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2022年11月 5日 (土)

福島香織氏:終了どころかさらに強化、中国人を絶望させる「ゼロコロナ文革」という大厄災

Images-17  3期目に入った習近平政権の元で、ゼロコロナ政策は転換するのか?その期待はどうやら外れたようです。思えばコロナ発祥の国中国が、何故これほどゼロコロナにこだわるのか。起源は中国ではないと言いたいのか、その本意は分かりません。あるいは他の思惑があるのでしょうか?

 そのあたりの現状を、ジャーナリストの福島香織氏が、JBpressに寄稿したコラムから見てみましょう。タイトルは『終了どころかさらに強化、中国人を絶望させる「ゼロコロナ文革」という大厄災 餓死を恐れて封鎖から脱出、凄惨な事件も続出』で、以下に引用して掲載します。

 10月22日に閉会した第20回中国共産党大会後、中国ではゼロコロナ政策がますます徹底され、そしてますます暴力的になっている。

 ユニバーサル・スタジオ北京や上海ディズニーランドでは、それぞれ10月26日、31日に突然閉鎖が発表された。中にいた数万人の観光客は全員PCR検査を受けさせられ、陰性でなくては外に出してもらえず、全員が外に出してもらえるまで一晩かかったりした。園内には幼い子供、家族連れもいるが、容赦はない。

 だが、こんなのはもはや厳しいうちに入らない。鄭州、武漢、広州では、党大会前に増して厳しいロックダウンと全民PCR検査が繰り返されている。チベット自治区のラサはすでに80日以上、新彊ウイグル自治区イリでは90日以上のロックダウンが続き、住民の中に餓死者が出ているらしい。また、大量の家畜の世話ができないために安値で売り払われたり、餓死したり、中には家畜も「隔離」措置を受けたりしているという。

動画が拡散した3つの凄惨な事件

 10月8日から始まった河南省鄭州市のロックダウンではいくつもの凄惨な事件が起きた。たとえば、10月23日には3つの大事件が、動画の拡散によって目撃されている。

 1つは、鄭州市のアパート17階の居宅から出ることを禁じられた母親が高熱の子供のために医者を呼びに行こうと、手製のロープを使ってベランダから降りようとしたところ、ロープが切れて墜落し亡くなった事件。

 もう1つが、鄭州市港区のフォックスコン(ホンハイ)従業員用のアパートで従業員が防疫職員をナイフで殺害した事件。防疫職員はアパートの外に出ようとした従業員を押しとどめようとして殺害された。

 この殺人事件は午後1時に発生したが、その夜、このアパートではフォックスコン従業員と、アパートを封鎖中の防疫職員らとの大乱闘が起きている。理由は封鎖後に食事や生活物資の供給もなく、また外出のために必要なPCR検査を実施する検査員も派遣されず、ただただ閉じ込められることに恐怖を感じた従業員が封鎖を突破しようとしたらしい。この動画はフォックスコン従業員の家族が投稿したものだった。

 3つ目の事件は、鄭州市白墳区の封鎖中のアパートのベランダから女性のバラバラ遺体が投げ捨てられた事件。この事件は、バラバラ遺体がアパート上層から降ってきたという写真がネットで拡散されているだけで、詳細は不明。だが、ロックダウンのストレスに耐えかねて住民がガールフレンドを殺害した事件が他にも発生しているので、同様の事件ではないかと見られている。

29 フォックスコン従業員が大脱走

 フォックスコンの主要製造拠点、鄭州工場の封鎖式管理を巡っては、10月下旬から従業員の集団脱走が断続的に報じられてきた。従業員やその親族のSNSの投稿を総合すると、工場内で10月8日から感染が出始め、14日に突然封鎖管理方式が通達された。20万人が同じ空間で暮らす状況で、感染は瞬く間に広がり、2万人の陽性者が出たという。

 最初は、陽性確定診断者(確診)と濃厚接触者をわけて隔離していたが、陽性者が増え続け、そのうち隔離場所が確保できず、陽性者と濃厚接触者を一緒くたにして宿舎内に隔離するようになったという。また、工場内の食堂は営業停止となり宿舎の部屋内でしか食事ができなくなったが、与えられる食事は当初からカップ麺やパンなどで、不満が高まっていたともいう。要隔離者が増えると、隔離場所も建築途中の野ざらしビルなど劣悪な環境だったり、十分な医薬品や食料、水が与えられない放置状態が常態化したりするようになったという。

 こうした劣悪な隔離環境の中で宿舎の726号と呼ばれる部屋に隔離されていた8人の女子従業員が全員死亡したという噂が工場内に広がった。従業員の1人とみられる女性が「みんな死んでしまった」と号泣する動画や、「10月29日」という日付のついた封鎖シールが張られた726号部屋のドアの写真などがネット上で拡散していた。また宿舎周りにPCR検査の廃棄物やゴミが山積みになった状況や、そのゴミの間で倒れている人が映っているような動画もあり、封鎖式管理のフォックスコン鄭州工場で何が起きているのか想像ばかりが広がった。

 オミクロン株は重症化率が低いと信じられているので、こうした死者情報は餓死ではないか、と多くの人たちが言い出した。こうした噂が真相不明なまま不安を拡大し、封鎖式管理下にいた従業員たちが大量に脱走し始めたようだ。夜の高速道路沿いにフォックスコン従業員が荷物を持ってぞろぞろと故郷に向かって数百キロの道のりを歩いている様子、昼間の田畑の中を当局の目を避けるように逃亡している様子などの写真や動画がネットで拡散されていた。高速道路の行く手に、軍が待ち構えて封鎖しているような動画もあった。このフォックスコン従業員の大脱走についてはBBCなど大手メディアも取り上げている。

 一方で、鄭州工場地域に、工場・宿舎内部からのSNSなどの発信を防ぐ無線妨害のための車両が派遣されているような写真や、軍の装甲車の列が鄭州大街を走っている動画なども拡散していた。こうしたことから、鄭州では軍も動員されて徹底的なロックダウンや情報封鎖体制が敷かれている、フォックスコンは軍の管理下に置かれているのだ、といった噂も広がった。

 ちなみにこうした噂話は、どれひとつ公式に確認されているものではない。フォックスコン側は、2万人隔離の話も「事実ではない」とし、726号の8人の女子従業員死亡の噂も悪質なデマであり、すでに警察に通報して処理を依頼しているという。

 ただ10月29日から、フォックスコン側と河南省の各地方政府は、故郷に戻りたい従業員は申請すれば専門の車両で故郷に送り届け、故郷で隔離措置を受けることができる、と発表している。工業パーク内に残留希望の場合は、宿舎で隔離され、そのかわり3食を保証、故郷での隔離を希望する場合は隔離施設の実費を自腹で支払うものとしている。

 こうした発表があるということは、つまり、大脱走問題が起きていることを認識しているということではあろう。

 鄭州のコロナ封鎖からの大脱走が中国人ネット民の心を揺さぶったのは、彼らの脱走の動機に「飢餓」が絡むからだろう。河南省は1942年にものすごい飢饉を体験し、300~500万人が餓死し、河南省から農民が飢餓から集団逃亡した歴史があった。これは河南省出身の作家、劉震雲の「一九四二」という小説にもなり、また馮小剛監督によって映画化もされている。また1959年から61年にかけての大飢饉は、まだ記憶に残る大厄災だ。3年自然大災害と呼ばれるこの飢饉は、本当は自然災害だけでなく人民公社・大躍進の政策が1つの大きな原因だった。だから、ゼロコロナ政策によって引き起こされた不条理な飢餓への共感が強いのだろう。

完全に裏切られたゼロコロナ政策緩和の期待

 実は、かなり多くの中国人が党大会後にゼロコロナ政策は緩和されるであろうと期待していた。なぜならゼロコロナ政策は、感染スピードが猛烈に早いオミクロンを封じ込めるには効果がほとんどなく、長く継続すればするほど経済を悪化させ人民を苦しめるものであることはわかり切っているからだ。

 党大会前、習近平が3期連任を固める前は、ゼロコロナ政策に批判的な李克強ら共産主義青年団派勢力との権力闘争に勝利するために、ゼロコロナ政策の過ちを認めることはできず、ゼロコロナ貫徹で路線闘争を争わねばならなかった。だが、党大会が終わり独裁者として足場を固めれば、ゼロコロナ政策のような科学的に誤った政策を無理に堅持する必要はないはずだ。

 ところが、その期待は完全に裏切られ、ゼロコロナ政策はますます過酷に暴力的になった。それはなぜか。

 1つ考えられるのは、上海市トップの李強の政治局常務委員への出世があるのではないか。李強は今年(2022年)3月から6月にかけて、多くの上海官僚や感染症専門家の反対意見を押し切って、徹底したロックダウンを実施した。このため第2四半期の上海市経済成長率は前年同期比マイナス13%に落ち込み、社会は動揺し、大混乱を来した。だが、李強は出世し、来年3月には首相の任に着くとみられている。この人事が各地方官僚トップに誤ったメッセージを送ったかもしれない。官僚出世の早道はゼロコロナを徹底するのが一番だと。今までは経済成長率が地方官僚の中央への出世の第一条件であったのが、もう経済は重視されないのだ、と。

 習近平も、ゼロコロナ政策をゆるぎなく堅持することが絶対的に正しいと一度言ってしまった手前、この流れにブレーキをかけることができないのかもしれない。

中国人民にとっての大厄災に

 だが、もう1つの見方がある。それは、権力を掌握したという自信をまだ持てない習近平が、地方の官僚たちが自分の敵か味方かを見分ける判断材料として「ゼロコロナ政策への忠実度」を見ようとしている、という可能性だ。

 これはなかなか恐ろしい。つまり、たとえ不条理な政策であっても習近平の命令なら率先してやるかどうかを、習近平は敵味方の基準にする。人民を苦しめ経済を悪化させる官僚ほど習近平は味方と認め、人民のためを考える官僚はパージされていく。

 実際、官僚にとって、これは最も頭を使わずに出世できる方法だ。高い学歴も高い行政手腕も必要ない。だから地方官僚たちは、上層部に上げるリポートでゼロコロナを誉め讃え、肯定する者だけになる。

 習近平はますますゼロコロナに自信をもち、継続し、それは実に長い「闘争」になるかもしれない。なにせ、オミクロンの後にはケルベロスやグリフォン、バジリスクといくらでもコロナ株が登場し続けてくるのだから。

 10月中下旬、ロックダウンの影響を受けた中国人はざっくり2億人あまり。これを14億人中国のほんの一部と考えるかどうか。それは文革の被害者1億人が当時の8億人口にとって多いか少ないか、というのと似ている。

 私たちは、ゼロコロナ政策が中国経済にどれだけ悪影響を与えるか、ということに注視しがちだが、これはもはや経済への影響以上に、人民にとっての「浩劫」(大厄災)になりつつある。新型コロナのパンデミックは人類の大厄災だが、中国人民にとっての大厄災は間違いなくゼロコロナ政策だ。そしてコロナ・パンデミックの大厄災が終わっても、ゼロコロナから始まる浩劫は文革のように10年単位で継続するかもしれない。

 あるメディア関係者が以前語っていましたが、「習近平に批判的な人物を特定するために、ロックダウンをして人の流れを絶ち、その間にじっくりその特定を行う、そ為の手段に応用している」、本当かどうかは分かりませんが、一人独裁貫徹のためにはあながち嘘でもないような説です。

 いずれにしろこの非科学的な手法は、まさに毛沢東の実施した大躍進政策や文化大革命に通じるところがあります。どうような非科学的な手法で、再び中国を大混乱に陥れようとしているのでしょうか。ただ見方を変えれば、これがそのまま中国経済のダメージとなって現れ、弱体化が進むとなれば西側諸国の思うつぼとなります。

 経済音痴に近い習近平が、3期目就任と共に李克強のような経済通を追い出した結果と相まって、今後の中国経済に赤信号がともる可能性は大きい。できればそうなることを期待したいと思います。日本企業は早めに撤退を決断すべきでしょう。

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