異変の日本共産党、中で何が起こっているのか?
日本共産党は急速に勢いを失いつつあります。日本にとってそれはそれでいいことだと思いますが、その要因は何でしょうか。以前党員の高齢化を取り上げましたが、それだけでしょうか。
この点に関し、もと共産党幹部で参議院議員の筆坂秀世氏がJBpressに寄稿したコラムを取り上げます。タイトルは『日本共産党に異変、「全会一致」にならなかった中央委員会総会 本当に真面目にやっているのか? 綻びが出てくるのも当然』で、以下に引用します。
◇
日本共産党の第6回中央委員会総会が8月1日、2日の2日間行われた。ここで珍しいことが起こった。中央委員会総会には、通常、幹部会を代表して志位和夫委員長が報告を行い、討論を踏まえて結語(まとめ)が述べられる。この報告と結語が採決にかけられるのだが、共産党の場合、ほとんど全会一致で可決される。私自身、何十年も中央委員を務め、何十回と中央委員会総会に出席したが、全会一致以外知らない。
ところが今回は違ったのだ。書記局の発表には「幹部会報告と結語を圧倒的多数で採択した」とあるのだ。
志位委員長によると「保留」の態度を表明した人が一人いたそうだ。「保留」の理由は明らかにされていないので知る由もないのだが、志位氏の報告や結語を読んでみるとさもありなんと思えてくる。
小さな綻びのようだが、そうとも言い切れない動きもある。
党内から公然と出てきた委員長公選論
いま党内の一部から共産党の委員長を党員による投票で決めたらどうかという意見が出ている。代表的なのが、私も以前党本部で机を並べていた松竹伸幸氏だ。松竹氏はブログで「共産党の党首公選を考える」というタイトルですでに11回も意見を掲載している。もっと続くようだ。
同氏のブログによると、「党首公選を求める声は少なくない。SNSを見ていると、共産党員と思われる人も、そんな発言を活発にしているようだ」という。
松竹氏は、 「現在、共産党だけに党首公選の仕組みがなく(あとで書くように公明党にも存在しない。公明党と同じだなんて恥ずかしいな)、他党には存在するので、その違いを政党のあり方、成り立ちの違いからくる普通のことと受け止めている人もいるかもしれない。しかし、日本のほかの政党も、設立以来ずっと党首公選などはしてこなかった。党首公選は、時代の変化、世論の変化をふまえた新しいシステムなのである」とも指摘している。
松竹氏には、難しい挑戦だが、党首公選実現のため大いに頑張ってほしいと思う。何しろこれまで共産党は、党内で選挙というものをやったことがないからだ。共産党規約3条には、「すべての指導機関は、選挙によってつくられる」という規定がある。
また13条には、次のように規定されている。
〈党のすべての指導機関は、党大会、それぞれの党会議および支部総会で選挙によって選出される。中央、都道府県および地区の役員に選挙される場合は、二年以上の党歴が必要である。
選挙人は自由に候補者を推薦することができる。指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する。〉
「指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する」。この規定が曲者なのだ。例えば新しい中央委員会のメンバーを現在の中央委員会が決めるということなのだ。その数は200人を超える。この段階でほぼ決まったのも同然である。なぜなら実際に行われていることは、この200人を超える中央委員、准中央委員候補の名簿を見て、信任したくない人に印を付けるだけだからだ。
もっと分りやすく言えば、志位氏ら幹部が候補を選んで名簿を作成した段階で決まっているのだ。候補者名簿が掲載された人で当選できなかった人はいない。すべての段階でこのやり方なのだ。
そもそも本当の意味での選挙は、共産党には存在しない。党員ならこの実態を誰でも知っているはずだ。
共産党は今年創立100周年を迎えた。いまの綱領路線が確立してからだけでも約60年になる。この間、トップに座ってきたのは宮本顕治、不破哲三、志位和夫の3人だけだ。3人とも世間の常識から外れた長さだ。この異様さに、そろそろ党内から大きな声が上がって当然だ。
責任転嫁の「惨敗」参院選総括
第6回中央委員会総会は、惨敗を喫した参院選の総括と来年(2023年)の統一地方選挙への取り組み方針を決めるために行われた。
志位氏によると参院選挙は「二重の大逆流」の中で行われたそうだ。それは何か。
1つは、野党共闘と日本共産党への攻撃が総選挙後にさらに強まり、「野党共闘は失敗した」「共産党との共闘が失敗の原因」などのキャンペーンが行われたことだという。だがこれは事実であって、これを「大逆流」などというのは責任転嫁に過ぎない。そもそも立憲民主党が政権獲得する目途などまったくないときに、閣外協力に合意し、それを選挙の最大の売り物にした。この見通しの甘さ、悪さが国民に見透かされただけのことだ。
もう1つの大逆流が、ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵略だそうだ。志位氏は、「ロシアの蛮行に乗じた日本共産党攻撃、憲法9条攻撃が荒れ狂い、軍事力大増強の大合唱が始まりました。一時期は、わが党の訴えへの冷たい反応が一挙に広がり、取り組みの足が止まるという状況が各地で起こりました」と述べている。
嘘でしょう! と言うしかない。9条攻撃がどこでどう荒れ狂ったと言うのか。そんな事実を知らない。「取り組みの足が止ま(った)」のは、党員の活動力が低かったというだけのことだろう。そもそも止まるほど活動していたとも思えない。
こんな責任転嫁の選挙総括では、次の展望も出てこないだろう。昨年の総選挙のあとも“政治対決の弁証法”という意味不明な造語を使って選挙総括をし、参院選を「反転攻勢に転ずる選挙」にすると語っていた。“政治対決の弁証法”というのは、共産党が躍進すれば敵の攻撃が強くなり押し返される。だがこれを打ち破れば、また前進できるということを言っているだけなのだ。勝ったり、負けたりを、マルクス主義らしく“政治対決の弁証法”などといって目くらまししているだけだ。
笑ってしまった「折り入って作戦」
今回の志位氏の報告を聞いて、昨年の総選挙以来、共産党の選挙戦術に「折り入って作戦」というものがあることを知った。志位氏はこの作戦について次のように説明している。
〈「折り入って作戦」とは、“後援会員、支持者、読者に「折り入って」と協力を率直にお願いし、ともにたたかう選挙”にしていくということです。それは、現在の自力のもとでも勝利をつかむうえでのカナメをなす活動として、また、「国民とともに政治を変える」という党綱領路線にもとづく選挙活動の大道に立った方針として、昨年の都議選、総選挙のとりくみから重要な教訓として導き出したものです。その決定的な意義を、全党のみなさんにしっかり伝えていく中央としての活動に弱さがありました〉
調べてみると「折り入ってお願いがあります」と冒頭に書き込んだ候補者のビラがあった。別に「折り入って」と言わずともできることだ。共産党の中央委員たちがこれを重要な作戦だとして真面目に議論していたと思いたくないほど、ばかばかしい戦術である。選挙に負け続けていることに納得した。
活動と支持拡大を7倍に引き上げようという無茶な提起
共産党は参院選挙の直前の6月に第5回中央委員会総会を開き、そこで志位氏が、「折り入って作戦」と合わせて、有権者との対話、支持拡大を、7倍に引き上げようという提案を行っている。この提起に対しどういう反応があったかについて、志位氏は結語で次のように語っている。
〈「7倍」という提起に対して、討論のなかで、予定候補者の同志からも「7倍にして勝ちます」という決意が語られましたが、全国からの感想でも「7倍」が非常に衝撃的に受け止められています。「7倍はとてもやれそうもない」というのではなくて、「ここまで来たからにはテンポを7倍にアップしてやろうじゃないか」という決意として返ってきていることがとても心強いことだと思います。ここまでみんなの力で攻撃や大逆流を押し返してきた。そこに確信をもって、いまここで、その流れをうんと飛躍させて、組織活動のテンポを「7倍」に引き上げ、勝利に必要なことを掛け値なしにやりきる決意を固めあいたいと思います〉
またいつものパターンだ。腹の中じゃ誰もできるとは思っていない。こんな無責任な提起と議論しかできない指導部や中央委員に引導を渡したくなるのも当然だ。
◇
「大逆流」を選挙敗退の理由にしたり、「折り入って」お願いしたり、活動を7倍に引き上げても、肝心カナメの政策が最近の国際情勢から乖離し、あさっての方向を向いていれば、支持拡大や選挙での勝利は全くおぼつかないでしょう。
自衛隊違憲(最近曖昧ですが)や日米安保に反対、更には天皇制への否定など、それこそ今の日本の肝心カナメの施策として国民に浸透した考えを否定する党の方針を変えない限り、明日は社民党と同じ運命を辿るでしょう。
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