中田獲得、巨人の「紳士たれ」は過去の遺物か
今回はスポーツの話題です。スポーツ界での暴力事件は後を絶たないようです。プロ野球元日本ハムの中田翔選手もその一人。球団は無期限出場停止処分を下しました。ところがその後10日も経つか経たないうちに、電撃的に巨人へのトレードの報道。いやびっくりしましたね。こんなことがあるのかと。
私は巨人ファンではありませんので、巨人ファンの人には申し訳ありませんが、かつて金田や張本、落合、清原、小笠原、杉内や最近の丸選手など、有名で実力者どころを、金か名声でなのか分かりませんが、どんどん引っ張ってきています。常勝巨人の名が廃れないように、実力選手の獲得にかける意気込みは分かりますが、その割には勝てていないような気がします(言い過ぎました)。
私はかなり以前ですが、桑田投手を獲得したときの巨人の画策とも思える手練手管を、潔(いさぎよ)しとしないと思っています。そして今回の中田獲得事件です。この顛末を、JBpressに寄稿したルポライターの青沼陽一郎氏のコラム『かつて指名見送った中田獲得、巨人の「紳士たれ」は過去の遺物か 原監督の「温情」だけじゃない無償トレード、早々の出場に違和感』(8/22)で紹介したいと思います。以下に引用して掲載します。
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プロ野球、日本ハムファイターズの中田翔選手がチーム内で暴力事件を起こし、巨人へ電撃移籍した。そこに強烈な違和感を覚えるのは、かつての巨人のドラフト戦略の裏事情を知っていたからだろうか。
「移籍先が巨人」に違和感
中田がチーム内の同僚選手に暴力を振るったのは、東京オリンピック期間中の今月4日に、函館で行われた横浜DeNAとのエキシビションゲームの開始前のベンチ裏でのことだった。後輩選手を殴り、その選手から訴えがあったことから問題が発覚。先発出場していた中田は第1打席に立ったところで交替させられ、球場からも退場させられた。その後、球団が中田や周囲の選手、関係者から事情を聞いた上で11日、統一選手契約書第17条(模範行為)違反と野球協約第60条(1)の規定に該当するとして、1軍・ファーム全ての試合の無期限出場停止処分としたことを発表した。
しかも処分を受けて日ハムの栗山監督が「正直、このチーム(で復帰すること)は難しいと思っている」と語ったことが報じられると、同チームにいられない実態が明らかとなり、中田の今後の去就が俄然、注目の的となった。ところが、その直後の20日に巨人への無償トレードが決まる。スポーツ紙などの報道によると、栗山監督が巨人の原監督に電話で相談をして結果的に“救いの手”を差し伸べることになったようだ。巨人への移籍が決まった日、コミッショナーによる「出場停止選手」の公示も、処分解除となっている。21日には一軍登録され、代打で途中出場も果たした。
暴力は決して許されるべきものではない。無期限の出場停止処分が、暴行からわずか2週間余りでの解除と、移籍先が巨人であることに強烈な違和感を覚えたのは、いまさらながらに中田のドラフト当時のことが今回の一連の顛末と同時に頭に甦っていたからだ。
ドラフト候補に対し巨人が秘密裏に行う「身体検査」
2007年のドラフト会議。その年の目玉選手は、甲子園でも活躍した大阪桐蔭高校の“エースで4番”の中田翔だった。その時に、私が耳にした新聞記者の愚痴。
各球団ではドラフトにあたって、まずは指名候補の選手を調査するところからはじまる。どこにどんな逸材がいて、どんな能力を持っているのか、将来性はあるのか、怪我はしていないのか、プロとして通用するのか、などなど選手としての力量を調べるのは当然のことだ。
ところが巨人で必要となるのは、選手としての力量ばかりではない。球団組織や親会社にとってマイナスとならないかどうか。いわくがあれば、そこまで徹底調査する。ちょうど、政治家が新しい秘書を雇うのに過去の経歴や身辺に問題はないか、信用に傷がつくことはないか、確認するのといっしょだ。人気スポーツの人気球団として、スキャンダルを呼び込むようなことがあってはならない。球団名に刻まれた看板企業の経営に支障が出ることなどもってのほかだ。
そこから、親会社の読売新聞が動き出す。というより正確には、親会社の記者たちが動員される。
もっとわかりやすくいえば、中田翔の場合はその当時から一部報道で囁かれていた本人の素行の悪さに加え、いわゆる家庭の事情も懸念材料のひとつにあったという。
そうした事情を確かめるために、読売新聞の本社から全国に展開する支局に号令がかかる。中田の場合は高校の所在地の大阪周辺と、実家のあった広島の支局に指令が届く。当該の支局ではその調査のために記者を動かすことになる。その煽りを受けるのが、若手の記者たちだ。日常の業務に加えて、ドラフト指名予定選手の周辺事情を探るあらたな取材活動が加わることになる。そこから漏れ伝わる愚痴。プロ野球球団を持たない同業他社の支局の記者たちが見ていても、同情したくなることがあるという。その当時、ある事件の取材で広島の往来が多かった私が現地で耳にしたことだった。逆をいえば、全国に取材拠点としての支局を持つだけ読売巨人軍は情報収集に長けていることになる。
14年前にドラフト指名を見送った中田を獲得
結局、ドラフト会議で巨人は中田を指名しなかった。支局からどういう調査報告が本社にあがったのか、私の知るところでもない。
それでも中田は、北海道日本ハムファイターズ、阪神タイガース、オリックス・バファローズ、福岡ソフトバンクホークスの4球団から1位指名を受けて、抽選で交渉権を獲得した日本ハムに入団している。仮に、社会に受け入れられないような関係者が親族にいたとすれば、プロ野球選手としての活躍もなかったはずだ。私はそう納得している。
それが、ここへ来ての暴力事件と巨人への移籍だ。前述のように、栗山監督がチームに留め置けないことを漏らした背景からしても、問題は今回のことだけではないことは想像に難くない。「紳士たれ」がチーム訓の巨人。当時のこともあわせて考えると、やはり違和感を禁じ得ない。
球団内での原監督の発言力増大も要因か
それでもあえて火中の栗を拾うような行為ができるのも、原監督の持ち合わせた指導力によるところが大きいようにも報じられている。だが、それだけだろうか。因みに、中田のドラフト当時の監督も原だった。
中田のドラフト当時と、現在とでは球団の考え方や、親会社の姿勢も変わったのかもしれない。よりクールにプロ選手をその力量だけで判断して、背景事情は加味しない。その代わりコンプライアンス違反や社会的モラルに反することがあればいつでもバッサリと切り捨てる。実力がすべてなのだから、チーム貢献ができなくなれば同様だ。合理的にチーム運営だけを優先する。それが許される時代への対応。
傍から見れば温情に映る中田への対応も、実はそうではない。一野球ファンとして、ここ数年の原監督や巨人の選手の操縦術をみていても考えさせられる。あるいは親会社の“ドン”の発言力も弱まったのか。
ドラフトで指名すらしなかった中田の獲得は、巨人にとってどんな影響を及ぼすのか。鬼が出るか蛇が出るか。注目である。
◇
あらゆる手を使って実力選手を獲得していても、常には勝てないとなると、更に獲得するためには、もうその選手の素行や背景は関係なくなるのでしょうか。そういえばかつて巨人選手で野球賭博に関係していた選手もいました。少なくとも紳士球団とは言い切れないところもあるようです。
他球団から実力選手を獲得しても、その実力通りの力を発揮できない選手も多い。つまり有名で実力選手が多いことが、お互いの余計な緊張感や疎外感を生んでいる可能性もあります。選手の育て方、雰囲気作りも重要ですが、原監督は上手な方だと聞いています。そうしたなか、中田選手はこの巨人で実力が発揮できるのか、今後の動向を見守りたいと思います。
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