし現在、収容所は自治区全体に広がっていて、収監はウイグル人やカザフ人などの宗教指導者、地域社会のリーダーとして活動してきた文化人や知識人などにも及んでいます。
中国には「鶏を裂くに牛刀をもってする」という諺がありますが、過激派のテロを防ぐために100万人以上を強制収容するのは、まさしくこれに当たり、ウイグル人のアイデンティティを根絶しようとする暴挙だと思います。
2017年、新疆ウイグル自治区の人民代表大会常務委員会では、「過激化除去条例」を可決し、施行しました。要するに「過激主義を事前に食い止める条例」で、字面だけを見れば「なるほど」と思えますが、その中に「過激思想の影響を受ける」として、禁止事項が列挙されています。
その中で「男性が非正常なひげをたくわえること」、「女性が公共の場で全身を覆うニカブや頭を隠すヒジャブを着用すること」などが禁止されているのです。イスラム教徒であるウイグル族にとって、男性がひげをたくわえるのは一人前の証拠ですし、女性が顔と手以外を隠すのはコーランの教えに基づく「女性のたしなみ」です。
つまりこれは、イスラム教徒から宗教的要素を除去して中国に同化させ、中国共産党に忠誠を示すように洗脳することが最終目的なのです。そしてこの条例が施行された途端に開始されたのが、「再教育」のための強制収容所にウイグル族を主体とするイスラム教徒を送り込むことでした。
非正常なひげを伸ばしているとされた男性、ヒジャブで頭を隠していると認定された女性、過激な発言をした者、子どもに中国政府の教育を受けさせない者などは、次々と強制収容所へ送り込まれ「再教育」という名の洗脳を受けさせられるのです。
理由もなく逮捕され、収容所送りに
ウイグル問題に詳しい明治大学の水谷尚子准教授は「週刊金曜日」(2018年12月14日号)で、こう記しています。
「例えばいま、在日ウイグル人に話を聞くと、必ず身内の誰かが拘束されている。そのくらい大規模に、強制収容所は展開しているのだ。さらに最近では、収容所近辺に火葬場が複数造られ、ネット上では「屈強な漢人火葬場職員」を募集していたことも確認されている」
そしてこの記事では、強制収容所から“奇跡の生還”を果たした人の証言も寄せられています。少し長くなりますが、趣旨を引用させていただきます。
それによれば、カザフスタン国籍を持つ当人が仕事のために新疆を訪れ、その後、両親の住むトルファンに行ったところ、突然、実家に現れた武装警官五人に、何の説明もなしに手足を縛られ、拘束されたそうです。それから釈放されるまでの八か月間、「再教育センター」での収容生活を語っています。
それによると、黒い頭巾を被せられたまま連行され、最初に連れていかれたところで血液検査と臓器検査を含む身体検査が行われたそうです。
中国ではかねてから「囚人の臓器売買」の噂が絶えず、「新疆はその大きな供給源」という説もあります。この人も「私の臓器が……」と、不安に駆られたそうですが、幸い、それはされずにすみました。
そして、その後の四日間は拷問具に座らされ、両手両足を鎖で繋がれたまま、尋問を受けたといいます。拷問も伴ったようです。尋問の趣旨は、
- 新疆独立運動を図ったことはないか。
- テロ行為に加担したことはないか。
- テロリストを擁護したことはないか。
というものだそうです。否定し続けると別室に連行され、全身を警棒で殴られる拷問が、何日も続き、拷問に耐えられず罪を認めてしまうと、おそらく死刑を言い渡されてしまうのでしょう。
収容所の一日は、深夜三時起床で、四時半から六時まで「革命歌」の練習、その後七時まで中国国旗の掲揚、そして七時半から蒸しパンに野菜スープかお粥の朝食。八時からお昼まで洗脳教育。昼食をとって午後も政治教育……。凄まじいのは、夕食の後の自己批判、もしくは他者批判です。
「私はウイグル人、イスラム教徒に生まれて悪かった。私はウイグル人でもカザフ人でもイスラム教徒でもなく党の人であるべきだった。自分たちは党があってこその存在です」
と、自己批判させられたそうです。これを読んで私は、子ども時代に「下放」させられたときの恐怖が蘇ってきました。そして寝るのは深夜0時半頃とのこと。三時起床なのですから、ゆっくり寝ている間がありません。おそらく共産党は、朝から晩まで拘束の中に身を置かせることによって、個人の思考の自由を奪い、ロボットのように従順な人間を作り出そうとしているのでしょう。
拷問によって命を落とす人も後を絶たないそうです。冬場、裸足で水の上に立たせ、身体に水を浴びせ続ける拷問を課し、それでも反抗的な態度が収まらないときは、天井から両手を吊るされて、徐々に汚水の池に首まで浸からせる拷問によって、命を落としていくところを、その人は目撃したそうです。
この人がいた部屋は、食事、学習、睡眠、排泄のすべてがそこで行われ、光の差し込む小さな窓が一つあるだけ。部屋は12平方メートルだそうですので、四畳半よりももっと狭い。そんな部屋に何人も詰め込まれていたというのです。空気は汚く、凄まじい悪臭が漂っていたそうです。
狭い部屋に何人もが暮らしているので、全員が一斉に横になれない。交代制で代わる代わる寝ていたといいますが、おそらく膝を抱いて寝るのがせいぜいなのではないでしょうか。
食事前には全員が一斉に立ったまま、「国家に感謝、習近平主席に感謝、共産党に感謝」と唱えてからでないと、食事にありつけないということも記述され、しかも、豚肉がタブーのイスラム教徒に、強制的に豚肉を食べさせるそうです。職員たちは「豚肉は美味しいだろう」とせせら笑ったそうですが、食事に豚肉が入っているのがわかっていても、食べざるを得ない。食べなければ、死に至るほどの拷問が加えられるし、食事をとらなければ餓死する道が待っているだけだからです。
また、体調を崩しても、医療処置は一切ない。それどころか、わけのわからない薬を無理やり服用させられることもあるそうです。おそらく「薬物実験」なのでしょう。薬のせいでひどい下痢をしたり、意識を失っても、そのまま捨て置かれるそうです。
「臓器提供」の的にされたウイグル人たち
これは少し前の記事ですが、その後、こうした惨状はますます進んでいると考えてもよいでしょう。収容所施設は、共産党が言うように、決して「職業訓練施設」ではありません。中国共産党は、「民族浄化」を達成するためには手段を選ばないでしょう。とてつもない恐怖を感じます。
収容所に入れられなくても、社会の中での締め付けが、ますます厳しくなっているという話も聞こえてきます。ウイグル人は、実質的に自治区の外に出るのを禁じられています。街のいたるところに顔認証カメラが設置され、多くの場所に立ち入りが禁止されています。違反しようものなら、即、強制収容所送りです。
また、平和に暮らしているウイグル人家族の夫を強制収容所に送って、残った奥さんを漢族の男と強制再婚させるという例も、多数耳にしました。
中国政府は「一帯一路」政策を進めていますが、それを実現するには、中国と中央アジアの間にまたがる新疆ウイグル自治区のウイグル族が邪魔だと考えていて、ウイグル族を“抹殺”して、「漢族の国家」にしたいという思惑があるのだと思います。
また「臓器移植」も問題です。収容所に収監した後、個人の身体の生体情報などを調べて記録し、必要であれば連れ出して生命を抹殺し、臓器を摘出すると言います。
先ほどの記事でも、「同じ部屋の入が毎週何人か呼び出され、そのまま帰ってこなかった」と記されています。いなくなった人がどうなったか、誰にもわからないそうです。
中国では、臓器移植が産業として成立していて、中国国内の高官たちに移植されているだけでなく、海外の要人にも提供されていると言われています。
一説には、前の国家主席だった江沢民が、94歳にして元気でいるのは、心臓、腎臓を何度も移植したからだという説もあります。江沢民の長男、江恒も腎臓移植手術を受けています。また、前副主席の王岐山も、そうらしいのです。
臓器移植に関しては、供給源はウイグル人だという説が強いのですが、宗教集団として当局から活動を禁止された「法輪功」のメンバーも、強制的に隔離されて供出させられているという話もあります。
いずれも確証のある話ではありませんが、「そうあってもおかしくない」と思えるほど、中国社会は闇の中にあります。
ちなみに、インターネット上に中国の刑務所関係者からの「臓器価格表」が流出しています。
話を戻しますが、国際社会は、この強制収容書を含めた人権侵害を取り上げ、批判を繰り返しています。アメリカでは昨年の12月「ウイグル人権政策法案」が採択されました。国務省に専門のポストを新設して、中国の人権侵害を調査するように求めたものです。EUも同様の懸念を表明しています。しかし中国はこれを認めないばかりか、「内政干渉だ」と、アメリカとEUを激しく非難しています。
こうした弾圧は、明らかに「人道に対する罪」で、決して社会の理解を得られないでしょう。イスラム諸国からは「イスラム弾圧」と思われる危険もあります。その結果、テロ撲滅どころか、新たなテロを誘発する可能性もあります。
百歩譲って、中国の言い分が正しいのだとしたら、新疆の現状をオープンにして、例えば赤十字とか、国際的調査視察団の現地視察を受け入れるべきです。人権問題にしてこれだけの問題を、「自国内のことだから」という理屈で隠し通すことは、国際的に認められないことなのです。
◇
先月イギリスのドミニク・ラーブ外相は「中国西部の新疆ウイグル自治区で「おぞましく、甚だしい」人権侵害が起きているとして、中国政府を非難するとともに、関係者への制裁措置もあり得ると表明しました。」
また以前にも、昨年アメリカのポンペオ国務長官も「新疆ウイグル自治区でのウイグル族の大量拘束を強く批判し「現代における最悪の人権の危機が起きている。まさに今世紀の汚点だ」と述べています。ウィグル人権法案も可決されました。
それに対し日本の政府は今一つ歯切れはよくありません。このブログで何度も述べているように、経済を握られている弱みが、表立った批判ができない大きな壁となっているのでしょう。
いずれにしろその実態を、まず日本国民に知ってもらうことが重要です。実は終戦直後、日本兵も極寒のシベリアの強制収容所で、同様な扱いを受けていますが、これもその詳細は報道されていないと思います。NHKは731部隊や台湾の併合時代を捏造して伝えることはしても、日本人がひどい扱いを受けたものはあまり興味がないようです。通州事件もしかりです。
とにかく日本の左派系のメディアは、日本の施政のミスは過去も現代も針小棒大に取り上げ、批判しますが、こと中朝露に関する蛮行は素通りするようです。ダブルスタンダードの極みですね。
それを打開するとっかかりとして、NHKはこの中国人の蛮行であるウイグルの実態を取り上げるべきでしょう。ついでに韓国兵の蛮行のライダイハン事件や、ソ連時代のロシアの蛮行、シベリア抑留と強制労働も、NHKスペシャルでぜひ取り上げて欲しい。そうでなければ受信料は絶対に払いたくありませんね。
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