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2021年7月11日 (日)

「習総書記の、習総書記による、習総書記のための共産党」果たしていつまで続く

C6950451e4fc3dcd35f47594d8d09f0d_1  香港、ウイグル問題へと、中国の強権政治への批判が世界的に高まっていますが、加えて以前このブログでも取り上げた台湾問題も、習近平の建党100年演説でにわかにクローズアップされてきています。この台湾問題は、連日のように公船で接近威嚇を行っている尖閣の問題とともに、日本に直接関わる大問題です。

 そこで、なぜ中国が強権政治を振りかざすようになったのか、もちろん近年の経済発展とそれに伴う軍事力の増強が、その大きな要因ではありますが、それに加えて過去の抑圧されてきた歴史にも、その一端があるのは間違いないでしょう。ただ建党100年演説では、歴史の曲解や捏造も垣間見えます。

 キヤノングローバル戦略研究所、研究主幹の宮家邦彦氏が日経ビジネスに寄稿した、コラム『習近平の建党100年演説、その歴史認識の不備を突く』(7/8)に、その辺りの事情が詳述されていますので以下に引用します。

 7月1日、中国共産党が結党100周年記念式典を開催した。米メディアは「習近平(シー・ジンピン)ただ1人を礼賛するイベント」と報じ、日本の主要紙社説は「誰のための統治なのか」「分断を招く大国では困る」「強国路線拡大には無理がある」などと批判的に論じた。筆者も、「習総書記の、習総書記による、習総書記のための共産党」が続くと直感した。それにしても、「中山装(人民服)」から子供たちの大量動員まで、何とも新味のない、ベタな演出であった。

 要するに、「中国を救えるのは共産党だけであり、党の強固な指導を堅持すべし。中国は決して『教師』のような偉そうな説教を受け入れない。国防と軍隊の近代化は加速するが、中国人民は暴力を恐れず、外部勢力によるいかなるいじめ、圧力、奴隷のごとき酷使も許さない。台湾問題解決は党の歴史的任務であり、中国人民の決心、意志、能力を見くびってはならない」ということだ。従来の立場を変えるつもりなど毛頭ないのだろう。

 習近平体制に対する内外の政治的評価はほぼ固まりつつある。筆者も現時点で追加すべきコメントは少ない。されば、今回は視点を変えよう。中国内政の安定性や対外政策の行方などの議論は他の優れた識者にお任せし、本稿では習近平総書記の「歴史認識」に焦点を当ててみたい。毎度のことながら、以下はあくまで筆者の個人的分析である。

太平天国の乱、義和団事件、辛亥革命はいずれも失敗

 7月1日の結党100周年演説は、近現代中国史に言及した部分が少なくない。ここからは、過去200年の近現代史該当部分を演説の流れに沿ってご紹介の上、それぞれにつき筆者の率直なコメントを付け加えていこう。

 演説冒頭で習総書記は、1840年のアヘン戦争に言及し、それ以降、中国が半植民地、半封建社会となり、中華民族は前代未聞の災禍に見舞われた、と振り返っている。

【筆者コメント】アヘン戦争・南京条約は近代中国に対する西洋列強からの強烈な「文化的挑戦」だった。中国のエリートたちは今もこれらを受け入れたことのトラウマにさいなまれているはずだ。1840年代以降、中国人はこの「西洋文明からの衝撃」に対応すべく、考え得るあらゆる対応策を試みてきたが、こうした努力はことごとく失敗している。

 次に習総書記は、民族存続の危機から国を救うため、中国では太平天国の運動、戊戌(ぼじゅつ)の変法、義和団の運動、辛亥革命が相次ぎ起きたが、いずれも失敗に終わった、と総括している。

【筆者コメント】 確かに、アヘン戦争に対する中国の最初の対応は「太平天国の乱」だった。客家の洪秀全がキリスト教と土着民間信仰を融合して始めた民衆運動である。一種の原始共産社会を目指す過激な改革運動だった。これは結局、外国からの支援を得た清朝により鎮圧されてしまう。

 第2の対応は、1860~70年代の曽国藩・李鴻章らによる「洋務運動」だった。なぜか習近平演説はこれに言及していない。清朝によるこの改革運動も、宮廷改革ゆえに挫折してしまう。

 続く第3の対応が、1898年の光緒帝による「変法自強運動」であった。これも大胆な制度改革など内容が急進的すぎたため、西太后に潰されてしまう。

 第4の対応は1900年の義和団事件、そして第5の対応が1911年の孫文による辛亥革命だった。どちらも民衆の支持や軍事力の裏付けがなく、習近平演説の言うとおり、「いずれも失敗」に終わった。辛亥革命に至るまでの中国現代史に関する限り、筆者の見立てと中国共産党の「歴史認識」がほぼ同一であることは興味深い。

半植民地からの脱却、国民党には触れず

 続いて、習総書記はマルクス主義を取り入れた中国共産党の革命により、「旧中国の半植民地、半封建的社会の歴史」と列強が押しつけた「不平等条約と中国における帝国主義」を徹底的に廃した、などと述べている。

【筆者コメント】ここから、筆者と中国共産党の「歴史認識」はかい離していく。共産党が中華人民共和国を建国したことは疑いないが、人民解放軍が日本軍と直接戦い、激戦に勝利したといった話は寡聞にして知らない。孫文、蒋介石の国民党を語らず、マルクス・レーニン主義の共産党だけが「旧中国の半植民地、半封建的社会の歴史」や「不平等条約と中国における帝国主義」を断ち切ったなどと主張することは、客観的に見て無理がある。

P1_20210711102901 中国の経済成長は、日米との国交正常化あってこそ

 さらに、習総書記は、鄧小平の改革開放こそが「現代中国の前途と運命」を決めたのであり、「中華民族が搾取され、辱めを受けていた時代は過ぎ去った」「中国を救えるのは社会主義だけであり、中国を発展させられるのは中国の特色ある社会主義だけ」だと胸を張った。

【筆者コメント】要するに習総書記は、「改革開放政策で中国は豊かになり、今や大国になりつつある。もう中国人は搾取されないし、辱めも受けない。これからは中国が国際秩序をつくっていく。そのような中国を発展させられるのは中国共産党の社会主義だけだ」と言っている。

 筆者はこれにも異論がある。

 そもそも改革開放政策とは、マルクス・レーニン主義とは正反対の「国家資本主義」政策だった。また、中国が高度経済成長したのは、共産党ではなく、中国庶民の努力のたまものだ。さらに、中国の改革開放にとって理想的な環境が生まれたのは、ソ連との対抗上、米国や日本が対中国交正常化にかじを切ったからではないか。 

 このような理解を欠いた「歴史認識」では、中国を取り巻く現実が見えない。中国はいずれ政治的、経済的、軍事的困難に直面する可能性が高いだろう。そう考えれば、米国が対中経済制裁を発動するなど、改革開放後の理想的発展環境を失いつつある今の「中国の特色ある社会主義」が今後も「中国を救う」とはどうしても思えない。

習近平思想だけが中国を発展させる?

 最後に習総書記は、2012年の第18回党大会以降、中国の特色ある社会主義が「新しい時代」に入り、中国の特色ある社会主義制度を堅持し改善したと述べている。

【筆者コメント】習総書記は、本音を言えば、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」すなわち「習近平思想」だけが中国を発展させる力を持っている、とでも言いたいのだろう。だが、果たしてそうだろうか。

真の市民社会を築かねば、共産党統治の正統性は確立せず

 7月1日の習近平演説が示す「歴史認識」に筆者は強い違和感を覚える。同総書記は、中国は過去100年間、共産党独裁の下で中国復興の夢に近づきつつあると説明した。だが、実態はその逆ではないのか。アヘン戦争以来の中国の対応は、いまだ完結していない。辛亥革命後も、1949年の共産革命や1978年からの改革開放政策を経ても、強権を用いなければ社会は安定せず、諸外国からの尊敬を勝ち得ることもできない。完結するどころか、この100年間に中国の人々が失ったものも決して小さくなかったはずである。

 国家が豊かになれば、いずれ社会は成熟し、市民社会が生まれるはずだ。ところが、中国の改革開放政策は、成熟した市民社会の芽を育むどころか、貧富の差を拡大させ、都市化と核家族化で中国の伝統的社会を分断・破壊してしまった。その結果、中国は伝統文化を踏まえた政治改革を行うタイミングを逃し、日本のように漸進的な形で社会改革を進めることもできなくなった。こうした政治的、社会的「ツケ」は歴史的に見て、決して小さくはないだろう。

 19世紀以来の「西洋文明からの挑戦」に対する中国の最終的対応が、共産党、特に習近平政権の下での「中国復興の夢」の実現であるとすれば、東アジアの近未来は決して明るくない。真の政治改革、社会改革がない限り、共産党政権の統治の正統性は確立せず、中国社会の脆弱性も続くだろう。されば、アヘン戦争以来の「歴史的トラウマ」は当分克服されない。

 中国に真の意味の市民社会は生まれるのか。それとも、今後もこれまでと変わることなく「中国の特色ある市民社会」とお茶を濁すのか。それまで東アジアの安定は保たれるのか。疑問は尽きない。

 ◇

 宮家氏の言う、「習総書記の、習総書記による、習総書記のための共産党」と言う認識に私も賛同します。そして共産党のための中国であり、それは習近平のための中国なのでしょう。

 過去に欧米から虐げられた歴史は語っても、近年日本も含め欧米から受けた経済的恩恵は語らず、共産党だけの業績にしているところが唯我独尊を著わしています。そしてその恩恵のために経済発展を遂げたその成果は、国民の民主化のために向かうことなく、共産党のための軍事力と治安維持に振り向けていく。まさに自己増殖を繰り返すモンスターのようです。

 この巨大化したモンスターも、生きすぎた治安維持・管理社会への民衆の反発や、日本同様急激に進む少子化の嵐、民主国家からの経済離脱等、内外に矛盾を抱えてきています。果たしてこの体制がいつまで続くのかはしれませんが、外部への様々な意味での暴発的攻撃や戦闘だけは避けたいものです。

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