高市早苗氏:セキュリティ・クリアランス制度の導入に、止まない首相への不満
「2022年9月28日のテレビの報道番組で、高市早苗・経済安全保障担当大臣はセキュリティ・クリアランス制度の導入に強い意欲を示した。」と、元航空自衛隊の空将補だった横山恭三氏が、JBpressで述べています。
この高市氏の導入意欲に対し、様々な壁があるようで、その壁の向こうに見えるのが岸田首相のようです。産経新聞が政治部次長の長嶋雅子のコラムとして、記事を記載していますので、以下に引用します。タイトルは『高市氏、止まない首相への不満』です。
◇
岸田文雄内閣の一員である高市早苗経済安全保障担当相が、首相への不満を漏らす場面が目立つ。先月はテレビ番組で、経済安保に関する機密情報の取り扱い資格「セキュリティー・クリアランス(SC、適格性評価)」の制度化に向けた法改正をめぐり、「中国という言葉は出さないでくれと言われた」と暴露して波紋を呼んだ。SCは中国への機微情報流出防止も念頭に置くが、政府は「特定の国を想定したものではない」とのスタンスだ。政府関係者は「必要ない摩擦を起こすような発言は控えてほしい」と眉をひそめる。
SCは、機密情報へのアクセスを一部の民間の研究者・技術者や政府職員に限定する仕組みだ。人工知能(AI)や量子技術など最先端技術に関する機密情報に接する関係者に資格を付与して明確にし、軍事転用が可能な技術や民間の国際競争力に関わる重要な情報が国外に流出することを防ぐ狙いがある。
ハイテク分野で台頭する中国を念頭に、制度導入で先行する米国や欧州の主要国からは、制度を持たない日本との共同研究で機密情報が漏れる可能性が警戒されてきた。放置すれば先端技術に関わる国際共同研究に日本企業が参加できなくなる恐れがある。
ただ、資格を得る際には親族や交友関係、資産から飲酒歴に至るまで詳細な個人情報が審査対象となることが想定される。制度導入には個人情報保護の観点から慎重な意見も根強い。このため、政府は先の通常国会に提出した経済安保推進法案にSC制度を盛り込むことを見送り、法案成立を優先した。
5月の推進法成立に向け最も汗をかいたのは、小林鷹之前経済安保担当相だ。自民党で経済安保を議論した新国際秩序創造戦略本部の事務局長を務め、政府への提言も自ら書いた。その働きぶりが評価され、昨秋には衆院当選3回の若手ながら岸田内閣発足時の目玉人事として新設された経済安保担当相に抜擢された。
就任後も役人とひざ詰めで法案を検討。国会審議中には法案の責任者のスキャンダルが発覚し、辞任するトラブルもあったが、小林氏の誠実な答弁も奏功して法案成立にこぎ着けた経緯がある。
一方、小林氏の後任として、8月の第2次岸田改造内閣で経済安保担当相に就いた高市氏は同月14日、交流サイト(SNS)で入閣について「辛い気持ちで一杯」と不満を隠さず、「組閣前夜に岸田首相から入閣要請の電話を頂いたときには、優秀な小林鷹之氏の留任をお願いした」と明かした。
高市氏は就任後、小林氏から閣僚としての引継ぎ式も中止した。SNSへの書き込みが波紋を広げると、翌日の記者会見で「小林氏が一生懸命やってきたことなので留任していただいた方がいいと(首相に)申し上げた」と弁明した。
同月29日の報道各社のインタビューでも、投稿の真意を問われると「弱っちいことを言ってしまって申し訳なかった。決して役職に不満があったわけではない」と陳謝し、SCを含めた今後の経済安保体制の構築について「しっかりと姉さんが仕上げてやろうじゃないか」と前向きに語った。
これで収まるかに思われたが、9月28日に出演したBSフジLIVE「プライムニュース」で再び首相への不満が飛び出した。
SCを盛り込んだ経済安保推進法改正案に関し、来年の通常国会提出を目指しているかを問われると、担当相就任当日に「中国という言葉を出さないでくれ」「来年の通常国会にSCを入れた経済安保推進法を提出すると口が裂けても言わないでくれ」とくぎを刺されたと語った。誰に言われたのか明言はしなかったが、その後、こう付け加えた。
「SCは、どうしても法改正して出したいというのが私の強い希望です。しかし、(かつて務めた)総務相と違って、内閣府の長は内閣総理大臣(首相)でございます。だから、(内閣府特命担当相の)自分がやりたい、はい、法律案を書きなさいと役所の人に命令する権利は私にはございません。まずは岸田首相の説得からかかりたい」
SCをめぐっては、先の通常国会で、推進法案を審議した衆参両院の内閣委員会の付帯決議で制度の必要性を求めており、政府は来年の通常国会にSCを盛り込んだ改正案提出を目指している。自民党内からは「波風を立てれば通る法案も通らなくなる」「テレビで言うことではない」と批判の声も出ている。
首相が制度導入に後ろ向きであるかのような高市氏の発言について、自民重鎮は「高市氏はいきなりファイブアイズ(英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み)の間で行われているような厳格な内容を求めているのかもしれないが、まずはできる範囲で制度をつくることが大事だ」と話す。
保守派のホープとして女性初の首相を目指す高市氏は政策通である一方、党内には「チームプレーが苦手」との声もある。自身の言葉通り、後輩から引き継いだ重要法案を次期通常国会で「しっかり仕上げて」いただきたい。(政治部次長 長嶋雅子)
◇
この記事で、高市氏の経済安全保障担当省の引き受け時のゴタゴタの理由が、解けたような気がします。しかしそれにしても思い切ったことをやろうとしているときに、よく出てくる個人情報保護の問題。スパイ防止や機密保護に関しても、個人情報の方が優先される国に、しかるべき国家的セキュリティーが担保されるのかどうか、懸念されます。
いずれにしろ冒頭述べた横山恭三氏のコラムの締めとして、次の文章が述べられています。
<近年、日本で生活する外国人(在留外国人)の数が増加している。
一般に、独裁国家からの在留外国人は、母国の情報機関員からの勧誘に対して脆弱であると言われる。
例えば、母国への愛国心・忠誠心、母国にいる家族の安全、および帰国後の栄達願望などが弱点に挙げられる。
つまり、在留外国人の数が増加するに従い、日本の社会の中に、現在のスパイあるいは将来のスパイが紛れ込む可能性が大きくなるのである。
さらに、2017年6月28日に施行された中国の『国家情報法』の第7条は大きな脅威である。
その第7条は、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない」と定めている。
在留外国人を協力者とするスパイ活動は、中国だけでなく米欧やロシアなど多くの国が水面下で実施している。
ただ、民主主義諸国では在留外国人が自国の情報機関に協力するか否かは基本的には個人の自由意思に委ねられているのに対し、中国の国家情報法は国民に協力を強制している。
例えば、中国に有益な日本の技術情報を入手できる在日中国人エンジニアが、中国の情報機関にスパイ行為を働くよう指示されれば拒めない。在日中国企業も同様である。
筆者は、スパイがもたらす様々な脅威に対応するために、スパイ防止法の制定、防諜機関の創設、犯罪捜査のための通信傍受要件の緩和、防諜意識の高揚が喫緊の課題であると考えている。>
つまりSCと併せてスパイ防止法の制定、防諜機関の創設等、他の先進国が既に備えている法や制度が先ず重要で、それも「中国」を第一に念頭を置いた施策が重要だと言うことです。周りの障害に屈せず、高市氏に是非頑張っていただきたいと思います。日本の真の安全保障のために。
(よろしければ下記バナーの応援クリックをお願いします。)
(お手数ですがこちらもポチッとクリックをお願いします)
« 岩田温氏:玉川徹氏に「潔く身を退くべきだ」、だが「潔さがない」のが日本的リベラルの特徴だ | トップページ | 酒井信彦氏:「国葬、賛否両論」分断報道は、メディアが作り上げた世論操作。 »
「情報・インテリジェンス」カテゴリの記事
- 中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 今こそインテリジェンス体制の整備を(2023.05.02)
- 中国の情報収集、国家をあげての「秘密工作」あの手この手、平和ボケ日本は最大の得意先(2023.02.28)
- 中国に加担する日本メディアと情報工作に弱い日本社会が、中国の日本へのステルス侵攻を加速している(2023.01.22)
- 高市早苗氏:セキュリティ・クリアランス制度の導入に、止まない首相への不満(2022.10.16)
- 世界の要人が丸裸!中国が集めていた驚愕の個人情報、安倍元首相の情報も(2020.09.19)