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2022年8月15日 (月)

根底から揺らぎ始めた中国、共産主義体制の限界

Images-5_20220815105401  米下院議長ペロシ氏の台湾訪問が起爆剤となった形で、台湾包囲網を敷いて軍事威嚇演習を始めた中国。予定期日を過ぎても威嚇は続いています。習近平政権になってから中国はこのように、現状変更の試みを隠そうとしません。台湾問題は日本にも直接の影響が予想され、今後の動きが気になります。

 ただこのような力を背景とした覇権行動を続ける中国ですが、内情は多くの課題を抱えています。特に少子化問題は日本同様、中国の国力をそぐ最大の課題となっているようです。

  そのあたりの詳細を、経済専門家の川島博之氏が、JBpressに寄稿した記事から引用します。タイトルは『中国が米国を超える大国にはなれない理由、根底から揺らぎ始めた中国社会 変革の動きが一切封じられる共産主義体制の限界』です。

 中国の人口は本年(2022年)にも減少に転じるとされるが、その詳細についての考察は少ない。ここでは7月に国連人口局が発表したデータを基に、中国社会に重大な変化が起きていることを示したい。

 図1に出生数と死亡者数の変遷を示す。これを見れば中国の人口が本年にも減少に転じることが分かろう。

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図1 中国の出生数と死亡数(単位:万人) データ:国連人口局

 中国の出生数には2つの大きな山があるが、1つ目の山の前の急激な減少は1958年に始まった大躍進政策が作り出したものである。大躍進政策とは経済原理を無視した過激な工業化政策と言ってよい。それによって農業がないがしろにされて食糧生産が急速に落ち込み、全国的に飢えが広がった。1960年前後の死亡者数の増加と出生数の減少は大躍進政策がいかに無謀な政策であったかを示している。毛沢東はその責任を問われて国家主席の座を劉少奇に譲り、政務の一線から退かざるを得なかった。その後、再び主導権を取り戻すために文化大革命を行ったことはよく知られている。

 大躍進に伴う飢餓はその後にベビーブームを作り出した。中国の出生数は、1963年から1970年まで7年間にわたって、毎年3000万人を超えている。中国版団塊の世代の誕生である。団塊の世代が20代になった1980年代後半に団塊ジュニアが誕生している。

 その中国の団塊の世代は2023年以降に次々に60歳を迎えて定年退職する。中国の労働人口はこれから数年間の間に急速に減少する。

出生数が急速に減少

 ただ、ここで注目したいのは人口の高齢化ではない。出生数の急激な減少である。

 中国では2018年以降に出生数が急減しており、それは大躍進政策の失敗に伴う減少にも匹敵する。出生数の減少は1970年代や90年代にも生じたが、それらはベビーブームの終焉によるものであり、平常状態への回帰と言ってよい。

 図2に2000年以降のTFR(合計特殊出生率)の変遷を示す。比較のために主要国のTFRも示すが、中国の2021年TFRは1.16とわが国の1.30よりも低くなっている。

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図2 各国の合計特殊出生率

 なぜ中国においてこれほどまで急速に出生数が減少したのであろうか。それを考える前にデータの信頼性に言及する必要がある。国連のデータは国連が独自に推計するものではない。国連は各国が報告するデータを集計しているに過ぎない。ただ国連には人口問題の専門家がいるために、あからさまに出鱈目なデータを報告することは難しい。北朝鮮は食糧生産について、鉄面皮にも出鱈目なデータを報告することがあるが、それは例外と言ってよい。

 このところ一部では中国が公表する人口は過大ではないかと疑われている。教育や福祉に関する予算が子供の人数に応じて分配されるために、地方政府は多めの数字を中央に報告する傾向にあり、それをそのまま集計すると実際より人口が多くなってしまうという疑惑である。ここでその真偽を論じることは難しいが、そんな中国においても、出生数が急速に減少していることを報告せざるを得ない状況にあるようだ。

中国の奇跡の成長を支えたもの

 この出生数の急速な減少は、中国で大躍進政策の失敗に匹敵するほどの大きな変化が進行していることを示している。

 1978年に改革開放路線に舵を切った後に中国は奇跡の成長を遂げた。奇跡の成長を達成する上で、地方政府が農地の収容に伴う利益を独占して、その利益を道路や橋の建設に投資することは重要な役割を果たした。道路や橋が作られて都市が拡大すると、農地の収容によって得られる利益も増加した。中国の奇跡の成長は地方政府による農地収容を媒介にした過剰投資を原動力にしたものだった。

 それは不動産価格の高騰を招き、人々は不動産バブルを利用して富を蓄積しようとした。最初そのような行為は富裕層だけに留まっていたが、習近平が政権の座についた2012年頃から、一般庶民にまで広がっていった。その不動産バブルは昨年から崩壊に転じ、出口が見えない混乱が始まった。

 中国の奇跡の成長のもう1つの原動力は、農村の若者を農民工として利用したことにある。安価な労働力は中国の輸出産業を支えた。だが、現在、それも最終段階に来ている。中国の今年の大学卒業者数は1000万人とされる。今年大学を卒業する者は2000年前後に生まれたと思われるが、その頃の出生数は約1700万人である。大学進学率は6割近くになり、日本を上回っている。

 このことは、農村部でも多くの若者が大学に進学する社会が出現したことを示している。あの貧しかった中国の農村でも多くの若者が大学に進学するようになった。それに要した時間は40年ほどである。これは奇跡と言ってよい。だが、成功した結果として、安価な労働力が消え失せてしまった。

将来への漠然とした不安

 不動産価格が高くなりすぎて、若者がマンションを買うことができなくなったことは、出生数減少の第1の理由とされている。中国では結婚に際して男性が住居を用意しなければならないとする慣習がある。しかしマンションが高くなり過ぎて、男性はマンションを用意することができない。その結果として婚姻数が減少した。

 また第2の理由として、教育に多額の費用がかかることがある。1人の子供を大学に行かせるだけでも大変である。これも少子化の原因とされる。

 ただ、それらは表面的な理由であろう。真の原因は多くの人が心の底で中国の奇跡の成長は終わったと思うようになり、その結果として現状に不満を抱くとともに、将来に漠然とした不安を持つようになったためと考える。昨今よく話題になる「寝そべり族」なる言葉は、多くの人が現体制に不満を持ち、行き詰まりを感じていることを端的に示している。

 農村の多くの若者が都市に出て大学教育を受けるようになったが、時を同じくして不動産バブルが崩壊したことによって失業率が上昇し始めた。そんな状況では、今後、婚姻数はますます減少しよう。当然の結果として出生数も減る。

 国連は人口予測において低位、中位、高位の3つのシナリオを用意しているが、このような状況に鑑みるに、今後、中国の人口は低位推計で推移する可能性が高い。低位推計では2030年の出生数は686万人にまで減少する。

建国100周年、2049年の人口ピラミッド

 この秋の党大会で習近平は3期目に突入するとされる。それは中国共産党が現状維持を選択したことを意味する。これまでの成功があまりにも素晴らしかったために、共産党のエリート層は現体制に変わるシステムを考えることができない。そして彼らは現体制における利益の享受者でもある。自分たちでこれまでのシステムを変更することはできない。

 ここに共産主義の最大の欠点がある。民主主義と市場主義を組み合わせた社会では、紆余曲折はあるもの、それまでの体制がうまく動かなくなったときには、体制を変革しようとする動きが生じる。しかし共産主義ではそのような動きは一切封じられる。

 出生数の急速な減少は、中国が米国を抜いて世界最大の強国になるのは不可能であることを示している。

 図3に中国の人口が低位推計で推移した時の2049年の人口ピラミッドを示す。2049年は建国100周年にあたり、中国共産党が密かにその年までに米国を抜き去り世界最大の強国になることを目指しているという年である。だが、その時の人口ピラミッドはかくも不安定なものになる。それは老大国の人口ピラミッドであり、世界をリードする国のものではない。

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図3 2049年における中国の人口ピラミッド(単位:万人) データ:国連人口局

 ここに述べたことは日本企業に対する警鐘になっている。図3のような人口ピラミッドを有する国では、老人介護ビジネスは発展の余地があろうが、若者が消費する自動車やスマホは売れない。

 日本には中国はいまだに有力な市場だと主張する人々がいるが、急減する出生数はそれが間違った予測であることを示している。

 人口の急増を懸念して一人っ子政策を維持してきた中国。しかし人口減少のリスクが目の当りになり、急遽2人また3人と政策を転換してきましたが、この記事にあるように、今や政権の意図とは裏腹に、経済環境が複数の子供を持つ事への障害になると同時に、結婚さえできない若者の増大を招いています。

 日本も同じ状況ですが、中国の最大の欠陥は高齢者福祉の立ち後れでしょう。日本と同様の福祉政策を採ろうとすれば、膨大な経費が必要となり、これも国力の衰退につながります。日本を超える打撃が中国経済を襲うでしょう。

 これらが3期目に入ろうとする習政権に立ちはだかる、最も大きな課題だと言えます。あと5年は踏みとどまることができるかも知れませんが、それ以降の衰退ははっきりとしたものになるでしょう。期待して見守りたいものです。

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