「イカゲーム」が浮き彫りにした韓国の残酷なまでの格差社会
韓国は格差社会と言われています。その姿を反映した映画が世界的にヒットするという笑えない現実があります。2年前に公開した「パラサイト 半地下の家族」をご存じの方も多いと思います。もちろん私は断じて鑑賞していませんが、ある映画情報メディアによると内容は以下のようです。
「キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。」
(画像は韓国最大のスラム九龍村、遠景は江南地区のビル街)
お決まりの富豪と貧乏人を登場させ、その確執を描いたもののようですが、今年になって更にもう一つの映画「イカゲーム」と言う映画が制作され、Netflixで大ヒットしているとのことです。これもまた格差社会を浮き彫りにしている映画のようです。これについてはビジネスライターの羽田真代氏が、JBpressに記事を寄稿していますので、以下に引用掲載します。タイトルは『「イカゲーム」が浮き彫りにした韓国の残酷なまでの格差社会』(10/20)です。
◇
世界的に大ヒットとなっているネットフリックスオリジナルドラマの『イカゲーム』。このドラマは、総勢456人が自らの命をかけて賞金争いをする模様を描いた韓国ドラマで、ネットフリックス史上、最も視聴者数が多い作品となるほどの人気を博している。
韓国現地では、「米CNNが『本当に最高だ』と絶賛した」「イカゲームは投資額の約4倍もの価値を生み出した」「イカゲームが米国務省の外交電文にまで登場した」と、ニュースに取り上げられない日がない。映画『パラサイト 半地下の家族』以来のお祭り騒ぎである。
しかし、世界からの評価を韓国は素直に喜んでいいものだろうか。
米外交官は、「イカゲームの暗い物語の中心には、就職と結婚、そして階層を上がるために孤軍奮闘する、韓国の平凡な老若男女が感じる挫折感が描かれている。これは暗鬱な経済展望が韓国社会の悩みの中心にあるということを立証している」と指摘している(参考記事)。
フランスの有力日刊紙であるル・モンドも、「『イカゲーム』の背景に隠れた韓国社会の暴力」という題名のオンラインニュースで、「韓国社会が抱いている残酷な現実を反映したもの。失敗すれば銃で撃たれるという事実が、韓国社会に深い響きを与えた」と分析した。
加えて、ル・モンドは韓国の家計負債が国内総生産(GDP)の100%を上回り、2014年から2018年の間に、ソウル麻浦(マポ)大橋で自ら命を絶った800人余りの大多数が借金に窮したことが原因だったこと、また新型コロナウイルスの影響によって就職難に陥った若者が借金を返そうとオンライン賭博や仮想通貨の投資に手を出している問題についても紹介している。
映画『パラサイト 半地下の家族』でもわかるように、韓国の貧富の格差は大きい。
ソウル市内で22万に上る「半地下」居住世帯
2018年に統計庁が発表した調査結果を見ると、韓国の全世帯数は1983万世帯だが、このうちソウルに378万世帯が住んでおり、全国の半地下(※)居住世帯は36万(うち、ソウルが22万)世帯だと記載されている。これは、ソウル全世帯の5.8%が半地下に住んでいるということだ。世帯当たりの平均居住数は2.35人なので、ソウルの半地下に居住する人口は単純計算で86万人いることになる。
※半地下とは、半分が地下にある部屋のこと。韓国においては格差や貧困の象徴。
筆者も、渡韓後しばらくは半地下に居住していた。
この時は、事前に契約していた家のオーナーから入居当日に家賃の値上げを宣告され、もめたことからやむなく即日入居可能だった半地下に入居した。半地下の部屋は湿気で壁紙にはカビが生えるし、しょっちゅうゲジは入ってくるしで、住んでいて気持ちのいいものではなかった。家賃が安かったことが唯一のメリットだろう。
そんな半地下に、本国の人々が入居しているのだから、その人たちはよっぽどカネがないのだと推察する。
イカゲームを視聴した貧困層の韓国人からは、「このドラマを楽しめるのは生活に余裕がある人だけだ」「自分は、毎日12時間以上働いても娘と住むための持ち家が購入できない。ドラマを見ていると、自分が否定されているようで悲しかった」「20代はフルタイムの仕事に就けない。韓国生活がイカゲームそのものだ」という悲痛な声が上がっている。
日本以上に経歴を重要視する韓国の親たちは、子供を最高の学校に通わせたいと願う。そのためには、幼少期から江南(カンナム)にある高級アパート(日本ではマンションの位置付け)に入居し、最高の教育を受けさせなければならない。
しかし、貧困層の大部分はアパートに入居することすらままならず、半地下やオクタバン(アパートなどの屋上に別途、違法に建てられた部屋)、あるいは考試院(コシウォン/学生が勉強するために入居する2畳ほど部屋)を借りることが多い。そこにも入れない人々はスラム街に立ち並ぶ家に入居する。実際に、韓国にはまだまだスラム街居住者が多い。
韓国の今を象徴する「スプーン階級論」
スラム街は、高級アパートが立ち並ぶ江南地区にも存在する。九龍村だ。江南のスラム街地域には小屋のようなバラックが立ち並んでおり、そこからは江南の高級アパートがよく見える。バラック住まいは年寄りから子供まで年齢層も幅広く、このバラックから学校に通う子供たちも少なくない。
最近はバラック家の前に国産高級車やベンツが止まっているのも珍しい光景ではない。立ち退き金を払って地上げするためだ。
江南ではないが、筆者の知人(日本人)のご主人にもバラック出身者がいる。そのご主人は、今ではIT企業の社長だ。「スプーン階級論(※)」でいう「土のスプーン」から成りあがった数少ない例だろう。
※「親の経済力で人生が決定してしまう」という意味で使われる韓国の言葉。資産や年収に応じて、「金スプーン」「銀スプーン」「銅スプーン」「土スプーン」に分かれる。「土スプーン」は最下層。
ご両親は今もバラック住まいだが、今にも崩れそうな家に、息子にねだって買ってもらった高価な箪笥を並べて近所の人々に自慢しているそうだ。
先述のコメントにもあったように、イカゲームは韓国生活そのものだと言える。
カネが欲しい若者らは夢を抱いて仮想通貨に手を出し、一部勝者だけが利益を得る。敗者となった若者はより貧しい生活を強いられたり、麻浦大橋から身投げしたりと悲惨な末路を辿ることが問題視されている。
そんな話題のイカゲームと若者の貧困を利用する政治家が現れるのだから、始末が悪い。
イカゲームをパロった選挙ポスターを作った国会議員のセンス
許京寧(ホ・ギョンヨン)国家革命党名誉代表は、イカゲームのパロディーのような大統領選挙公約ポスターを公開した。そこには、「ゲームのルールは簡単だ。貧困に苦しむのか、1億ウォン+毎月150万ウォンを受け取るのか」「許京寧が50%以上の投票率を達成すれば、国会議員を精神教育隊に入所させて18歳以上の全ての国民に1億ウォンを支給する」と書かれている。
韓国という国自体が「世界経済のイカゲーム」で危うい立場に立たされているというのに、国民に1億ウォンをばら撒けば韓国はゲーム脱落国家になるに違いない。
このような国会議員がはびこっている以上、韓国情勢が改善されることはないだろう。そして、韓国人が人生のイカゲームを中断させる(ドラマでは、参加者の半数が同意すればゲームを中断させることができる)日もまだまだ先のようだ。
◇
若者であれ、年配者であれ、貧しい人たちに政府批判の矛先を向けさせないように、「韓国をこのようにしたのは日本だ、悪いのは日本だ」、と反日に目を向けさせようとしているのでは、と穿ってしまいます。
ともあれ日本で格差だ格差だ、と騒いでいる一部の特定野党の政治家やメディア人には、羽田氏同様、実際に韓国の半地下で過ごしてもらいたいものです。そうすれば日本の格差がどの程度か分かるはずです。東京に22万人もの半地下生活をしているような人はまずいないでしょうから。
とはいうものの、日本もバブル崩壊以降失われた30年が続いていて、経済の成長も弱く、格差も広がり始めているのは現実です。ここは経済成長、所得拡大の好循環を実現するよう、一丸となって取り組んでいかなければなりません。韓国は決して対岸の火事ではないと思います。
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