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2021年7月 2日 (金)

日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?

Images-6_20210701143901  前回は「泣き寝入り国家?」日本の実態と課題を取り上げましたが、今回はさらに具体的な課題、つまり中国が台湾の統一を具体化しようと動き出したときに、日本はどう対応するのか。そういう問題を突きつけられたときの日本の覚悟について取り上げてみたいと思います。

 安全保障戦略コンサルタントの北村淳氏がJBpressに寄稿した『米国の専門家も危惧、台湾防衛で米国の「弾除け」に使われる日本 日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?』(7/1)という少々長いタイトルのコラムから引用して以下に掲載します。

 岸信夫防衛大臣は米メディア(ブルームバーグ)のインタビューに答える形で、台湾の平和と安定は「日本に直結している」との認識を示した。台湾の防衛が日本の防衛と直結していることを認めたことになる。

 日本が中国を仮想敵に据えている限り、台湾の防衛と日本の防衛は切っても切り離せない関係にあるというのは極めて当然の原理である。しかしながら、日本の防衛大臣や総理大臣がこの“原理”を公に語ることは稀であるため、アメリカ軍や政府関係者たちの間で岸大臣の発言は歓迎されている。

 日本の防衛大臣が「台湾の防衛は日本の防衛」という趣旨を語ったということは、「中国に攻撃された台湾を防衛するため、アメリカが軍事的支援を実施する場合、日本も当然アメリカの同盟軍としての役割を果たすであろう」とアメリカの軍人や政治家、安全保障専門家などの多くは(単純に)理解しがちである。したがって、日本の「決意」はアメリカの国益と一致しており、大いに歓迎されるのである。

「不安定な状態」を維持したいアメリカ

 ここでいうアメリカの「国益」とは、「中国と台湾の間に不安定な状態が続くこと」を意味する。日本がアメリカの同盟国としての役割を果たすことは、「不安定な状態」の維持に寄与するというわけだ。

 ただし注意が必要なのは、「不安定」といっても、アメリカの軍事的介入が必要になるほど激しい軍事対立では困る、というのがアメリカ側の真意だ。そうではなく、「中国が台湾に軍事侵攻する危険性が高いものの、現実に軍事攻撃が実施されることはない」という「曖昧な不確定戦争」といった状態が続いているのが望ましいのだ。

 このような状況ならば、アメリカが実際に中国軍と戦火を交える必要はないものの、台湾を軍事的に支援する大義名分を掲げて、台湾海峡や東シナ海、南シナ海に空母艦隊や爆撃機などを展開させて「アメリカが台湾という民主主義国家を守っている」というデモンストレーションを展開することができる。

 そして日本政府や日本国民が「台湾の防衛は日本の防衛」と認識しているのならば、アメリカ軍による台湾防衛のためのデモンストレーションはそのまま日本防衛のデモンストレーションにもなるのである。

 したがって、アメリカ軍が日本国内に確保してある軍事拠点を大手を振って好き勝手に用いても何も気が咎(とが)めることはない。なんといってもアメリカ軍は台湾防衛(すなわち日本の防衛)のために巨額の運用費がかかる空母部隊や爆撃機などで中国側を“威嚇”しているのだ。

自衛隊が“多国籍軍”の先鋒に

 では万が一、中国による台湾に対する軍事攻撃が実際に起きた場合には何が起こるのか。その場合、沖縄、佐世保、岩国、横須賀、横田といった米軍基地は最良の前進軍事拠点となる。日米安保条約や日米地位協定の取り決め以上に日本側が「台湾防衛は日本防衛」と考えているからには、日本各地に点在する軍事施設を米軍が自由に用いることが保証されることは疑う余地がない(と米軍側は考えるであろう)。

 そして「台湾の防衛は日本の防衛」であるならば、アメリカが主導して編成する台湾支援“多国籍軍”(注)の先鋒として、自衛隊艦隊や航空戦隊、それに水陸両用部隊などが投入されることになるであろう。なんといっても台湾を巡る戦闘においては、日本の地理的位置は民主国家のうちでも群を抜いているからだ。多国籍軍の先鋒を務める海・空・陸自衛隊諸部隊は、数千発の各種ミサイルが降り注いで生活のインフラを破壊された台湾の人々を救援・救出するため、台湾に接近上陸することになる。

(注)中国が安保理常任理事国である以上、国連軍が編成されることはあり得ず、アメリカが音頭を取って編成する多国籍軍の可能性が高い。ただし、相手が中国であるため、多国籍軍に参加し軍隊を派遣する国がいくつ集まるかは大いに疑問である。

 このような困難かつ危険極まりない先鋒任務をアメリカ自身が行う必要はない。「台湾の防衛は日本の防衛」である以上、隣国の日本が「唯一に近い日本の真の友好国」である台湾の人々を救出するのは当然だからだ。

弾除け的に使われる“属国”

 このシナリオのように、属国や従属国を弾除け的に使うのは、アメリカの軍事的師匠筋にあたるイギリスがしばしば用いた伝統的手法である。

 イギリスは第一次世界大戦きっての激戦であったガリポリ上陸戦で、最も困難な激戦地点にオーストラリア軍とニュージーランド軍の部隊を投入した。

 同様に第二次世界大戦においても、日本との戦端が開かれた場合に、イギリスの極東最大の拠点である香港を日本軍が攻略することは目に見えていたため、全滅する可能性が高い香港防衛部隊をカナダ軍にあたらせていた。

 そしてヨーロッパ戦線でも、ディエッペ上陸作戦の主力としてカナダ軍部隊を投入した。ディエッペ上陸作戦は、西ヨーロッパ全域を占領したドイツ軍への反抗拠点を確保する実験的上陸作戦であり、極めて危険な自殺的作戦であった。

 このようにイギリスは、英連邦内の“二級国家”オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどの“二級国民”による志願兵部隊を、当初より多大な犠牲が見込まれる作戦に投入したのである。

 一方の“二級国家”側も、イギリスの本意は承知してはいたものの、真の独立国としての地位を勝ち取るために自国民の犠牲はやむを得なかった。結局、第二次世界大戦後、イギリス自身の軍事的地位が低下したことも相俟って、それら諸国は真の独立国家としての地位を獲得したのである。

日本列島に撃ち込まれる長射程ミサイル

 アメリカにとっても、台湾を巡って中国と本格的な戦争へ突き進むことは99.9%避けなければならない。しかし、中国による台湾への軍事攻撃に際して何もしないのではアメリカの軍事的威信は地に墜ちる。そこで台湾の人々を救出するという大義を押し立てて、アメリカの“属国”である日本の“二級国民”を危険かつ困難な先鋒部隊として台湾に突入させ、自らは「出動宣伝効果」は極めて大きい空母部隊2セットを沖縄南方200海里沖付近と沖縄西方100海里沖付近に展開させ、多国籍軍先鋒を務める勇敢な自衛隊部隊を支援する態勢をとるのである。

 そして、台湾問題に日本が軍事介入したことを口実に中国軍が日本列島に長射程ミサイルを連射して、日本の戦略要地が大損害を受けた場合には、国連安保理で停戦協議を開始するのだ。

 話を冒頭に戻そう。アメリカ側の多くの人々は、日本が「台湾の防衛は日本の防衛」と認識していることを歓迎している。だが、日本の防衛政策の現実を熟知している専門家の間では、「台湾の防衛は日本の防衛」ということは日本が上記のような流れに巻き込まれることを意味し、とても日本政府がその種のシナリオを是認した上で何らかの具体的戦略を持っているとは考え難い、との疑義が持たれている。

 ◇

 北村氏は、日本政府は台湾防衛の覚悟どころか、戦略そのものも持ち得ない現状を指摘しているようです。もちろん日本国民も憲法擁護、戦争反対のリベラリストのみならず、殆どの国民が具体的な予測などしていないでしょう。

 しかし昨日の中国共産党建党百周年で習近平氏が「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の歴史的な責務だ。いかなる台湾独立のたくらみも粉砕する。」、と述べているとおり、具体的な行動に出ることは近い将来あり得ると見たほうがいいでしょう。

 ですから日本政府もその際の戦略をきちんと打ち立て、そのための事前の施策に取り組まねばならないと思います。体制作りや新たな立法処置も含めて。もちろん国民への周知のための広報も重要です。ただできるかどうかはよくわかりません、つまり政府も国民も覚悟があるかどうか、と言うことです。

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