「文通費」:税金浪費の議員へのお手盛り、廃止しかない
たった一日(実際は数時間)の国会議員在職でも、「文書通信交通滞在費」、いわゆる「文通費」を100万円満額支給、という現行法に待ったをかけるように、現国会で維新と国民民主が共同で日割り法案を提出しようとしています。
ただこういう議員に直結する法案は、全会一致が通例のようで、すぐには成立しない事情もあるとか。しかし果たしてこの「文通費」、実際に必要なのでしょうか。政治評論家の筆坂秀世氏が、JBpressに寄稿したコラムを取り上げてみます。タイトルは『国会議員に「文書通信交通滞在費」はいらない理由 領収書添付などでごまかしてはならない』(11/30)で、以下に引用して掲載します。
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国会議員にいくら国費が投入されているか
国会議員の歳費や諸手当は多すぎる。「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」によれば、「議員は129万4000円を、それぞれ歳費月額として受ける」とある。一般的に言えば給料である。これに6月と12月に期末手当が支給される。最近で言えばそれぞれ300万円強である。合算すると年間2150万円を超える額が支給されていることになる。
この他に、いま問題になっている「文書通信交通滞在費」が議員個人に月額100万円、年間1200万円支給されている。これですでに3350万円になる。
この他に「立法事務費」というのがある。これは国会の各会派に支給される。会派とは、議院内で活動を共にしようとする議員のグループで、2人以上の議員で結成することができる。会派は、同じ政党に所属する議員で構成されるのが普通だが、政党に所属していない議員同士で会派を組んだり、複数の政党で1つの会派を構成したりすることもある。委員会の委員・理事、質疑時間の割り当てなどは、会派の所属議員数に比例して会派ごとに割り当てられる。現在の衆議院で言えば自民党は単独で会派を構成しているが、立憲民主党は「立憲民主党・無所属」という会派名で届け出ている。
この会派に、議員1人当たり毎月65万円の立法事務費が支給されている。自民党の場合だと衆議院の議席数は262人なので毎月1億7030万円が支給されている。衆議院全体だと議席数が465だが無所属が4人いて、会派を構成していないので461人分の2億9965万円が支給されている。参議院は、会派を構成している議員数が235人なので毎月1億5275万円が支給されている。立法事務費だけでも毎月衆参両院に4億5000万円以上が支給されている。年間約54億円だ。
国会は立法府だから、立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費の一部だと説明されている。各会派は立法事務費経理責任者を定め、同経理責任者が扱うことになっているが、実態としては各党の本部の収入に計上され、本部経費に充当されている。この資金も使途の公開は義務付けられていない。不透明な資金なのだ。
文書通信交通滞在費が問題なら、この立法事務費も根本的に見直すべきだ。
日本共産党を除く各政党には、年間約300億円の「政党交付金」も支給されている。熱心に立法調査を行うのなら政党交付金でまかなうのが筋だろう。そもそも巨額な資金を使うほど地道な立法調査活動をしているとは到底思えない。
この他にも、公設秘書3人の給与が税金でまかなわれている。平均年収は930万円というから相当なものだ。
お手盛りで作ってきたルール
日本維新の会の新人議員がたった1日で100万円も支給されるのはおかしい、と問題を提起した。これは良い提起であった。この提起が契機となって、文通費をまとめてではなく、在職日数に応じて日割りで支払えるよう、来月召集の臨時国会で歳費法が改正される見通しだという。だがこの程度のことで、改革した・改善した、などとは到底言えない。もっと根本的な見直しが必要だ。
国会法第38条に、「議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける」とあるのが月100万円支給の根拠だ。では「公の書類」とは何か。「公の性質を有する通信をなす等」とは、どういうことか何らの規定もないのだ。要するに、非課税のつかみ金を国会議員に渡すためにお手盛りで作ってきただけのことなのだ。
2008年1月に、鈴木宗男衆院議員がこの問題で政府への質問主意書を提出し、次のように問いかけている。
(1)法的根拠及びその使用目的について政府、内閣は承知しているか。
(2)その使途を報告する義務は課されていないが、その理由を政府、内閣は承知しているか。
(3)予算額及び予算項目、そしてその積算根拠を明らかにされたい。
(4)国民の視点からすれば国会議員の特権と映ると考えるが、政府、内閣はどう考えるか。
これに対する当時の福田康夫内閣の回答は、(1)については、「公の書類云々」の法律に書かれていることのみ。(2)については、承知していない。(3)については、月100万円に衆参両院の議員数と12カ月を乗じたもの。(4)については、具体的な使途については承知していないが、各議員において制度趣旨を踏まえた使途に用いられているものと考えている。その取り扱いは国会で議論を、という木で鼻をくくるようなものだった。
国会においてお手盛りで決めたものだから、そもそも法的根拠も積算根拠もないのだ。
国会議員にはJRや私鉄の無料パスが交付されている
国会議員には、新幹線のグリーン車などJR全線の無料パス、JR全線無料パスと月3往復分の航空券(地元が飛行機を利用する地域の議員)、などが交付されている。このために国会の予算からJRと航空各社に合せて年間13億円の支払いが行われている。
国会議員は私鉄やバスも乗り放題である。国会議員には、私鉄各社に乗ることができる「鉄道軌道乗車証」と、全ての路線バスに乗ることができる「バス優先乗車証」も交付されているからだ。日本バス協会は、「各社の経営状況が厳しく、2005年から衆院に無料パスのとりやめをお願いしているが、話が進んでいない」という。また各会派には、衆参両院からそれぞれ議員数に合わせて、公用車も配備されている。
有料なのはタクシーくらいのものだ。この国会議員になぜ交通費を支給する必要があるのか。不要であることは、あまりにも明白だ。地元事務所で保有している自動車の費用だと言うかも知れないが、それは政治活動としてみずからの資金でまかなうべきものだ。
さらに滞在費は、まだ議員宿舎が整備されていない時代の産物なのだ。しかしいまは、衆議院には新赤坂宿舎、旧赤坂宿舎、青山宿舎に490戸の宿舎が用意されている。参議院も新清水谷宿舎、麹町宿舎で100戸以上が用意されている。それぞれ豪華すぎると批判されている。
国会議員の「公の書類」とは何か
11月16日放送のTBS系情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile」に出演していた元自民党衆院議員の金子恵美氏が、文書通信交通滞在費について「100万で足りない人も多い。文通費自体が必要ないって考え方はちょっと違って、マジメに熱心に活動している人にとっては、100万でも足りないぐらい」と主張していたが、それを聞いて少し驚いた。100万円でも足りない人というのは、一体、何にどれぐらい使っているのか教えてもらいたいものだ。マジメに活動しているそうだから、ぜひ公開されるよう働きかけていただきたいものである。
国会議員の「公の書類」とは何か。思いつくのは国会の本会議や委員会の発言録ぐらいのものだ。こんなものを大量に送っている議員など見たこともない。公の性質を有する通信とは何か。通信の秘密があるので、そんなものチェックしようもない。
参議院の比例当選議員は、全国が“地元”である。換言すれば地元が存在しないのが比例当選の参院議員なのだ。多少狭くはなるが衆議院のブロックで当選した比例議員も似たようなものだ。公の書類などを送る必要性はまったくない。
そもそも全国の有権者相手に公の文書を送付していては、億単位の費用が必要になる。そんなことをするわけがないのだ。通信費等も同様である。その比例議員にも同じように100万円が支給されている。どう考えてもおかしい。つまり文書・通信・交通・滞在費のすべてが不要なのだ。
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私も筆坂氏の見解に賛同します。コロナ禍で職を失い、収入が途絶えている人も多い中、国会議員だけがお手盛りの報酬を自動的に得ていることには、国民の多くが疑問を持つでしょう。特に立憲民主党や社民党など、弱者に寄り添うと日頃訴えている党の議員ではなく、維新の議員が取り上げたのも、彼等の金銭感覚が麻痺している証拠だと思います。
ここは日割りではなく是非廃止にして欲しい。そして全会一致などという悪習はやめて、できればこういう議員の利害に直結する法案は、利害なき第三者機関に諮問し、答申を得る制度に変えるべきだと思いますね。
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