« 山口敬之氏:伊藤詩織氏の「いいね」訴訟はジャーナリズムの自殺行為だ そして首をかしげたくなる判決が | トップページ | 韓国検察と全面戦争、疑惑まみれの最大野党の反日党首「李在明」が絶体絶命 »

2022年10月26日 (水)

一人独裁を完結させた、習近平が党大会で語っていた不穏な未来(Newsweek)

23_20221025170401  5年に一度の中国の共産党大会が閉幕し、大方の予想通り習近平氏が3期目の国家主席としてトップを続けることになりました。そして中央政治局常任委員を習氏の側近で固め、一人独裁体制を構築したと言っても良いでしょう。

 だが折しも米中関係の冷え込みや経済の停滞など、現在進行形の課題に加えて、台湾の統一問題など、この先も課題は多く残されているようです。いったい党大会で何を語ったのか、

 今回はアメリカのメディアが見たその視点を取り上げます。ディプロマット誌編集長のシャノン・ティエジー氏が、Newsweek(日本版)に寄稿した記事から引用します。タイトルは『習近平が党大会で語っていた不穏な未来』で、以下に引用して掲載します。

<中国が低成長期に入ったことを認めながらも、深刻な経済問題への対処法は不透明。3期目続投となった習が発表した活動報告を、5つのポイントで読み解く>

5年に1度開かれる中国共産党の党大会。20回目の今回は、習近平総書記(国家首席)が異例の3期目就任を決める場として、大きな注目を集めてきた。

だがまずは、この5年間の実績を党員に説明しなくてはいけない。

だから党大会の初日、習は北京の人民大会堂の大舞台で、活動報告を読み上げた。トップ続投を狙っているだけあって、そこからにじみ出るメッセージは継続性だ。

中国を取り巻く環境は厳しさを増しているが、経済も外交もこれまでどおりのアプローチを粛々と続けるというのだ。

中国だけでなく、世界は「過去100年来経験したことのないほどの大きな変化」を経験していると、習は語った。だが、中国共産党は困難を乗り越えて「歴史的勝利」を収めたという。

2021年の党創立100周年記念式典で強調したように、人民の生活に一定の余裕がある「小康社会」が達成され、極端な貧困は追放されたというのだ。

そして今、党は新たな「中心的任務」に取り掛かるという。「第2の100年目標である、あらゆる面で強力な社会主義現代化国家を建設し、それにより中国の現代化を全面的に推進し、中華民族の偉大なる復興を図る」のだ。

ここでいう100年とは、中華人民共和国の建国から100年間の目標という意味だ。

つまり期限は2049年だが、習はこれを前倒しして、2035年までに「基本的な」目標を達成すると宣言した。

13年後の予測はひとまず置いておくことにして、ここでは習の活動報告から、今後の短期的な方向性を示唆する5つのポイントを紹介しよう。

【1】ゼロコロナ政策は続く

習は自らが進めてきたコロナ対策を自賛した。「コロナ対策と経済・社会の発展の連携で重大な成果がもたらされた」とまで語った。

中国のゼロコロナ政策へのこだわりは、習の人格と密接に結び付いているため、今後も維持されるだろう。

それでも、本当にその適切性に自信があるなら、この政策がもたらしたダメージに触れてもよかったのではないか。公共の利益のために払われた犠牲があった、など遠回しの言い方もできただろう。

だが実際には、経済にとってよかったとだけ言及された。ゼロコロナ政策を変更するべき理由はない、というわけだ。

【2】低成長時代に順応せよ

経済政策全般についても、習はこれまでの路線の維持を示唆した。「国内外の双循環」や「サプライサイド構造改革」といった数年前に唱えられたスローガンも口にしている。

ただ、中国経済を借金頼みの輸出主導モデルから、高付加価値商品を中心とする内需主導モデルに移行させる点で、中国共産党の成功はごく限定的と言わざるを得ない。

一方、習は「共同富裕」というかねてからのスローガンも口にしており、今後は経済格差の是正に改めて重点が置かれそうだ。

これは、「質の高い発展」の堅持という表現と相まって、中国が低成長期に入ったことを暗に認めたものと解釈できる。人民の暮らしが上向いている限り、マクロレベルの成長鈍化は受け入れていこうというわけだ。

だが、具体的な格差の縮小方法ははっきりしない。それに習の唱える「共同富裕」は、その中核に緊張をはらんでいる。

習は社会のセーフティーネットの必要性を強調しつつ、福祉は「怠惰」を助長するとしばしば述べてきたからだ。

習が重視するのは、雇用による所得拡大だ。「たくさん働けば、たくさん報酬を得られるようにし、勤勉により豊かになることを奨励する」と、今回の活動報告でも述べている。

だが、それで若者の高失業率上昇や、高齢者増加による年金給付負担の拡大といった、現代の中国経済が抱える深刻な問題に対処できるかは分からない。

総じて習は、経済成長よりも、国家安全保障と社会の安定を重視していることをにじませた。ハイテク分野で世界の指導的地位を固めることでさえ、外国技術への依存を低下させるという国家安全保障上の要請と位置付けた。

【3】台湾統一への強い意欲

台湾関連では、習は「最大限の誠意と努力をもって平和的統一の未来を目指すが、必要なあらゆる措置を取る選択肢を留保する」と述べて、台湾統一のために武力行使も辞さないと示唆した。

その上で、「祖国の完全なる再統一は必ず実現しなければならないし、実現できなければいけない!」と締めくくった。

中国指導部はこれまでにも武力行使という選択肢を排除したことはなかった。

だが、習は今回、「外部勢力と、極めて少数の『台湾独立』分裂主義者の干渉」に対して明確な警告を発した。その念頭には、アメリカと台湾の蔡英文総統があるのは明らかだ。

実は、10月16日に習が読み上げた活動報告は、完全版を要約したものだ。興味深いことに、完全版には、中国の台湾政策の基本線である「1992年コンセンサス」や「一国二制度」への言及があるが、演説ではこれらが省かれた。

習が、テレビ中継もされる演説では、融和的なビジョンを一切示さずに強硬な姿勢を強調したことは、注目に値する。

【4】一帯一路はやはり格下げ

ユーラシア大陸をくまなくカバーするインフラを整備することで、中国が世界の舞台で巨大な影響力を獲得するという「一帯一路」構想。それが最近、習をはじめ指導部の口から聞かれなくなったと指摘されてきたが、今回の活動報告でもそうだった。

代わりに習が言及したのは、グローバル発展イニシアティブ(GDI)とグローバル安全保障イニシアティブ(GSI)だった。

外交政策との関連で一帯一路への言及はゼロ。どうやら中国指導部におけるこの計画の「格下げ」は決定的のようだ。

【5】揺るがぬ党の指導的役割

中国はこの20年間、自らの驚異的な成長に強力な追い風が吹いていると考えてきた。だが、近年の逆風(アメリカが中国を戦略的な競争相手で、安全保障上の脅威だと位置付けるキャンペーンを張ってきたことなど)で、その認識は変化してきた。

習は活動報告で、現在は中国にとって戦略的なチャンスとリスクが共存する時期だと語った。

過去には「ブラックスワン(前例のない危険現象)と、灰色のサイ(存在するが軽視されがちな巨大リスク)がいつ現実になってもおかしくない」と表現したこともある。こうした波乱に耐える準備をせよ、というのだ。

でも、どうやって? それはもちろん、習の指導に一段としっかり従うことによって、だ。

習は活動報告の中で、揺るがぬ党の指導的役割と党内の一致を繰り返し強調した。

トップ就任以来、党内の腐敗追放を進め、権力基盤の強化を図ってきた習は、気を抜かず努力を続けるよう党員に檄を飛ばすことも忘れなかった。習自身が党総書記として3期目を決めても、党内の支配を固め、異論を封じる取り組みに終わりはない。

中国が直面する厳しい国際環境は、その取り組みを正当化する口実になるだろう。

 党大会に関して別のメディアはその異様性を次のように述べています。

24_20221025170401 <同大会の閉幕式では、ショッキングなことが起きた。李首相を庇護してきた胡錦濤前総書記が、強制的に退席させられている様子を写した切り取り動画が、拡散されたのである。国営新華社通信は公式ツイッターで「胡氏は体調が優れなかった」と投稿したが、監視が強化されている同大会の様子が勝手に流される可能性は小さく、一長老が体調不良で退席する様子を世界に発信する理由が思い当たらない。一説では習主席が、自らの権力を外国に住む中国人や華僑、各国情報機関に知らしめるためではないかという説もある。>(DIAMOND online 10/25)

<「10月16日に開かれた共産党大会の政治報告では1時間45分の演説を行い、『安全』や『安全保障』という言葉を前回の55回より多い73回も使いました。また軍事侵攻の可能性に言及した『台湾統一』のくだりでは万雷の拍手が起こりました」(ジャーナリスト・福島香織氏)

この演説時、かつて国家主席を務め、習近平にとって「お目付け役」だった江沢民元総書記(96歳)や、朱鎔基元首相(94歳)は姿を見せなかった。また長年政権を支えてきた「盟友」王岐山国家副主席(74歳)も不参加。名実ともに習近平は「絶対権力者」になった、ということだ。

自らを脅かす者を一掃し、完璧な独裁体制を確立した習近平が目指す目標はただ一つ。

アメリカから覇権を奪い、世界秩序の頂点に立つこと――。>(週刊現代10/29号)

 これらの記事から読み取れるのは、習氏が一人独裁を実現するために、これまで並々ならぬ努力をし、反対派を排除し、長老を脇に置いたことで実現したようです。それが意味するところは習派と反習派の分断ではないでしょうか。

この先経済が頓挫し、国民の不満が高まれば、習政権も安泰ではなくなるかも知れません。従って日米豪印やEUなどの民主主義陣営が、中国の経済依存から脱却し、先端技術分野の供給制限を厳格にして、中国経済を停滞せしめれば、この危険極まりないモンスター国家(正確にはモンスター指導者)から、リスクを軽減できるようになると思われます。もちろん、苦境に陥って暴走させないようにしなければなりませんが。

(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)


保守ランキング

(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)


にほんブログ村

« 山口敬之氏:伊藤詩織氏の「いいね」訴訟はジャーナリズムの自殺行為だ そして首をかしげたくなる判決が | トップページ | 韓国検察と全面戦争、疑惑まみれの最大野党の反日党首「李在明」が絶体絶命 »

海外、政治」カテゴリの記事

2023年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト
無料ブログはココログ