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2022年1月11日 (火)

中国で「AI検察官」を導入?果たして検察能力は?そして日本の検察は?

Photo_20220110164501  日本の検察が扱う刑事裁判の有罪率は、99%を超えていると言われています。これほど高い有罪率の要因の一つは、警察から送検された事件を、起訴するか不起訴にするかを決めるのは検察官で、起訴した場合に、その人が有罪であることを刑事裁判で証明しなければならないのも検察官です。そのため、検察官としても、今ある証拠できちんと証明できるかということを真剣に検討してから、証明できると判断した事件だけを起訴しています。そのため、起訴された案件が有罪になる可能性がこれほど高くなるのでしょう。

 もちろん検察官自身の能力も高いことは、間違いないと思います。しかし検察官の処理する能力を上回る起訴事件が発生した場合、AIに部分的に頼ることができれば負担軽減になりそうです。そういう背景があるかどうかは分かりませんが、中国において「AI検察官」システムを開発し導入されたようです。

 ジャーナリストの松岡由希子氏が、Newsweek誌に寄稿したコラムからその様子を見てみます。タイトルは『AIが97%の精度で起訴する『「AI検察官」が中国で開発される』(1/7)で、以下に引用します。

 ◇

<中国上海市浦東新区人民検察院によって「AI検察官」が開発され、試験的に導入された>

中国の研究者チームは「人工知能(AI)を用いて人々を訴追するシステムの開発に世界で初めて成功した」と発表した。香港の日刊英字新聞「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が2021年12月26日に報じた。

1_20220110164601  犯罪が疑われる事件の記述をもとに97%超の精度で起訴できる

この「AI検察官」は、中国で最も広範で多忙な地方検察庁である上海市浦東新区人民検察院によって開発され、試験的に導入された。犯罪が疑われる事件の記述をもとに97%超の精度で起訴できる。

研究者チームは「意思決定プロセスで、ある程度、検察官に置き換えられる」と評価。「AI検察官」の導入によって、検察官の業務負荷が軽減され、検察官がより難易度の高いタスクに集中しやすくなると期待している。

中国では、法執行機関においてすでにAI技術が活用されている。2016年には、証拠評価や逮捕の要件、容疑者が公共の危険を生じさせるおそれがあるかの判断を支援するAIツール「システム206」が導入された。

2017年8月には、オンライン購買、オンラインサービス、インターネット上の著作権侵害、ドメイン名紛争などに関する民事・行政案件を一審として審理する「杭州インターネット裁判所」が設立された。起訴・応訴・仲裁・審理・判決といった裁判手続がインターネットで行われ、裁判文書はAIを用いて作成される。裁判官は一連の裁判手続をモニタリングし、AIが作成した裁判文書を修正して、判決を下す。

1万7000件超の刑事事件を用いて学習させた

しかしこれまで、AIの意思決定プロセスへの関与は限定的であった。このような意思決定には、複雑な人間の言葉を識別し、コンピュータが理解できる形式に翻訳するマシンが必要だからだ。テキストや音声、画像を分析する「自然言語処理(NLP)」と呼ばれるプログラムや検察官がアクセスできないスーパーコンピュータが必要となる。

そこで、研究者チームは、標準的なデスクトップコンピュータで動作する「AI検察官」を開発。2015年から2020年までの1万7000件超の刑事事件を用いて学習させ、人間が作成した事件の記述から1000の特性をもとに起訴できるようにした。

現時点で、上海で犯罪件数の多いクレジットカードの不正利用、賭博、危険運転、窃盗、詐欺、傷害、公務執行妨害のほか、日本語で「騒乱挑発罪」とも訳される「寻衅滋事罪」を起訴する。

「AI検察官」の導入に対し、懸念も示されている。広州市のある検察官は「技術的見地に立てば、97%の精度は高いのかもしれないが、判断を誤る可能性は常にある。間違いが起こったとき、いったい誰が責任を負うのだろうか」と指摘。「AIはミスを見つけるのに役立つかもしれないが、意思決定において人間の代わりにはなりえない」と主張している。

 ◇

 現状ではあくまで「AI検察官」は、検察官の補助的作業をこなすのに用いるのが適当なようです。それにしてもこの分野も含めて、中国の方が日本より「AI」の活用は進んでいるようです。

 ところで日本の検察における有罪率は高いのですが、平成27年のデータによれば、刑事裁判の終了件数は74,111件、そのうち有罪件数は53,120件、無罪件数は70件となっており、単純に有罪と無罪の件数から有罪率を計算すれば、99.9%になります。ただ有罪、無罪になった件数以外に、免訴、控訴棄却、管轄違い、併合、その他というのが有り、これらを有罪ではない項目に含めると、正味の有罪率は71.7%になります。しかし何れにしても無罪より有罪の方が圧倒的に多く、起訴した事件は殆ど有罪になるという見方は間違いないのかも知れません。

 一方警察の検挙率は、これも平成27年のデータでは35.7%で余り高くありません。これは窃盗などの軽犯罪が多く見逃されているからで、殺人や強盗などの重要犯罪に限ると検挙率は80.3%に達しています。

 しかしその後の起訴率に関しては、これも平成27年には、刑法犯における起訴率は39.1%、起訴猶予率は50.4%で、道路交通法違反を除く特別法犯においても、起訴率は53.3%、起訴猶予率は41.5%となっています。不起訴の中で起訴猶予を除く部分は「嫌疑なし」、「嫌疑不十分」で、いわゆる警察で取り調べを行っても証拠がないか不十分で起訴できなかった部分になります。

 ここで言いたいことは、通報等で確認した犯罪者を何とか検挙しても、約半数は起訴できていないことになります。つまり決定的な証拠がないために、不起訴になるか、罪が軽いとか情状酌量の結果だとかの理由で、あるいは検察官の判断で起訴を見送られるのが、半数はいると言うことです。

 よくドラマで、取り調べに素直に応じない容疑者や、黙秘を続ける容疑者のシーンが映し出されますが、警察で起訴に持って行くのは大変なようです。これも日本の刑事訴訟では、「疑わしきは罰せず」あるいは「疑わしきは被告の利益に」という原則があるからです。

 憲法でも第31条から40条まで、被告人の権利を守るように規定されています。冤罪を防ぎ不当な取り調べが行われないよう、謳っているのです。それはそれで重要なことですが、しかし被害者の権利は何処にも謳われていません。弁護人も特別な場合を除いては、被害者側にはつきません。検察が間接的に被害者の弁護人のような形を取りますが、原則として検察官は訴状に対し証拠を固めて、被告人の有罪を立証するのがその役割なので、厳密には弁護人ではありません。

 何れにしても、日本では犯罪者に有利な法体系になっていると言えます(日本だけではないかも知れませんが)。しかも個人情報の保護やプライバシイ擁護の観点から、犯罪者を特定しにくく、また検挙してからの警察の捜査も、非常に制限が多くなっています。また起訴を逃れた被告人の再犯も予想されます。

 その結果この先、犯罪の多様化や過激化、複雑化に対処しにくく、一般市民にとってリスクが高くなる恐れを感じています。もっと被害者保護に目を向けた制度改正を願ってやみません。AI導入の検討はその後でしょう。


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