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2021年8月24日 (火)

タリバンとは何者か、なぜ恐れられるのか

Img_3ca41e658fff7df516b5f4538f2c29e16268  アフガニスタン情勢が今世界を賑わせています。日本にとってはやや遠い国ですが、イスラム原理主義を掲げた過激な集団というイメージが強く、日本人の間でも関心が高い国です。

 そのタリバン、一体どういう集団か、その発生から歴史的に見てみようと思います。Newsweekに掲載された記事を紹介します。タイトルは『タリバンとは何者か、なぜ恐れられるのか』スー・キム氏8/20)で、以下に引用します。

<20年ぶりにアフガニスタンの実権を掌握したタリバンとはいったい何者なのか、アフガニスタンはどうなるのか>

アフガニスタンでは、イスラム原理主義組織タリバンが全権を掌握。国の将来を不安視する声が高まり、大勢のアフガニスタン人が、なんとか国外に脱出しようと試みている。

タリバンは1990年代後半、独自の厳格なシャリーア(イスラム法)解釈に沿って、アフガニスタンを支配していた。2001年に米軍がアフガニスタンに侵攻したことで権力の座を追われたが、その米軍の撤退完了が8月末に迫るなか、タリバンは各地で攻勢を強め、8月15日には首都カブールを制圧。再び政権を握ることが、ほぼ確実となった。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は8月17日に開いた記者会見の中で、自分たちに反対してきた全てに恩赦を与えると宣言し、タリバンの新たな統治下においては、女性の権利も尊重していくとも述べた(ただしイスラム法の範囲内で)。

タリバンとはいったい何者なのか。なぜこれほど恐れられるのか。その歴史と最新状況について、以下に詳しく説明していく。

タリバンの起源

アフガニスタンの公用語であるパシュトゥー語で「学生たち」を意味するタリバンは、1979~89年によるソ連のアフガニスタン侵攻に抵抗したムジャヒディン(イスラム・ゲリラ組織の戦士)によって形成された。カンダハル州のイマーム(イスラム教導師)だったムハマド・オマルが1994年にタリバンを創設し、米CIAとパキスタンの情報機関である軍情報統合局(ISI)が、同組織を密かに支援していた。

その後、パキスタンのマドラサ(イスラム神学校)で学んだパシュトゥン人の若者たちが、タリバンに参加した。パシュトゥン人は、アフガニスタンの南部と東部で多数派を占める民族であり、パキスタンの北部と西部における主要民族でもある。

タリバンはアフガニスタン南部を拠点とし、同地域で影響力を拡大していった。米シンクタンクの外交問題評議会はタリバンについて、ソ連軍の撤退後、1992年〜96年にかけて対立する複数のムジャヒディン組織が争いを繰り広げていたなかで、アフガニスタンに安定をもたらすという約束を掲げて、国民の支持を獲得していったと説明している。

タリバンは、2001年9月11日の同時テロが起きるまで、長年にわたって国際テロ組織アルカイダをかくまっていた。米国家テロ対策センター(NCTC)によれば、タリバンはアルカイダが「テロリストを自由に補充し、訓練し、ほかの国々に配備できる」ようにするための拠点を提供していた。

2001年10月、アルカイダの撲滅を目指すアメリカ主導の有志連合軍が、アフガニスタンへの攻撃を開始。タリバンを権力の座から追放した。

『アフガニスタン/その文化と政治の歴史』の著者であるトマス・バーフィールドは本誌に対して、「タリバンの究極の目標は、アフガニスタンでイスラム法に基づく統治を行うことだ」と語った。

米ボストン大学の教授(人類学)で、同大学のイスラム社会研究所のディレクターでもあるバーフィールドは、新たなタリバン政権の約束が守られるかどうかについては「全ての人が注目している」と言う。「彼らは以前とは違うし、公に示している姿勢も1990年代とは大きく異なる」と指摘した。

実際、タリバンには単独で行政サービスを提供する能力はなく、政府職員や医療、人道支援などの各種サービスを提供する組織の協力なしには国を統治できないと、バーフィールドは言う。彼らが1990年代に「統治」したカブールは所詮、まともな政府もインフラもない廃墟だった。

それに対して現在のカブールは「500万人の人口を抱える大都市で、政府は安全だけでなく各種サービスも提供しなければならない。タリバンがそれを行うためには、(自分が倒した)かつての敵の協力を仰ぐしかない」と言う。

「世界でも人権弾圧がひどい国」

タリバンは、1992年にソ連の傀儡政権が崩壊した後、1994年までに同国南部で影響力を拡大し、複数の州を制圧。1996年9月までには首都カブールを掌握し、大統領を殺害してアフガニスタン・イスラム首長国を樹立した。

タリバン政権が最初に行ったのが、「コーランの定めに沿った法律の厳格な解釈」で、「女性やあらゆる類の政敵、宗教的少数派の処遇についての無慈悲な方針」が含まれた、とNCTCは指摘する。

米国務省民主主義・人権・労働局が2001年11月に発表した報告書によれば、1990年代後半にタリバンの支配下にあったアフガニスタンは「世界で最も人権状況の悪い国のひとつ」だった。報告書は当時のタリバン政権について、「全ての国民を組織的に抑圧し、個人の最も基本的な権利さえも否定した」と指摘。同政権の「女性に対する戦争はとりわけ恐ろしいものだった」と述べている。

国際的な人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が2020年6月に発表した別の報告書は、当時のタリバン政権による抑圧には「処刑を含む残虐な体罰や、宗教・表現・教育の自由の極端な弾圧」も含まれたと指摘した。

当時のアフガニスタンでは、女性が仕事をしたり、教育や医療を受けたりする権利が大幅に制限された。移動や服装についても制限があり、全身と顔を覆う「ブルカ」を着用しなければならなかった。外出する際は男性の親族が付き添わなければならず、違反すればタリバンから暴力を振るわれるおそれがあった。

2001年の報告書は、「タリバン政権下で女性は尊厳を奪われ、家族を支えることができない立場に置かれた。少女たちは基本的な医療も受けられず、一切の学校教育を受けられなかった。歌や人形、ぬいぐるみも全てタリバンによって禁止され、子ども時代さえも奪われた」と指摘した。「タリバンは女性に対して、レイプや拉致、結婚の強制などのひどい暴力を行った。娘を守るために、パキスタンやイランに送った家族もいた」

手を切断する刑罰は廃止しない?

タリバンの新政権が以前とどう違うのかはまだはっきりしない。AP通信は、新たなタリバン政権の下、女性は働くことを奨励した、と報道した。8月16日にタリバン幹部がアフガニスタンのテレビ番組に出演し、女性キャスターからインタビューを受けた中で語った。また少女たちは学校に戻ることが許され、学校の入り口ではイスラム教のヘッドスカーフが配られた。

またAP通信によれば、タリバンのムジャヒド報道官は17日の記者会見で、「イスラム法の範囲内で」女性の権利を尊重すると約束した。だが90年代後半のタリバン政権下で導入されていた、犯罪者の手を切断する刑罰については、廃止を明言しなかった。

ムジャヒドは会見の中で、タリバンはアフガニスタン軍の元兵士や諸外国の軍に協力した請負業者や通訳に対して恩赦を与えると言明。ロイター通信によれば、タリバンは元兵士や政府関係者に対する報復はしないと述べた。

それでもカブールには、不安が根強い。AP通信は8月18日に、武装した男たちがカブールの民家を一軒一軒まわって、追放された前政府や治安部隊で働いていた者を探しているという住民の声を報じた。だがこの武装した男たちがタリバンなのか、タリバンになりすました犯罪者なのかは分かっていない。

ムジャヒドは、タリバンが首都に侵攻したのは、警察がいなくなった後の法と秩序を回復させるためだったと主張。カブールの治安が崩壊した責任は、前政府にあると非難した。

 ◇

 アメリカでは共和党を始め民主党の一部にも、アフガンからの米軍撤収は拙速だったと、バイデン大統領への批判が高まっているようです。しかしベトナムでもそうであったように、その国の統治を外国の手によって変えることは極めて困難です。

 あくまで米国での9.11テロの犯行集団、アルカイダへの報復を狙った、米国の空爆から始まったアフガンへの米軍投入だったわけで、それが長引くにつれタリバンとの泥沼の闘争となってしまったようです。ビンラディンの殺害が潮時だったのでしょうが、おそらくタリバンを掃討し親米政権を作り勝ったのかも知れません。

 いずれにせよ、これ以上の人命と金をつぎ込むことに、バイデン大統領はノーを下したのでしょう。だが大統領の思いとは裏腹に、アフガンの政府軍はいともあっけなく粉砕されてしまいました。やはり人命をなんとも思わない、宗教に凝り固まった武装軍団には、かなわなかったようです。

 そのようなタリバンが目指す政権がどんな形になるのか、今のところ全く不明なようです。少なくとも彼等は彼等のイスラム原理主義でもって国を統治したいと思っているでしょうし、それが一般のアフガニスタン人の求める国家統治と一致するのは、かなり困難ではないでしょうか。いずれにしろ中東にまた一つ、より不安定な国が現れた感が強い、といえるでしょう。

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