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2021年10月 7日 (木)

ノーベル賞の真鍋氏 「恐竜の時代に近づく気象、忍び寄る危機」

Img_cfa1b06c731730b463911f57839ff1912184  今年のノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏が選出されました。アメリカ国籍を取得していますがれっきとした日本人です。気象学分野での受賞も初めてで非常に喜ばしいことと思います。

 真壁氏の偉業と共に、氏の研究が明らかにした地球温暖化の影響、氏の対談記事から追ってみます。日経ビジネスが報じた対談記事、タイトルは『ノーベル賞の真鍋氏 「恐竜の時代に近づく気象、忍び寄る危機」』(10/6)で、以下に引用して掲載します。

 ◇

スウェーデン王立科学アカデミーは10月5日、2021年のノーベル物理学賞を米プリンストン大学の真鍋淑郎・上席研究員らに授与することを発表した。日本から米国に渡った気象学者の真鍋氏は、大気の振る舞いをコンピューター上で再現する気候モデルを開発し、CO2が倍増すると 約3.5℃気温が上がると試算した。「日経ESG」の前身となる「日経エコロジー」は数回にわたり真鍋氏に取材している。ここでは2000年に実施した、3800字に及ぶ日経エコロジー単独インタビューを紹介する。(肩書など2000年当時の記述をそのまま掲載する 聞き手/深尾典男(日経エコロジー編集長・当時)

*******

― 米国では、地球温暖化現象そのものに対する疑念があったと思いますが?

真鍋 温暖化が起こっていることについては、米国でも議論の余地はありません。現在の気温の上昇は、世界的な観測結果から明らかです。過去600年くらいの地表面の温度変化を分析すると、1900年ころから急速に上昇しているのがわかります。これまでに0.7℃くらい気温が上がっているでしょうか。この100年間のような温度上昇は一度もありませんでした。温暖化が起こっているということについては、否定する見解は米国でもほとんど姿を消しつつあります。

― CO2など温室効果ガスとの因果関係も認められつつあるのでしょうか。

真鍋 地球温暖化とCO2などの温室効果ガスとの関連もほぼ間違いありません。CO2をはじめとする温室効果ガスは大気中には0.1%もない微量成分なんです。ところが、この温室効果ガスがなかったら、地球の平均気温は零下17℃くらいになるといわれています。いまの平均気温が15℃くらいですから、温室効果ガスが30℃以上気温を引き上げています。それくらい効果が大きい。

 大陸の氷床に閉じ込められた気泡などから分析すると、CO2はだいたい1800年くらいから増えていることがわかります。産業革命の時期と一致しています。気温上昇との間には時間差がありますが、これは気温がCO2の濃度に単純に比例するわけではないためです。身近なところで、東京都の場合は、100年前と比べて気温が3℃ほど上がっていると思いますが、そのうちの半分以上は都市化が原因だと思います。外国の町に比べると、はるかに緑が少ないですし、アスファルトですっかり固められていますから。

21世紀後半には気温が2℃以上上昇、局地的には7℃以上上がるケースも

― これまでの研究で、温暖化は今後、どんな形で進むと考えられますか。

真鍋 中生代、恐竜が生きていたころですが、この時代は、いまと比べてずっと気温が高かったと考えられています。理由は、やはり大気中のCO2が多かったことにあります。そのころは大陸移動が速かったために、風化作用によって石灰岩に取り込まれていたCO2が、火山活動によって再び大気中に出てくるわけです。そのためにCO2濃度が高かった。それが2000万年くらい前になって、大陸移動のスピードが落ちたんですね。同時に風化作用のスピードが上がり、大気中のCO2が減少した。いまは、地球の長い歴史からいうと、寒い時期にいるわけです。ところが人間の活動で、CO2濃度が急激に増加している。われわれのシミュレーションでは、21世紀の後半には、海洋の気温でほぼ2~3℃上昇すると見ています。ところが陸域では3~5℃も上昇する。北極海ではさらに高く、7℃近く上がる。そうすると北極海の氷は、いまの6割くらいになるだろうといわれています。今後300年くらいで地球の平均気温は8℃、北極海周辺では16℃も上がるのではないかというシミュレーション結果もあります。

― 北極海での昇温の激しさなど、温暖化の影響には地域差がありそうですね。

真鍋 いろいろなシミュレーションを行っていますが、高緯度地域の影響が大きくなります。ロシアやカナダでは他のところに比べて、気温がドンと上がる。しかも冬に大きく上がるわけです。そうすると、作物の生育期間が延びますし、生産性も上がる可能性が高い。永久凍土が解け始めるという難しい問題もありますが、ロシアやカナダでは悪いことばかりでなく、温暖化がプラスに働く面もありそうです。これに対して、南の島では水没の危険が出てきます。地球全体で見るとマイナスだと思いますが、場所によってはプラスになる可能性もあり、利害が錯綜(さくそう)するわけです。

― 影響の出方に差があるとなると、国際調整は難しくなります。

真鍋 温暖化の場合は、オゾン層の破壊と違って、それが必ずしも有害であるということがはっきり言えない。ここが国際的な協力が簡単には行かない一つの理由になっていると思います。しかも、温暖化のメカニズムは複雑です。たとえば、石炭を燃やすと酸性雨の原因となる二酸化硫黄(SO2)が発生します。ところが、このSO2は対流圏の下部にたなびいて、太陽の光を反射します。つまり温暖化効果を緩和する可能性もあるわけです。ですから、温暖化だけではなく環境問題全体として考えないといけないでしょう。

最終的に決めるのは人間の意思、自然を守るか、生活を守るかが問われる

― 最大のCO2排出国、米国(当時)の対応が十分でないと温暖化対策は進みません。

真鍋 米国に30年以上も住んでいますから、米国人の考え方というのも理解できます。米国が温暖化問題に淡泊なのは、発展途上国との間に不公平感を感じるからです。たとえば、北米自由貿易協定(NAFTA)のもとに、米国と国境を接するメキシコ側に、新しい工場がどんどん建ちました。メキシコは大気に対する規制が米国に比べてはるかにルーズです。賃金の安いメキシコ人の雇用が増え、米国人の雇用が減る。しかも、国境を接する工場から有害物質がどんどん出される。大気だけではなく水質汚染もひどい。米国人は自分たちが犠牲になっているという意識なんです。もちろん発展途上国の側にも言い分があります。

― 温暖化が進むとして、気温上昇によってどのような変化が現れそうですか?

真鍋 これは実は難しい問題です。台風なんか増えそうな気もしますが、必ずしもそうとは言いきれないんですね。かえって台風が弱くなるという結果も出ています。気温が上がると海洋などからの蒸発量は増えますから、いわゆる熱帯低気圧は、いまよりも増えて、雨はたくさん降ります。だから洪水なんかは増えますね。最近、日本では梅雨の末期の集中豪雨が、以前よりも強く出ているような気がするんですが、温暖化の影響だという証拠はいまのところ見つかっていません。

 ほぼ確実に言えるのは、21世紀の終わりには、地球全体の平均で7~8%降水量が増えます。ここで問題になるのは、雨の降りやすい地域に、いまよりももっと大量の雨が降る可能性が高いということです。場所によっては雨が大量に降る地域が出てくる。絶対量にしたら、ずっと増えるわけです。いまでも洪水で困っているガンジス川やコンゴ川の流域、アマゾン川流域なんかに大量の水が集まるわけです。

― 気象が変わるということは、農業や食料問題などにも影響があるということですね。

真鍋 土壌水分量が大きく変わります。われわれのシミュレーションでは、中低緯度の半乾燥地帯、いま穀倉地帯と呼ばれているところで、特に夏の間、土壌の乾燥が進むという結果が出ています。たとえば、中国の北東部なんかでは10~20%土壌水分が減少するわけです。土壌水分量の変化の影響を極力抑えるためには、治水や灌漑(かんがい)といったウオーター・マネジメントが重要な問題になってきます。ただ、これをあまり強調しすぎると、ばらまき行政の口実にされかねないですね。

― こうした温暖化についての研究成果は、気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの国際会議の土台になるわけですね。

真鍋 科学的な議論抜きに温暖化対策は検討できないと思います。そのうえで、温暖化が本当であることはほぼ確定しているとして、問題はそれにどのように対応するかです。温暖化を防ぐためには、どのくらい掛かるのか、たとえば自動車の燃料を全部エタノールに変えるとすれば、どのくらい掛かるのかとか。対応策を実行に移した場合に、われわれが払う犠牲はどうかということを考えなければいけません。

― 先ほどのお話のように、地域によって受ける影響に差があるとすれば、国際合意は簡単ではないですね。

真鍋 温暖化がものすごく進んだときに、われわれのまわりの自然も大きく変わると思います。トラだとかゾウだとかライオンだとか。あるいは身の回りの植物も、いま知っているものが、かなりなくなってしまう。こういうことを容認するかどうかでしょう。CO2の発生をなんとしてでも阻止して、いまある自然を守ろうと考える人もいるでしょうし、自分の生活、収入が大事だとする人もいるかもしれない。極端なことを言えば、南の島が沈むなら、海の上に人工の島を造ればいいじゃないかという意見だってあるでしょう。こうなってくると、マーケットメカニズムで決められるものじゃありませんし、最終的には政治判断せざるを得ないのではないでしょうか。

― 温暖化防止のためには、影響がどうなるのか、しかも長期のスパンで考えないといけない。

真鍋 温暖化問題というのは、自分の生きている間はまだ大したことにならないだろうと、思っているのではないでしょうか。自分が死んだ後のことまで心配できる余裕を持っている人がどのくらいいるか――。現在、痛みを感じるようなことであれば、本気の度合いも違うのでしょうけれども。

 僕はCO2の収支の専門家ではありませんけれども、たとえば、いまのCO2濃度の2倍に抑えようとすると、ものすごい努力をしなければならない。しかも、いろいろな国際会議は開かれるけれども、結局、その深刻さは各国では理解されない。

 僕の印象としては、温暖化というのは、どんどん進んでいくんじゃないかと思います。

 ◇

 このインタビュー記事が書かれた時点では、カーボンニュートラルの推進者の、アル・ゴア元アメリカ副大統領が出演した映画「不都合な真実」もまだ上演されていませんし、地球温暖化対策に批判的な対応で、「パリ協定」から離脱したトランプ前大統領も出現していません。

 ただ大方の人がなんとなく予測しているように、地球温暖化は進んでいるのは間違いないと思われます。それが真鍋氏の言うように自然界に大きな影響を与えるにしても、進展が緩慢なため今すぐ大騒ぎをする人も少ないのも事実です。

 しかし毎年のように発生する、各地で反乱する大洪水や夏場に地域によっては40度超えを繰り返す高温現象、また海外で発生する大規模な洪水や山火事など、被害が拡大するにつけ、次第に人々の口から気候は「変わってきた」という言葉が多く発せられてきています。2000年時点より中国やインドの排出するCO2は大幅に多くなっている背景もあります。

 ただ個人でいくら頑張ってみたところで、その進行は抑えきれないジレンマもあり、真鍋氏の言われるとおり、残念ながら温暖化はどんどん進んでいくのでしょう。現実に2000年時点より気象変動はより激しくなっている事からもそれは実証されています。今後政治がどう対応するか、われわれの生きている時代にその方向性が確実になるかは見通せません。

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