« 織田邦男氏:日本独自の核抑止戦略を早急に構築せよ、非核三原則はもう通用しない | トップページ | 福島香織氏:橋上に決死の横断幕、「現代のタンクマン」が告発する独裁国家・中国の危うさ »

2022年10月21日 (金)

ウクライナ侵略戦争:追い込まれたプーチン、今後どんな「大どんでん返し」が起きてもおかしくない

Images-14_20221020173301  ロシアはウクライナ侵略後、最近になって東部4州で国民投票を実施、併合を宣言しました。またクリミア大橋の爆破を受けてこの4州に戒厳令の導入も宣言しました。プーチンの振り上げた拳はより高くなり、落とし所を見いだせないまま、ますます深みにはまって行っているようです。

 今後の展開はどのメディアや各国政府も読みにくく、プーチンの頭の中にしかないと言われていますが、そのプーチン自身も分かっていないのではないでしょうか。いずれにしろここへ来ての矢継ぎ早の政策は、プーチン政権の焦りの象徴かも知れません。

 そのあたりの詳細を、元防衛関連雑誌編集長で現在フリーの、深川孝行氏がJBpressに寄稿したコラムに求めてみます。タイトルは『プーチン戦争の末路、「宮廷革命」「核」「朝鮮半島化」のシナリオを検証する 追い込まれたプーチン、今後どんな「大どんでん返し」が起きてもおかしくない』で、以下に引用します。

 2022年2月24日に勃発したロシアのウクライナ侵略戦争も間もなく9カ月目に突入。ロシア・プーチン大統領の劣勢が伝えられる中、メディアや専門家からいろいろな「終戦・停戦シナリオ」が飛び出している。そこで注目シナリオにスポットを当てて検証してみたい。

プーチンのイエスマン“KGB閥”が軍人たちを圧倒

 一説ではウクライナ侵略作戦のシナリオは、プーチンにとり“古巣”の巨大スパイ組織、旧KGB(国家保安委員会)で、「同じ釜の飯」を食べた間柄のメンバーが中心になり練られたと言われる。

 一方ロシア軍のツー・トップ、ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長との関係性が気になるところ。とりわけ叩き上げの軍人であるゲラシモフは作戦立案に当然参画しているが、徐々に戦況が悪化すると、プーチンを首領とした“KGB閥”が軍人たちを圧倒してますます無茶な作戦プランを立案して苦戦・・・という悪循環にはまっているとの分析もある。

 KGB閥、いわば「プーチン仲良しクラブ」の顔ぶれは次のとおりだ。

  • パトルシェフ連邦安全保障会議書記/KGBでプーチンと同期
  • ボルトニコフFSB(連邦保安庁=KGBの後身)長官/同じく同期
  • ナルイシキンSVR(対外情報庁=旧KGB対外情報部の後身)長官/同じく後輩
  • ゾロトフ国家親衛隊(旧国内軍で国内治安を担当、暴動・内乱鎮圧部隊)総司令官/同じく同期でプーチンの元ボディガード

 KGB閥の面々は職業軍人としての経験はなく、いわば軍事作戦立案の素人。むしろ十八番(おはこ)は旧KGB仕込みの謀略や欺瞞、権謀術数の類で、彼らの作戦は「机上の空論」との指摘も多い。

 一方ゲラシモフは筋金入りの軍人で、しかも誇り高き戦車部隊出身であり軍内での信望も厚い。ちなみにロシアでは戦車兵を大祖国戦争(第2次大戦時の独ソ戦)の時にナチスドイツ軍の侵略から母国を死守した英雄と見なす。

 またゲラシモフはハイブリッド戦(軍事と経済・文化など非軍事を織り交ぜて戦争を遂行)を謳った「ゲラシモフ・ドクトリン」を提唱し、2014年のクリミア半島の一方的併合の際にその威力を見せつけたとも言われている。

 プーチンの「イエスマン」に違いはないが、プライド高き軍人・ゲラシモフが稚拙な戦争プランで、半ば「子飼い」の戦車部隊や部下たちがウクライナ軍や西側製兵器により無駄死する光景を黙って見ているとは考えにくい。しかも侵略戦争に従軍した甥のゲラシモフ陸軍少将は戦死しており、加えてプーチンは戦況悪化の責任を彼に押しつけ、今や閑職に追いやっているとも聞く。

健康問題を理由にした「勇退」ならメンツも保てるか

 実際ロシア軍のダメージは想像以上だ。アメリカ国防総省(ペンタゴン)によれば、ロシア侵略軍約15万人の死傷者が7~8万人に達すると推計。投入兵力の実に半分に達する酷さで、部隊の戦闘継続もままならないだろう。さらにロシアの独立系メディアはFSB現役将校などの話として死傷者と行方不明者は「9万人以上」と報じる。このためプーチンは9月下旬、ついに“禁じ手”とも言うべき一般国民への部分動員に踏み切り、スキルの低い30万人を徴兵して頭数を揃えたい構えだ。

「ロシア軍は総兵力90万人以上を擁するのになぜ兵力不足なのか」と訝る向きもある。実は今回の侵略戦争は歩兵や戦車など地上軍が主軸で、ロシア正規軍90万人の中でも投入できるのは陸軍28万人のほか、海軍歩兵(海兵隊)3.5万人と空挺軍4.5万人の計36万人と意外にも少ない。これに別組織の大統領親衛隊約34万人が加わって計70万人といったところ。そこから交代要員や広大な国土の防備などを勘案すれば、戦争に動員できる兵力は3分の1で「20万人強が限界」という計算が成り立つ。

 話を戻すと、最前線で部下が犬死にしゲラシモフ自身も冷遇の状況で、最近では国民に人気で愛嬌ある国防相のショイグにも作戦失敗の汚名を着せ、詰め腹を切らせようと訴える国内保守派の勢いが増している。

 一方対照的にFSBや国家親衛隊、悪名高きチェチェンの民兵組織、民間軍事会社(PMC)という名の傭兵組織「ワグネル」など、正規軍から見れば筋の悪い面々を重用するプーチンを苦々しく思っているとしても不思議ではなかろう。

 しかもプーチンは前線部隊にまで細かく命令を発し、作戦失敗の際は責任を現地指揮官に被せて次々に首をすげ替え、しかもこれを加速させているようだ。「祖国を守った」という自負があるロシア軍への狼藉が続けば、ゲラシモフでなくとも血気盛んな青年将校らが「プーチン外し」に動くかもしれない。

 この場合、政治的中立を重んじる軍部がクーデターの主役になるとは考えにくい。むしろ最強の武力を背景に「そろそろ潮時」と感じ始めたシロヴィキ内の旧KGBメンバーを篭絡し、外堀を埋めた後にプーチンに引導を渡すというシナリオも考えられる。一種の「宮廷革命」で、プーチン政権の“サドンデス”(突然死)でもある。

 実際1962年にアメリカと核戦争のチキンレース、いわゆる「キューバ危機」を演じた旧ソ連のフルシチョフ第一書記は、この時の妥協や権力の過度な集中、短気な振る舞いなどが災いし、幹部の造反で数年後に失脚した。ただし「年金」「別荘」「お抱え運転手」の“三種の神器”は国家が終身保証した。体のいい軟禁状態だ。

 こうした先例もあるため、例えば同様の特典を保証する代わりに、健康が芳しくなく勇退という体裁ならメンツも保てる──というシナリオだ。余談だが病気を理由にしたトップの引退劇は日本の大企業でも時折見られる「裏ワザ」だ。

核兵器の使用は天にツバを吐くようなもの

 追い込まれたプーチンによる一打逆転の奇策として、大手メディアは「限定的核兵器の使用に踏み切るのでは?」という悪夢のシナリオを報じて警鐘を鳴らす。ただ「絶対にない」と断言はできないものの、可能性は極めて低いというのが筆者の結論だ。

「核」使用はアメリカの核報復を誘い、全面核戦争へとエスカレートして人類滅亡──という軌跡を辿るだけだからだ。70歳の誕生日を迎えたプーチンはロシア男性の平均寿命約68歳を考えればすでに「長寿」の域だが、2人の娘や孫を考えた場合、「メンツ」だけで核のボタンを押すほど非情だとは思えない。

 KGB出身のスパイだけに逆に計算高く論理的で、一連の核使用の「ほのめかし」も、お得意の「プロパガンダ」「はったり」と見続けたほうが無難だろう。

「黒海のスネーク(ズミイヌイ)島に小型戦術核ミサイル1発を撃ち込むのでは?」と指摘する向きもある。同島はウクライナ領だが、開戦早々ロシア軍が占拠したものの同年6月に奪還された。

 スネーク島はウクライナにとっては抵抗のシンボルで、黒海に浮かび小規模のウクライナ軍守備隊しかいない同島に戦術核を1発(威力は広島型原爆の5~10倍と推定)お見舞いすれば被害は最小限で済み、確かにウクライナと西側の戦意をくじくには好都合だろう。

 だが、島はNATO加盟国のルーマニアまで40km弱の近さ。NATOは加盟国への核兵器による放射能被害も「攻撃」とみなし集団的自衛権を発動する構えで、ロシアはNATOとの全面対決を覚悟しなければならない。これでは自縄自縛だ。

 また「ウクライナ国境近くで核実験を行って恫喝するかもしれない」との指摘もあるが、国境地帯はチェルノーゼム(肥沃な黒土)が広がる世界屈指の穀倉地で、核実験に適した砂漠や荒れ地はない。仮に核実験を強行すれば大掛かりな住民避難が必須で、「何かあるな」と世界中がすぐさま察知する。

 加えて、放射性物質の拡散を避けて地下核実験に徹するとの見方もあるが、「キノコ雲」が生じる大気圏内核実験でないとビジュアル的なインパクトに欠け、単なる「核実験」意外のなにものでもない。それ以前に前述のように穀倉地帯が広範囲に放射能汚染され、ロシア自身が深刻な食糧不足に陥る可能性も高い。

 これは1986年に発生したチェルノブイリ原発事故の惨状を見れば明らかで、「季節を計算し欧州方面の西側に風が吹く時に行えばいい」と安直に思うかもしれないが、ウクライナ周辺上空には常に偏西風が吹くため確実に放射性物質を帯びた塵(ちり)がロシアの広大な小麦地帯を襲うことになる。

原子力核魚雷「ポセイドン」炸裂の現実味

 さらに「原子力推進核魚雷『ポセイドン』がニューヨーク沖で炸裂すれば、高さ500mの津波に襲われる」とおどろおどろしく伝える国内メディアもあるが、そもそも「ニューヨーク沖」に全く根拠はなく、ある程度「眉唾」だと思ったほうがいいかもしれない。

 ポセイドンは直径2m、長さ20mでちょっとした小型潜水艦の大きさ。原子炉を積み射程距離は1万km、時速100km超を発揮すると言われ、実はまだ完成半ばだ。単純計算で「広島型」の6700倍に相当する100メガトンの水爆を搭載し、水深1000mまで潜れ現行潜水艦(最大水深400~500mが限度)での迎撃は不可能だ。

 また海中で爆発すると高さ500mの津波が発生するとの“触れ込み”だが、「500mの津波が発生」は、そもそもロシア軍/国防省が1度も発表したことはなく、2022年の5月にロシア国営テレビが「核融合(=水爆)魚雷を英本土近くで爆発させればグレートブリテン島全部を津波で飲み込むことができる」とのロシア国内向けの“国威発揚”シミュレーションの放送がどうやら独り歩きしたようだ。

 ちなみに恐竜が絶滅し、地球上の生物の75%が死滅した6600万年前の小惑星の落下(チクシュループ衝撃体)は、中米ユカタン半島に落下した時300~1600mの津波が発生したと言われ、そのエネルギーは「広島型」の10億倍と見られる。「6700対10億」では桁が違い過ぎて話にならない、と指摘する軍事専門家も少なくない。

 百歩譲り本当に500mの津波を発生するポセイドンをニューヨーク沖で使ったとしたら、大西洋一帯を大津波が襲うことは確実だ。この時ロシアが敵視するNATO諸国が壊滅的被害を受けるのはもちろんだが、ロシアに友好的なキューバやベネズエラ、ニカラグア、さらにはBRICSの一翼を担いプーチンに理解を示すブラジルや南アフリカも数十mの津波で大惨事となるはず。

 さらにこれだけでは済まず、津波は北極海にも及び、ロシアの超重要な原子力潜水艦基地があるコラ半島のムルマンスクも確実に津波に襲われる。しかもこの地はリアス海岸と地形が酷似するフィヨルドで津波のエネルギーが集中しやすい。

 つまり自らも大損害を被るような最終兵器を苦戦の挽回のためにわざわざ使うはずがないという理屈である。それ以前にこれだけの破壊力のある兵器をニューヨークに使用すれば、確実にアメリカの核報復にあい、核戦争にエスカレートし人類滅亡という軌跡をたどることは必至だろう。

 このようにロシアが限定的とは言え核兵器を使いウクライナやNATOを恫喝し有利な条件で停戦に持ち込めるのではと考えても、結局はNATOとの全面核戦争、人類滅亡へとエスカレートするリスクが極めて高い。それ以前に自国の物理的被害も多大で現実的ではない。

落としどころは「第2の朝鮮半島」か?

 こうした中、専門家の一部は「第2の朝鮮半島」という“落としどころ”を指摘する。

 ただしこの場合ウクライナ、ロシア双方が戦争長期化で疲弊し、厭戦ムードも広がり、これ以上戦闘継続は難しいと両首脳が実感した時か、または前述のようにプーチン政権が突然倒され、後任の権力者あるいは集団指導体制がこれ以上の戦争を望まず、とにかく講和に持ち込んで西側との関係を修復し国内経済を立て直したいという願望が強い時だけだろう。現在のように侵略を受けたウクライナの側が優勢で反攻に転じて領土を奪還している最中では、停戦に応じるはずがないからだ。

 仮に両者の間で停戦が成立したら、いの一番に行われるのが軍事境界線の設定だろう。

 朝鮮半島ではDMZ(非武装地帯)と呼ばれ、両軍が直接対峙して軍事衝突しないように設けた中立地帯のゾーンが北緯38度線に設けられている。同様の境界線を構築し、さらにここを警備するために例えばインドやナイジェリア、インドネシアといった中立的な国の軍隊による国連PKO部隊が駐留し、軍事境界線を警備する。万が一どちらかが戦闘行為に出て国連PKO部隊に被害が出れば、国際法の重大違反で世界中からの指弾は免れない。

 肝心の「軍事境界線はどこに引くのか」についてだが、これは今後の戦況しだいというほかない。筆者の独断に過ぎないが、やはり現実的なのはウクライナ侵略戦争以前の2022年2月24日のラインとなる可能性が高いのではなかろうか。

 ウクライナ東部の旧ドンバス・ルガンスク両人民共和国の軍事ラインが基本で、さらにクリミア半島の半分か、できれば全部をウクライナが奪還、という辺りなら、不満はあるもののゼレンスキー政権が首を縦に振る可能性はあるかもしれない。しかもその場合は、停戦が発効した瞬間に「ウクライナのNATO加盟またはアメリカとの軍事同盟締結」を実現させるのが最低条件だ。

 朝鮮半島の現状を見ると、DMZで南北朝鮮は分断され、いまだに両国間の戦争は「休戦」状態にあり「終戦」ではない。だが後にアメリカは韓国と相互防衛条約を締結し集団的自衛権を掲げる。ウクライナも同様にNATOに即日加盟か、アメリカとの相互防衛条約を結び集団的自衛権で自国の安全保障を確固たるものにする発想である。

 このように可能性についていろいろ検証したが、2022年2月上旬の段階でロシアがウクライナに大軍で攻め込むなど、軍事専門家の大半が夢にも思わなかった事実を考えれば、今後どんな「大どんでん返し」が起きても不思議ではないだろう。

 ウクライナのNATO加盟は休戦と行ってもにらみ合いが続く中で、加盟国全部が承認とはならないでしょう。そもそもプーチンが侵略を決意したその理由の一部が、ウクライナのNATO加盟の動きを牽制したからでもあります。

 とは言え極めて難しい停戦合意の動きの中で、深川市の言う「プーチン健康不安での勇退」はあり得るのかも知れません。しかしそれも取り巻きがプーチンでは駄目だと思うか、国民がプーチン政権を見限るかでしょうが、いずれにしろすぐには実現はしないでしょう。

 ただ世の中何が起こるか分かりません。ロシアのウクライナ侵略も「まさか」でしたし、ウクライナの想像以上の反撃も「まさか」でした。ここは一つ期待は薄いでしょうがまさかの「大どんでん返し」が起こるのを祈るしかないようです。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村

« 織田邦男氏:日本独自の核抑止戦略を早急に構築せよ、非核三原則はもう通用しない | トップページ | 福島香織氏:橋上に決死の横断幕、「現代のタンクマン」が告発する独裁国家・中国の危うさ »

政治とテロ」カテゴリの記事

2023年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
フォト
無料ブログはココログ