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2022年1月23日 (日)

親方日の丸の巨大産業・医療-年金だけでなく健康保険も破綻はある

Images-1_20220123110001  以前このブログで、農林水産省関連の政策不作為が起こす問題を取り上げましたが、今回はコロナの渦中で注目を浴びている厚生労働省、厚生関連の医療政策の問題について取り上げます。高齢化に伴って医療の需要はうなぎ登りに増大していますが、国の政策として、その費用の殆どは健康保険でまかなっています。

 その健康保険の財政面での負担の問題は年金の問題と同様、今後ますます悪化して行くものと思われます。そしてそこに巣くうもっと大きな問題を、国際投資アナリストで人間経済科学研究所・執行パートナーの大原浩氏が、現代ビジネスに寄稿した記事から見てみます。タイトルは『親方日の丸の巨大産業・医療-年金だけでなく健康保険も破綻はある この業界こそデジタル化でコスト削減を』(1/15)で、以下に引用します。

 ◇

国民負担でぬくぬく

しっかり認識しなければならないのは、我々が青息吐息で支払っている血税や健康保険料が一体どのように使われているのかということである。

自動車産業の規模は60兆円程度、飲食業の市場規模は25兆円(パンデミックの影響を除く)ほどにしか過ぎない。それに対して、国民医療費は43兆円を超える。そして、飲食業をはるかに超え、自動車産業に迫る巨大な「医療産業」のほとんどが、健康保険料と税金で賄われている。

つまり、ごくわずかの医療関係者が牛耳る巨大産業が「親方日の丸」で運営され、国民はその放漫経営のつけを払わされているともいえる。

平成30年度の国民医療費は43兆3949 億円であり、前年度の43兆710億円に比べ3239 億円、0.8%の増加だ。

また、人口1人当たりに換算した国民医療費は34万3200円、前年度の33万9900円に比べ 3300円、1.0%の増加となっている。つまり3人家族であれば、なんと「年間100万円以上の医療費」を支払っていることになるのだ。

もちろん、健康保険に加入していれば、一般的に窓口で払うのは3割である。また、75歳以上の後期高齢者であれば2割、さらには一定の所得以下であれば1割しか負担しない。

さらには、健康保険料の会社負担という「虚構」に惑わされて、実際の保険料負担が不当に低く感じる仕組みになっている。

それでも、窓口負担が低く抑えることができる仕組みが継続できればまだよい。しかしながら、「現役世代に過剰な負担を押し付けてやっと維持できている」健康保険制度は、2019年7月22日公開「年金は巨大な『国営ねずみ講』だから、負の所得税に一本化すべきワケ」と同じ「ねずみ講」的な特徴を持っており、今は後期高齢者の一部の窓口負担が1割という「天国のような状態」もいずれ「地獄に匹敵する」状態へと変わってしまう、あるいは制度そのものが崩壊してしまうという懸念を持っている。

結局、2020年6月5日公開「『オールドによるオールドのためのオールドな日本』でいいのか?」の副題で述べたように、「もはやこれは『現役世代虐待』だ」ということである。

国民皆保険制度も年金同様破綻?

医療費負担に占める保険料の割合は、実はたったの5割しかない。一般的な窓口負担3割で単純計算すると7割になるはずだが、後期高齢者のケースなどを考えると、本来保険料で負担すべき割合はさらに多いはずだ。

国民の保険料負担は「もう限界」と思われるほど上がっているのに、それで賄えないというのは危機的状況である。それでは、足りない分はどうしているのか?

全日本病院協会資料(2015年度)によれば、国民医療費の財源別は次のとおりである。

公費は16兆4715億円(構成割合38.9%)だ。そのうち国庫は10兆8699億円(同25.7%)。地方は5兆6016億円(同13.2%)。

保険料は、20兆6746億円(同48.8%)、そのうち事業主は8兆7299億円(同20.6%)、被保険者は11兆9447億円(同28.2%)。

また、その他は5兆2183億円(12.3%)、そのうち患者負担は4兆9161億円(同11.6%)。

である。

つまり、医療費のうち保険料では半分程度しか賄われず、4割近くも公費(税金)が投入されているのだ。そして、患者が負担しているのはたったの1割ほどしかない。

一般的な窓口負担が3割であることを考えると少なすぎるように思えるが、後期高齢者のケース以外に、一定金額以上の医療費は患者負担が大幅に軽減される(参照:「高額療養費制度を利用される皆さまへ」)など、様々な優遇措置もすべて保険料・税金で賄われているからだと考えられる。

もちろん、患者全体を平均すれば「表面的な負担」が1割しかないのは好ましいようにも思われるが、結局残りの9割も税金や保険料の形で負担しているのである。このようないびつな制度が「持続可能」とは考えられないし、持続できなかった場合被害を被るのは若者を中心とした現役世代である。

2022年からさらに厳しくなる

税金が足りなくなれば、政府は赤字国債を出して資金調達してきたが、昨年10月25日公開「日本は外国に借金していないからデフォルトしないというのは本当か?」で述べたように、限界が近づいている。

国債を発行した借金による公費投入を行わずに、国民皆保険制度を守りたければ、給付を抑制し、保険料負担を上げるしかない。しかしながら、今まで長年まともに実行出来なかった政治的に困難な課題をこれから解決できるかどうかは疑問だ。

2022年からは人口の多い団塊の世代が、医療費が膨らむ75歳以上になり始める。後期高齢者の「2割負担」でさえ、難産であり例外がもうけられてしまったのだから、高齢化で支出が自然に増えていく圧力が強まるのは明白だ。前述の高額医療費制度も、利用者の多くが高齢者だと考えられる。

現在でさえ保険料と患者負担で賄うことが出来ない赤字、すなわち公費負担の概ね4割(約16兆円)が生じているのだから、健康保険制度の未来も「国営年金」同様に暗黒である。

医療費・保険料を明示すべし

最大の問題は、我々が本当に負担している部分が見えないことだ。現在の医療費明細は、まるで「回らない寿司屋」の「時価」のようなものである。点数で表示されてもいくら使われたのか、「利用者」にはよくわからない。また、治療内容も「利用者」によくわかるように平易な言葉で表記すべきだ。「利用者に対しては、できるだけ情報を隠して、自分たちだけがわかればいい」という傲慢な医療業界の体質を感じる。

また、保険料の「会社負担」という制度も曲者だ。サラリーマンの場合、保険料の半額を会社が「負担」している。しかし、これは実質的にはサラリーマン自身が負担しているのだ。次のような会話を考えてみよう。

「A君、うちも来月から保険料を半額負担するから、今まで払っていた年間60万円の保険料が30万円になるよ」

「部長、ありがとうございます」

「でもね、その分は結局君を雇うコストだから、年収を30万円下げておくね」

「えっ」

もちろん、普通は入社したときから「会社負担」が始まっているからこのようなことはあり得ない。しかし、入社時の年収が500万円としたら、会社から見れば健康保険料の負担が30万円とした場合の雇用コストは530万円である。つまり健康保険の会社負担のおかげで、30万円の給料をもらい損ねている可能性がある(念のため、この保険料は仮定であり、実際のものとは異なる。参照:東京都「保険料額表」)。

つまり、結局「会社負担」というのは幻想で、実際にはサラリーマン自身が負担しているということだ。

医療こそ、デジタルによる見える化・効率化が必要

オンライン診療推進、カルテの持ち運び、お薬手帳の電子化、保険点数の見える化、医師の技量の客観評価等々、医療業界が改革すべき問題が山積している。

オンライン診療は、まず「感染症対策」としての効果があることは言うまでもない。また「病人を呼びつける来院・通院」というシステムの改善にもなる。

医院、病院というのは病気になった人がやってくる場所だ。大概の場所と比較して感染症を中心とした「病気になりやすい場所」だから、どうしても必要な場合以外は行くべきではない。しかも「病人は出歩かずに、自宅で安静にしていることが望ましい」のは小学生にでもわかる理屈だ。

しかし、利権重視の医療関係者は頑強に抵抗する。

また、「カルテは患者のもの」であるのは至極当然で、患者が望めばいつでも開示されるべきなのに、「出来る限り見せない」風潮が蔓延している。

また、お薬手帳もそうだが、ただデータを開示するだけでは道半ばだ。専門用語の羅列ではなく、「利用者」がわかりやすい表記を心掛けるとともに、リンクなどを張って詳しい解説を公開すべきだ。そうすれば、ネット上にあふれる「誤った」とされる医療関連情報も駆逐されるはずである。怪しげな情報があふれるのは、公的機関からの情報の量が不十分なだけではなく、内容もわかりにくいからである。

また、医療行為を行う医師や医院・病院の格付けもきちんと行うべきである。医療行為と病気の治癒との因果関係は明確にしにくいが、それを言い訳にしたら「医療」そのものが「結果がどうなるかわからない怪しげな呪術レベルの行為」としか言えないことになる。もちろん、どの医院がどれだけの医療訴訟をうけているか、クレームをうけているかなどはすぐにデータ化できる。

さらに、医師免許が「終身」であるのもおかしい。同じく交通事故などで「人間の命に重大な影響を与える」自働車運転免許が定期的に更新され、運転技量が衰える高齢者の免許の返還が望まれているのである。

医師免許も最高10年程度の更新制にすべきであり、高齢の医師の免許返還も議論する必要がある。医療訴訟で勝つのは非常に難しいから、問題が起こってもなかなか訴訟までには至らない。実際のところ我々は「不適格な医師」による被害をどの程度うけているのかわからないのだ。

デジタル庁が扱うべき問題か

実は、前述の医療の旧態依然としたシステムを改革するのに有効なのが「デジタル」である。

一般企業のデジタル化度合いと比べると、医療業界は「江戸時代」とさえ言えると思う。もちろん、デジタルがすべてを改善するわけでは無いが、高コスト構造や旧態依然とした仕組みを打破するためにはデジタルは極めて有効である。

厚生労働省の分割が色々と議論されるが、分割しても同じ「お役人」がやっている限り改善は見込めない。

デジタル庁は、1月7日公開「目の前にあるリスク、太陽嵐の脅威にデジタル庁はまず備えるべきだ」で述べたようにスタート当初から混迷しているが「太陽嵐対策」と「医療デジタル改革」を中心にすえるべきだ。

年金と健康保険が「同時破綻」したら

年金と健康保険が同時に破綻したら、次世代の日本国民は踏んだり蹴ったりだ。一世を風靡した日本医師会の武見太郎会長の時代から医師会と政権政党が親密なことは明らかであり、国民は厳しく監視すべきだ。

デジタルによる合理化も、「大義」なくして成り立たない。お役人たちもそうだが、今の医師たちのどれほどが「医は仁術」を心得ているであろうか?強欲経営者と代わり映えしない人物が余りにも多すぎる。

「赤ひげ先生」は一種の理想かもしれないが、医療関係者が私腹を肥やす医療システムは刷新して、国民の負担が少ない医療制度を再構築すべきである。

そうしなければ医療制度そのものが崩壊する危機に直面しているのが現状だ。「医療崩壊」はパンデミックによっておこるのではなく、「医療制度の腐敗」によっておこるのではないかと思う。

 ◇

 確かに医療を受ける側としてこれは?と思えることが多くありますね。まず長い間服用している、血圧やコレステロール降下剤の処方を受けるために、医者の診療を毎月受けねばならない(2ヶ月や3ヶ月に1回のところもありますが)、あるいは大病院の治療を受けるために、かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらわなければならない、これは救急車で搬送されるまでもないが、かなり治療を急がねばならないときなど、非常に不便です。

 こうした小さな問題から、大原氏の言う制度的な問題まで、医療の世界は大改革しなければならないでしょう。何れにしても各省庁はその業界の保護者のような感じが強く、利用者側に立った視点が欠けているように思います。例を挙げれば、法務省は警察、検察そして犯罪者側であって、被害者側ではない。農水省は農林水産業側であって、消費者側ではない。そして厚労省は医療側であって、患者側ではありません。

 日本の官僚の仕組みが、業界との関係性の中で成り立っているのが現状ですし、そのすべてが悪いとは思いませんが、その業界の利用者や顧客側にも立って、物事を考えないと、日本は良くならないような気もしますね。

 それと共に重要なことは、年金や医療の問題の根幹的な要因は少子化であることを認識し、政治も官僚ももう少し腰の入った対応をしなければならない、と言うことでしょう。

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