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2021年8月12日 (木)

北京ボイコットがいよいよ始動 虐殺容認ではバッハ会長も針のむしろか

9_20210811154401  前回は北京冬季オリンピックについて、ボイコット論と会場建設の様子を同時に紹介しましたが、今回はボイコット論に絞って取り上げたいと思います。平和の祭典でもあるオリンピックが、今まさしく人権侵害を通り越して、虐待や虐殺まで行っていると見なされている国で行われるべきではないという、国際世論が起こりつつあります。

 以下に、米国在住のジャーナリストの高濱賛氏が、JBpressに寄稿したコラムを引用して紹介します。タイトルは『東京五輪終わり、北京ボイコットがいよいよ始動 虐殺容認ではドイツ人の剛腕バッハ会長も針のむしろか』(8/11)です。

米中対決で有名無実化の五輪精神

 コロナ禍の東京五輪を何とか切り抜けたトーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長だが、一難去ってまた一難。

 6か月後には欧米諸国の指導者たちが目の敵にする北京冬季五輪が待ち構えている。

 東京五輪ではごり押し(?)が功を奏した剛腕バッハ氏だったが、北京五輪ではそうもいかなくなってきた。

 カリフォルニア大学バークレー校のW教授(現代史)は五輪精神と政治についてこう語る。

「バッハ会長は『オリンピックには政治的な問題は一切持ち込まない』と大見栄を切っているが、オリンピックは常に政治に翻弄されてきた」

「現にドイツナチスは侵略予定ルートをあらかじめ聖火ランナーに走らせたし、中国は台湾の国名をめぐって、米国はソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して、それぞれ五輪ボイコットしている」

「ソ連は1984年のロサンゼルス五輪を報復ボイコットしている。五輪ボイコットは別に大事件ではない」

 東京五輪で米国は中国と金メダル争奪戦で土壇場まで激しいツバ競り合いを演じた。米国は39個と1つ差で中国に勝ち、かろうじて「米中対決」を制した。

「金メダルで米国を打ち負かす」という習近平国家主席の号令一下、中国は頑張ったが、お家芸の卓球やバトミントンで取りこぼして敗れた。

 おそらく中国は、「江戸(東京)の仇は長崎(北京)で討つ」思いに燃えているのだろうが、冬季五輪では中国のお家芸はない。

 中国にとっては、北京五輪は金メダル争奪戦ではなく、「座敷を貸す」ことで国威発揚を狙い、全世界に中国の国力を誇示する政治の檜舞台だ。

 これを阻もうとする米国は、ウイグル族に対する「ジェノサイド」(民族大量虐殺)容疑を盾に中国の前に立ちはだかっている。

 米国にとっては人権問題は放ってはおけない最優先事案。たとえアスリートの夢を破っても絶対に譲れない。

 中国は終始一貫、「虐殺などない。濡れ衣だ」と真っ向から反発。こちらも面子をかけて無実を主張し続ける。双方ともに掛値なしの激突だ。

 ただ、冬季五輪は夏季五輪と異なり、参加国の9割は欧米の白人国家ばかり。白人たちのスキーやアイスケートといった「ホワイト・リリー(白人同士)の競争」が昇格して五輪になった経緯がある。

 非白人の国は中国、日本、南北朝鮮ぐらいなものだ。欧米がどんな形のボイコットにせよ、ボイコットだ、と言えばそれが通る可能性大だ。

(日本はどう出るのか。たとえ米英独仏が外交ボイコットに踏み切っても菅義偉首相は親中国派の二階俊博幹事長あたりを開会式に出席させるのだろうか)

武漢ウイルス研究所流出説とデルタ拡散

 北京五輪で中国を不利な立場にしているのは、ウイグル問題だけではない。

 それに追い打ちをかけているのが、武漢ウイルス研究所の極秘情報流出、そして新たに中国各地で再拡散し始めているウイルスだ。おそらく感染力の強いデルタ株だろう。

 欧米諸国は新型コロナウイルスの発生源は武漢ウイルス研究所だと確信している。

 8月2日、米情報機関は新型コロナウイルスが同研究所から流出したことを裏付けるウイルスのサンプル遺伝子情報を入手したという。

 米下院外交委員会メンバーのマイケル・マコール議員(共和、テキサス州選出)が明かした情報だ。

 ジョー・バイデン政権は5月下旬、同研究所流出説の解明調査を米情報機関に指示。期限を「90日以内」としており、8月24日がその期限だ。

 中国はこうした米国政府の動きに「でっち上げと歪められた事実に基づく嘘八百」と激しい口調で反発している。

 米議会にはウイグル族虐殺だけでなく、ウイルス流出疑惑という点からも北京五輪をボイコットせよ、という声が上がっている。

ボイコットでは米民主、共和両党は一致

 北京五輪ボイコットについては、バイデン政権と共和党とは意見が一致している。

 米国内では、保守、リベラルを問わず「嫌中国」感情が醸成されているからだ。反中でなければ選挙には勝てないような「踏み絵」になっているのだ。

 東京五輪開幕式の7月23日に米議会中国問題行政委員会(CECC)*1の4人の上下両院議員は、怒りの矛先をバッハ氏に向けた。

 同氏に書簡を送り、「中国が人権弾圧行為をやめない限り、北京五輪を延期するか、冬季五輪の開催地を別の場所に変更するよう」要請したのだ。

*1=同委員会は、中国の人権問題を監視することを目的で2000年に設置された。

 書簡を送ったのは同委員会の共同委員長、ジェフ・マーケル上院議員(民主、オレゴン州選出)とジム・マクガバン下院議員(民主、マサチューセッツ州選出)らだ。

 書簡の要旨は以下の通りだ。

「主催国の政府がジェノサイドや人権に対する罪を犯している国でオリンピックは行われるべきではない」

「わが委員会は、2018年にも貴殿に対し、中国が人権弾圧を行っていることについて憂慮を伝えにもかかわらず、何らの回答も得ていない」

「貴殿が中国に対してこうした行為をやめるように要求したといういかなる証拠も得ていない」

「もしIOCが中国による人権弾圧を全く無視し続け、北京五輪を開催するようなことがあれば、五輪自体が極めて人権問題に脆弱であるかを反映することになる」

「この問題は、IOCが政治の影響を受けないということとは別次元の話だ。ジェノサイドに反対するということは政治問題ではない。これは基本的なモラルであり人間の尊厳にかかわることなのだ」

 バッハ氏は3月、この問題について記者団にこう答えている。

「IOCはスーパー・ワールド・ガバメント(超世界政府)ではない。IOCは国連安保理やG7やG20が解決すべき事案について自ら解決もできないし、主張することもできない。IOCは自分たちの責任範囲の中で責任を果たすことしかできない」

 IOCにとっては米国も中国も重要な参加国であり、金銀銅メダル獲得二大国でもある。商売上の「顧客」でもある。米国だけの言い分だけを聞いて行動をとるわけにはいかない。

 IOCは4年前、五輪開催国を選出する際に「国連人権処理原則」(United Nation’s Guiding Principles on human rights)を適用することを決めたのだが、2022年の北京冬季五輪はそれ以前に決定していたのだ。

コカコーラなど北京五輪スポンサーを出入り禁止

 さらに米議会には今2つの北京五輪関連の決議案が提出されている。

 一つは5月27日に北京五輪にスポンサーになっている米企業を米政府全機関との商業取引からシャットアウトする法案だ。つまり出入りを禁止する法案だ。

 これには、コカコーラ、ビザ・カード、インテル、プロクター&ギャンブルが対象になる。

 同法案は、米海兵隊グリーンベレー出身のマイク・ワルツ下院議員(共和、フロリダ州選出)と元外交官のトム・マリノースキ下院議員(民主、ニュージャージー州選出)が共同提案者だ。すでに下院外交委員会に上程され、審議を待っている。

 米政府機関だから国防総省も含まれているが、例外として「国家安全保障上不可欠な物品サービスは対象から外すという。法案が成立してから30日以内に実施される。

 もう一つは、6月2日に6人の下院議員が共同提案したIOCに「2022年冬季五輪を北京以外で開催するよう要求する」決議案だ。

 提案者は、前述のマリノースキ議員のほか、マイク・ギャラファー議員(共和、ウィスコンシン州選出)、韓国系のヤング・キム議員(共和、カリフォルニア州選出)らだ。

 同決議案は、以下の点を指摘している。

一、IOCは人権問題についての立場を明確化せよ。IOCが「政治を超越した立場」を堅持することは何も今ウイグル自治区で中国政府がやっている大量殺戮について目を瞑る、ということではない。

二、IOCは北京に代わる開催地を緊急に選ぶよう要請する。

三、IOCは五輪開催中に選手たちの表現の自由を禁ずるのではなく、それに代わる規則を提示するよう要請する。

 ジェノサイドが続く限り北京五輪開催には反対することを表明している国・機構は英独仏伊、スウェーデン、デンマーク、スイス、ベルギーの8か国と欧州連合(EU)議会だ。

 冬季五輪は夏季五輪と異なり、参加国は欧州諸国が圧倒的に多い。2018年平昌五輪のメダル獲得のトップはノルウェー(39個)、ドイツ(31個)。それにカナダ(29個)、米国(23個)、オランダ(20個)、スウェーデン(14個)が続く。

 中国は金メダル1個、銀銅は8個だった。日本は金4個、銀銅9個だった。

 その意味では米国やドイツ、オランダ、スウェーデンが北京開催に反対する声はIOCにとって大変なボディブローになりそうだ。

 これらの国が万一ボイコットすれば五輪は成り立たなくなる可能性大だ。

米五輪委員会:選手不参加以外の方法も

 米下院の中で北京五輪ボイコットに猛反対しているのはナンシー・ペロシ下院議長(民主、カリフォルニア州選出)だ。

 ペロシ氏は、5月18日、前述の米議会中国問題行政委員会での聴聞会でこう述べていた。

7f0468d722c78d851fe945954b95c428 「2018年の国連人権委員会の報告書によれば、新疆ウイグル自治区で中国政府は少なくとも100万人のウイグル族を強制収容所に収容している」

「下院には北京五輪関連の決議案がいくつか上程されているが、上院も北京五輪を阻止する法案を審議してほしい」

「例えば、米国だけでなく、世界各国の指導者たちに北京五輪には出席しないよう呼びかける決議案を出してはどうだろうか」

 ペロシ氏は、北京五輪を完全ボイコットできなくても「外交ボイコット」を米国はじめ主要国が行うことで、北京五輪を舞台に習近平国家主席がやろうとしている「オリンピック外交」を阻止しようというのだ。

 背景には、北京五輪を目指して過去4年間、練習してきたアスリートたちの思いを慮る米国五輪委員会の意向が見え隠れしている。

 米国五輪委員会のサラ・ハーシーランド事務局長はこう述べている。

「米国五輪委員会は当然、ウイグル族弾圧については関心を払っているが、それだからといって米国選手を北京五輪に参加させないというのは、唯一の答えとは言えない」

 前述の中国国内でのコロナウイルス再拡散を憂慮するIOCは、「今後の状況を見ながら無観客の五輪も検討せねばならなくなるだろう」(クリストファー・ダビIOC事務局長)との観測気球を上げている。

中国にコロナ再拡大の新たな逆風

 こうした北京五輪ボイコットの動きで中国は四面楚歌の状況に落ちいっているかに見える。

 中国は東京五輪をべた褒めにしているが、どうやら日本が北京五輪ボイコットには乗らないことを期待しているからだろう。韓国はどうか。

 こうした中国にまた一つ逆風が吹き始めた。

 コロナを撲滅したと豪語していた武漢市の衛生健康委員会が4日、1200万人の市民全員を対象にPCR検査を実施すると言い出したのだ。コロナ撲滅宣言から約1年3カ月ぶりに市中感染者が確認されたのだ。

 武漢市だけではない、中国国内各地で7月以降、コロナ感染が再び拡大しているのだ。

「欧米ではコロナ―武漢―中国といった疑惑の構図が根強い。東京五輪は大丈夫だったが、北京五輪は敬遠する、と言い出すアスリートも出てくるかもしれない」(米主要メディアの五輪担当記者)。

 ボイコット気運はアスリートの間にも広がりつつある。

 習近平国家主席の胸の内は複雑だろう。その心中を知る親中派(?)のバッハ会長も米中の板挟みにあって悩ましいはずだ。

 その中国はどう対抗するのか。

 米外交関係評議会(CFR)のサイト上でリンゼイ・マイズランド氏はこう分析している。

「北京五輪ボイコットにはいくつかの選択肢がある」

「一、米議会などに出ている外交ボイコット。参加国は指導者はもとよりいかなる政府関係者も参加させない」

「二、開催地を北京から別の国の場所に移す。開催地・北京ボイコット」

「三、選抜されたアスリート自身が参加をボイコットする。またウイグル族弾圧に抗議するステートメントを公表する」

(こうした行動を米五輪委員会は禁止しているが、アスリートが実際に行った場合、制裁措置を取るかどうかは分からない)

「四、北京五輪と契約を結んでいるスポンサーに対する制裁」

「ボイコットに対して中国はどう出るか。中国は地球温暖化問題での合意事項を破棄したり、米国内の外交公館閉鎖の措置をとるかもしれない。また14億人の中国市場からの米製品締め出しもやるかもしれない」

「面子を潰された中国は怒り狂って何をするか、想定困難だ」

 いよいよ北京五輪ボイコットをめぐる米中の攻防が本格化する。ドイツ人弁護士のバッハ氏にとっては「針のむしろ」が待っている。

 ◇

 前回も述べましたが、北京冬季オリンピックボイコットは、米国などボイコット側と中国との政治対決であって、今のところどうなっていくかは見通せません。ただ米国の狙いの一つが、中国をジェノサイド国家と言い続けることにより、国際的な批判を中国に向け、今後の米中対立を優位に進めるための、格好の道具となることでしょう。

 そのためにもボイコット側により多くの国を味方につけ、優位な展開を勝ち取りたいでしょう。そのとき日本がどうでるか、モスクワオリンピックの時は同調しましたが、当時はソ連は日本にとっても敵対国でした。今の中国とは状況が違います。更には中国に忖度し、人権外交では常に積極的ではない態度を示していますので、おいそれとは踏ん切りがつけられないのではないでしょうか。米国の外圧次第でしょうね。

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