直面する経済安全保障の戦いー中国の呪縛から如何に抜け出すか
故あって、しばらく筆を休めていましたが本日から再開します。休みの間も新型コロナウイルスの感染は終息せず、今も都会地区を中心に緊急事態宣言や蔓延防止等重点処置が続いています。
それはさておき、相も変らずメディアは中共の陰をちらつかせながら、政府批判を重ね、多くの反日知識人もそれに加担している構図は続いています。
少し前になりますが、日本学術会議での任命拒否問題が取りざたされましたが、ここにも中共の大きな影が見え隠れし、軍事研究の拒否を宣言している始末です。研究の自由を叫びながら逆のことを堂々としている、全くどうしようもないと言うしかありません。
そんな中で、中共に翻弄されている日本の姿を的確にとらえた論文を、山岡鉄秀氏からメルマガを頂いたので引用させて戴ます。タイトルは「経済一本やりで生きて来た日本人が直面する経済安全保障の戦い」です。
◇
山岡鉄秀です。
日本が総力を尽くして戦った太平洋戦争(大東亜戦争)は日本の徹底的な敗北で幕を閉じました。
敗戦後、しばらく打ちひしがれていた国民は新たな「日本の生き筋」を見出します。「日本は戦争に敗けたが、これからは経済で勝負だ!」文字通り国民が一丸となって経済復興に取り組みます。
この、「経済に集中して生きる」という発想は、吉田ドクトリンと呼ばれる、吉田茂首相の方針に沿ったものでもありました。
1952年、サンフランシスコ講和条約で日本の独立が実現すると、吉田首相は同時に日米安保条約を調印します。
日本に米軍が基地を置くこと、つまり、米軍が広範に日本列島に展開し続けることを許し、日本の安全保障をアメリカに委ねることで、日本は自律的な安全保障の重圧から逃れて経済にまい進するという発想です。
この方針は大成功を納めますが、晩年の吉田は、自らの戦略が安全保障に無頓着な国民を作り出してしまったことを認めて、後悔していました。
しかし、日本は吉田の嘆きをよそに、驚異的な経済発展を遂げ、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国に上り詰めます。
今の若い世代は、この元気が良かった時代の日本を知らず、バブル期が異常なだけだったと考えていますが、かつての日本は本当に元気だったのです。
20代前半でバブル期に遭遇した私はその当時の日本の勢いを記憶しています。
この戦後の繁栄についてジョージタウン大学のケビン・ドーク教授は、「日本人を享楽的にした」と評しています。
それは正しい指摘だと思います。
すっかり敗戦に懲りた日本人は、「平和とは戦争について一切考えないこと」と言わんばかりの態度を取るようになりました。
そして、これは私の意見ですが、独特のサラリーマン気質を作り出しました。
模範的なサラリーマンは、政治や国際情勢、ましてや安全保障政策などについては一切考えず、ひたすら目の前の仕事に取り組むべき、という発想です。
栄養ドリンクのCMソングのごとく、24時間闘い続ける日本人サラリーマン。
政治、まして国際政治などお上が考えることで、サラリーマンが考えることではない。ひたすら目の前の仕事、仕事、仕事。それが日本人サラリーマンの美学。
20世紀の間はそれでも何とかなりましたが、21世紀に入って世界は急激に変わっていきました。
対応できなかった日本企業はどんどん没落し、日本経済はGDPで中国に追い越されました。世界第三位でも立派な経済大国ですが、何しろ活気を失いました。
しかし、サラリーマンの美学は変わりません。世界情勢の変化 は、ビジネスに関係しない限りは関知しません。
パワーゲームメルマガを読んでいる方々にとって、今や中国が戦後最大の脅威であることは常識ですが、経団連に象徴されるように、日本の企業人の多くは
未だに中国の脅威の本質を理解せず、中国市場でいかに儲けるかばかりに腐心しています。
大企業でも、国際情勢の変化を全く理解していません。それはサラリーマンの本分ではないと考えているのでしょう。
私自身も、親しくしていたある精密機械企業の幹部の方と話して愕然としました。
「何百人もの中国人研修生を抱えているけど、中国の脅威なんて考えたこともないよ。君は日本の文化が素晴らしいと思って、日本文化を守りたいから
そんなことを言ってるだけじゃないの?
中国の覇権主義?世界史を見れば、人間の歴史なんてそんなものじゃないかな?僕は中国に関しては、あの巨大な市場をどう開拓するかしか考えていない。昔から、与えられた枠の内側でしか考えないようにしてきたからね」
この方は明らかに中国の脅威の本質を理解していません。中国の脅威は、台湾や尖閣諸島に迫る軍事的圧力だけではありません。中国の脅威の本質は、何でもありの「超限戦」です。軍事、民事の枠を超えた際限のない戦争行為です。
そして、中でも重要な位置を占めるのが、経済を利用した戦争です。
我々は、経済的な相互依存が進めば進むほど、世界は戦争ができず、平和になると教わってきました。しかしそれは、あまりにもナィーブな発想であることがはっきりしました。
今、 習近平の指導の下で中国が推進しているのは、中国は外国に依存せずに自立する一方で、世界には可能な限り中国に依存させることです。外国が中国に依存すれば依存するほど 、中国はそれを逆手にとって、その国に影響工作を仕掛けることができるからです。
つまり、相互依存は平和への道ではなく、悪意ある独裁国家に弱みを握られることなのです。
経済を使って相手国を操作しようとすることを「エコノミック・ステートクラフト」と言います。そのような攻撃からの防衛策を講じることを「経済安全保障」といいます。
日本では、この経済安全保障という概念がやっと政府レベルで理解され始めたばかりです。
そして、エコノミック・ステートクラフトの一環として、企業が狙われます。
世界中で中小企業も大企業も、中国共産党と繋がった企業や組織や個人によって乗っ取りの危機に瀕しています。
その手口は極めて巧妙で多岐に渡ります。賄賂やハニートラップだけではありません。それらの手口を真剣に研究して学ばなければ、防衛 することができません。
我々日本人が、いや、世界中のほとんどの人が想像もしないようなトラップを仕掛けてきます。
戦後一貫して、戦争や安全保障のことは忘れて経済一本やりで生きて来た日本人。それが正しい生き方だと信じ、 与えられた枠の中でしか考えない習慣を身に着けた日本的サラリーマンの美学。その結果、未だに中国の脅威を認識できない日本の企業人。
戦争は、自分たちが侵略戦争を仕掛けなければ始まらないと信じている日本人。
経済に命をかけて生きて来たのに、長年の経済的低迷に悩んだあげく、その経済が自分たちに対する戦争の武器として使われるとしたら、何という皮肉でしょうか?
はたして日本人は、日本企業は、この新しい形の戦争から身を守ることができるでしょうか?
今のままでは無理でし ょう。
ひとりでも多くの日本人が、独裁国家による経済を利用した戦争の脅威を認識しなければ、もうすぐ手遅れになってしまうでしょう。
◇
まさにその通りだと思います。以前にも述べましたが中国に進出して事業を行ったり、中国と貿易取引したりしている企業は万を数えると言う現実。撤退を始めている企業も多くなって来ていますが、まだまだ中国に経済の根っこを抑えられているのは事実です。
インド太平洋構想やクアッドの取り組みをいくら進めようとしても、経済に足を引っ張られて身動きが取れません。この状態になってしまったのは、まさに中国の長期戦略の一環でもあるのでしょう。
経団連などの経済団体は明らかに中国に傾斜しています。それぞれの企業は利潤の確保の目的から、巨大市場中国を目指すのは分かりますが、安全保障の観点からはこういう一国集中的な依存は極めて危険な状況を生みます。日本の政府の長期戦略のなさが浮き彫りになっている好例かも知れません。
これからこの経済を縛られている状況をどう解決していくか、大きな課題でもあります。もちろん経済のみならず、軍事もサイバー関連も同様ですが。
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