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2022年9月23日 (金)

福島香織氏:中国で囁かれる、常軌を逸したゼロコロナ政策が終わらない本当の理由

Img_87ead91c279080be7440a87a8951580f3932  中国のゼロコロナ政策、今年春の上海でのロックダウンの凄まじさは、日本でも大々的に報道されました。今月に入っても成都市でロックダウンが実施されています。何故ゼロコロナか、多くの国がウイズコロナに移行している現在、極めて希有な政策を続ける中国、対米比較に於いてその死者数を極めて少ないと鼓舞する狙いか、しかしどうもそれだけではないようです。

 その真の狙いは何か、その背景をフリーライターの福島香織氏がJBpressに寄稿していますので、以下に引用します。タイトルは『中国で囁かれる、常軌を逸したゼロコロナ政策が終わらない本当の理由 ゼロコロナは「インビジブル文革」?党大会に向けた事実上の戒厳令か』です。

Photo_20220922152201  中国の貴州省三都県で、ゼロコロナ政策のために隔離施設に移送される市民47人を乗せた「防疫バス」が深夜谷底に転落、27人が死亡し20人が負傷する大事故が起きた。ネット上では、この事故に人災だと怒りをぶつける声であふれた。

 なぜこのような事故が起きたかと言うと、現在中国では全国各地で部分的ロックダウンと「静態管理」と呼ばれるゼロコロナ政策が展開されており、それに伴う市民の強制隔離が夜中に闇に紛れて行われるケースが多いからだ。

 運転手も乗員も白いガサガサした動きにくい防護服を着せられて、何時間もバスを走らせて、遠方の山奥に陽性者や感染の可能性がある市民を隔離する。運転手は息苦しくて視野の狭い防護服を着たまま、街灯もない山道を猛スピードで運転するし、乗客の市民も防護服で息苦しい。バスは満員で子供も老人も妊婦もいるわけだし、どこに連れていかれるかわからないから、車内は不安と怒りで怒号や悲鳴があふれる。運転手も焦るだろうし、事故は起こるべくして起きたといえる。

 ネットでこの隔離バス(事故を起こしていない車両)の中の様子の動画が流れているが、市民が「バスから降ろせ」とものすごい剣幕で騒いでいる。市民が悪いのではない。いきなり夜中に強制隔離され、トイレ休憩もなく、何時間もバスでどこか知らないところに連れていかれようとすれば、私でも騒ぐだろう。

 事故を起こしたバスは、貴陽市から黔南州茘波県の隔離ホテルに向かうため、9月18日午前零時に出発した。事故は午前2時40分ごろだという。貴陽から東南へ約170キロの地点で、山中の高速道路から谷に転がり落ちたそうだ。20人が病院に搬送されて治療を受けているという。おそらくすぐには救助も来なかっただろう。

 ちなみに隔離された市民は陽性者ではない。地域に1人、濃厚接触者が出た、ということでコミュニティの住民全員の隔離措置をとったのだ。貴陽の人間をわざわざ黔南州まで連れて行くのは、おそらく強制収容者が多すぎて貴陽の施設がいっぱいだったからか。

 だが、貴州省の感染者はいったい何人なのか。9月20日現在で350人だ。1日の新規感染者は41人で、死者は2人。ほとんどが無症状。ちなみに、中国全体では、感染者は98.3万人で死者は5226人である。

新疆、チベットでの新たな民族弾圧

 もっと悲劇的なのは新疆やチベットのゼロコロナ政策だ。

 新疆ウイグル自治区のイリでは、すでにロックダウン50日目を過ぎている。住民は自宅から外に出ることができない。そして、他の漢族の都市と違い、日ごろからウイグル人市民に対して厳しい弾圧を加えている当局は、自宅に閉じ込められた市民たちに十分なケアをしていない。食糧や医薬品をほとんど支給しない地域もある。このため少なからぬ市民が餓死しているようだ。あるいは餓えの苦しさ、辛さに耐えられず自殺する人もいるという。

 イリでは7月末からロックダウンが開始された。9月上旬に漏れ伝わってくる動画やSNSの声を総合すると、すでに数十人の餓死者がでているようだ。また数百人が病院で医療が受けられないために死亡したという。

 もちろん、この数字の裏は取れていない。だが公式には、新疆で確認された新たな感染者はこの1週間で1人。感染者合計は9月20日時点で1168人で、死者は3人だ。イリ市民のSNS投稿の中には、食べる者がないから庭の木の葉でスープを作っているといった話もある。1歳5カ月のわが子が病気になっても病院に行かせてもらえず亡くなったという話も投稿されていた。

 新疆ではウイグル人の強制収容問題や弾圧が国際社会でも問題視されたが、このイリの今の状況は、新型コロナ防疫の名を借りた新たな民族弾圧ではないか、と疑われるくらいひどい。

 この仕打ちは、イリは人口の半分がウイグル人とカザフ人が占める北部都市で、第2次東トルキスタン共和国の拠点の1つであり、中国政府がトルキスタン独立勢力の動きを最も警戒する地域だからではないか。

 チベット自治区のラサも1カ月以上ロックダウンが続く。ラサの人口は90万人で7割がチベット人。連日、多くのチベット市民が深夜の闇に紛れてバスに詰め込まれて隔離施設に送りこまれている。

 チベット人女性が微博でこう訴える。PCR検査では陰性だったが、集中隔離施設に連行されることになった。未完成のコンクリート打ち放しの部屋に男友達ら4人が一緒に収容され、トイレも使えない。食べ物もトイレットペーパーも生理用品もない。惨状を訴えると、管理当局者が彼女を殴った。その傷をSNSでアップすると、当局者から削除命令がきた。だが、彼女は削除を拒否したという。

 今年(2022年)は上海、西安、成都、重慶などの一級、二級の大都市でも厳しいゼロコロナ政策の洗礼を受けているが、これら都市では、抗議活動や時に官民衝突に発展するようなデモが頻発していると聞く。だが少数民族地域で漢族と同様の抗議活動をすれば、テロとして弾圧される可能性もあり、抗議の声は上げにくい状態だと推察される。

長老たちを軟禁状態にするため?

 しかし、中国はどうしていまだにゼロコロナ政策から抜け出せないのだろう。世界的にみても中国の感染拡大はけっして深刻というほどではない。ましてやオミクロン株の重症化率は比較的低いのではないか。コロナで死ぬのではなくコロナ政策で殺される。苛政(かせい=民衆を苦しめる政治)は虎より猛し、いやコロナより猛し、だ。

 今ここに、チャイナウォッチャーの間に出回っている党内部筋からの「リーク」というのがある。私はこの手の「リーク」の信頼性は3割以下だと思っているので無視しようかと思ったが、友人のニューヨーク在住の華人評論家の陳破空も、このリークを受け取ったそうで、紹介していたので、ここでちょっと引用する。

 そのリークによれば、ゼロコロナ政策の目的は防疫ではなく、党大会前に習近平が政敵、特に力のある長老たちに、会議に出たり発言したりできないように自宅に足止めさせるため、いわゆる軟禁状態にするためだ、というのだ。

 その「リーク」は、ゼロコロナ政策に関する方針についての共産党内の内部通達と、リーク者である党内人士の反応からなる。およそ9項目ある。その概要を列挙してみよう。

(1)目的は防疫を口実に政治老人(長老、引退指導者)約50人を軟禁すること。外出、会議、集会への出席を阻止する。

(2)感染状況がなくても感染状況を作り出せ。PCR検査を継続し、別動隊によって感染を拡大せよ。

(3)言論を封鎖せよ。感染状況は深刻でない、ウイルスは大して怖くないなどの言論、WHOのテドロス事務局長の「コロナ感染拡大が間もなく終息する」といった発言なども抑え込め。

(4)西安、上海、重慶、成都、貴陽、ウルムチ、ラサなどでは、感染状況を作り出し、ゼロコロナ政策、ロックダウンを徹底せよ。

(5)党大会で習近平が連任したのち、ゼロコロナ政策の大勝利を宣言する。そこでゼロコロナ政策を終わらせ、人心を買い、習近平の英明のおかげだと、党に感謝させよ。

(6)ゼロコロナ終結の期日は最も早くて10月20日、最も遅くて来年3月の全人代後。

(7)北戴河会議では、政治老人たちをコロナから守る名目で参加させない。

(8)李克強は、ゼロコロナに対し怒り心頭だが、内部会議の守秘義務の原則によって、対外的には発言していない。

(9)党内では、党と国家が最も危険な時期を迎えているとびくびくしている。どのように党と国家を救えばよいか分からない。

105歳の大長老が異例の改革開放アピール

 裏も取れていない話で、鵜呑みにできるものではないが、多くの市民が、今中国が直面しているゼロコロナ政策の本当の目的は、防疫や人民の健康を守るためのものではなく、経済の悪化や社会の不安定化に対して不満をもつ人民が党大会前に騒ぎ出さないようにコントロールする口実ではないか、と疑っているのも確かだ。

 なので、感染状況をわざと作り出し、全国的に人の動きを管理し、ラサやイリなど要注意地域では長期のロックダウンを実施し、党内の反習近平派や長老たちの動きも、コロナ感染予防のため、といって会議や集会への欠席を促して、その発言を封じ込めようとしている、というのは妙に納得のいく話なのだ。

 老い先短い長老は怖いもの知らずで、習近平に対して面と向かって苦言する。江沢民、曽慶紅、朱鎔基、胡錦涛、温家宝はじめ長老のほとんどが、今の習近平の反鄧小平路線・毛沢東回帰路線に反対だ。

 105歳の大長老で、習近平を総書記に推した1人であり、歴代の総書記選びで強い発言権を持ってきた共産党のキングメーカーこと宋平(元政治局常務委員)が9月12日、珍しく公の場にオンラインで出席し、「改革開放は中国の発展に必要な道だ」と強く訴えた。ネット上に流れたこの短い動画はすぐに削除されたという。

 会議は江蘇省の奨学金の基金会の10周年記念のイベントだったが、そんな地方のイベントに宋平が105歳の高齢にかかわらずビデオ出演し、改革開放を訴えること自体が異様な印象を与えた。

 もし、このリークが本物なら、コロナのせいで発言の機会を奪われている長老たちの不満を代弁する形で、105歳のキングメーカーが高齢をおして出てきたということだ。

 陳破空は、この徹底したゼロコロナ政策は、習近平の穏形文革、あるいは穏形政変、つまり目に見えない「インビジブル」な文革、あるいは政変ではないか、という。政変というと、習近平から権力の座を奪おうとする軍のクーデターや反習近平派官僚による宮廷内クーデターをイメージするが、本来、鄧小平の打ち立てた集団指導体制と任期を2期に制限した平和的な権力禅譲システムを破壊して、独裁的権力を打ち立てようとする習近平の方が政変を起こそうとしているのだ、という見方だ。

 では、この政変が成功し、習近平が個人独裁体制を打ち立てた時、今度はビジブルな、目に見える文革が発動するのだろうか。中国が直面しつつあるこの政治的危機をどうやって回避することができるのか、私も想像がつかない。

 経済面では明らかにマイナスであり、国民の不満を増長する意味においても、このゼロコロナ政策がプラスになることはないと思います。しかもそれによって国民の健康に大きな貢献をしているとも思えません。それでもなお、頑なに続ける意味はこの記事にあるように、他にあるというのは想像に難くないと思います。

 もしそうであれば、つまり習近平氏の一人独裁のためであるとすれば、中国という大国を独り占め、つまり自分のものにしようとする大それた発想です。それはまさに秦から始まる皇帝と同じ易姓革命の現代版でしょう。そんなことが現実になるとは思えません。

 この記事にあるように、大老格の多くが習近平氏の思惑に反対の意を示しているとすれば、習近平氏の天下も長くはないかも知れません。ロシアのプーチン氏同様、裸の王様になり、いつかは一敗地にまみれる日も必ず来るでしょう。

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