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2022年10月18日 (火)

進む円安は日本の弱さの表れ、いまこそ国民一丸となって日本を変えよう

15_20221018081801 円安が止まりません。先週末には148円台後半まで下落し、今週に入って149円台をつけました。かつてバブルがはじけデフレに突入した直後は、やはり140円台後半でしたが、その後デフレが続いた中で、大幅な円高となり、これが企業の海外転出のきっかけとなり、国内産業の空洞化が始まったことは記憶に新しいことです。

 その頃はよく「安全資産の円、有事の円」と言われました。そうした中、東日本大震災が発生し、その直後にも円高が進みました。日本が未曾有の災害に見舞われたのに円高?この矛盾に首をかしげていましたが、最近になってロシアのウクライナ侵略が勃発し、エネルギーと食料の危機が叫ばれ始めると、一気に円安が進んで、やはり円安はダメージを受けている日本、弱い日本の象徴なのだなと、矛盾から解放されたような気がしています。

 とは言え、弱い日本はもとより望むところではありません。どうしたら強い日本に戻れるのか、課題が山積しています。そして何より「今日本は曲がり角に来ている」という認識を、日本人がはっきり持つことから始めなければなりません。そのあたりの実態を、国際通貨研究所理事長の渡辺博史氏が、読売新聞に寄稿した記事から取り上げます。タイトルは『進む円安 エネ・食糧自給 弱さ反映…』で、以下に引用します。 

 円安が1ドル=148円台後半まで進んだ。現在の水準は、確かに問題とすべきだろう。新聞や雑誌を読む限り、関心の多くは日米の金利差に向けられている。米連邦準備制度理事会(FRB)の相次ぐ大幅利上げが日米金利差を広げ、円安を招いているのは間違いない。だが、この要因だけで円安の全てを論じるのはおかしいと思う。

 今回の急激な円安の起点は今年2月から3月上旬にかけてである。まさにこの時期の2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。これが為替相場に与えた影響は、「風が吹けば 桶屋がもうかる」といった程度の因果関係ではなく、はるかに大きいものだ。

 侵攻後、大規模な対ロシア制裁が極めて速やかに実施され、ロシアも対抗措置をとった。この時、明らかになったことがある。まず、制裁と報復の中心を担う米国もロシアも、「エネルギー」と「食糧」という二大生活必需品目が、生産余剰の状況にあることだ。これに対して、米国以外の先進7か国(G7)は二つのうち少なくとも一つ、日本は両方とも完全な自給不能に陥っていることである。

 米国は、世界最大級の食糧生産国の地位を長く保つ一方で、かつてはエネルギーの輸入国だった。その後の「シェールガス革命」を経て、今や世界有数のエネルギー輸出国である。

 ロシアは旧ソ連時代を含め、20世紀は石油やガスの生産が必ずしも順調ではなく、西側から技術・資本を導入して生産能力を強化した。欧州などへの輸送能力向上もありエネルギーの大輸出国に躍り出た。石油輸出国機構とともに作る「OPECプラス」では、サウジアラビアと並ぶ有力メンバーだ。食糧についても輸入頼みの時期はあったが、温暖化の「良い」影響と農産技術の向上で有数の穀物輸出国となった。

 こうした米露の極端な変化とその影響をきちんと認識し、取るべき対応を前広に考えていた人は、残念ながら多くはなさそうだ。

 日本はエネルギーの約90%、食料の60%以上を輸入に依存している。こうした 脆弱性への評価が為替水準に反映されていると考えるべきだ。仮に日米の金利差が縮小しても、為替相場が現在の水準から、3月上旬の1ドル=115円程度に戻るとは限らない。

 為替の水準は国の総合力を反映するものである。今や日本の総合力に対する海外からの評価が、かつてより下がっていると自認すべきではないか。

国力衰退 自己認識の時

 日本が自給不能状態に陥ったのは、決して最近のことではない。これはドイツも同様である。

 日独両国は戦後数十年、自らの資源不足という 脆弱性を、産業技術力の向上を図ることで補おうとしてきた。しかし、この技術力の優位性は、韓国や台湾、オランダやフィンランドといった、日独の近隣にある国や地域の挑戦を受けて徐々に低下しつつある。

 相対的に開かれた市場である東南アジア諸国連合(ASEAN)や、統合に向かった欧州連合(EU)というそれぞれの「ホームグラウンド」に助けられ、何とか資源面の脆弱さをカバーし続けられたのだ。

 この間の日独の大きな差は、為替水準に対する姿勢であった。ドイツは、第1次世界大戦後にもたらされた超インフレに対する反省から、基本的に自国通貨マルクの価値保全を重視して政策を運営した。欧州統一通貨ユーロへの合流後は、南欧諸国の拙劣な財政運営の影響でユーロが弱くなっていることを「隠れみの」にしながらも、通貨価値の維持に努めてきた。

 一方の日本は、1971年のニクソン・ショックや85年のプラザ合意などで急激な円高に見舞われ、経済が苦境に陥ったトラウマを抱え、「円安志向」や「円高への恐怖」が色濃く染みついた。21世紀になって経済構造が変わったのに、政界も経済界もメディアも変化に目をつぶったまま、「円安志向」の呪縛にとらわれたままだった。

 「インフレ率の高い国の通貨は安くなり、デフレや低インフレの国の通貨は高くなる」という経済学説がある。通貨の役割がモノの取引の決済手段に限られているような一定の経済段階までなら、この理論は正しいのだろう。

 このためデフレ下の日本では、21世紀に入ってからの円高は「少し行き過ぎだが、学説通りとすればやむを得ない」という誤った受け止め方をされた。

 筆者は30年ほど前から、「低インフレ国ならまだしも、日本のようなデフレの国の通貨が高く、強くなるというのはどう見ても経済常識に合わない」と疑問を呈してきた。だが、私の問いに対する答えは、誰からもいただけていない。

 多くの人は、円が異常とも言える過大評価を受けていた事実を見極めきれず、産業技術、経済力、国力の劣化を直視できていなかったような気がする。

 市場価格の上下はある程度「対称的」なものが多いが、為替は「非対称的」である点にも留意したい。

 行き過ぎた通貨高が延々と続いても、その国の経済が崩壊することはない。輸出競争力が低下して売り上げが減るマイナス効果が、輸入物価下落のプラス効果を上回れば、経済は収縮して通貨安に向かう。

 一方の通貨安は、「どこかで止まる」メカニズムになっていない。輸出品の外貨建て価格が下がっても、商品に魅力がなければ売れる保証はない。経済が上向かないと通貨安に歯止めはかからず、輸入物価の高騰が続く。国内消費はさらに低迷し、通貨安を招く。

 今回の急激な円安が始まったころ、複数の経済人から「円安が進むと日本企業の資産価格がドル建てで大幅に安くなり、海外投資家に買い占められてしまうのではないか」という懸念が寄せられた。

 しかし、日本企業の買い占めが始まった、あるいは引き合いが増えた、という感じはしない。企業ではなく、不動産ばかりが次々に購入されている。

 重要技術の保護など産業安全保障の観点から企業がガッチリ守られている、ということでもないようだ。底流でいくつか話は進行しているかもしれないが、要するに日本企業の魅力が薄れ、海外投資家に「買いたい」という意欲があまり起きなくなっていると見るべきだろう。

 今の日本で、産業技術を含めた総合的な経済力の衰退が始まっているのか、正確な自己認識が求められている。転換期は往々にして、外からの刺激でスタートすることが多い。だが今は、自発的に切り替えようとする先見性、先験性が必要ではないか。

 なんとも寂しい話です。ただ企業の国際競争力や、国際ランキング、国際特許出願率、一人あたりGDP、大学総合ランキング、サイバーセキュリティ能力等々、いずれの分野でもじわじわ後退しているのは事実です。

 「奢れるもの久しからず」ということわざ通り、日本はバブル崩壊前の「ジャパンアズNO.1」から崩壊して行っているようです。国民全体にもその認識が薄く、逆にバブル以降社会に出た人たちには、デフレと報酬増加がない状況が普通と思っているかも知れません。

Images-13_20221018082001  一方この状況を打開するには、政治の力が必要ですが、国会は相変わらず旧統一教会の質疑に明け暮れ、メディアもその報道に明け暮れています。まさに日本全体が危機感を有しない「ゆでガエル」状況を呈しています。

 渡邉氏が『転換期は往々にして、外からの刺激でスタートすることが多い。だが今は、自発的に切り替えようとする先見性、先験性が必要ではないか』と言うように、政界にも、経済界にも、学界にも、そしてメディアにも、「強い日本を取り戻す」という、強い意志を持つ人たちが変えていく必要があります。それはまさに保守勢力による日本改造だと私見ですが思います。

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