支持率低迷の立憲民主党に突き刺さった、「CLP問題」というブーメラン
昨日から通常国会が開会となり、岸田首相の施政方針演説の後、与野党の本格論戦がスタートします。野党第一党の立憲民主党は、泉新代表が「誰よりも国民に寄り添う政党として、政治に対する監視機能を発揮して国会論戦に挑みたい」と語ったようですが、「誰よりも国民に寄り添う党」か、どうかは疑問のあるところですが、それは別にして、「監視機能」とは何を言うのでしょうか。
つまり自身の主張はなくて、政府与党のアラ探しをしようとしか受け止められません。これでは、はたして政権を目指す政党なのか甚だ疑問が残ります。そうしたなか、先に発覚したCLP問題には、極めて中途半端な終結の仕方をしました。政府与党のアラ探しには躍起となるのに、自身の「アラ」は、明確な説明なしで済ませようとするのでしょうか。
その辺の詳細を含め、立憲民主党の現状を、政治ジャーナリストの安積明子氏が現代ビジネスに寄稿した記事を、取り上げます。タイトルは『「支持率は維新以下」立憲民主党に突き刺さった、「CLP問題」というブーメラン 「このまま終わり」で本当にいいのか?』(1/17)で、以下に引用します。
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疑念を残したまま終わった“調査”
「私からは幹事長に調査を指示をして、幹事長から必要な調査を終えたと、そして会見に至ったというふうに報告を受けております。ですので、幹事長の説明ということでわが党としての説明を終了しているということであります」
1月14日の会見で立憲民主党の泉健太代表は、CLP問題に終止符を打つことを宣言した。CLP問題とはインターネット番組を制作・配信する「Choose Life Project(CLP)」に、立憲民主党から「動画制作費」として2020年8月7日に447万5390円、「企画広報費」として9月4日に563万7090円、10月9日に251万1420円と238万4370円の計1500万8270円が広告代理店を通じて支払われた件だ。
同党の西村智奈美幹事長は12日の会見で、(1)フェイクニュースや不公平な差別が横行する現状に対抗するため、新しいメディアを作りたいというCLPの考え方に福山哲郎前幹事長が共感し支援を行った、(2)番組編成について立憲民主党が影響を与える意図はなく、番組内容に関する請求は行われていないことを確認したことを公表。
2020年7月にCLPが法人化してクラウドファウンディングを開始したため、9月に支援は打ち切られたが、立憲民主党はこれに関与していないと発表した。
その上で現執行部としては、「本件の支出は違法なものではないものの、公党としては適切ではなかった」との判断を発表した。すなわち刑法の背任罪などには該当しないものの、公党が特定メディアに対して資金提供した点、その資金提供を公表しなかった点、そして立憲民主党からの支援の妥当性について党内で議論・検討されていない点について疑念を残したのだ。
過去の「セクハラ問題」が思い出される
しかしながら西村幹事長による「調査結果」は口頭での報告のみで文書としてまとめられておらず、疑念について存在を“宣言”するのみで、国民の不信を解消しようという努力は見られない。ここで思い出したことがあった。2017年の衆議院選で立憲民主党の公認候補として出馬し、比例復活した青山雅幸前衆議院議員の元女性秘書に対するセクハラ問題だ。
青山氏は枝野幸男代表(当時)の東北大学の先輩で、立憲民主党の公認候補(社民党の推薦も得た)として静岡県第1区で出馬して3万8531票を獲得し、39.93%という低い惜敗率にもかかわらず比例区で当選した。ところが当選直後の10月26日発売の週刊文春によってセクハラ問題が発覚したため、無期限の党員資格停止処分が下された。
これに対して佐藤成子静岡市議らが2018年4月11日、東海地方の女性地方議員31名の署名を立憲民主党に提出して青山氏の議員辞職を求めたところ、対応したのが当時の党ジェンダー平等推進本部長だった西村氏。西村氏は「党はすでに青山氏を処分しており、被害者との間で『二度と表にしない』との合意が成立している」とさらなる処分に消極的だった。
旧立憲民主党は党規約の中にジェンダー平等を盛り込み、セクハラ禁止やDV防止、そのための刑法改正などに取り組んできたが、その実態はまさに「仏を作って魂を入れず」というものだったのだ。
巨大な「ブーメラン」ではないか
そうした体質は、国民民主党の一部が合流し、新・立憲民主党となった後でも残っているようだ。1月7日の代表会見で筆者が泉代表に第三者委員会などの調査を問うた時、泉代表は「必要なら行う」と述べたが、14日の会見で再度問うた時には泉代表は再調査を否定した。疑念が残るにもかかわらず、政治責任を放置する姿勢は、自分には甘いと批判されても仕方ない。
そもそも立憲民主党は2020年9月に旧国民民主党から一時的に結成した民主党を通じた振替金など26億円余りを取得した。さらに10月と12月に国から支給された政党交付金や衆参の立法事務費などを含めると、70億7074万9346円の収入を得ているが、その原資の多くは国民の血税に相違ない。その使途が「適切ではなかった」のなら、国民が納得できる形での説明が是非とも必要だ。
さらにいえば、己の疑惑を曖昧にして他人の疑惑を追及できない。ヨハネの福音書は「罪のない者だけが、石を投げよ」と神イエスは述べていると記している。立憲民主党は森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会問題などで安倍政権の政治責任を追及してきた。森友学園問題で安倍晋三元首相による「私や昭恵が関与していたら、政治家を辞める」との発言に飛びついたのはその一例だ。
支持率は低下していく一方だ
そうした側面を国民が見ていないはずがない。2022年1月の立憲民主党の政党支持率は、NHKの調査によれば前月比3.3ポイント減の5.4%で、時事通信による調査では1.0ポイント減の4.0%。いずれも昨年10月の衆議院選で41議席を獲得して躍進した日本維新の会(NHKの調査では5.8%で、時事通信の調査では4.3%)に負けている。野党第一党の政党支持率が他の野党の政党支持率より少ないとは、これまでの前例にないことだ。
CLP問題は、ブルージャパン株式会社の問題もあぶり出した。ブルージャパン社は2015年に安保法制反対を叫んだ団体「シールズ」と関係が深い企業だとも言われている。そして2017年の結党以来、立憲民主党からブルージャパン社に2017年に1846万8000円、2018年に1億7015万2052円、2019年に3億8469万7197円、2020年には3億4591万8640円もの支出が行われていた。
これについて西村幹事長は、「CLPとは関係ない」ということで調査から除外。だがもし問題があるのであれば、膿を出し切らなくては傷口は悪化する一方だ。
昨年の衆議院選で議席を減らした責任をとって、2017年に結党以来の枝野・福山体制が崩れた。国民民主党出身の泉代表の就任によって新しい風が吹き込まれるかと思っていたが、空気がよどむ閉ざされた空間の中にいて、彼らは希望の光すら見失っているのかもしれない。
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日本では保守対革新の政治構造のイメージが強く、与党の保守に対し野党の革新という対立構造が想定されていますが、立憲民主党の体質は革新でも何でもなく、極めて古い政治体質のまま、過去の流れを受け継いでいるようです。ですから与党の「アラ」の部分をそっくり自身の「アラ」として持ち合わせているのでしょう。
枝野前代表が自身を、革新ではなく本当は保守だ、と言っていましたが、自己保身の「保守」、もっと言えば自分には甘く他人に厳しい、と言う誤った「保守」感覚を持っていたのではないでしょうか。代表変われど党の体質は変わっていないことが、このCLP問題で露見されたわけです。政府与党への「監視機能」ではなく、むしろ自党への「監視機能」が必要だと思います。
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