和田政宗氏:「プーさん」はどこへ消えた? 北京プロパガンダ五輪の闇
北京五輪は終盤にさしかかり、日本の獲得メダル数も史上最高となる中、判定問題やドーピング問題など、平和の祭典とスポーツマン精神を揺るがす事例も多く発生しています。固い雪質の中での転倒やリンクの滑走溝跡にはまるアクシデントもあり、少なくとも習近平の望んだ順風満帆の大会ではないようです。
こうした問題以外に、政治の影が色濃く出た部分もあります。自民党参議院議員の和田政宗氏が、月刊hanadaプラスに投稿した記事がそれを物語ります。タイトルは『「プーさん」はどこへ消えた? 北京プロパガンダ五輪の闇』(2/11)で、以下に引用します。
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ウイグル人弾圧について記者会見で問われたIOCのバッハ会長は、「IOCの立場は政治的に中立で政治問題にはコメントしない」と述べた。五輪憲章を無視する中国の行動について言及しないことが政治問題であることがわからないのか。中国の情報コントロールとプロパガンダ、やはり、このような異常なオリンピックは二度とあってはならない!
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中国による「くまのプーさん」隠し
五輪3連覇を目指していた男子フィギュアスケートの羽生結弦選手。ジャンプの転倒もあり4位の成績であったが、「一生懸命頑張りました。正直、これ以上ないぐらい頑張ったと思います。報われない努力だったかもしれないですけど、一生懸命頑張りました。」と競技後のインタビューで答えた。
悔しかったと思うが、どんな状況でも最善を尽くすというトップアスリートの気概が感じられる信念の演技だった。仙台で羽生選手の高校時代からずっと見続けてきた私も本当に悔しいが、心からエールを送りたい。
一方、中国による「くまのプーさん」隠しは、やはり実行された。これまでの大会では、羽生選手が滑り終わった後には、羽生選手が好きな「くまのプーさん」のぬいぐるみがファンによりスケートリンクに投げ込まれ、この光景は「プーさんシャワー」と呼ばれてきた。
これが北京五輪においてどうなるかが注目されていたが、結局フィギュアスケート会場へのぬいぐるみの持ち込みを禁止するという手段に打って出た。中国では、「くまのプーさん」が習近平国家主席に似ているとの投稿が相次ぎ、4年前からはネット上で検索ができなくなっているが、オリンピックでもプーさん隠しを徹底した。
なお、4日の開会式では、ぬいぐるみは持ち込み禁止になっておらず、恣意的に「プーさんシャワー」を阻止したとも言える。
ウイグル人弾圧と「中国台北」
こうした中国の情報コントロールとプロパガンダは、五輪開会式から徹底して行われた。開会氏における最終聖火ランナーには、ウイグル人女子選手が起用され、「民族融和」のプロパガンダが展開された。
一方でウイグルには多数の装甲車が展開されるとともに、五輪に出場しているウイグル人選手へのインタビューも規制されている。つまり、この北京冬季五輪はウイグル人への弾圧のもと行われている大会なのだが、それが徹底的に隠されている。
なお、ウイグル人弾圧について記者会見で問われたIOCのバッハ会長は、「IOCの立場は政治的に中立で政治問題にはコメントしない」と述べた。五輪憲章を無視する中国の行動について言及しないことが政治問題であることがわからないのか、とIOCには問いたい。
さらに、開会式においては、台湾に対する中国国内向けのプロパガンダも行われた。開会式のテレビ中継で、国営中国中央テレビ(CCTV)のアナウンサーは、台湾の代表団を「中国台北」と呼んだ。
会場のアナウンスでは従来通り「中華台北」であったが、あえて放送では、「中国台北」と呼び、台湾が中国の一部であるとの中国共産党政権の主張に基づく表現を行った。
さらに、CCTVは台湾選手団が入場した際に、会場の習近平国家主席を映した。台湾については、国際的プロパガンダはあきらめたものの、中国国内向けプロパガンダを行ったのである。
チベット弾圧とパンダのぬいぐるみ
表彰式ではメダリストにパンダのぬいぐるみが渡されているが、パンダの主要生息地は中国が弾圧を行っているチベットであり、そのことを知っている方々にとっては何とも形容し難いものであろう。
なお、中国は気付いているのだろうが、フィギュア会場はぬいぐるみ持ち込み禁止なのに、表彰式ではパンダのぬいぐるみが渡されるという矛盾が起きている。こうしたプロパガンダとともに、中国は情報統制を行い、情報監視や抜き取りをしているとみられる。
開会式の前日である今月3日に松野博一官房長官は記者会見で、北京冬季五輪に参加する選手や関係者のスマートフォンの情報が、中国が使用を求める専用アプリによって抜き取られる恐れがあるとして、スポーツ庁や内閣サイバーセキュリティセンターから日本オリンピック委員会(JOC)に注意喚起を要請したと明らかにした。
日本政府が公式に、スマホなどに対する中国の諜報活動が存在することを認めたことになる。政府は根拠のないことは言わないし、欧米各国とも情報交換をしている。北京冬季五輪開会直前まで、こうした呼びかけを政府は行わず、選手などの自主的な取り組みに任せる方針だったから、新しい根拠のある情報を掴んだか、情報がもたらされたと考えられる。
携帯電話のクレンジングという異常
北京冬季五輪では、新型コロナウイルスの感染対策として、選手や関係者に対しスマホの専用アプリで毎日の体温などを登録するよう求められている。しかし、このアプリについては、既に米国のオリンピック委員会が情報が抜き取られる恐れについて警戒を呼び掛けていた。
さらに、松野官房長官は9日の記者会見で、「オリンピックに参加する日本選手団に対し、帰国の機中でアプリの削除を徹底し、帰国後、選手本人の同意の上で専門家による検査を行い、検査結果に基づいたクレンジングをスポーツ庁がJOCと共同で実施する」と述べた。
徹底的に中国における情報監視や情報抜き取りの痕跡を調査するとともに、日本帰国後の継続的な情報抜き取りを阻止するためであると考えられる。
なお、日本パラリンピック委員会(JPC)は、来月行われる北京冬季パラリンピックに出場する日本選手団全員に、このアプリを入れるためのスマホを貸与することを決めた。
こうした異常な状況で開催されるオリンピックは、真に五輪憲章に則ったオリンピックとは言えないと私は繰り返し述べてきた。選手の活躍については心から声援を送るが、中国の国家としての北京冬季五輪運営については、大会が終わっても後味の悪さと疑問が残るであろう。
第一に守られるべき選手が、帰国後に携帯電話のクレンジングを受けなくてはならないオリンピックなど本来あってはならない。
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ウィグル選手の開会式起用やスマホ情報の抜き取りについては、既にこのブログでも取り上げましたが、くまのプーさんやパンダのマスコット(ビンドゥンドゥン)に関しても、政治的な理由で禁止したり利用したりする様は、習近平とその政権のためだけの狙いであり、極めて個人的でかつ幼稚な施策のように受け止められます。
いずれにしろこれらの件を含めて、まさに中国共産党と習近平個人のために、五輪を利用した政治ショーの様相がますます顕著になっています。判定問題やドーピング問題とは別の意味で、史上最悪の大会であると言っていいのではないでしょうか。
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