メガソーラーは森林だけでなく資本主義を破壊する
この梅雨の豪雨で、熱海市伊豆山に土石流が発生し、多くの犠牲者・被害者を出しました。その原因の一つになったかどうか定かではありませんが、この伊豆山山頂に広大なメガソーラーが敷設されています。また隣の函南町にも大規模なメガソーラー開発事業が計画されており、川勝平太静岡県知事が誘致をもくろむパネル提供企業は、韓国系企業のハンファエナジージャパンと言うことのようです。
いずれにしてもこの伊豆高原の山頂に広大なメガソーラーを張り巡らせば、森林伐採に伴う保水力の低下等の環境問題を引き起こす恐れがあります。またそのパネルの素材結晶シリコンの多くが、中国が弾圧を続けているウイグル製のものだと言うことのようです。そのあたりの詳細を、経済学者で株式会社アゴラ研究所所長の池田信夫氏が、JBpressに寄稿したコラム『メガソーラーは森林だけでなく資本主義を破壊する 太陽光バブルの原因はウイグルの強制労働だった』(7/9)で述べています。以下に引用して掲載します。
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静岡県熱海市の土石流の事故で、上流付近にあったメガソーラー(大規模太陽光発電所)で森林の保水力が落ちたのが原因ではないかといわれ、静岡県は調査に乗り出した。この因果関係は今のところ不明だが、危険な土地に建てられているメガソーラーは全国にも多い。
民主党政権が再生可能エネルギーを促進するためにつくったFIT(固定価格買い取り)が動き始めて10年。政府は「グリーン成長戦略」の中で再エネを全電力の5~6割を占める「主力電源」にするという目標を掲げているが、それは可能なのか。
再エネ100%で電気代は4倍になる
最大の問題は、熱海でも問題になった環境破壊である。毎日新聞の47都道府県を対象にしたアンケート調査では、37府県が「トラブルがある」と回答した。事業の差し止めなどを求めて起こされた訴訟は、全国で20件以上。2018年には、パネルが土砂崩れで損傷したり風に吹き飛ばされたりする事故が57件確認された。
日本の電力のうち再エネで供給しているのは18%、そのうち水力を除く「新エネルギー」は10%である。電力をすべて再エネで供給してCO2排出をゼロにするには、今の5倍以上にする必要があるが、それは可能か。
国立環境研究所によれば、設備容量500キロワット以上のメガソーラーは2020年で8725カ所、パネルが置かれた土地の総面積は大阪市とほぼ同じ計229平方キロに達している。日本はすでに平地面積あたりの再エネ発電量は世界最大だが、それでも電力量の1割しか発電できないのだ。
それはエネルギー密度の低い再エネには、物理的な限界があるからだ。同じ発電量(キロワット時)で比べると、メガソーラーに必要な面積は火力発電所の2000倍以上。メガソーラーの年間発電量は1平方メートル当たり100キロワット時なので、日本の年間消費電力1兆キロワット時をまかなうには、1万平方キロの面積が必要である。
これには関東平野のほぼ半分を太陽光パネルで埋め尽くす必要があるが、それでも電力の100%は供給できない。夜間や雨の日には蓄電設備が必要になり、バックアップの発電設備などとの統合費用が大きくなる。
経産省の有識者会議に提出された地球環境産業技術研究機構の資料によれば、再エネ100%を想定した場合、電力コストは53.4円/キロワット時になる。これは現在の電気代の4倍である。
電力は最終エネルギー消費の26%
問題はそれだけではない。たとえ電力の100%を再エネで発電できたとしても、電力は最終エネルギー消費の26%に過ぎない。再エネは、全エネルギーの8.2%しか供給していないのだ(下の図)。
残りの80%の化石エネルギーをどうやって非化石エネルギーに変えるのか。たとえば自動車は(100%非化石電源になったとしても)全面的に電気自動車(EV)に変えないと、CO2排出ゼロにはならない。
それ以外の産業はどうするのか。たとえば日本製鉄は、カーボンニュートラル製鉄プロセスを発表した。常識で考えて、石炭を燃やしている高炉のCO2排出がゼロになるとは思えないが、それをカーボンフリー水素でやるという。電炉はカーボンフリー電力でやる。
それでもCO2排出はゼロにはならないので、これはCCUS(炭素貯留)でやるという。つまりカーボンフリー水素とカーボンフリー電力とCCUSという「3つの外部条件」がないと「カーボンニュートラル製鉄」はできないのだ。
日鉄によると「ゼロカーボン製鉄」には5000億円の技術開発費がかかるが、2050年の製鉄コストは2倍以上になるという。製鉄業は慈善事業ではないので、わざわざコストを2倍にする設備投資をする企業はない。
日鉄は今後5年間で2兆4000億円を海外に設備投資し、国内では1万人を合理化する計画を発表した。脱炭素化は製造業を空洞化させ、資本主義を破壊するのだ。
日本政府はウイグル製太陽光パネルの輸入を禁止せよ
アメリカのバイデン政権は6月24日、太陽光パネルの材料などを生産する中国企業をサプライチェーンから排除する制裁措置を発表した。これは中国の新疆ウイグル自治区の強制収容所で製造された疑いが強いためとしている。
FITでメガソーラーが急速に普及したが、その太陽光パネルは、今や8割が中国製になっている。ヘレナ・ケネディ・センターの調査によれば、全世界の結晶シリコン(太陽光パネルの原料)の75%は中国製で、そのうち45%がウイグル製である。
ウイグル製のパネルが安い原因はもう一つある。石炭の埋蔵量が豊富であり、発電コストの安い石炭火力発電の電力で、結晶シリコンを焼き固める高温の炉を稼働させているとみられる。
資本主義のルールを逸脱し、政府が20年間も利益を保証するFITは中国の国家資本主義を有利にし、その国家的ダンピングで太陽光パネルの価格は劇的に低下したのだ。それが「再エネのコストは石炭火力より安くなった」といわれる原因である。
バイデン政権の制裁措置が報道された今年(2021年)初めから、太陽光パネルの価格は5倍に上がった。これによってメガソーラーのコストが上がると、太陽光バブルが崩壊する可能性もある。
同じことが今後はEVで起こる可能性が強い。中国は今や年間2500万台で、世界最大のEV大国である。太陽光パネルと同じくEVにも巨額の補助金を出しているので、今では最低価格は50万円を切った。中国政府はライドシェアや充電のネットワークも国費で整備しているので、こういうインフラができれば、EVが大衆に急速に普及するだろう。
太陽光パネルやリチウム電池のように標準化された素材は、国営企業で大量生産するのに適している。中国は戦略的にカーボンニュートラルに舵を切っているのだ。再エネやEVが悪いわけではないが、資本主義のルールを踏み外したダンピングを許してはいけない。日本政府も中国製太陽光パネルの輸入を禁止し、中国に公正競争を求めるべきだ。
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太陽光パネルを家屋の屋上に敷設し、家庭の電力をまかなうのは結構なことでしょう。しかし太陽光発電を普及促進するために、制度スタート時点で48円/KWHと言う破格の買い取り価格を設定したのは、民主党政権時代でした。今では19円まで下げて来ているようですが、原発の停止とともに電力コストの高騰の一因となっています。
更にはそのパネルの多くがウイグルの強制労働と資源搾取によるものとすれば、考えざるを得ません。中国に過多に頼るこうした素材は、経済安全保障上極めて危険です。そして太陽光発電に多くを頼る再生エネルギー政策も、環境破壊や高コストの観点から、根本的な見直しが必要でしょう。
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