木下富美子都議の「辞任劇」のウラに見え隠れした、小池都知事の「思惑」
今回はあの世間を騒がせた、無免許運転で人身事故を起こし、議会から議員辞職勧告を受けてもなお、議員の席を居座り続けた木下富美子元都議を取り上げます。その元都議が今月22日突然辞職しました。その裏には何があったのでしょうか。そしてこの都議のもたらした行動は、どう見たらいいのでしょうか。
そのあたりの事情を、政治ジャーナリストの安積明子氏が、現代ビジネスに寄稿したコラムから引用します。タイトルは『木下富美子都議の「辞任劇」のウラに見え隠れした、小池都知事の「思惑」 民主主義の根幹を揺るがす問題だ』(11/24)です。
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突然の辞任の裏にいた小池都知事
7月の東京都議選中に無免許運転で人身事故を起こした木下富美子元議員が、11月22日に辞職した。この間、木下元都議は都民ファーストの会から除名され、都議会から7月と9月に2度の議員辞職勧告を受けている。
さらに議長から3度の召喚状をも送られた。議員辞職勧告や召喚状には法的拘束力はないが、地方自治法第137条は「普通地方公共団体の議会の議員が正当な理由がなくて招集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議に欠席したため、議長が、特に招状を発しても、なお故なく出席しない者は、議長において、議会の議決を経て、これに懲罰を科することができる」としており、木下元都議が召喚に応じないままでいれば、「除名」を含めた懲罰を受ける可能性があったのだ。
しかし木下元都議はそれを避けるかのように11月9日に登庁し、午後1時からの公営企業委員会に出席する予定でいた。三宅しげき議長には「償うべき罪は償った上で、議員活動の中で結果を出していきたい」と述べ、議員辞職するつもりがないことを明らかにした。
だが説明責任を果たさない木下元都議に反発する理事らが理事会を退席し、同委員会は深夜に流会になった。この時、木下元都議は「説明の機会は改めて持ちます」とうつむいたまま記者団に答えている。
だが説明する場として設定された18日の議会運営委員会は、前日午後に木下元都議からメールで欠席を伝えられたため開かれず、24日に延期された。それなのに22日にいきなり議員辞職が発表されたのはなぜなのか。その背後に木下元都議を都政に誘った小池百合子都知事の姿が見えてくる。
都知事に「引導」を渡された
「小池都知事とお話をする機会を得ました。『ここはいったん退いて、今回の交通事故の解決に専念したらどうか、人生が終わるわけではない』との助言いただき、『今回の不祥事を反省し、再出発する時には相談に乗る』とのお話をいただきました」
22日の会見で木下元都議は、小池知事と10月中旬から連絡を取り、同日午後に面談したことを明かしている。その小池知事は体調不良のために10月27日から11月2日まで入院し、テレワークを経て11月21日に都庁勤務に復帰したばかりだったが、この時「自らが出処進退をただしていくことについて、彼女自身が決することを私は確信しているところ」と述べて木下元都議の辞職を暗示した。
というのも、都議会内外で小池知事の「製造物責任」を求める声が高まっていたからだ。とりわけ木下元都議が議会を欠席しているにもかかわらず、議員報酬が満額支払われていることに疑問を抱く都民は多い。また12月1日まで都議でいれば、12月10日に204万5022円のボーナスが満額支払われる。小池知事はその前に木下元都議問題に決着を付けなければならなかった。
もっとも木下元都議の辞職が早すぎてもいけなかった。選挙日から3か月以内に議員を辞めれば、次点の自民党の候補が繰り上げ当選となってしまう。だからこそ、「10月中旬から連絡のしあい」となったのではなかったか。
「虐め」と言えるのだろうか?
なお22日の会見で木下元都議は辞職決断の理由を「齢85歳になる父親の安全が脅かされる事態となったため」と述べたが、「再出発する時には相談に乗る」という小池知事の言葉こそが辞職決意の決め手となったに違いない。
そう感じたのは、木下元都議は会見で自分が取り組んできた業績を述べるなど、いまだ議員の地位に未練たっぷりの様子だったからだ。
さらに木下元都議の弁護士は、11月9日に公営企業委員会が開催されなかったことを「虐め」と述べて批判した。木下元都議を“けなげな悲劇のヒロイン”にしたてあげるストーリーを作り上げるつもりだったのだろうが、これはかえって反感を生んだ。「まずは事件に対する木下元都議の説明が先だ。議会としては木下元都議がきちんと説明しないままで、委員会に出席させられるはずがない」と、自民党の川松真一郎都議は憤る。
そもそも木下元都議が本当にけじめをつける決意だったかどうかは、会見からは伺えなかった。都議選で再選した7月から受領した3か月分の給与については「東京都選管と相談してNPO法人など団体に寄付した」と主張するが、「相手のプライバシーの問題がある」として寄付先を明らかにしていない。また10月分以降の歳費やボーナスについても、木下元都議は「満額を寄付する」とは述べなかった。
民主主義の根幹を揺るがす問題
こうしてみると木下元都議のケースには、不祥事を起こした議員に関する問題がてんこ盛りであることがわかる。まずは「不祥事を起こした議員が、報酬等を受け取ることの是非」だ。10月31日に当選した衆議院議員が「わずか1日で100万円の文書通信交通滞在費が支払われた」ことが問題になった例を引くまでもなく、おカネに関する有権者の目は厳しさを増している。
国政では今年8月、当選無効の場合は歳費の4割を返還する歳費法改正案が自公で合意された。2019年の参議院選で広島県選挙区で当選したものの、2021年2月に当選無効となった自民党の河井案里氏のケースがきっかけだ。
多くの地方自治体ではいち早くこの種の条例が作られており、大阪市では市議が被疑者として拘束された場合に議員報酬の支給を停止し、佐賀県嬉野市や千葉県八街市などでは長期欠席した議員の報酬を削減することになっている。都内でも新宿区や港区などで同様の場合に議員報酬を削減する条例があるが、東京都には存在しない。
さらに不祥事を起こして議会の信頼を傷つけた議員が、辞職せずに任期中に名誉挽回することができるのかという問題もある。いったん傷つけられた名誉や信頼は回復することは難しいが、民主主義の観点から有権者が選出した議員に最高の尊重をもってその地位の確立が図られている。除名が困難であることはその証左だが、それを奇貨として不祥事を起こしながらもその座に居座る口実とすることは不可能ではない。
民主主義では有権者の信託を受けた議員について疑念を抱かないのが原則だが、その信託を裏切ることは民主主義を貶めることに他ならない。もし木下元都議がそれを十分に自覚していたなら、問題はこれほど大きくなっただろうか。
◇
小池知事が、何らかの形で辞職を後押ししたのは間違いないでしょう。『ここはいったん退いて、今回の交通事故の解決に専念したらどうか、人生が終わるわけではない』、『今回の不祥事を反省し、再出発する時には相談に乗る』、と言う助言で決意したのでしょうが、そもそもこの手の元議員が、不祥事を本当に反省するのか疑わしいし、また有権者も普通であれば二度と投票をしないでしょう。やめさせるための方便と取っていいかもしれません。批判の矛先が回ってくるかも知れない自分のためにも。
議員の不祥事は国であれ、地方であれ少なからずありますが、多くは選挙違反や収支報告書の違反など、お金に絡む不祥事が多い中で、この例のように交通違反が原因の例はあまりないでしょう。しかも無免許運転で摘発された回数が7回とその数字も異常です。世間の常識を逸脱しています。
ただなぜ違反歴の多いこの人が立候補できたのか、都民ファーストの会の公認をとれたのか、そしてなぜ投開票翌日に選挙期間中の無免許運転が報道されたのか、謎は残ります。
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