これが決議文??「対中非難決議文」なのに「中国」の名前がない!
北京五輪が多くの問題を孕みながら開幕しました。アスリートにとっては4年に一度の夢の舞台。それが4年間の努力の結果を発揮する場として提供されるにしては、ゼロコロナを目指す当局の対応に、余りにも管理過剰で息が詰まる会場のようです。
まさに習政権の国威発揚の場として化してしまった感のある、習近平による習近平のための北京五輪。その北京五輪の開幕の前に、何とかして間に合わせようと、骨抜きになってしまった、2月1日決議の「対中非難決議」。その決定の過程をイトモス研究所所長の小倉健一氏が、現代ビジネスに寄稿しています。タイトルは『「対中非難決議文」なのに「中国」の名前がない! だから岸田は習近平に舐められる』(1/26)で、以下に引用して掲載します。
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先送りばかりで保守層も離反
岸田文雄政権の「目玉」が、また1つ後退しようとしている。首相は1月17日の施政方針演説で新型コロナウイルス対策と看板政策の「新しい資本主義」に多くの時間を割いたが、またしても昨年9月の自民党総裁選で掲げた令和版「所得倍増計画」や金融所得課税の強化といった目玉公約を“封印”した。夏の参院選までは「安全運転」に終始するというが、相次ぐ後退には自民党の支持基盤である保守層からも「日和過ぎている」との失望感も広がっている。
「一体どこを向いて、誰の声に『聞く力』を発揮しているのか分からない。自民党が保守政党としての矜持を示さなければならないのに、憲法改正も安定的な皇位継承の議論も先送りばかり。このままでは保守層が離反しかねない」
閣僚経験者の一人がこう憤るのは、岸田首相が掲げた目玉公約がことごとく先送りされ、保守層の票が夏の参院選で日本維新の会などに流れるとみているためだ。「所得倍増計画や金融所得課税などは『これから頑張って取り組みます』と言っていれば良いかもしれないが、『アレ』だけはそうはいかない」と語気を強める。
もはや先送りが許されない「アレ」とは、中国による香港や新疆ウイグル自治区での人権侵害行為を非難する国会での「対中非難決議」を指す。自民党の高市早苗政調会長ら保守系議員が中心となり、昨年の通常国会で採決を求めたものの、連立政権を組む公明党が慎重姿勢を崩さず見送られた決議案だ。
高市氏は、決議に前向きな野党の動向も踏まえ、昨年末の臨時国会でも採択するよう自民党の茂木敏充幹事長に「直談判」までしたが、「今はそのタイミングではない」と了承されず決議案提出は叶わなかった。
玉虫色の修正
茂木氏が難色を示した背景には、2月の北京冬季五輪に政府高官らを派遣しない「外交的ボイコット」を表明する前に波風を立てることは避けたかったとの見方が強い。岸田政権は12月24日に「外交的ボイコット」を表明したが、高市氏は同27日のインターネット番組で「遅きに失した」と批判。茂木氏の対応についても「内閣の顔を立てようとの配慮もあったのかもしれないが、悔しくてたまらない」と無念さを爆発させている。
事の経緯を見れば、政府の「外交的ボイコット」決定後はもはや障害はないはずである。高市氏は1月11日のBSフジ番組で「去年はタイミングが悪いということでダメだった。通常国会の頭に決議ができるよう頑張りたい」と強い決意を示し、茂木氏も「各党が合意して採択に繋がればと考えている」と容認する構えを見せる。
だが、1月17日にスタートした通常国会の冒頭で新たな動きは見られていない。それはなぜか。自民党を担当する全国紙政治部記者が解説する。
「決議案の中身が骨抜きになりそうだからです。対中非難決議というからには、中国政府を非難し、深刻な人権状況について国際社会が納得するような説明責任を求める内容になるはずですが、岸田政権の中国への配慮から『玉虫色』になる修正が行われる可能性が出ています」
自民党関係者によると、その決議案は「中国」を名指しせず、人権問題についても「中国以外の人権状況」も盛り込む文言へと修正される方向だという。公明党の北側一雄副代表は1月13日の記者会見で「自民党と野党を含めて、文言について詰めの協議がなされていくものだと理解している」と述べ、全会派が一致できる内容の決議案にしなければならないとの考えを強調している。
習近平の高笑い
高市氏やウイグル問題に取り組んできた古屋圭司政調会長代行らは1月14日、岸田首相と東京都内の日本料理店で会食し、早期採択を重ねて要請した。ただ、首相は通常国会冒頭での採択は容認しない考えは譲らなかったという。その時期について、ある政府関係者は「2月の北京冬季五輪の前にはなんとか、という感じになるのではないか」と語る。
正確には、対中非難決議の採択は首相の「公約」とまでは言えない。だが、岸田氏は昨年9月の自民党総裁選で掲げた「外交・安保における3つの覚悟」の中で、こう掲げている。「権威主義的体制が拡大する中で、台湾海峡の安定・香港の民主主義・ウイグルの人権問題などに毅然と対応。日米同盟を基軸に民主主義、法の支配、人権等の普遍的価値を守り抜き、国際秩序の安定に貢献していく」。
ちなみに、昨年秋に勝利した衆院選での自民党公約は「ウイグル、チベット、モンゴル民族、香港など、人権等を巡る諸問題について、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めます」である。
岸田政権は人権侵害救済法(日本版マグニツキー法)の必要性を唱えてきた中谷元衆院議員が首相補佐官に起用されたものの、その具体的進展はいまだ見えない。一方で、日中友好議員連盟会長を務め「親中派の代表格」(自民党中堅)ともいわれた林芳正氏を外相に起用するなど、対中外交の芯のなさが指摘されてきた。
それだけに対中姿勢が如実にあらわれる非難決議案の修正の動きには、自民党内でも「何を怯えているのかわからないが、それをみた習近平は高笑いでしょう。岸田氏の『毅然と対応する』『主張すべきは主張する』というのはポーズだけだったのかと言われかねない」(中堅議員)との不満が渦巻く。
首相は施政方針演説の最後で、幕末を生きた勝海舟の「行蔵は我に存す」「己を改革す」という言葉を引用した。責任は自らが背負う覚悟を示したものだが、発してきた言葉と公約の重みを踏まえて自らを律するべきは首相自身のように映る。
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かくして北京五輪開幕の直前、2月1日に決議文は採択されましたが、小倉氏の記事にある通り、「中国」の名指しは避けた文になりました。また盛り込む予定だった「人権侵害」や「非難」の文言も公明党の要請を受けて削除され、「人権状況」という当たり障りのない文言に切り替えられました。
これでは非難決議とは名ばかりであり、習政権に精一杯顔を立てたと言うことなのでしょうか。中国は予想通り激しく反発したようですが、穿った見方をすれば日中間での出来レースだったのかも知れません。
民放でこの件に関し、弁護士のコメンテーターが、中国だけではなく、日本での人権問題にも目を向けるべきだと言っていましたが、日本の人権問題と、ウィグルやチベット、モンゴル、香港等での人権問題とは次元が違います。中国ではジェノサイドが日常的になされていて、民主活動家への拘束や拷問も伝えられています。それと日本の人権を同等扱いするのでしょうか。
日本の左翼や人権活動家も、日本の政府や国家権力ばかり対象に批判していないで、是非ウィグルやチベットに出向いて、実態をつぶさに観察したらどうでしょうか。
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