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2022年10月 3日 (月)

櫻井よしこ氏:憲法改正と自衛力・国防力強化を急げ

Images-7_20221003102201  政府は年末までに、外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など、安保関連3文書を改定する計画となっています。一方で防衛費の大幅増額を内外に示し、近い将来NATO諸国並みのGDP比2%を達成すべく、議論が進みつつあります。

 ただそれと並行して、「ポジティブリスト」に代表されるように、自衛隊の行動の足枷となっている法体系の改革も待ったなしです。今回は産経新聞に寄稿した櫻井よしこ氏のコラムからその概要を引用して紹介します。タイトルは『自衛隊強化 法整備急げ』です。

安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)における岸田文雄首相の追悼の辞が胸に響いた。「戦後置き去りにされた国家の根幹的な課題に次々とチャレンジ」し、「戦後レジームからの脱却」を目指し、「国民投票法を制定して憲法改正に向けた大きな橋を架けた」として、安倍氏をたたえた。首相の想いは憲法改正につなげてこそ、本物になる。

プーチン露大統領はウクライナ4州の併合を宣言し、核による反撃もいとわないと恫喝(どうかつ)した。中国は台湾への軍事的恫喝を継続し、わが国の排他的経済水域(EEZ)にミサイル5発を撃ち込んだ。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺では、人民解放軍(PLA)の軍機が領空に接近し、海警局の船が領海に侵入する。習近平国家主席もプーチン氏も徹底した力の信奉者だ。

そして、台湾有事が迫る。安倍氏が指摘した日本有事だ。岸田政権が日本を守り通せるかは日本国の根本的欠陥を明確に認識できるか否かによる。わが国国防の根本的問題は自衛隊が軍隊ではないという一点に尽きる。自衛隊は憲法と自衛隊法により警察権の枠内に封じ込められ、実力を発揮できない組織なのだ。

憲法を改正して戦後レジームから脱却しない限り、岸田政権が検討中の自衛隊強化策は基礎工事のなされていない砂地に建物を建てるようなもので、真の危機対応にはなりにくい。逆に、憲法改正で自衛隊を通常の軍隊にすれば、自衛隊はとってはいけない行動を定める「ネガティブリスト」に基づいて持てる力を真っ当な形で行使できるようになる。そのとき自衛隊の力は、予算を1円も増やすことなしに比類なく強化される。

そこに行きつくのが困難ならば、首相には次の一手がある。日本の危機対応の法の穴を埋めるのだ。たとえばシンクタンク「国家基本問題研究所」における織田邦男元空将の以下のような提言だ。

わが国には有事法制はあるがグレーゾーンの法整備はない。現代戦は平時か有事かを区別できないグレーゾーンでの戦いから始まるが、そのような事態を想定していないため自衛隊は対応できない。台湾・日本有事となっても、沖縄県の与那国島などの住民保護は武力攻撃事態などが認定されない限りできない。防衛出動の下令なしには自衛隊は警察官職務執行法に縛られ武器使用が大幅に制限される。

武力攻撃事態、存立危機事態の認定があって初めて自衛隊は国民・国土防衛の活動に乗り出せる。ただ、これらの事態認定は中国などの周辺諸国に「宣戦布告」ととられかねない。住民保護のための事態認定が逆に戦端を開きかねない。この欠陥を埋めるにはグレーゾーンにおいて、自衛隊を通常の軍として活動させる法整備を急げというのだ。ちなみにこのような軍の扱いは世界では当然のことだ。

Images-6_20221003102101 有事に大戦略を決めるのは政治である。その指示で動くのが自衛隊である。政治と軍、政軍関係を健全に保ち、堅固に日本国民と日本国を守れるか否かは政治家の力量による。政治家の力量は現場を知らずしては決して成り立たない。

岸田文雄首相の下で新国防戦略の策定と、予算面からの軍事力強化の検討が行われている。一連の議論の中で思い違いが目につく。

まず、「防衛費の国内総生産(GDP)比2%以上」に向けての増額と防衛力強化の混同である。先述の沖縄県の与那国島などで有事の際の住民避難に必須の港湾・空港の整備・拡張、地下施設建設などインフラ整備費を防衛予算に算入すべしとの意見がある。種々の科学技術研究開発予算、海上保安庁予算も防衛費に算入してGDP比2%以上という国際公約を果たそうとの考え方もある。

港湾や飛行場、滑走路などの整備費は、日本の安全保障全般に関わる国防関係予算であり、防衛予算ではない。自衛隊の軍事力強化にはつながらない。防衛費の見かけ上の増額を図るのは水増しである。防衛費増額と防衛力強化を混同してはならない。

海保は他国の沿岸警備隊(コーストガード)とは異なり、海上保安庁法25条によって軍との関係が全否定されている。有事に軍の指揮下で軍事展開する他国のコーストガードとは全く異なる。従って海保の予算を防衛予算に組み入れることなど許されないだろう。

岸田政権下で国防の新戦略が策定され、戦闘機やミサイルなど新たな調達が決まるだろう。しかし、実際に自衛隊の手元に武器装備が届くのは早くて5~10年後だ。大事なことはそれまでの間、わが国の安全をどう担保するのか、である。

ここでも重要なのは政治家が現場の自衛官の声に耳を傾けることだ。安倍晋三元首相が自衛隊には継戦能力がないと明言したように、ミサイル、砲弾、部品、修理費など、現場は「不足」が山積みだ。まず、いますぐにそれらの補充にとりかかるべきだ。防衛力の現場の穴は最優先で埋めなければならない。

中露北朝鮮。核とミサイルを持った専制独裁国家に取り囲まれているわが国は世界で最も脆弱(ぜいじゃく)な国だ。戦後、国防を米国に頼りきったツケである。自衛隊が軍隊であり得ていない理由である。ここから抜けることが戦後レジームからの脱却なのである。

ウクライナは必死に戦って国家の滅亡を辛うじて回避している。国は国自体で生き残るのではない。一人一人の国民の国を大事に想う気持ち、愛国心によって初めて守られる存在だと痛感する。また、国なくして国民も国民ではいられないのである。ウクライナは日本の私たちに多くのことを教えてくれているはずだ。

日本の前方に立ちはだかる中国の習近平国家主席はプーチン露大統領同様、冷酷な力の信奉者だ。そしてプーチン氏よりはるかに手ごわい。中国の脅威に直面するわが国が覚醒し、発奮せずしてどうするのか。憲法改正の実現に向けて全力で走る。足元の自衛力・国防力強化に全力を注ぐ。この2つをやり抜くことが首相の歴史的使命である。

 戦後間もなくGHQの占領政策、「日本の弱体化を進め、二度とアメリカに立ち向かわなくする」ための、WGIPとプレスコード、ラジオコード、教育への自虐史観の植え付けが行われました。戦後77年を経た今日でも、 未だにその余波が放送界や教育界に残り、具体的な軍事技術の開発や戦略の研究、そしてその報道を控える雰囲気が、日本の軍事戦略音痴を生み出してしまっています。

 そうした中で、中朝露の覇権的行動がますます凶暴化しています。櫻井氏の言う「憲法改正の実現に向けて全力で走る。足元の自衛力・国防力強化に全力を注ぐ」ことが待ったなしの状況です。もちろん一方でこれらの国との対話は必要でしょうが、独裁国家を相手に、日本の思うような外交ができるはずはないでしょう。お花畑思想はきっぱり捨てて、防衛力強化と戦略研究強化を進めていってほしいものです。

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