有本香氏:中谷首相補佐官は「民族弾圧常習犯」に「寄り添う」のか
岸田首相は総裁選で、人権問題で中国に「毅然と対応する」として、担当補佐官の新設を公約していました。そして8日、その人権問題担当の首相補佐官に中谷元氏を起用する方針を伝え、第2次岸田内閣発足にあわせ、就任となりました。中谷氏は岸田氏との面会後、「外相や経済産業相と緊密に協力し、国際的な人権問題に対処する」と強調し、就任後の言動が注目されていました。
ところが、重大な人権侵害行為に制裁を課すための、日本版マグニツキー法の制定については「簡単にいかない」と慎重な姿勢を示しました。そして「一方的に価値観を押し付けて制裁するやり方も一つだが、寄り添って問題を解決する役割を日本は期待されている。紛争を助長したり、事を荒立てたりするのがすべてではない」と述べ、「対話と協力」を人権外交の基本とする日本政府の立場を説明したようです。これでは親中議員と対話はなく、首相補佐官の資質が問われます。
この点について、ジャーナリストの有本香氏が、作家百田尚樹氏の新刊「日本国記・新版」を取り上げながら、zakzakにコラムを寄稿しています。タイトルは『中谷首相補佐官は“民族弾圧常習犯”に「寄り添う」のか 「制裁法には慎重」な構えとの報道も 就任早々「白旗」の残念な所業』 (11/19)で、以下に引用して掲載します。
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私事だが、9カ月にわたり編集を手がけてきた百田尚樹著『日本国紀[新版]』(幻冬舎文庫)が17日、発売された。同時に、全国の大型書店で売り上げトップとなり、即日に重版が決まって、いまホッとしている。
3年前に刊行された単行本『日本国紀』(幻冬舎)は65万部のベストセラーとなったが、今回は書店への客足が減ったコロナ禍での発売である。しかも、大幅に加筆したとはいえ既刊本の文庫化という位置づけでもあり、売れ行きが心配ではあった。
ひとまず好結果を得たのには、夕刊フジ読者の応援も小さくなかったと思う。この場を借りて御礼申し上げたい。
3年前に続いて、『新版』もまた、発売のちょうど1カ月前にはネット書店で予約が開始され、その日のうちに、最大手アマゾンで売上ランキング総合1位に躍り出た。ただし今回、版元の幻冬舎は落ち着いたもので、私の目から見ると、慎重な構えという印象すらあった。
この一因は、前回の発売と同時に激しい「アンチ日本国紀」活動が始まったことにあろう。作品はもちろん、著者や編集担当の私に加え、版元も不当な攻撃を受けた。
今振り返っても、3年前の「アンチ日本国紀」活動は常軌を逸していたといえる。主導したのは、いわゆる左派文化人らだったが(=一部の保守系人士も攻撃に加勢した)、本そのものや著者、編集者である私にケチを付けるだけでは足らず、特定の大型書店に対する「不買運動」まで起こされたのには驚いた。
さらに驚いたのは、その「アンチ」勢のなかに、与野党の国会議員が混じっていたことである。
イデオロギーの左右を問わず、こういう人間に権力を持たせたら、たちまち国民の「表現の自由」を抑圧するだろう。そう思うと、私はむしろ勇気が湧いた。日本を守ろうと命をかけて戦った幾多の先人を思えば、あるいは隣の国で、悪魔のごとき圧政者と戦うウイグル人やチベット人を思えば、「アンチ」の嫌がらせなど蚊の羽音にも劣る。
一方、『日本国紀[新版]』を読み返すと、改めて、いまの日本の政治家の不甲斐なさを思い知る。私たちはつい、「野党議員に比べたら自民党の議員はマシ」などと思いがちだが、この甘やかしは禁物である。
折しも、岸田文雄政権が鳴り物入りで任命した「国際人権問題担当の首相補佐官」の中谷元氏が、「制裁法には慎重」な構えだと報じられた。
中谷氏は「一方的に価値観を押し付けて制裁するやり方も一つだが、寄り添って問題を解決する役割を日本は期待されている。紛争を助長したり、事を荒立てたりするのがすべてではない」(15日夜のBS日テレ番組)と述べたそうだが、民族弾圧常習犯のどんな価値観に「寄り添う」というのだろうか。
今年春頃には中谷氏は、「人権外交を超党派で考える議員連盟」の共同会長として、「日本版マグニツキー法」(人権侵害への制裁法)の制定を訴えていたと記憶しているが、あれは何だったのか。立場が変われば、威勢のいいことは言いにくいというのかもしれないが、私が理解できないのは、なぜ就任早々、自らの限界をわざわざ表明するのか、だ。
畏れながら、中谷氏にはぜひとも、『日本国紀[新版]〈下〉』の154ページからのくだりをお読みいただきたい。そこには、1919年、第一次世界大戦後の「パリ講和会議」で「国際連盟」の設立が話し合われた席上、日本が、「人種差別禁止」の規約を入れるよう主張した旨が書かれている。
欧米列強が、有色人種の地であるアジア・アフリカの大半を植民地としていた当時、これを主張することがいかに勇気の要ることだったか。この崇高な先人の振る舞いに比して、新任補佐官の「早々の白旗」は誠に残念な所業と映るのである。
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中谷氏が持論を撤回した背景には、有本氏の述べた「日本国記」への凄まじいばかりの批判、非難と同様の、圧力があるのかも知れません。中谷氏が、マグニツキー法の制定は「簡単にはいかない」と述べたあたりから、それは窺えます。つまり中国の日本国内での工作員に似た人たちは、メディア、言論人、政治家、経営者に多数巣くっていて、陰に陽にこの補佐官に圧力をかけた可能性が考えられます。
つまり岸田政権では、中国の人権問題に直言する立場の人間が、その立場を放棄したような発言をしたことから、当然対中外交には「人権」をカードに使えないことを暴露したのです。同盟国のアメリカもがっかりでしょう。早くも岸田外交は、先行き暗雲が立ちこめたと見ていいと思います。
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